『蛋白質・核酸・酵素』(PNE)のリレーエッセイの締め切りがまた迫ってきました。何をかこうかな~と思案中ですが、何かいいサジェションがありましたら、教えてください。3-4ヶ月に一度この原稿締め切りが回ってくるのですが、テーマが決まるまでに時間がかかり、書くことが見つかれば数日で第一稿は書き上げます。そして、その後の推敲にじっくり1-2週間かけるのが私のやり方です。このブログのおかげで日本語での作文のリハビリにはずいぶん助かっていますが、まだまだ変な日本語を使うケースが多いと思われます。英語のような日本語になっていたり、勘違いの用語の使い回しがでてきます。日本語は難しいなあとつくづく思います。PNEにこんなことを書いてみたら、というようなことがあれば教えてください。
昨日まで二日間、National University of Singapore(NUS)を訪問しセミナーをしてきました。シンガポールは、英語を公用語にしながら中国系の人々が大半を占めているという点で、香港と似たところがあります。したがって、大学の学生も中国系がほとんどです。NUSを訪問した第一印象は、整備が行き届いていて、キャンパスもきれいであるということです。私のお世話になったDepartment of Biological Sciencesは、8年前に組織再編でできた学部で、そのHeadは以前トロント大にいたL教授です。このHeadは、予算や人材獲得に関して大きな力を持っています。L教授は、8年前にはまったく存在しなかった構造生物学やゲノム、プロテオミックス科学者をリクルートして、今では大変活発な研究グループを築き上げました。ほとんどの新人ファカルティは北米でポスドクを経験した中国系の科学者です。これも数日前に紹介した香港のケースと似ていますね。かれの功績によって、シンガポールの大学生は最先端の生物学の一端に接することができるようになったのは事実で、ここで育った学生がこの国の財産になっていくのだろうと強く感じました。正直なところ、私の今回会った何人かの大学院生の英語能力や科学的論理性、説明力は北米のトップクラスの大学生のそれには及びませんが、勤勉でやる気のある彼らの姿を見ていると、必ずいつか世界の一流の大学と肩を並べるであろうと思いました。彼らは学部、大学院を通してすべて英語で授業を受け、英語で研究発表等をしていますので、日本の平均的な大学生より英会話能力はかなり上です。この大学の10年後、20年後が楽しみです。
Hong Kong University of Science and Technology (HKUST)に昨日行き、セミナーをしてきました。この大学は、十数年前に新しく設立された大学で、香港のダウンタウンからは少し離れた海外沿いの素晴らしい環境の中にあります。教職員、学生には、大学キャンパス内にある快適な宿舎が用意されています。そして、まず驚くのは、教授陣はほとんどすべて、欧米で研究経験のある若くて有能な中国人の研究者で、英語がきわめて堪能です。授業、セミナー等はすべて英語でやっています。学生は、ほとんどが中国のトップクラスの学校からやってくるようですが、かれらも英語教育によく適応している様子がよくわかります。たまたま行われていた細胞分化のシンポジウムには、著名な研究者が招かれていて、HKUSTの研究者と英語で活発な議論をする様子を目撃しました。明らかに新しい世代の有能な科学者を生みだす土壌と環境がここには存在し、香港、中国が将来に向けて力をつけている現場を目撃した、というのが率直な感想です。日本の大学も、新しい発想で国際的に通用する教育・研究環境を整えていかねばなりませんが、ここに一つのやり方を見たような気がします。
今日から、香港とシンガポールに出張です。私の研究室に十数年前にポスドクでいたZ博士が、今は立派に香港科学技術大学で教授をしています。そこで、セミナーをしてきます。それから、シンガポールに飛び、同国立大学でセミナーやら某プロジェクトに関する議論などがあります。時間が取れれば、街を歩いてみたいとおもっています。ブログで紹介できるような、何か面白いことに出会えるといいのですが。では、行ってきます。
