四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成15年9月18日(土佐から伊豫・第22日目)

2005-08-02 09:50:34 | 第3回(土佐から伊予)
9月18日(木曜日)
(第6日・通算第22日目・歩行距離35.8km・歩行歩数52,878歩)

 5:00、台所で朝食の準備をする音に起こされて起床。
洗濯物を取り込むために2階へ行くと、工事関係で泊まっている人達が寝ている。
音を立てないように洗濯物干場へ行き、洗濯物を取り込むと、まだ生乾きだ。
仕方がないのでこのまま持っていくことにする。

 6:00分、朝食を取り、準備万端整ったところで、出発する。
玄関先で女将さんとツーショットの写真を息子さんに撮ってもらう。
Wさんはまだ用意が出来ていないので、声を掛け、先に行くことにした。
外はまだ薄暗いが、天気はいいようだ。

 人気のない旧道から国道へ出ると、なるほど、道路標識には宇和島41キロと
書かれている。
でも、今日は柏峠という旧道を通るので、この分がショートカットされて
いるのではないか自分に言い聞かせ、黙々と歩く。

 八百坂峠を越え、菊川を過ぎると左手に宇和海が広がる。
朝日に映えてキラキラと輝いている。
エメラルドグリーンのきれいな海だ。
この海を見ながら歩いていくと、道が下り坂になり柏の集落に着く。

 柏では、自動販売機から飲み物を補給して国道を右折し峠道へと向かう。
この辺りで急に便意をもよおしたので、丁度、道の脇にあった保健センターの
トイレを借りる。

 これで、万全の体制となったので、柏峠へと向かうが、
目の前には結構な高さの山が迫っており、この上まで登るのか?と、
ちょっと不安になる。

 8:10分、どんどん狭くなる農道の先に柏峠の入口が見える。
九十九折りに続く急な山道をドンドン登っていく。
どうやらいけない予感は当たったようだ。

 流水大師では、小さなお堂の中に弘法大師の像が祀られている。
その左横には、チョロチョロと流れている湧き水がある。
でも、あまりのチョロチョロ加減なので、飲むのがはばかられた。

 清水大師を過ぎると、道が尾根道となり少し下り坂となり楽になる。
見通しの利く場所に来たので、左手を見ると宇和海が朝日にキラキラと
輝いている。
一番向こうに見えるのは佐多岬のようだ。

 平坦になった尾根道をいくと、「ねぜり松」と書かれた看板のところへ来る。
ここでちょっと一休み。
「ねぜり松」というのは、根本がねじれた大きな松の切り株があるだけだ。
 その昔、病気で足が不自由な人を乗せた箱車を50人ほどの人達で
この峠道を引っ張り上げていたところ、この松のところに差し掛かったとき、
にわかに吹いてきた一陣の風に蛇のように曲がった松に箱車が押し潰されそうに
なり、思わず箱車か ら逃げ出そうとして歩けるようになったいう話しに
由来する松の木だ。
 この松は昭和30年頃に伐採されたと看板に書かれている。

 松の切り株の前には、2体のお地蔵さんが守っている。

 ここから先は、山の中を快適に下っていく。
お日様が樹木に遮られて暑さもそれほど感じない。

 山道が終わり、山間に造られた小さな水田の中の農道を下っていく。
直射日光が容赦なく照りつけてくる。暑い!、暑い!。

 左手に国道らしい道路が見えてくる。

 10:40分、お腹がすいたので山口商店で休憩する。
飲み物と小豆アイスを買って、店先においてあるベンチで休む。
熱い体に小豆アイスが溶け込んでいく。
素足になると足が風に当たり気持ちがいい。
しばらくボーとしていた。

 いつまで休んでいてもキリがないので、腰を上げる。
ここからは、国道56号沿いに吉原川に沿って津島町を目指す。
ところどころ旧道を歩き、途中から国道脇にある自転車道路となっている
道を歩く。
この炎天下では犬も歩いていない。

 前方に大きな橋が見えてくる。
どうやら津島大橋のようだ。
交通量もずいぶん増えている。
津島町の市街を歩いていると、丁度、休憩しようと思ってたところに
酒屋さんを見つける。
横にある病院にはベンチが置いてある。

