バージニア労働者

アメリカで働くってどんな感じ?アメリカの企業で働く統計アナリストの労働ブログ。アメリカ生活小話や猫も登場。

<CBP>全ては私の失態でした

2019年11月20日 | ALL ABOUT JAPAN
成田国際空港を飛び立って、12時間後にはワシントンダレス国際空港に戻って来た。

着陸したらすぐにハニバニにメールを送る。
「帰って来たよ!」

早く会って、買ってきたハニバニの大好きな菓子パンをあげたい。

通常は、他の飛行機と鉢合わせすることがあって
非常に込み合うImmigration(入国審査)も、その朝は人が少なく、
私は素早くアメリカ国民側の列に並ぶ。

永住権を持っているので、日本のパスポートでもアメリカ国民の窓口へ並べるのだ。

あっと言う間に自分の番がきて、入国審査の窓口へ行く。

「どこへ行っていたのですか?」
「どれぐらいの期間日本へは滞在していたのですか?」

普通の質問をされ、普通に答える。
そして写真を撮られたり、指紋をチェックされる。

全てがスムーズに終わった。
後はパスポートを受け取って、ラゲッジをピックアップし、
さっさとこの場から立ち去ろう。
ドアの向こうにはハニバニが待っているのだから。

ところが、TSA(運輸保安局)の職員がパスポートを返してくれない。
それどころか、頑丈なクリアケースに私のパスポートと税関申告書をを入れて
そのクリアケースを私に渡し、そして
「ちょっとこの人についてって。」と言われて気が付くと、私の横には
武装した他のTSAの職員が立っていた。

「え?」

訳がわからず、半分動揺しながらその男と別の場所へ移動しながら、
どこの国へ行っていたのかだのどのエアラインだったのかだの聞かれた。
ふと渡されたクリアケースの中を見ると、パスポートと一緒に入れられた税関申告書にはCBPと殴り書きされていた。

CBPて何か知ってます?
Customs and Border Protections(米国税関国境取締局)です。


その文字を見て初めて、私は完全に動揺したね。
入国審査か税関手続きで問題があった模様。

私が何をしたっつーの?!

「この廊下の突き当りの係員にそのケースを渡すように。」と言われ行ってみると
そこにはまた別の大きな部屋があり、
5,6台ほどのラゲッジをX線に通せる機械が置いてあった。

い、いかん。
ここで動揺を見せては、かなり怪しく思われる。
怪しいことなんもしてなくても怪しまれるのは不本意だ。
クールにしなければ...。

とりあえずそのクリアケースを渡すと、「どこでもいいから座って呼ばれるのを待っていて下さい。」
と言われ、近くの椅子に座る。

見かけは冷静沈着に見えただろうが、体内では心臓が阿波踊りしてるようだ。
今にも倒れそうなぐらい動揺している。
なんせこんなの初めての経験だ。

何で私が?スーツケースに何か変な物入れたっけ?
いや、今までだって同じような物しか日本から持ち込んでないし。
何なんだろ。

そこでふと、あ!と思うものがあった。

森永クリープの詰め替え用、6袋。

まさかそれを指摘されて「何だね、その白い粉は?!」とか聞かれるとか?
でも大丈夫、それはあくまでクリープだし。
でもそれ以外で疑われるような物、全くないのに(泣)

もう頭の中は自問の繰り返し。

一人悶々としていると、横に座っていたどこかの国のビジネスマンの、
かなりご立腹なおじさまが、『一体どれぐらい待たせるつもりなんだ?!』と
武装した係員に怒鳴る。

きちんとした服装の、白人のおじさま。
英語の訛りから、フランス人かドイツ人かと思われる。
なじみのある訛りだったので、きっとドイツの人かも知れない。
ドイツ支局のマネージャーと同じ英語訛りだったから。

落ち着いて周りを見て見ると、そこに連れてこられたのは
見るからに外国人ばかり。

怪しそう、とは言えないまでも、事態が事態だけに
みんなが全部、怪しく見えるから人間の心理て奥深い。

そしたら私の心の中を読んだみたいに隣のそのおじさまが、
『お前ら、これは人種差別だぞ!トランプの政策か?!』とか野次る。

あのー、ここへ来てもうどれぐらい待たされてるんですか?と聞いてみた。
そしたら、『もう2年も待たされてるよ。』と言うので、じっと彼の顔を見据えたら、
『2年ていうのは冗談だけど、2時間ぐらい待たされてるよ。』と言ってから、
『ここのビューティフルな奴らにね!』と、もろに聞こえる声で荒ぶる。

