一つ前の記事の続きです。
さて、一人で名古屋までの気ままなドライブを楽しむはずが、この日初めて出会った同乗者二人と一緒に行くことになってしまいました。ちなみに二人とも後席に座っていました。オンナの方が自分の座っている運転席の後ろ、オトコの方が助手席の後ろというポジションでした。クルマを走らせると、オトコの方が少しでも何か喋らないとと気も使っていたのでしょう。ひたすら今日までの自分の境遇について話を始めました。これがまたよく喋る人なんです。でも自分もこの二人を少し知りたいと思ったと言いいますか、なぜサービスエリアでヒッチハイクなんてしてるのか興味もあったのですが・・・。
聞けば二人はこの日の4日前にあたる9日まで石神井に住んでいたとのこと。会社の借り上げのアパートで暮らしていたそうです。会社と言ってもそこからクルマに乗って現場へ向かい仕事をしていたようです。あまり詳しくは聞かなかったのですが、同僚たちと毎日どこかの建設現場までクルマで行って何かの作業をしていたそうです。他の同僚や先輩たちは日当が一万3千円だったそうなのですが、彼は中学までしか出ておらずクルマの免許も持っていないということで他の仲間と比べて約半額の日当7千円で働いていたとか。ただ賃金に対しての不満みたいなことは少なくとも言ってませんでした。千葉や八王子、立川など様々な現場に行ったみたいですが、首都圏の地理にはまったく疎い感じで、聞けば山口の彦島から東京に出てきたのもつい3ヶ月前とのこと。
年齢はたしか二人とも25歳と言っていました。卒業後は地元でアルバイトをして生計を立てていたようなのですが、働いても働いてもお金が貯まらないので二人で東京に出てきたとか。でもその喋りがなんとなく幼稚な感じなんですよねえ。子供の頃にどういう環境で育ってきたのかは存じませんが、すべてにおいて考えが甘いと言うか、とにかく延々と話を聞いていた限り、世間を知らなすぎるのです。どうやら東京に出てきて始めはIT系の企業で働きたかったとか。決して悪い奴ではなさそうなんですが、いじめられやすいタイプと言いますかねえ。
この日までの彼らの経緯を時系列に簡単に書きますと、新年早々の7日に仕事を辞める旨を親方(←という言い方をしてました)に告げたそうです。いきなり辞めると言われた親方は予想通り激怒。二人のためにその借り上げのアパートの更新もしたばかりだったそうで。その代償として親方に指輪を取りあげられてしまったとか言ってましたね。一方でそもそもこの3ヶ月間、オンナの方はいったい何の仕事をしていたのでしょうか。
一文無しでヒッチハイクをして故郷である山口県まで帰るべく、9日の朝に住まいを飛び出し、始めは関越道の入り口である練馬インターに向かったとか。山口県に行くのに関越道に向かうところがまた無知と言いいますか、住まいから一番近い高速の入り口がきっとそこだったのでしょうな。しかしさっそくヒッチハイクを試みるもうまく行かず結局は埼玉県の新座まで歩いたとか。しかしあるドライバーから「西へ向かうなら関越ではなく東名高速でしょ!」と教えられ、今度は新座から東名の用賀までまた歩いたそうです。これには驚きましたねえ。歩いたら何時間くらいかかる距離なのでしょうか。考えたこともありません。
そうそう、やはりというか体臭がかなりきつかったんですよね。私はタバコを吸うからと言って走行中に窓を何度も開け閉めしていたのですが、別に煙を外に逃がしたいからではなく臭いを外に逃がしたいと言うのが本音でした。彼らの話を額面どおりに聞くともう5日は風呂に入っていないということなんですが・・・。
話がそれましたが、その後12日の夜まではもうホームレス状態。用賀の入り口でひたすらヒッチハイクしていたそうで。始めはワンボックスタイプの乗車定員が多いクルマを狙っていたようですが、何度もやんわりと断られ、しかたなくトラックに方針転換。やっと乗せてくれるトラックに巡り会い、そのトラックで牧の原サービスエリアまで乗せてもらってきたとか。私に出会う前の日、12日の深夜に到着したとか。しかしトラックのドライバーによると、あれは一応ベンチシートになっていますが助手席に二人乗るのは違反なんだそうで。ワンボックスは一人で乗車しているパターンが少なく断られるし、トラックは違反をさせてドライバーに迷惑をかけると知り、きっと乗用車に一人で乗車しているクルマにめぼしをつけたのでしょう。でも牧の原でも何台も断られたみたいでした。サービスエリアの建物の中で睡眠を取ろうと試みるも寒さで何度も目が覚めてしまったとか。そりゃそうでしょ、たったそれしか着てないんじゃねえ。
続いて彼の話題は地元に関することに移ります。彦島って昨日調べてみたのですが、下関の辺りなんですね。瀬戸内海に面していて島といっても本土とは数十メートルしか離れておらず、橋もかかっているようで。地元ではネガティブな意味でヒコットランドとか言われているそうです。具体的な話は割愛しますが、彼の故郷に対する愛情、思いみたいなものを随所に感じました。子供の頃はその本名や体系から「カメ!」と呼ばれて馬鹿にされていたとか言ってましたね。いやいや別に私が聞いたのではなく彼が勝手にいろんなことを話していたんですよ。もう東京になんて出てこないでせいぜい福岡辺りで仕事探せばよかったのにと何度も思いました。彼の奥さんはかなり体調が悪いようでしたのでちょっと心配です。サービスエリアって医務室とかあったかな~。少なくとも早く医者に診てもらうなり薬を飲んだ方が良いのですが・・・。
そして予定通り上郷サービスエリアに到着。いよいよ彼らは愛知県に入りました。でもまだ山口県までは半分も行ってないですが。クルマから降りる時の二人はかなり寂しげな様子に見えました。きっとまた何度も断られながらヒッチハイクしなければならないことに対する不安もあったことでしょう。なんとなく同情に近い感情になりました。そして彼らと知り合う直前に牧の原サービスエリアで買ったまだ空けてないペットボトルのゆずジュースを差し上げることにしました。きっとこの数日間は水とサービスエリアの無料のお茶しか飲んでいないことでしょう。降り際にオトコの方が「何か食糧もいただけないですか?」と言って来た時には正直寒い思いもしました。食糧っていう言い方がなんともねえ・・・。
なんだか愚痴や悪口みたいなことも書いてしまいましたが、色んな人にお世話になりながらも交通費ゼロで生まれ故郷に帰れることへのお手伝いを私も少なからずさせていただいたのだからどうか許しておくれ。
万人に共通して言えることは、故郷は誰にとっても良いものです。
無事に着いていれば良いのですが・・・。