経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

 武士道の考察(111)

2021-07-08 18:30:05 | Weblog
 武士道の考察(111)

(武士道の成立)
 武士は登場の原点において半合法的土地所有者です。この曖昧な権益を護るために彼らは戦士になります。戦闘技術の専門家になります。技術技能の練磨は美意識を涵養します。
 反合法的土地所有者である武士は契約によりその権益を護ります。契約は団結を産み、戦闘技術は家職として受け継がれます。伝統としての技術の所有者という意識から名誉の観念が生じます。
 武士は戦闘のプロです。死を見つめ死を共有します。死の共有という一点ゆえに武士は平等です。契約の焦点は、命捧げます/命頂きます、です。忠誠と名誉の観念はその奧に叛乱の権利を含みます。契約は衆議になります。
 武士の団結は所有の保証と引き換えに身体を与えることにより成り立ちます。身体は常にものの役に立つべく鍛えられ顕示されます。死の共有は、身体の共有です。ここに男道が成立します。武士の心情の基層は男道です。
 武士が農村から都市に移住することにより武士は治者になります。男道の上に治者意識が重なります。男道は士道になります。武士の経済官僚としての体験は職能意識を磨き上げます。武士が富を失いつつも治者意識を失わないことは名誉の観念を先鋭にします。やせがまん、の美意識です。
 治者意識と叛乱の権利は幕末維新期の草莽の処士たちにより自覚され遂行されます。結果は自己の階層の否定です。「自己の否定を介して自己を自覚する存在を主体」と言います。
 武士は上に述べた意識・観念・情操・行為のすべてを総括します。では武士は黒船来航を機にして起こる幕末維新の危機に、どのように関わって行ったのでしょうか?
                                   111
「君民令和、美しい国日本の歴史」文芸社

コメントを投稿