四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成15年9月15日(土佐から伊豫・第19日目)

2005-07-28 09:51:18 | 第3回(土佐から伊予)
9月15日(月曜日)
(第3日・通算第19日目・歩行距離45.0km・歩行歩数59,258歩)

 5:00分、起きる。
昨晩は涼しかったのでよく眠れた。
体の真は疲れが残っているが、気持ちはスッキリしている。
 今晩も久百々さんに泊まるので荷物を整理して、着替えや雨具など
必要のないものは預かってもらう。
お陰で荷物はかなり軽量化された。
 
 5:30分、「朝食できましたよ~」と奥さんから声が掛かったので、
食堂へ行く。
朝食を食べているとお昼の弁当を渡される。
おにぎりに飴や海苔が入っており、おまけにバナナも1本添えられている。
お遍路で泊まった方にはお接待していると言われる。
お礼を言ってありがたく頂く。

 窓から外を見ると今日も天気はいいようだ。
今日も暑くなると思い半ズボンにした。
今まで2日間、日焼けがいやで長ズボンを穿いて歩いていたら、
腰のバンドが当たるところと足首に汗疹ができている。
一日中汗をかきどうしなので仕方がない。

 6:00分、OさんとWさんより先に出発する。
まだ、走る車も少なく歩きやすい。

 30分ほど歩くと左手にきれいな砂浜の海岸が見えてきた。大岐浜だ。
大岐海岸への分岐点に来る。
海岸を歩こうかどうしょうか考えたが、砂地は歩きずらいので
車道を行くことにする。
大岐海岸の向こうにぼんやりと足摺岬が見えている。
 まだ、太陽が顔を出したばかりなので、涼しいうちにと思い足を早める。

 国道から旧道への入口を発見したので左へ曲がる。
ほどなく、ヘンロ標識があり、はま道と矢印が書いてある。
どうやらここを下ると海岸に降りられるようだ。
 7:00分、1時間ほど歩いたのでこの標識のところでちょっと休憩する。

 休憩後、歩き出すとすぐに、国道と合流する。
どんどん飛ばす。背中の荷物が軽いので体が良く動く。

 以布利の街に向かって降りていく旧道を港に向かって下る。
途中、墓地の中を通り、細い路地をどんどん下っていくと、左手に港がある。
正面には立派な神社がある。
その鳥居の前で数人の漁師さんが話をしている。
「お早うございます」と挨拶をすると、会釈が返ってくる。

 道が港の横から海沿いに真っ直ぐ伸びているが、
その先には崖と海しかなく、どう見ても行き止まりのように見える。
半信半疑で歩いていくと、道が無くなってしまう。
海岸を歩くようにヘンロ標識がついているが、海岸にはゴミが山のように
打ち上げられている。
その中を歩いていくと、右手に小さな谷が見えてくる。
正面は大きな岩に塞がれている。
どうやらこの谷を登るようだ。

 谷の入口に行くと、日の当たらない暗くて細い山道が見える。
ちょっと、喘ぎながら九十九折りに続くその道を登っていくと、
突然、住宅の横へ出る。どうやら旧道のようだ。
近所の奥さんが二人でなにやら話をしている。
挨拶をしながら左に曲がると、野球帽をかぶり棒を持った
イカツイおじさんが歩いていく。その後ろをついて歩く。

 ここで、肩から下げているバックを何気なく見ると携帯に付けてある
マスコットの「シューマイ君」がいなくなっている。
このシューマイ君は携帯を買ったときからストラップと一緒に
付けていたもので何回か落としたが、その度に見つけて付けていたものなのだ。
今朝、久百々さんを出たときには間違いなくついていた。
どこで落としたのだろう。考えたが分からない。
しかし、いまさら戻って捜す気もしないので、おじさんの後を歩いていく。

 おじさんが後ろを振り「歩くの早いですね。」と話しかけてくる。
「今日で3日目の区切り打ちですから、まだまだ元気です。」と答え、
しばらく一緒に歩く。
 
 この旧道は、こんもりとした樹木が日差しを遮っているので
気持ちよく歩ける。

 ~~おじさんの話~~
   私は、漁師をしている。
  腰を痛めたので、その治療を兼ねて毎朝歩いている。
  以前は大阪の方でトラックの運転手をしていたので、
  いわゆるUターン族だ。
  今やっている漁は、「めじか」という鰹の子を取っている。
めじかは脂が少ないので刺身にして食べるとおいしい。
  などと話してくれる。
「北海道でメジカといえば鮭の高級品のことを指すのですよ」と
  話しながら歩いていくと、国道に合流するところへ来た。
  おじさんはここから今きた道を戻ると言うことなので、お別れする。


 国道に出ると強い日差しがまともに当たる。

 8:10分、少し歩いたところで休憩する。
この辺りは足摺岬へ行くスカイラインの道からは外れているので
交通量が少ない。
車道の横に座り込み、例の通り靴と靴下を脱ぎ足を休める。

