随所随縁

所に随(したが)い、縁に随い、時に随い、想いに随い、書き留めていきたい。

アガサ・クリスティ「大空の死」について

2005-05-15 22:43:56 | 読書談義

NHKにて、毎週日曜日夜7:30から、アニメ「名探偵ポワロとマープル」を放送していましたが、本日で最終回とのこと。最初からこの時期までの放送予定だったのか、視聴率がいまひとつだったのかどうかは分かりませんが、ちょっと残念なところです。確かに30分のアニメ放送では、原作の短編小説ですら1回の放送で完結させるのは無理で、今回放送の「雲の中の死(原作は「大空の死」)」のように、原作が長編小説になると、「全4話」などとなり、1ヶ月も前に放送したストーリーなど覚えていなければなりません。

私は原作を読んでいるので、全体のストーリーはもちろん、どの部分をどのように「はしょって」いるのかもわかるのですが、はじめて見る人は、何がなんだかわからないまま終わってしまうのではないでしょうか。ホームページには、「アガサ・クリスティーの名作ミステリーから繰り出される数々の事件と謎。ポワロ、マープル、そしてメイベルと一緒に、ぜひ、謎ときに挑戦してみませんか!」などと言っていますが、まあ、謎解きは無理じゃないかと思います。しかし、NHKのことですから、考証などはきっちりとやっているに違いなく、アニメに出てくる街の風景や屋敷・家具などは、ちゃんと原作の時代のものに合わせているのではないかと思います。文字でしか見ていなかった原作の世界を、アニメという形ですが、映像で見直すのは、さらに原作のイメージをふくらませてくれます。

ということで、もう一度、アガサ・クリスティの「大空の死」を読んでみました。飛行機という密室の中での殺人事件ですので、殺人のトリックなどは、割りにわかりやすいものでしたが、どちらかというと、この小説は、殺人があった飛行機に乗り合わせた、いろいろな国籍・階級の人々の人間ドラマをよく描いています。エルキュール・ポワロも、指紋や足跡を追跡するような、科学的な捜査方法よりも、いろいろな関係者の話を聞いて、心理的な側面から真実を明らかにしていくスタイルの探偵ですから、当然かもしれません。ついでに、この事件の関係者に、いろいろと事件の解決とは関係のない世話も焼いて、3組もの結婚を(直接的または間接的に)お膳立てしています。地味ですが、いかにもクリスティらしい作品ではないかと思います。
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