やはり引越しというのは大変ですね。すべての試薬関係の移動は特殊物品専門の引越し屋によって行われたのですが、これが大変スローで、今日になってすべてのものがようやく到着しました。他にも、コンセントの一部が使用不能であったり、超遠心機はバランス調整が必要ですぐには使えないとか、様々な小さな問題が次々に出てきます。幸い、うちの研究所には有能なファシリティー・マネージャーがいますので、これらの問題を次々に解決してくれます。最後になりましたが、写真はうちのラボが引越しをしたビルディング(中央の新しい建物)です。
本日、ラボの引越しを完了しました。引越しといっても、隣の敷地に新たに立ったビルディングに移動しただけの話しで、距離的には歩いて3分のところです。所属は変わりません。しかし、ラボを移動するとなると、様々な機器などラボにあるすべてのものをパックして移すわけですから、大変な労力を要します。幸いNMRは動かす必要はありませんでしたし、ラボの皆が一丸となって働いてくれたので、本当に助かりました。十数年の歳月の間に貯まった所持品はすごい量でした。まず、何を処分して何を持っていくべきかを判断しなければなりませんが、すべてのものにいちいち私が目を通すわけに行きませんので、かなりの不要物も移動しました。それにもかかわらず、移動にかかった時間は実質4-5時間だったでしょうか?時間がかかるのは、パッキングと整理、そして物品の移動が終わって今日から始まったアンパッキングとこれまた整理、です。私の書類関係は大変な量で驚きました。移動してから、仕方がないので廃棄しようと覚悟を決めたものがかなりでてきました。まだまだ整理に数日かかりそうです。素晴らしい器を用意してもらったので、それにふさわしい研究成果をあげていきたいと思っています。
日本はまだ正月三が日でお休みの方が多いでしょうね。なかには、1月10日までお休みという方のいらっしゃるのではないでしょうか?学校も10日から3学期が始まるところが多いと聞いています。こちらは、明日から平常通りです。私のラボはこの金曜日に新しく建ったタワーに引っ越しますので、今週は準備で大変忙しくなりそうです。ラボの引越しについては、追って書きます。
今日はラボの大掃除です。古いものを処分することが第一の目的。今回はどんなものが出てきますか。私のラボは、手狭になった現スペースから、キャンパスの別の場所に新しく建ったToronto Medical Discovery Towerに来年早々移転しますので、現研究室の最後の大掃除ということになります。所属は変わりません。新年を新しい建物で気持ちよく迎えるためにも、10年以上お世話になった現研究室を綺麗にして、次の占有者に渡したいと思っています。では皆さんメリークリスマス!
追伸:私のエッセイ「サイエンスinカナダ」が掲載されている蛋白質核酸酵素1月号が22日に出版されました。興味のある方は、同誌をご覧ください。
追伸:私のエッセイ「サイエンスinカナダ」が掲載されている蛋白質核酸酵素1月号が22日に出版されました。興味のある方は、同誌をご覧ください。
これは、言うまでもなく、北海道大学の前身である札幌農学校で教鞭を取ったクラーク博士の有名な言葉ですね。北大キャンパスにあるクラーク像には、この文字が刻まれています。今回の学会で、北大教授のI博士が、スライドのバックグランドに、この「Boys Be Ambitious」のクラーク像を使われていました。私の母校でもありますので、こういう国際学会でI教授がクラーク像の写真を見せられたことは大変うれしく思いました。
実は今日の話しはここで終わりません。この「Boys Be Ambitious」の真の意味を、会場にいた何人の外国人が理解したでしょうか?私の後ろに座っていた米国の女性研究者二人は、その文字を見るやいなや、くすくす笑いをはじめて何やら内緒話しを楽しそうにしていました。おそらく、その他のほとんどの外国人は、真の意味とは違った発想をしたに違いありません。とは言っても、日本の方々には、クラーク博士が意図したところの「青年よ、大志をいだけ!」という日本語での意味があまりにも浸透しているので、今の米国人がこの言葉を聞いて発想する意味合いはなかなかつかみにくいのではないでしょうか?