 休憩後、左手に海を見ながら窪津の集落を目指して歩く。
幾つかの小さな岬を回ると、向こうの方に大きな加工場が見えてくる。
どうやら窪津のようだ。
加工場の横を通ると鰹をショベルカーですくい取り運んでいる。
工場付近は鰹の匂いがたちこめている。
  窪津の街では郵便局でお金をおろそうと思っていた。
昨晩の宿代を払うと、手元には3千円ほどしか残っていなかった。
宿代は、連泊すると千円割引ですよと言われているので、5千円だ。
集落の岬寄りに郵便局があるようなので、国道をそのまま歩き、
郵便局に行くことにした。

 国道からもどるようにして集落の細い道に入り、
近くにいたおばさんに郵便局の場所を聞くと、すぐそこだと教えてくれる。
言われたとおりに進むとすぐに見つかった。
しかし、郵便局は休んでいる。
よく見ると、掲示板に休日は休みだと書いてある。
今日は月曜日だが、昨日15日の「敬老の日」の振替休日となっている。
休日ではお金が下ろせない。
でも、足摺岬の郵便局は観光地だからATMぐらい動いているだろうと思い、
気を取り直して岬を目指す。

 窪津を過ぎると道はだんだん登り坂となり、うねうねと曲がった
細い山道となる。
津呂を過ぎ、しばらく行くと右の方に「へんろ小屋」と書かれた
小さな建物がある。
建物の前面は、丸太を組んで日除けの屋根が造られており、
同じ丸太で造られたベンチなどもある。
奥の方は古いが畳をひいてあるところもあり、
寝泊まりできるようになっている。

 9:20分、ちょうど1時間ほど歩いたので、この小屋で休むことにする。
自動販売機もあるので、冷たいコーラを飲む。
コーラが喉を駆け抜けていく。おいしい!
ときどき、甘い飲み物がほしくなるのは疲れている証拠かもしれない。

 一息ついたので先を急ぐ。
ヘンロ小屋のすぐ先を曲がったところに氷水の旗をなびかせている
小さな店がある。
見るとお婆さんがやっているようで、真っ赤なTシャツを着た
坊主頭の子供の外人さんがおいしそうに氷水を食べている。
帰り道には絶対ここに寄るぞと心に決めて、先を急ぐことにした。 
ここからは、あと1時間ほどで足摺岬だと思い、頑張ることにする。

 しばらく歩くと、突然、右側に石造りの小さな鳥居が見える。
鳥居の前から見ると階段が数段あり、その上に小さな祠がある。
しかし、その奥に鳥居より大きな岩がドーンとある。
存在感十分の岩があり、この神社はこの岩を祀っているようだ。
神社の名前を見ようとしたがよく分からない。
四国を歩いていると、このような神社が思わないところに
現れるので驚かされる。

 山の中をくねくねと曲がっている道路を改良するために谷を埋め
ショートカットするように土砂を積んでいるところが何カ所もある。
少しでも、楽をしたいので危険と書かれているロープを跨ぎ、
この土の上を歩く。

 道路の両側に駐車している車が多くなってきたと思ったら、
足摺岬に着いたようだ。右手に灯台への小道が見える。


第38番札所 金剛福寺

 10:40分、金剛福寺に着く。
やっと、3日でここまで来た。岩本寺から90キロを歩いたことになる。
お遍路中、札所間最長の距離を歩いたのだ。

 山門で一礼し、境内に入る。
人影もまばらな境内に、強い日差しが照りつけている。
納経所の横にある台の上にザックを置き、白衣と輪袈裟を身につけ、
本堂と大師堂へお参りに行く。
お参りしている人も少ないので、落ち着いて般若心経を唱える。

 納経所へ行くと、「歩きですか?」と納経をしてくれた
お爺さんに尋ねられる。
「そうですが」と答えると、「これをどうぞ」と言って、
日本手ぬぐいを手渡される。
お礼を言ってありがたく頂く。

 お参りも済んだので、暑さを逃れるのとお腹がすいたので、
ちょっと早めの昼食を取ることにする。

 金剛福寺の真ん前にあるお土産やさんの2階の食堂に上がる。
食堂の中は冷房が効いて涼しい。
小上りに上がり、うどん定食(900円)を頼む。
食堂は、まだ昼食時間に早いのか、私の他には1組しかお客さんがいない。
 食堂のウエイトレスさんに郵便局の場所を尋ねたが、
「今日は休日で休んでいる」と言われる。
がっかりして、最後の望みを以布利の郵便局に賭けることにした。

 11:30分、食堂を出る。
食堂を出て久百々に向かって歩いていくと、
すぐに、向こうから歩いてくるWさんとすれ違う。
Wさんに「いや、早いねぇー」と言われる。
「久百々まで帰らなければいけないから」と返事して、別れる。

 Wさんの出で立ちを初めてみたが、なかなか立派な姿をしている。
上下をビシッと白装束で固め、手に持っているのは錫杖だ。
笠も飴色の網代笠と、私なんかの、いい加減な姿とは一味も二味も違う。
年期の入れ方が明らかに違うのだ。

