四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成15年9月21日(土佐から伊豫・第25日目)

2005-08-05 09:23:37 | 第3回(土佐から伊予)
9月21日(日曜日)
(第9日・通算第25日目・歩行距離38.0km・歩行歩数56,466歩)

 5:00分、起床する。
外を見ると、まだ薄暗いがどうやら天気は良さそうだ。
 おにぎりを一つ食べて裏口から宿を出る。

 5:50分、今日は久万町までの長丁場だ。気を引き締めて歩く。

運動公園をドンドン下がると市街地に出る。
せっかく内子まで来ているのだから、「内子座」だけは見てみたかった。
捜しながら歩いていると、「内子座」は、すぐに見つかった。
建物の外観だけ見て、写真を撮る。

 国道へ出て左手に進む。
ほどなく、交差点があり、右手に大宝寺の標識がある。
右手に曲がり、台風の余波の強い風に吹かれながら歩く。
強い風に吹かれていると寒気がするので雨具の上着を着る。
道路は、狭い谷間の中をうねうねと登っている。

 6:50分、中土橋と書かれたバスの停留所で一休みする。
停留所の中まで冷たい風が吹いてくるので、窓を閉めて休む。

 前方にトンネルが見えてくる。長岡山トンネルだ。
トンネルを抜けた先に、倉庫のような建物があり、「お遍路無料宿」と
書かれた大きな看板が掛けられている。
中を見てみると、畳が数枚立てかけられており、右奥には一段高くなった
ところに畳が一枚ひいてある。
壁にはお世話になった人の納め札がたくさん貼り付けられている。
左手には、いろんな農機具が置かれている。
コンクリートの土間なので、床に畳をひいただけで寝るのは
ちょっと大変かと思う。
でも、この辺りは、宿もないので野宿の人達には貴重な宿だと思う。

 このお遍路宿のすぐ先の道路の反対側に建設会社がある。
庭を見ると、2メートルはあろうかという大きな石碑が建てられており
目を引くので、よく見ると「念ずれば花開く」と俳句が彫り込まれている。
この俳句は、確か前神寺の山門を入ったところの石碑にも刻まれていた
ことを思い出す。
自分の庭に、これほど大きな石碑を建てるのは、
よくよくこの句が気に入ったからなのだろうか?
 私も、この句は好きだ。
「一途に思えば、きっと道は開ける。」と解釈している。
 
 谷間にウネウネと続く道をドンドン歩いていく。

 8:00分、掛木の集落で一休みする。

 1時間ほど歩いたところで路木という集落に来る。
この集落に来たときに、両側にあるお店の配置を見てハッとした。
確か、以前、バイクで来たときにここにあるお店で買い物をしたはずだ。
でも、右側にあるお店は建て直したのか立派なものとなっている。
このお店のすぐ先に、大師堂がある。
どうやらこれが「千人宿記念大師堂」のようだ。

 この集落のはずれで、家の前に袋詰めした柿を売っているお婆さんがいる。
挨拶して通り過ぎようとすると、柿をお接待すると行ってくれる。
柿を2個もらい、今、食べるならと言って皮をむいてくれる。
お礼を言っていただくが、甘みが薄い。
話を聞くと、これは渋柿で、炭酸ガスで渋抜きをしている、
冬柿でないので甘みが薄いのだと教えてくれる。
納め札を渡し、お礼を言って別れる。

 9:50分、内子町から小田町に入り、梅津橋を渡るとすぐに突合の三叉路だ。
以前は、ここに「さかえや旅館」という宿が1軒あったのだが、
今は廃業している。
でも、建物は残っており、壁にヘンロ標識が張られている。
この分岐点からは、左手を進み、ひわた峠を越えて久万町の大宝寺までは
20キロ余りだ。
これから峠道を越えなければならない。気を引き締めて歩く。

 10:30分、ちょっと早いけれど谷の宮口で昼食を取る。
天気はいいのだけれども、風が強く肌寒い。
日当たりの良い場所でおにぎりを食べる。
 
 11:00分、落合大師堂が右手に見えてくる。
小高い山の中腹にお堂が見えている。

 11:55分、臼杵で休憩する。
久万町の宿に電話しようとするが、山間部のため携帯が圏外となっている。

 休憩後しばらく歩くと、右手に立派な神社が見えてくる。
三嶋神社だ。大きくて立派な鳥居がある。
この臼杵にはほんの数軒しか家がないけれど昔はもっと大きな集落
だったのだろう。
今の集落には不釣り合いなほど大きな神社だ。
でも、このように小さな集落に不釣り合いなほど大きな神社には
あちらこちらでお目にかかっていたはずだ。
これが過疎が進んだ四国の現状なのだろうか。

 12:50分、車道の突き当たりにくる。ここからは山道となる。
山道で一気に高度を稼ぐと下坂場峠のようだ。
しかし、そこで、また車道と合流する。

 この峠からは携帯が通じるので久万町の「民宿笛ケ滝」へ電話し、
今晩の宿をお願いする。

 ここからは車道をどんどん下ると宮成の集落に着く。

 13:15分、ここにも立派な神社がある。葛城神社だ。
石造りの鳥居があるが、最近修復したらしく、上の方の石の色が
真新しく光っている。
鳥居に横にある石碑をみると、数年前の芸予地震で鳥居が倒れたものを、
個人の寄付によって修復したと書いてある。
このような場所にある神社の鳥居を百万以上のお金を寄付して修復する人が
いるとは信じられなかったが、立派に修復されている。
これが歴史ある土地というものなのだろうか?