実は彼らには、この言葉は、「男性諸君、もっとガンバリなさい!」というようなニュアンスに聞こえるのです。Ambitious、すなわち、野心的に、もっと女性にはげめよ!、みたいに聞こえてしまうのです。また、ある人には、もっとお金儲けにはげみなさい!とも聞こえることでしょう。それが、現代の世相というか文化ということでしょうか?ですから、厳粛たる学会の場で、この言葉を聞くと、何ともいえず場違い的で、くすくす笑いになってしまうわけです。もちろん、この言葉の生まれた状況や真の意味を説明してやれば、彼らにも「なるほど」ということにはなります。
このことは、時代とともに、使われる言葉の意味合いも進化していくことを、物語っています。これは英語に限らず、ほとんどすべての言語に共通することだと思います。クラーク博士が、明治の初め北海道を去るときに日本の学生諸君に残したこの言葉は、その時、その場では、感動を呼ぶことばであったことは疑う余地がありませんが、百数十年後に、誘惑の多いハワイの地で聞く「Boys Be Ambitious!」は、違った意味に取られてしまうわけです。言語、文化、そして歴史、すべてはダイナミックに変わっていくということですね。
本日無事トロントに帰宅。明日からラボです。
実は今日の話しはここで終わりません。この「Boys Be Ambitious」の真の意味を、会場にいた何人の外国人が理解したでしょうか?私の後ろに座っていた米国の女性研究者二人は、その文字を見るやいなや、くすくす笑いをはじめて何やら内緒話しを楽しそうにしていました。おそらく、その他のほとんどの外国人は、真の意味とは違った発想をしたに違いありません。とは言っても、日本の方々には、クラーク博士が意図したところの「青年よ、大志をいだけ!」という日本語での意味があまりにも浸透しているので、今の米国人がこの言葉を聞いて発想する意味合いはなかなかつかみにくいのではないでしょうか?
実は彼らには、この言葉は、「男性諸君、もっとガンバリなさい!」というようなニュアンスに聞こえるのです。Ambitious、すなわち、野心的に、もっと女性にはげめよ!、みたいに聞こえてしまうのです。また、ある人には、もっとお金儲けにはげみなさい!とも聞こえることでしょう。それが、現代の世相というか文化ということでしょうか?ですから、厳粛たる学会の場で、この言葉を聞くと、何ともいえず場違い的で、くすくす笑いになってしまうわけです。もちろん、この言葉の生まれた状況や真の意味を説明してやれば、彼らにも「なるほど」ということにはなります。
このことは、時代とともに、使われる言葉の意味合いも進化していくことを、物語っています。これは英語に限らず、ほとんどすべての言語に共通することだと思います。クラーク博士が、明治の初め北海道を去るときに日本の学生諸君に残したこの言葉は、その時、その場では、感動を呼ぶことばであったことは疑う余地がありませんが、百数十年後に、誘惑の多いハワイの地で聞く「Boys Be Ambitious!」は、違った意味に取られてしまうわけです。言語、文化、そして歴史、すべてはダイナミックに変わっていくということですね。
本日無事トロントに帰宅。明日からラボです。
今日も一日シンポジウムがあり、朝の8時半から午後8時半までびっしり講演を聞きました。外は素晴らしい天気で、ビーチはバケーションを楽しむ人たちで溢れかえっていますが、会議室には50人を超える聴衆が熱心に講演を聴いています。質問の時間も活発な議論がかわされて、外に存在する誘惑も何のその、皆サイエンスに没頭しています。本当に素晴らしいことです。参加している一人一人に感謝の言葉を送りたい気持ちです。明日もう一日会議は続きます。明日も楽しみです。
今日から環太平洋国際化学会議がホノルルで始まります。5年ごとに行われるこの会議は、数百のシンポジウムから構成されていて、私の出席するシンポジウムは溶液のNMRに関するものです。見慣れた顔にすでに合い、昨夜は7人の友人たちと一緒に食事をしました。こういう会議以外での交流や会話から、信頼や友情がうまれ、国境を越えたネットワークができていきます。数ヶ月ぶりで会う友人や、数年ぶりで会う友人もいますが、皆昨日会ったように、すぐ打ち解けてわきあいいなります。様々な国の友人を持てることや、ハワイのような素晴らしい所に会議とはいえ来られることが、科学者の大きな特権であり、大きな喜びでもあります。さあ、今日からは暫く会議です。誘惑が多い地ですから閑散としたシンポジウムも多いとは聞きますが、我々のシンポジウムは毎回ぎっしり人が詰まっています。今年もそうであることを、オーガナイザーの一人として願っています。
