今週のNEWSWEEK(日本版)の表紙は「インド(第二弾)~超大国の誇りと野望」でした。先週の第一弾では、インドの経済成長の部分にスポットを当てていましたが、今回は、政治・軍事の部分の特集でした。
インドは、ちょうど中東からの石油の輸送ルートに位置しているため、地理的にも重要な国になっています。隣国のパキスタンとは領土紛争や宗教紛争を抱えていますし、隣国のネパール、スリランカ、バングラディシュは内戦が続いており、それが飛び火しかねない状況です。国内でもヒンドゥー教とイスラム教の宗教戦争が続いており、そして極めつけとして、インドの大国化を牽制したい中国が、「敵の敵は味方」とばかりにパキスタンやミャンマーと協力してインド洋に進出しはじめています。
これだけの問題点を抱えながら、国内と、石油輸送ルートを何とか安定させているのは、大したものです。この安定を支えているのはやはり軍事力なのでしょう。インドの総兵力は132万人で、たぶんこの地域では軍事超大国でもあると思われます。日本もほとんど全ての近隣国と外交問題を抱えていますが、国際紛争(戦争)に発展する可能性という観点で見ると、インドの状況とはレベルが違います。このような状況を見ると、やはり大国=軍事大国=政治大国、という法則は今も昔も変わっていないようで、日本だけが軍事大国でも政治大国でもない大国という、「例外」になるのだろうか、と考えてしまいます。また、このような地理的・政治的な要衝にあたる国は軍事大国にならざるを得ないのかもしれません。
今週号は、この特集以外にも、興味深い記事がいくつかありました。日本でも貧富の差の拡大が言われ始めましたが、インドや中国などの一部の例外を除き、多くの国で、中流層の没落が始まっているようです。また、「富裕国」と「貧困国」との格差も広がりつつあり、「富裕国」の数が減り、「中間の国」が「貧困国」へ転落している、という内容です。「国内での富裕層と貧困層」と「国際間の富裕国と貧困国」がそれぞれ存在するわけですが、これは非常に複雑な問題になりそうです。この記事でも、「国内」と「国際間」をごっちゃにしていて、双方が連動しているのか、個別の問題なのかもわかりにくくなっています。「国際間」の方の「貧困」の原因はやはり「内戦」や「戦争」ですが、「国内」の方は、先に富裕になったエリート層が、他の層にチャンスを与えようとしなかったからだと論じています。エリート層を作ること、そしてエリート層が国全体の所得を上げることは容易ですが、貧困層を中流層に引き上げるのは、なかなか困難なようです。
これに関連して、フランスの暴動についての記事もありました。この暴動は、「キリスト教対イスラム教」の宗教対立が原因ではなく、やはり「失業問題」が真の要因のようです。フランスは手厚い労働者保護制度が有名ですが、この「保護されている人々」にとっては結構だと思いますが、この制度から外れてしまった人々は、どうにもならないようで、これがEUの平均値を上回る失業率、特に若い男性の失業率に結びついています。資本主義社会にも、いろいろなやり方がありますが、「アメリカ式」「フランス式」・・・そして「日本式」、どれが一番優れているのか、そもそも優れている方式があるのかないのか、まだまだ答えが見つからない感じがします。