 12:05分、はちた商店横の病院のベンチで一休みする。
向こう岸には、Wさんが今晩泊まる三好旅館があるようだ。
でも、まだ昼なので、これで今日の歩きを終えるには早い時間だ。
やはり頑張って宇和島まで行かなければならない。
はちや商店でも、アイスと飲み物を買う。
この暑さに対抗するためには、もう、アイスなしではいられない。

 丁度、お昼なので今晩の宿を決めなければいけない。
千代乃屋さんへ電話する。
OKの返事をもらい、これで今晩の宿も決まった。
あとは、宇和島を目指して歩くだけだ。

 津島町内を暑さのため、幾分バテ気味で歩く。
市街を抜けると道が少しずつ登っている。
この先には、排気ガスが充満している歩道もないと恐れられている
松尾トンネルがある。
松尾トンネルは旧道があり、旧道は距離は長くなるが交通量が少ないので
気持ちよく歩けるらしい。
しかし、バテバテの体には、排ガスのトンネルの方が太陽さんから
逃れられるし、旧道よりも距離が近いということで、
今回は迷わず松尾トンネルを歩くことにした。

 12:55分、松尾トンネルの入り口が見えてくる。
松尾トンネルは全長1,710メートル、歩きだと約20分はかかるだろう。
このトンネルの中に宇和島市との町境がある。
トンネルの左手に少し高くなっている歩道らしい場所がある。
幅は50センチほどか?
この歩道を歩くが、トンネルの中は大型車が作り出す轟音が地響きとともに
鳴り響く。
排ガスは思ったほどでもない。
それよりも、日陰に入れたことの方が気持ちの方に大きく響く。

 大型車が通り抜けると轟音とともに強い風が吹き、
菅笠を吹き飛ばされそうになる。
これに負けじと笠を両手で押さえながら歩くのが一番大変だ。
そうこうしているうちに、前方から強い風が吹き付けてくる。
騒音もひどくなる。
天井を見ると大きな送風機が2機うなりをあげて風を送り込んでいる。
トンネル内を換気するための送風機のようだが、そばに行くと強い風が
まともに吹き付けて来る。
まるで、風洞実験装置の中のようだ。
 この風に菅笠を吹き飛ばされないように歩く。
送風機はこのトンネルの中に5カ所ほど設置されており、
その度に菅笠を押さえながら歩く。

 やっと、向こうの方に出口が見えてくる。
暗い中に円形の光がだんだん大きくなってくる。

 13:15分、やっと松尾トンネルを抜ける。ホッとする。

 道は下り坂になっている。どんどん下る。
疲れたので休もうと思っていると、車道の反対側に島原さんという
蒲鉾の店が見える。
道路を渡ろうとするが交通量が多くなかなか渡れない。

 13:25分、やっと道路を横断して、店先の自販機で飲み物を買い、
お店の中へはいる。
お客さんが一人もいない店なので、店員さんに「ちょっと休ませて下さい。」と
いってから、テーブルに座らせてもらう。
店内は冷房が良く効いており、涼しくて気持ちがいい。

 一息ついてから、店の中にあるショーウインドウを見せてもらうと
いろいろな蒲鉾が並んでいる。
その中に、昨晩、磯屋さんの夕食で食べたジャコ天もある。
値段を見ると結構な値段だし、蒲鉾の原料は北海道のスケソだろうと思い、
買わずにお店を失礼した。「島原」さんご免なさい。

 松尾峠をどんどん下っていくと、道の両側に少しずつ建物が増えてくる。
確実に宇和島市内に近づいていると思い頑張っていると、ホームセンターの
入り口で1台の車が右折して目の前に止まる。
中年の女性が降りて来て、「MIKOさんですか?」という。
ちょっとビックリして「はい。」と答えると「千代乃屋です。」という。