月曜の朝、日本から大変悲しい知らせが入ってきました。細胞接着や細胞骨格構造の電顕解析および細胞分子生物学分野できわめて著名な京都大学教授月田承一郎先生が膵臓ガンのため12月11日にお亡くなりになりました。享年52歳でした。月田先生はオクルーディン、クローディンの研究で世界を大きくリードされていました。また、同先生は奥様でもある月田早智子先生との「おしどり研究」を見事に展開されていたことでも、よく知られていました。ご専門の分野における卓越した洞察力、研究推進力、そして発表力、どれをとっても、素晴らしし才能の持ち主でした。2年半前、トロントにお越しいただいてセミナーをしていただいたときには、ご家族皆さんと我が家に来ていただき楽しいひと時をご一緒させていただきました。奥様と息子さんとの和やかな雰囲気、目を細めてにっこりとされている月田先生の笑顔が今でも忘れられません。まだまだご活躍していただきたかった日本を代表する科学者でした。ほんとうに残念でなりません。心半ばにして、この世を去られたご本人の無念さも、いかばかりだったことでしょうか。。。人の命のはかなさをあらためて思わざるをえません。謹んで月田先生のご冥福をお祈り申し上げます。
ここ10年ほどのあいだに、論文の投稿がほとんどすべての科学雑誌でオンラインになってきました。ひと昔前は、いかにきれいな写真をとって図にするかとか、プリントアウトする紙の質なども気になっていましたが、そういうことはなくなりました。郵送料の節約にもなりますし、環境問題にも貢献しています。ただ、各雑誌ごとにIDとパスワードを覚えておかないといけないのですが、あまりに多すぎで手に負えません。それから、雑誌によっては、すべての通信が与えられたウエブのページ内で行われるので、うっかりしていると重要な通信を見逃してしまう恐れもあります。出版社側の効率化とうらはらに、ユーザー側に負担が増えてきたということですね。皆さん、気をつけてください。
ところで、数ヶ月前に書いたカルモデュリン関係の総説がP誌に掲載されることが決定しました。やはり論文受理の報告というものは嬉しいものです。マイナー・リビジョンでOKでした。
ところで、数ヶ月前に書いたカルモデュリン関係の総説がP誌に掲載されることが決定しました。やはり論文受理の報告というものは嬉しいものです。マイナー・リビジョンでOKでした。
最近暇を見つけて考えていることは、文明と文化のこと、それに自然との関係です。文明とは何でしょう?それは、人類が生み出した生活の知恵の結集であり、それを科学とみなすことも可能です。そして文明は、その目的において根本的共通項を持ってはいるものの、エジプト文明と中国文明が違うように、人の集団と自然環境によって発現形態が様々です。文明は、普遍的で合理的なものです。文化はなんでしょう?それは自然環境の中ではぐくまれた人々の生活習慣、きまりなどから生まれてきたもので、それぞれの集団において特有のものであって、ある意味で不合理性を有します。これらは、すべてこの地球上で生まれたものであり、この惑星の表面に存在する土壌と海によって長い年月を経て培われ、偶然性と必然性の中から作られてきたものなのでしょう。文明、文化、そして自然をひとまとめにして考えると、壮大できわめて興味深い思索にふけることができます。到底私の頭の中では解決の付かない問題ですが、夢があるではありませんか。そう考えると、人類の歴史、地球というエコシステム、そして様々な科学の領域がどれも結びついているように思えてくるのです。
しばらくブログ更新ができず、申し訳ありませんでした。昨日は、某公立大学薬学部を訪問し、セミナーをしてきました。セミナーの後、K教授のもとで研究を行っている学生さんらと楽しい団欒の機会を持ちました。そこで感じたことは、女性の学生さんがとても元気がよいことです。セミナーのときもたくさん質問をくれましたし、食事のときも様々な意見や質問を積極的に発言する女学生の皆さんがとても印象的でした。その中にまじって座っている男性の学生さんは、おとなしく聞いていました。日本におけるウーマンパワーでしょうか?今日行われたシンポジウムの懇親会で日本の先生方に、女学生の元気さと男学生のおとなしさが好対照だということを指摘すると、それはどうも一般的な風潮であるという意見を伺いました。日本の若い世代の男性の諸君、もっと自己主張をして発言してください。日本の若い世代の女性の方々、益々元気よくご活躍ください。日本の将来は、あなた方若い世代にかかっているのですから。
明日、成田発の飛行機でトロントにもどります。
明日、成田発の飛行機でトロントにもどります。