土曜日・日曜日は、地域の収穫祭でした。私の勤める会社では、毎年この収穫祭に出店し、婦人服の展示即売を行っています。お祭りは9:00からですが、早めに会場に入って準備をしました。販売員はベテラン社員と私の2名。私はこちらの分野はまだ新人レベルのため、お客様に商品やお釣りを渡したり、鏡を持っていったりといった役割に徹することにしました。
ベテラン社員は、この道十数年ですし、ターゲットの顧客層と同世代の女性のため、セールストークはお手のもので、脇で眺めていても勉強になります。お客さんが来て、ちょっと商品を手に取ると、すかさず寄っていって「あら奥さんその柄お似合いですよ」「今お召しのパンツと良く合ってらっしゃるわ」「このジャケットとこう合わせると素敵でしょ」などという台詞が次々と出てきます。うーん、さすが。私は、客の立場としては「店員は話しかけませんので、ごゆっくりお選びください」という店の方が落ち着くタイプで、まして「あら素敵、お客さんスリムだからお似合い」などと言われると居心地が悪くなって退散するくらいですが、女性の方は、店員や友達とおしゃべりしながら買い物をするのが楽しいのかもしれません。
まあ、これくらいは販売員の基本かもしれませんが、どうも私はその能力すらなさそうです。特に似たような柄の商品を3つくらい選んで、体に合わせながら、「うーん、どれがいいかしら」と悩んでいるお客さんに対して、①お客様が、「どれがいい」と言って欲しいのか分からない。②3つのうちから、きちんとした理由をつけてどれかをお薦めすることができない。③ ①②ができたとしても、お客様に買ってもらうための「決め台詞(殺し文句)」が言えない。・・・といろいろありますが、結局「・・・・」となってしまいます。こういうことは、やはり場数を踏まないといけないのかもしれません。もう少し女性と一緒に買い物をして、「どれがいい?」と言われたら「どれも同じだよ」などと言わないよう、訓練しなければ・・・・
地域の収穫祭に来るお客様はお互いに隣近所、知り合いが多いということもありますが、当社のベテラン社員は、上記のケースの場合、①②③は全てクリアした上で、さらに周りのお客様を捕まえて、「ねね、奥さん、こちらの奥さん悩んでらっしゃるけど、この柄が素敵だと思いません?」などと周りを巻き込んでいました。そんなこんなで、あらゆる手管?を尽くして、お客様に買っていただくのですが、すごいのはその後。お金を受け取って商品とお釣りを渡し、「ありがとうございました。」と言った直後に「で奥さんこちらのセーターはどうです?」と、高級品の方に連れて行き、また、今までの手管を繰り返していました。うーむ、お金を受け取る前に「アップルパイはいかがですか?」はどこのマニュアルにも載っていますが、お釣りを渡した直後に別の商品を薦めるのは素晴らしい。もしかしたら、2000円程度の買い物に、一万円札を出すようなお客様は、少なくとも1万円くらいは買うつもりがあるのかもしれません。
そして思惑通り数千円の商品を買っていただき、今度こそ出口へお見送りしたさい、お客様が出口の脇にあるマネキンにちょっと視線を向けたら、すかさず「奥さんこちらのシャツはここに置いてあるの、見ていって」などと引き戻して、さらにお買いあげ。ここまで来ると開いた口がふさがらないというか、何と言うか・・・。
だまっていれば、ちらちら見て、あっさり帰ってしまうかもしれないお客様を、3度まで財布を開かせる、というのは並大抵のことではないと思います。結果として、昨年の収穫祭よりも大幅に売り上げを伸ばすことができました。そして、私としてもいい勉強になりました。