ビジネスの世界においては、常に「新しい発想」が求められています。しかし、言うは易いけれど、行うのは大変です。私は、前の会社でも、今の会社でも、「新規業務の開拓」問題に悩まされてきました。つまり、「今までと同じことをやっていてはジリ貧になる」→「これまでとは違う新しい仕事を見つけよ」→「その新しい仕事で実績をあげるための事業計画を作れ」などと言われ続けてきたのですが、「今までと同じことをする」だけで四苦八苦しており、「新しい仕事」などと言われても、頭は真っ白、ましてや「新しい仕事でどのくらい売り上げるのか」にいたってはお手上げ、という状態が続いています。
なぜ「新しい仕事」というところで、頭が真っ白になってしまうのか、それは、結局は「今までの常識」を鵜呑みにしてしまい、そこで思考が停止してしまうためであろうと思います。たとえ新しい発想が出たとしても、その発想にけちをつけるのは簡単であるため、無限ループに陥ってしまうためだろうと思われます。どちらにせよ、思考を前進させ、無限ループから抜け出すためには、「今までの常識」を検証し、アイディアを沢山出す(水平展開)か、多段に出す(垂直展開)か、しなくてはなりません。これはまさに「頭の体操」であり、スポーツ選手が筋肉の柔軟性を保つことに努力するように、思考の柔軟性を保ち続ける必要があるとおもわれます。
「日下公人(くさか きみんど)」さんの著作は、私にとって、頭の体操には欠かせないもののひとつです。今日は「大人の国のための戦争学」という本を読みました。キーワードは「戦争設計」ということなのですが、この言葉だけで、「戦争を引き起こそうとするたくらみ」という発想になってしまえば、思考はそこで停止してしまいます。本書では、「国益に基づく戦争設計をお互いの国でやり合うことで(つまり自国のエゴばかり考えてどのように相手国と戦争しようかと必死に考えていると)、かえって戦争が減って平和になる」というパラドックスを展開しているのですが、その中で、「国家とは何か」「戦争とは何か」といったところを論じ、私がなんとなくイメージしていた「常識」を覆させられる楽しみを味わうことができました。「戦争」という過激なテーマを扱いつつも、文章は平易で、読みやすく、著者の堅実な知識と柔軟な発想を随所に感じました。
では、「具体的な戦争設計」については、どうなんだ、ということについては本書には記述されていませんが、その辺は読者がそれぞれ考えなくてはならないのでしょう。さまざまな受け取り方があると思いますが、受け取っているだけではやはり思考が前進しないのですから。本書は2時間ほどで一気に読んでしまいましたが、その後、思考がまとまらずに煩悶すること3時間。もう寝る時間だー、また明日から会社で「新規業務」を考えなくては・・・・・