「買い物のついでに、宿までの地図を渡そうと思って来た。」といわれる。
こんな事は初めてだったので、驚いているとA4判の紙に地図が
コピーされており、宿までの道が示されている。
「あと1時間ほどですよ。」といわれ、さらに「荷物を預かりましょう。」と
いわれる。
これは、昨日泊まった磯屋さんがWさんに対して行っていたサービスと同じだ。
Wさんはすごく喜んでいたが、いざ自分に同じ事が起こったにもかかわらず、
背中のザックを渡すことに、ちょっと躊躇してしまった。
いくら疲れているといっても、あと1時間ぐらいなら荷物を背負っても
問題なく宿まで行けるだろう。
空身で歩くことに違和感を覚えた。
でも、せっかくここまで迎えに来てくれているのだから、
お接待として、素直に甘えることにした。

 妙に軽くなった背中に違和感を覚えながら、千代乃屋さんを目指して歩く。
しかし、25分ほど歩いたところに喫茶店の看板を見つけると誘惑に
負けてしまった。
冷房の効いた喫茶店で一休みする。
氷水が食べたかったが置いていないと言われたので、
しかたがなくアイスクリームを頼む。
その前にコップの水をがぶ飲みする。

 アイスクリームを食べながら、久しぶりに週刊紙に目を通す。
落ち着いて活字を見るのはしばらく振りだ。
この喫茶店には30分ほどもいただろうか?
一息ついて少しは精気が戻ってきたので、千代乃屋さんを目指す。

 15:30分、いただいた地図を頼りに、迷うことなく千代乃屋さんへ着く。
玄関で声を掛けると、私のザックは上がり框に置いてあった。
これを受け取り2階の部屋へ案内される。
案内された部屋は6畳の和室だがクーラーがあり、風呂は部屋のすぐ前だ。
洗濯機は外にあるので自由に使って下さいといわれる。

 早速、風呂に入る。洗い場が広く湯船も大きいので気持ちがいい。
体を洗って湯船に入ろうとすると、ふくらはぎが痛い。
よく見ると、ふくらはぎが日焼けで真っ赤になっている。
ここ数日は、短パンで歩いていたのでふくらはぎが日焼けしている。
痛くてお湯につけることが出来ない。
しかたがないので、湯船から足を出して入る。
まるでシンクロみたいに、足を水面から出して風呂に入る。
まっこと、落ち着かない。
でも、ベタベタまとわりついていた汗を流し、頭を洗うとスッキリする。

 風呂から上がると、1階にある駐車場へ行き、早速洗濯を始める。
一通りの作業を終えたので、部屋に戻り、クーラーをガンガン利かせて
布団の上でウトウトする。
気持ちが良い。冷たい空気が体の熱気を静めてくれる。

 夕食まで時間があるので自転車を借りて郵便局へ行く。
お金を降ろしておかないといけない。
郵便局はすぐ近くのようだ。
道順を聞いて自転車を走らせる。
すると、ほんの数分で郵便局に着く。

 お金も降ろしたので、宇和島の街をブラブラする。
アーケードのある商店街へ来たが、ほとんどのお店がシャッターを閉じている。
しかたがないので宿へもどろうとすると、小さな喫茶店に氷水の旗を見つける。
足摺岬で食べ損なった氷水が、やっと、ここで食べられると思い、店に入る。
メロン味の氷水を頼む。緑色の氷をシャカシャカかき混ぜ、口へ運ぶ、
満足!満足!

 宿へ戻り、夕食まで、またウトウトする。

 夕食ですと言われて1階の食堂へ行くと、建設関係の作業着姿の人達が
沢山いる。
私が食事をしていると、食べ終わった人の席を片づけて、またお膳を出している。
30人ほどの人が泊まっているようだ。
その中でお遍路は私一人のようだ。

 千代乃屋さんは、お遍路には宿代を千円サービスしてくれている。
いわゆるお接待だ。
おまけに、途中まで迎えに来てもらい、ザックを宿まで運んでいただいた。
感謝!感謝!です。

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   この日は本当に暑かった!
  途中で、暑さのためにヘロヘロになっていました。
  でも、何とか歩き通せたのはやはり四国の人たちの暖かさだと思います。
  千代乃屋さんの出迎えには感謝します。
  体の疲れはピークに達していたのだと思います。
  でも、温かい気持ちに接すると不思議と疲れが消えていきます。
  しばらくぶりに商店街をプラプラしただけでも、
  随分、気持ちがリフレッシュされました。
  長い距離を歩くことにも、体の方が適応してきたようです。
  

  

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