375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

本田美奈子BOX(DISC 5) 「We Are Wild Cats」他

2006年12月18日 | 本田美奈子


★本田美奈子BOX - disc5

収録曲 1.ONE SHOT 2.DO YOU REMEMBER? 3.夢見心地 4.ABOUT~
ADULT 5.はじめて言うけど… 6.DESTINY 7.EYE言葉はLONELY 8.あなたと、熱帯 <Single Version> 9.We Are Wild Cats 10.Let It Burn 11.
VIRGINITY 12.Bang Bang 13.霧のヴェール 14.Full Metal Armor 15.カシスの実 16.Because You're Mine
 
(17.「あなたと、熱帯」オリジナル・カラオケ)
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本田美奈子がデビューした1985年は、「昭和60年代」の幕開けでもあった。しかし、それは同時に、昭和歌謡曲史が、いよいよ最終章を迎えることを意味した。わずか4年後の1989年1月、昭和天皇の崩御によって、「激動の昭和」が終わり、多くの名曲に彩られた昭和歌謡曲史が、幕を閉じるのである。

その頃から、時代は急速に変貌した。まず、歌謡曲そのものが、以前ほど聴かれなくなった。かつて隆盛を誇ったTVの歌番組は、次々とゴールデンアワーから撤退した。某国営放送局の「紅白歌合戦」も、すでに1980年代後半から、視聴率が下がり始めていた。自由なライフスタイルを求めるようになった若者の生き方が、音楽の嗜好にも多様化をもたらしたのだろうか。もはや、一家揃って、TVの歌番組を聴くような時代ではなくなっていたのかもしれない。

そんな時代の変わり目に、昔ながらの「歌手」の理想像を求めて、最後まで果敢に闘い抜いたのが、本田美奈子だったのである。

1987年12月。通算5枚目、20歳を迎えてからの最初のオリジナル・アルバムとなった、「Midnight Swing」(収録曲1~7、およびdisc4に収録された「孤独なハリケーン」「今夜はビートにのれない」「悲しみSWING」)をリリースする。

これまで多くの代表作を生み出してきた、秋元康・筒美京平コンビから離れ、小林和子作詞・西木栄二作曲による作品が、アルバム全曲を占めている。曲の傾向としては、「孤独なハリケーン」「今夜はビートにのれない」を初めとする青春ロックと、「悲しみSWING」「夢見心地」「ABOUT~ADULT」などの、大人らしさを指向したポップスに2分されており、あたかも、「右に行くか、左に行くか」という2つの方向性を内包しているように見える。

この5thアルバムは、前作までのオリジナル・アルバムが、すべてオリコン4位以内を記録したのに対し、最高23位にとどまった。個々の曲は、なかなか良いのだが、アルバム全体のコンセプトが、今ひとつ見えにくかったせいかもしれない。

そして翌1988年、本田美奈子は、「右か左か」の二者択一から、ひとつの方向性を決めたかのように爆走を開始する。青春の炎を燃やし尽くす、過激なハードロック。「本田美奈子」から「MINAKO」に改名し、女性だけのロックバンド「MINAKO with WILD CATS」を結成するのである。

当時、この豹変ぶりには、ぶったまげた人が多かった。「ついに、本田美奈子も不良になってしまったか」という声も、多く聞かれたものである。が、歌に関しては、「ものすごい」の一語につきる。まさに、この時期にしかできないような、「灼熱のシャウト」の連続なのだ。

1988年8月、6枚目のオリジナル・アルバムとして発売された「WILD CATS」(収録曲の9~16、「School Girl Blues」と「あなたと、熱帯」<Album Version>のみDisc6に収録)。不良のふりをしながらも、本当は誠実に生きたい本心が垣間見えるところが、魅力的だ。個人的にも、かなり好んで聴いている。EMI時代のアルバムから2枚を選ぶとすれば、「キャンセル」と「WILD CATS」が双璧ではあるまいか。現代のJ-POP世代には、このアルバムあたりから、勧めてみたい気がする

例によって、Disc5マイ・ベスト5をあげてみよう。いずれも、アルバム「WILD CATS」の収録曲である。

⑨「We Are Wild Cats」。夜の舗道に座り、鋭い爪にマニキュアを塗る少女たち。すでに人生の苦楽を知り尽くしている彼女たちが信じるものは、「血と汗と涙」。灼熱のロックバンド「
MINAKO with WILD CATS」の代名詞ともなった傑作だ。

⑩「Let It Burn」。暗闇の中を照らすマッチの火から、消えかけていたローソクの火へと広がる、絶妙な「火」のモチーフ。どこまでも疾走するメロディーと、熱く燃え上がる炎のような、MINAKOの熱唱が素晴らしい。

⑪「VIRGINITY」。外見は派手に遊んでいるように見えても、本当は、どこにでもいる、地味な性格の女の子。有名になっても、決して豪邸を構えることなく、故郷・朝霞の実家に住み続けたMINAKO自身を思わせる、愛すべき名曲だ。

⑬「霧のヴェール」。旧約聖書「創世記」に登場するアダムとイブをモチーフに、恋人たちが迎えた「罪深い朝」を歌う。霧のヴェールに隠された大自然の情景が、神秘的な彩りを添える。

⑭「Full Metal Armor」。個人的なイメージとしては、新約聖書「黙示録」の世界。最終戦争の荒野に立つ戦士は、大天使ミカエルか、未来のジャンヌ・ダルクか。あるいは「Stand up and fight! Stand up !」と、終わりなきシャウトを繰り返す、MINAKO自身の姿だろうか。



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