『ずいぶんと手厚い扱いを受けてるよ。ありがたいね!!!』と言いたい放題。
おいじじい。いい加減にしろよ係員の刃がこっちまで飛び火するだろ
と思ったが、もう私には闘争心なんかなかった。
じじいはやけに威勢がいい。

このじじいが2時間も待ってるとなると、私もあと少なくとも2時間はかかることになる。
「税関に留められているから待たせるよ、ごめん」とハニバニにメールすると、
「いつまでも待ってるから」と返事が来る。優しいなあ。

検査の様子を見ていると、まずラゲッジがその検査場へ届けられて、
名前が呼ばれて、X線の機械のあるカウンターへ行く。
そしてラゲッジを開けられて、中身を一つ一つ、全部(!)チェックされるようだ。
だから時間がめちゃくちゃかかってるんだった。
私のラゲッジの一つ一つをチェックされるのかと思うと
気が遠くなる。

じじいが怒り狂う気持ちもわかる。
みんな扉の外では待ってる人がいるんだろうし、早くここから出たいのだった。

それにしても一体どうしちゃったんだろ私。
思い当たるのはそのクリープの白い粉の他に、ひたすらラゲッジが大きくパンパンになってたこと。
でも重さは規定内だった。
そんな大金だって使ってないし。
もー、何なのよ。
帰りたい。

待っていると、次から次へと新たに困惑した旅行者が入ってきた。
日本のパスポートを持ったビジネスマンも数人いる。

私もきっとあんな顔をしてたんだろう。
ものすごい怪訝そうだ。



そうやっていろいろウォッチングしていて、急に名前を呼ばれてびっくりした。
同時にとなりのじじいも名前を呼ばれて立ち上がる。

女性の係員に、「あれはあなたのラゲッジ?」と指さされ、その先を見ると
いつの間にか私のパンパンになったラゲッジが届けられていた。
「そうです。」と言うと、「じゃ、自分で持ってってね。」と言われて
ラゲッジを引きずって彼女と歩いて行くと、個別の部屋が両脇にあり、
私だけ特別な質疑応答になるのかと思い、暗い気持ちになっていると、
「ドアはそこだから」と、出口を指す。
もしかして事前に荷物をチェックされて、怪しい物が出てこなかったってこと?

「終わりなんですか?」と聞いたら「ええ、もういいわよ。」とか言うの。
何もされてないのに。

でもとにかくその場を去りたかったので、無駄口は叩かず、
流れる液体のごとくハニバニの待つ到着ロビーに飛び出して行った。



家に帰ってラゲッジを開けてみて気がついたことだが、
なんとラゲッジの中身が、何ひとつチェックされた形跡がない。

一体何だったんだろう。



その夜。

私はたった一つ、自らの失態に気が付いた。
恐らくこれがCBPの引き金になったんだろうと思う。


私、税関手続きを全くやらずに入国突破しようとしてたんだった。
つまり、大切な手続きを完全に忘れてたということ。


こりゃ怪しがられてもしょうがないわよね。
あの大きなラゲッジの他に、大きな手荷物を3つも持ってたんだもの。
そういえば、入国管理局で係員が手荷物をじーーーーーっと見てたわ。
なのにこの怪しいアジア人は税関手続きを全くしてないとか、
要注意人物と思われるよね。


( ̄∇ ̄;)



皆さんもアメリカへご旅行、またはお帰りの際は是非気を付けてください。
ケイエスはまさにその悪い例をお見せした、ということになる。

後でハニバニが、「そんなに急いで僕に菓子パンを渡したかったん?」と聞き、
やけくそで「そうだよ」というと、
ちょっと美談に聞こえるけど、
真面目に考えるとアホだよね。




(この中に愛の菓子パン)

これにはさすがに言い返す言葉がなかったわ。






今でこそ言える。

良い勉強をさせて頂きました、と。


でもなんでそんな怪しい渡航者(私)のラゲッジの中、
チェックしないまま帰してくれたんだろ?




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