 宮成からは、いよいよ、ひわだ峠へと進む。
細い車道が続くが、その道がどんどん細くなり、とうとう山道となる。
だんだん急になってくるが、両側は手入れされた杉林で気持ちがいい。

 14:10分、鴇田峠に着く。
「鴇田峠」の由来がかかれた掲示板があるので読んでみると、
弘法大師が88カ所開基の折り、大洲からずーと雨続きで、
この峠でやっと晴れ、「日和りだ」といったのが訛って「鴇田」と
なったようだと書かれている。

 この峠からは、あとは下るだけで久万町に着く。もう一息だ!

 14:45分、久万町の国道33号に着く。
ちょうどお店があったので休憩する。
ここまで来れば、後は大宝寺へのお参りを済ませてから
宿へ行こうと思っていた。

 国道と平行している旧道へ入り歩いていると遍路石があり、
右手が大宝寺と指さしている。
右に曲がると、大きな門が見える。
大宝寺の総門だった。
そのまま進んでいくと、お土産やさんの先に見覚えのある山門が見えてくる。


第44番札所 大宝寺

 15:10分、大宝寺に着く。

本道への階段を上がると数人のお遍路さんがお参りをしている。
本道と大師堂へお参りを済ませると、納経所の前にあるベンチに
荷物をおいて境内をぶらぶらする。
 これで、88カ所の半分を終えたことになるが、
疲れているためか何の感慨もない。
境内は冷たい風が吹き抜けて寒くなった来たので、宿へ向かう。

 宿はすぐ分かった。
バスセンターの隣にあるマンションのような建物だ。

 16:10分、民宿笛ケ滝に到着する。
1階にある食堂で受付をして鍵を貰う。
部屋は3階ですといわれる。
部屋に入ると、ふつうの宿とは全く違い、
1Kのマンションのような部屋だった。
手前にお風呂と台所があり、奥に8畳ほどの部屋が一部屋あるだけだ。
ベランダには全自動の洗濯機も置いてあり、洗剤も置いてある。
至れり尽くせりだ。

 風呂にお湯を張り、ベランダで洗濯をする。

 風呂に入り冷えた体を温める。
その後は、夕食の時間まで布団の上でウトウトする。

 夕食ですと電話がかかってきたので、食堂へ行こうとして布団を出ると
急に寒気がしてきて歯もガタガタと鳴る。
体にも震えが来て、立っていられない。
あわてて布団に潜り込んで、体を丸くして震えの治まるのを待つ。
やっと、震えが止まったので、ありったけの服を着る。
雨具の上着まで着て食堂へ行く。
部屋の外で風に吹かれるとまた寒気が襲ってくる。
小走りで食堂へ向かう。

 食堂にはすでに5人のお遍路さんが食事をとっている。
挨拶をして空いている席に着く。
 最初は皆さん黙々と食事をとっていたが、誰彼となく今日のことなどを
話し合うとやっと皆さんの人間像が分かってきた。

 私の左手に向かい合って座っている人はご夫婦で、
ご主人は80歳、奥さんは72歳と話してくれる。
ご主人は何回か歩いて回ったことがあるが、今回は奥さんも一緒なので
交通機関を利用しながらお遍路をしているようだ。
九州なので数日前にフエーリで四国に渡ってきたと言っている。

向かいに座っている人は、私とほぼ同年代だ。
福祉関係の仕事をしているようだ。1番の霊山寺から歩いている。
鯖大師が山道に下げている黄色いヘンロ札には随分助けられたので、
ご住職にお会いしたが、そこでも良い話を聞かせていただいた、と
話してくれる。

 右側の男性二人は秋田から来た68歳のお爺さんと、
私と同年代の坊主頭の男性だ。
秋田のお爺さんは、徳島県を歩いただけで足を痛めてしまったので、
そこからは交通機関を利用してここまで来たと話してくれる。
 右にいる男性も徳島で足を痛めたので、このお爺さんと一緒に
交通機関を利用しているようだ。

 この男性は、最初は、「ひっこみ」達と一緒に歩き出したと話してくれる。
男性の言葉には訛りもあり「ひっこみ」という言葉の意味が分からず
何回か聞き直したところ、向かいにいる男性が「引きこもり」
いわゆる自閉症のことだと教えてくれる。

 この話を詳しく聞くと、
  どこかのNPO法人が全国に呼びかけ、自閉症の人達を集め
お遍路をすることによって自信を取り戻してもらおうと企画したものだ。
 十数人の応募があり9月初めから歩き出したが、1日10キロほどの日もあり、
宿もお寺や福祉施設にお願いしたり大変なようだ。
 この男性は、足を痛めたこともあり、この集団から抜け出して、
交通機関を利用しながら先に進んできたようだ。

 自閉症の人達を治療するためのお遍路という話は初めて聞いた。

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 この話は、11月になってからNHKの朝のニュースで取り上げられたのを
 見ました。
 千葉県浦安市にあるNPO法人ニュースタート事務局が全国に向け「引きこ
 もり」や「不登校」など自閉症の人達を約2か月ほどで88カ所を歩いて回る
という企画を立て、全国から募集を開始したところ、かなりの反響があり、
 男女13名の応募があった。
 9月5日から歩き始め、11月5日に結願を迎えたとその様子が報じられた。
その中で神戸市に在住の30代の織物工芸家を目指している女性が、ただ一人、
全行程を歩いてお遍路を終えた様子も紹介されていた。
 来年3月には2回目を企画しているらしい。  

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 私の向かいに座っている男性が、この後は北条市にある鎌大師の
手束妙絹尼さんにお会いしたいと言っているので、
手束妙絹尼さんはこの4月末で鎌大師を離れているようですと教える。

笛ケ滝の夕食には、キジ鍋が出ている。
季節は夏なのに鍋とは珍しいが、体が冷え切っている私には、
ありがたい鍋だ。この鍋を食べるとからだが暖まってくる。

 明日の朝食の時間を聞くと6時からだというので、その時間でお願いする。

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