12月14日のyahooニュースで、佐渡で放鳥されたトキの1羽が、野鳥に襲われ死亡したことを知りました。
「放鳥のトキ1羽死亡確認、野鳥に襲われたメスか」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081214-00000522-san-soci
また、野鳥に襲われた瞬間を見た記者の記事も掲載されています。
「記者は見た! トキが襲われる、その瞬間残されたオスの行動は?」http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/204408/
私は、放鳥したトキが、今回のように他の野鳥(おそらく猛禽類)に襲われ死ぬことは、自然の中で自活させることを進めていく上では、想定されることであり、「当たり前のこと」だと思っています。
トキは、人間の視点から見ると天然記念物というきわめて重要な存在ではありますが、自然界においては、あくまでひとつの生命体にすぎず、その生命の価値は、ほかの生きもののと変わるものではありません。
生態系の頂点にある生物でない以上、猛禽類など肉食の生き物に襲われ、獲物にされてしまうのが、自然の仕組みそのものなのです。
まして、幼鳥時代に人間に世話をされ外敵をほとんど知らないトキは、野生の猛禽類(今回はおそらくオオタカかハイタカ?)にとって、絶好の獲物であることは間違いないでものしょう。
ここで誤解があるかもしれませんが、生態系の頂点にあるオオタカやハヤブサなどの大型の猛禽類でさえ、実は縄張り争いという激しい生存競争をし、その競争に勝ったものだけが生き延びることができるものなのです、そして、敗れたものには例外なく「死」が訪れます。しかもそのほとんどは「餓死」なのです。
トキのように、猛禽類などに捕食される生物は、捕食される以上の数の子供を産み育てることで、種を保存しようとするものです。例えば、カルガモは春に10羽前後の雛を連れていますが、雛たちがほぼ成鳥になる初秋の頃には、毎年その数は大きく変わることはありません。その多くは外敵に捕食されるか、餌がとれずに死んでしまうものなのです。
今回の報道で、私が一番恐ろしいことと思うのは、トキを大切にするがあまり、他の野鳥の価値を軽くみてしまうような風潮ができてしまうことです。
あるブログには、「トキのような高級な野鳥…」という表現がありましたが、自然界には「高級な野鳥」などどこにもいないのです。ただそこにいるのは、人間の活動によって数が極端に少なくなってしまった「トキ」という種の鳥なのです。
この機会に、自然界において生命の価値はすべて等しく、それぞれの役割を持って生きていることを理解していただきたいと思っています。
さらに付け加えるのなら、人間も自然界の構成物の一要素にすぎず、実は生態系の頂点にある生物でないことに気がつく時期に来ているように思えてなりません。
そういう冷めた視線でこういうニュースを見るべきだと思っています。
そして、自然とは人間が思うようにならないものです。
もちろん1羽1羽の朱鷺も大切ですが、それ以上に、多くの生き物とともに、朱鷺が普通に生活できるような環境を取り戻すことが一番大切なことだと思っています。