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よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

マイ腸内細菌を大事に育てよう(2)

2016-07-16 08:13:20 | 健康・病気
 このようにヒトが健康に生きていく上で欠かせない腸内細菌ですが、健康な腸内環境をつくるにはどうすればいいでしょうか。
 これは、善玉菌が好むエサをしっかり摂取することです。最も有効なのは食物繊維(特に水溶性)です。ワカメ、昆布、めかぶ、ひじき、のりなどの海藻やオクラ、納豆、山芋などネバネバ食品、らっきょう、オートミールなどがおすすめです。
 古くから健康食品として親しまれている発酵食品(みそ、納豆、糠漬け、ヨーグルト、チーズ、酢など)も効果があります。また、悪玉菌が利用できず善玉菌のエサになるオリゴ糖も注目されています。
 少し話題がそれますが、ビフィズス菌やバクテロイデスが食物繊維から作る短鎖脂肪酸は、脂肪細胞に脂肪を貯めるのをブロックする作用もあり、ヤセ菌として注目されています。一方、糖質を含む食品の摂取が多くなると、糖質の代謝を得意とするフィルミクテス門の腸内細菌が増え糖質吸収が高まり肥満になりやすいといわれます。
 尚、生きたまま腸に届く、ピロリ菌に有効、尿酸を下げる、アレルギーに有効などの効用を謳ったさまざま機能性ヨーグルトも市販されています。確かに効果が期待できるのでしょうが、定住できないため取り続けないと意味がないと思われます(逆に、死んだ乳酸菌でも腸に届くと善玉菌のエサになると考えられています)。

 さて腸の健康のバロメーターが、体からの大きな便り「大便」です。藤田先生は、理想のウンコの5条件をあげています。
①バナナ3本分(約300g)     
②便切れがさわやかで、お尻を一度ふけばペーパーにつかない
②練り歯磨きや味噌の硬さ     
④黄褐色で匂いはかすか
⑤生まれたては水に浮かんで、ゆっくり水に沈む 
 皆様も、ウンコを観察し腸の健康をチェックし、マイ腸内細菌にしっかり働いてもらい健康に過ごしましょう。
    

 参考図書:藤田紘一郎 「がんにならない整腸術」
       伊藤 裕 「腸!いい話」

マイ腸内細菌を大事に育てよう(1)

2016-07-16 08:08:15 | 健康・病気
 最近、テレビの健康番組でもしばしば取り上げられている腸内細菌。皆様も、腸の善玉菌や悪玉菌の話は聞かれたこともあるのではないでしょうか。今回は、最新の研究が明らかにしつつある腸内細菌パワーをご紹介します。

 腸内細菌は、小腸から大腸にかけてヒトと共生して棲む細菌で、数は1000兆個(重量にして1.5~2kg)とヒトの細胞(37兆個)の十数倍も存在しています。種類は約3万種で、多くは酸素のない環境を好む嫌気性菌です(したがって、酸素のある小腸よりもほとんど酸素のない大腸に棲む腸内細菌が圧倒的に多い)。
 ヒトの腸は出生時は無菌ですが、以後様々な菌を取り込み、生後1~3年かけて自分の腸内細菌叢(これは腸内のお花畑に例えられており腸内フローラと呼ばれます)を作ると考えられています。その後は、その細菌叢のバランスにより腸内環境が決まります。一般的には、善玉菌(ビフィズス菌、ラクトバチルス菌など 約20%)、悪玉菌(クロストリジウム、腸球菌など 約10%)、日和見菌(バクテロイデス、大腸菌など 約70%)に分けて考えられますが、時と場合によりその分布、働きは変わっていきます。

 さて、腸内細菌の働きとはどのようなものでしょうか。
 まずは、食物とともに体に入ってくる病原菌の排除です。ヒトの細菌叢はお互い縄張り争いをしてバランスをとっているため、外部の菌は定住できず排除されます。
 次に、ヒトが作れない各種ビタミンを合成したり、ヒトが吸収できないセルロース(食物繊維)を分解してエネルギー源となる脂肪酸を合成してくれます。 また鉄の吸収力アップにも関与しています。 活性酸素によって酸化された組織をもとに戻す「水素」を発生させてくれるのも腸内細菌の働きです。
 さらには、「幸せホルモン」とよばれるドーパミンやセロトニンの前駆物質を作り脳へ送ってくれる働きもあります。
 腸にある免疫細胞を活性化して、がんを防いでくれる免疫力を高める重要な働きもあります。

自分で脈をとってみよう(2)

2016-04-29 15:03:26 | 健康・病気
有名な元プロ野球監督や元総理大臣が、突然脳卒中で倒れマスコミで話題になり知名度が上がったのが“心房細動”とよばれる不整脈です。年齢とともに発症頻度も増えますが(80歳以上の高齢者では8%)、40、50代の方にも珍しくはありません。

 心房細動とは、文字通り心臓の心房と呼ばれる部屋が小刻みに(バラバラに)興奮する不整脈です。心房が心室と連関して規則的に収縮しないため、心臓のポンプ機能が約2割低下すると考えられています。 この不整脈は、発作性(数分~7日以内持続)、持続性(自然停止せず7日以上持続)、慢性(除細動不能)と分類されます。
 症状は、動悸、労作時息切れ、胸部不快感などが一般的ですが、全く無症状の方もおられます。
 原因は、加齢、高血圧、心臓弁膜症などに伴う心房筋の変性に、肺静脈や上大静脈からの異常興奮が伝導して起こると考えられています。