 津呂にあった氷水屋さんを目指して歩く。

 途中、公民館の横を通るとカラオケが流れにぎやかな話し声が聞こえる。
紅白の幕も見える。何かのお祝いをしているようだ。

 12:30分、やっと氷水屋さんに着いたので、イスに座り店の人が来るのを待つ。
靴と靴下を脱いでからふと横を見ると、誰もいないときにはこれを
引っ張って下さいと書かれたひもがぶら下がっている。
ひもの先を見ると、隣の家へ伸びている。
ひもを引っ張ってみると下の方にある家で鈴が鳴る。
これは呼び鈴なのだ。
これで誰か出てきてくれるだろうと思ったが、出てくる気配がない。
もう一度ひもを引いて鈴を鳴らす。でも誰も出てこない。
 ここで、ふと気がついた。
この店をやっていたのはお婆さんだ。
今日は敬老の日だし、先ほど通った公民館で宴会をしていたのは、
敬老会のお祝いなのだ。
きっと、この店のお婆さんも敬老会に出席しているのだろう。
氷水はあきらめるしかない。
仕方がないので、自動販売機からスポーツ飲料を買って我慢する。
 
 気を取り直して歩き出す。
すぐ近くにあるへんろロ小屋の前でOさんに会う。
Oさんはこのへんろ小屋の管理人と話し込んでいたようだ。
Oさんは、今晩、金剛福寺に泊まる。
お別れを言って、先を急ぐ。

 昼頃になると太陽が容赦なくガンガンと照りつけてくる。
少しでも太陽を避けようとして日陰を探して歩くが、
海岸に出てしまうとそうも行かない。
窪津の集落を抜けてみる。細い道の両側に古い家が軒を連ねて建っている。
あっという間に集落を抜けてしまう。

 また国道を歩く。遙か向こうの山に白い大きな建物が見える。
その建物の裏側に久百々がある。まだまだ相当の距離がある。

 13:50分、国道から旧道への分岐点に来る。
ここから旧道に戻り、来るときに落とした「シューマイ君」を
探さねばいけないが、まずは一休みする。

 もと来た道を戻り、以布利の街で郵便局を探す。
港にいた漁師さんに聞くと郵便局はすぐ近くにあった。
しかし、郵便局はやはり休日で休みだった。
仕方がないので久百々の奥さんには事情を説明して、
明日でも三原村の郵便局でお金をおろし送金させて貰うことにしよう。
「シューマイ君」も探しながら歩いているが、見つからない。

 15:05分、浜道への分岐点に来たので、ちょっと休む。

旧道から国道に出たときに、そろそろ久百々の奥さんがWさんを迎えに
来る時間だと思っていた矢先、なんと、久百々の奥さんが運転する
軽自動車が通り過ぎる。
奥さんも気がついたようで、手を振ってくれる。

 ここからは、ただひたすら国道を歩き、16:20分、久百々さんに戻る。

 これで、今日は45キロを歩いたことになる。
今までのお遍路でこんなに歩いたことはない。最長記録だ。

 玄関を入ると、奥さんは戻っていた。「帰り道は会わなかったねぇ~」と
言われる。
「きっと、遍路道を歩いていたからですね」と答える。
「今晩は2階の部屋です」と言われ、階段を上がる。
Wさんは隣の部屋だ。廊下で会ったので挨拶する。

 風呂に入り洗濯を済ませ、時間があるのでちょっと散歩をする。
海岸に出ようと思ったが、道路から梯子で下りなければならないようで止めた。
集落の外れに行くと大きな石碑が建っている。
でも、お遍路とは関係がないようだ。

 夕食は私にWさん、それに新たに加わったSさんという私と同じ年代の
男性遍路の3人だ。
 
 夕食前に奥さんに宿代のことを話す。
奥さんはいつでも良いよと言ってくれるが、そういう訳にはいかない。
三原村から振り込むので、使っている銀行の口座番号を教えて貰う。
これで安心して夕食にありつける。

 ~~Wさんの話~~
   Wさんは、2回ほど歩いてお遍路をしているが、
  最近は愛媛と高知が好きなので松山市の石手寺ら逆打ちで歩いている。
  今回は宿毛の延光寺から中村までを歩く予定できた。
  「香川と徳島は人間がひねているので好きではない。」などと
  話してくれる。

 テレビでは野球中継をしているが、阪神の優勝が懸かった1戦のようで、
今日のゲームで既に阪神は勝っており、今テレビでやっている中日と広島?戦で
中日が負ければ阪神の優勝が決まるようだ。
 久百々の奥さんがテレビに興奮している。熱烈な虎ファンなのだ。
阪神は甲子園球場で優勝を決めなければいけないと言っているが、
どうもテレビで映されている状況が飲み込めていない。
阪神は、甲子園での試合に勝利し、中日の結果待ちで優勝が決まる。
3万人の阪神フアンが帰らずに、その結果を甲子園でじーっと待っている。
この状況を奥さんさんに話すと、やっと、納得してくれる。
 騒々しく、夜が更けていく。


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  この日は今までで最長の45キロを歩いた。
 体の方にも思ったほど疲れが出ていない。
 この調子なら順調に歩けると思った。
 足摺岬からの折り返しでは誰とも会うことはなかった。
 夏遍路とはいえ9月では歩いている人は少ないようだった。 

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