 心房細動は、不整脈自体による症状以外に、重要な問題点が二つあります。一つは、ポンプ機能低下による心不全です。もう一つが、心房内に血液がうっ滞することにより、心房内に血栓とよばれる血の塊ができることです。この血栓が、血流に乗って流れていき末梢動脈に詰まると、何の前触れもなく突然塞栓症を引き起こします。脳動脈に詰まると脳塞栓症となり、半身麻痺など重篤な合併症をきたします。

 治療として、症状の改善には、再び規則正しい脈に戻すために抗不整脈薬や電気的除細動、カテーテルアブレーションをおこないます。規則正しい脈に戻らない場合は、たとえ無症状でも心不全発症の予防と血栓形成の予防が必要です。

 皆様も、時には自分の脈を触れてみて、生まれてから一日も休まず動き続けてくれている心臓をチェックしてくださいね。

自分で脈をとってみよう(1)

2016-04-29 15:00:18 | 健康・病気
今回は、脈についてお話します。

通常心臓は、1分間に60~80回、規則的に拍動し全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。皆様も自分の手首(親指の付け根あたり)で血液の拍動を感じることができると思います。これが脈です。
心臓の拍動の異常が、”不整脈“と言われ、心臓がドクンとする、動悸がする、ふらふらする、気を失うなどの症状の原因になります。
不整脈には、脈が速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、飛ぶ(期外収縮)など様々なタイプがあり、直ちに治療をしないと死に至るものから、ほっといても特に問題ないものもあります。日中にでやすいタイプ、夜間に出やすいタイプなど出現時期に特徴があるものもあります。
また不整脈を自覚する程度には個人差があり、一つ脈が飛んだだけでしっかり感じることができる方もおられる一方、総拍動の3~4割が不整脈でも全く自覚症状のない方もおられます。

さて、不整脈はなぜ起こるのでしょうか?
心臓の筋肉の中には、電気的な興奮が伝わる道筋(刺激伝導路)があり、これが心臓の拍動を規定しています。その伝導路の一部が、途切れたり、余分な伝導路があったり、筋肉細胞の一部が勝手に興奮したりして不整脈は生じます。これには、先天性、感染、変性、高血圧、加齢などが原因になります。また心臓に異常がなく、貧血、脱水、甲状腺機能異常、食道からの機械的刺激、精神的要因などにより生じる場合もあります。

治療は、不整脈の原因・種類により異なります。緊急を要する電気的除細動(最近街でも見かけるAED)、ペースメーカー植え込みから抗不整脈薬による薬物療法、息こらえ、頚動脈マッサージなどが有効な場合もあります。最近では、高周波を用いて不整脈の原因部分を焼灼して根治する治療もあります(カテーテルアブレーション)。

さて、自覚症状がない不整脈はすべて放置していいのでしょうか?
次回は、最近注目されている不整脈“心房細動”について解説します。

小麦を食べるのをやめてみよう!(2)

2016-03-07 18:16:47 | 健康・病気
 次に、糖質としての小麦です。
 最近、「肥満解消や血糖を下げるためには、主食(米、パン、麺類)やイモ類を制限しよう」という糖質制限食が脚光をあびています。なぜなら、糖質は急激に血糖を上昇させ、膵臓から大量にインスリンを分泌させます。インスリンには、血糖を下げる作用のほかに、余分な糖を脂肪に変換し体に蓄える働きがあり、結果として肥満になります。 したがって、いかにインスリンを分泌させない(=血糖を上げない)食事をとるかが肥満解消の鍵になります。
 ある食品の血糖上昇率を、ブドウ糖を100として相対的に評価したものがグリセミックインデックス(GI値)と呼ばれます。ここで、小麦でつくったパン、クッキー、ケーキはGI値がとても高いです。なぜなら、小麦に含まれるアミロペクチンAという物質は、砂糖より血糖上昇スピードが速いからです。したがって、糖質のなかでも小麦が一番太る原因になりやすいのです。

 さらには、小麦は加熱しないと食べれないというのも問題です。小麦に含まれる糖質と蛋白質は、加熱されて終末糖化産物(AGE)へと変化します。AGEはこんがり薄茶色に焼けたクッキーなどの表面に含まれますが、この変性した蛋白質が細胞の機能を低下させ老化の一因になると考えられています。

 そして厄介なことには、小麦には中毒性があります。消化されると血液脳関門を通過できるポリペプチド混合物(エクソルフィン)になり、脳のオピオイド受容体と結合し、感覚的な恍惚状態をうみだします。あの甘い味を覚えてしまうとまた欲しくなるという、小麦は食べる麻薬といわれる所以です。

 無論、小麦は昔から食料として利用され、小麦がなかったら人類の繁栄もなかったと思います。しかし現在の小麦は、高カロリーで昔の小麦の40倍ものグルテンを含むように品種改良されています。大量の化学肥料と高度な灌漑技術を使って収穫量が増えましたが、最近では栽培した土地の塩害、地下水汚染、水不足なども深刻な問題となっているようです。

 小麦は、人類を餓えの恐怖から救いましたが、その一方で多くの肥満者をつくり新たな病気を作っている可能性が示されています。 
 皆様は、この小麦と今後どのように接していきますか?

参考図書:”炭水化物が人類を滅ばす”   夏井睦 
             ”「いつものパン」があなたを殺す“ デイビット・パールマター