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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ロパートキナの「白鳥の湖」 ③

2009-12-01 03:42:39 | BALLET
第2幕

王子の誕生日の祝宴を、赤と青の衣装に変えた道化が華々しく知らせます。
グレゴーリー・ポポフ、バネの効いた身体が繰り出す素晴らしい跳躍もさることながら
超高速ながらきっちりと顔がセンターに着いてくるメリハリのある回転も圧巻。

王妃の手をとって主役の王子が登場する間をおどけて通り抜けたりして
道化らしさもバッチリです。

白い衣装と中世の貴婦人のような先端にヴェールのついた三角帽子を身につけた花嫁候補たちが踊り、
王子は、王妃から手渡された白い花束をこれと決めた姫に手渡さなくてはなりません。
オデットを思って、心ここにあらず・・・の王子、頭を垂れて待つ姫君たちの前をサッサと通り過ぎ
末尾に控えていた道化に渡してしまいます。
付き添いの家族に嘆く姫たち。

と、そこに現れたのはロットバルトを後見とした黒鳥のオディール。
艶やかな姿に満場の注目が集まります。

ここで、各国からの賓客の踊りが・・・。
ディベルティスマンの最初はスペイン。



赤い衣装のベテランのバイムラードフは前回公演に引き続き、良い味を出していますが、
黒い衣装の金髪(もとい、ブルネットでした!)長身の若手、ヨアンニシアンもシャープでキレがある踊り。
この踊りは大好きなので気分が上がります。

ナポリ、チャルダーシュ、と続きますが、
この辺り衣装の色彩がなんともいえずステキ。
ナポリの珊瑚っぽいちょっとくすんだ赤、ウェッジウッドの陶器のようなブルーの組み合わせとか、
上品であっても単純なパステルでないちょっと醒めた色合いがマリインスキーらしいなと。



最後のマズルカの男性が全員口髭を装着していたのがイイ感じでした(笑)。

そして黒鳥オディールと王子のパ・ド・ドゥが始まります。
何度もロットバルトが思わせぶりにオディールと王子の間に割って入り、
王子の恋心を掻き立てます。
背景に苦しむオデットの姿が浮んでは消えますが、
巧みにその姿の前で視線を牽き付けるオディールに目を奪われて、
王子はそれに気がつきません。
ロパートキナのオディールは媚びたり手練手管を弄する・・・というよりむしろ、最初から
勝利者として振る舞い、あのオデットが堂々と・・・と王子は感激してすっかり乗せられてしまいます。

決めのポーズで一瞬ヒヤリとする場面がありましたが、ロパートキナの重心が崩れそう?と危惧するまもなくすぐにコルスンツェフがサポ-トを入れてアラベスクに移ったので、気がつかない方も多かったのでは?
彼はサポートにも安定感がありますね。

王子のソロ。
この場面、オディールの存在が主で王子は従という見方が一般的かと思いますが
期待以上の伸びやかで素晴らしいソロ。
長身でバランスの良い肢体のコルスンツェフは、ジュテ・アントルラセもジュテ・アントゥールナンも
完璧でとても姿勢が美しい。
マネージュもエレガントさを保ちつつダイナミズムもあり、本当に良いダンサーだなと再認識しました。



オディ-ルのグラン・フェッテ・アントゥールナンもきれいに決まり、
最高潮の盛り上がりの中、王子は花嫁に渡す白い花束をオディールに捧げます。
誓うか?とロットバルト。
誓います!と王子。
その瞬間、背後に苦しむオデットが大写しになり、オディールは花束をワッとバラけさせて
王子に浴びせかけてロットバルトとともに去っていきます。

なぜ?王妃の膝もとで問いかけ、広間を左右に駆け、そしてすぐにオデットのもとに行かなくては!と
広間から駆け出す王子。
自分のプロポーズしたのはオデットではなかったのか?!という驚きと
何とかしなくては!というはやる気持ちが一連の動きの中にとても自然に凝縮されていて
演技としてもこなれていました。

なんてことだと驚く道化、気を失いそうになる王妃・・で幕。


第3幕

湖畔に集う白鳥。
青い薄闇の中で静かに佇む白鳥たちの姿が、観るものを幽玄の世界に誘います。
2羽の白鳥が踊っているとオデットが傷ついて戻ってきます。
ついでロットバルトも・・・。

王子が登場するときには、白鳥たちがオデットを彼の目から守っています。
静かに一人ひとりの白鳥を確かめてオデットを探す王子。
裏切りに心傷つくオデットは彼を拒絶しますが、彼の優しさ・真意が、伝わり、
アダージョのパ・ド・ドゥが繰り広げられます。
もう、この二人の醸し出す静謐な愛の世界は別世界としか言いようがありません・・・。
音楽と視覚の妙なるハーモニーに心をゆだねるのみ・・・です。



そんな二人の前に立ちはだかるロットバルト。
オデットを高々とリフトして、二人で力を合わせてロットバルトに対抗します。
彼女から力を得た王子がロットとの対決を制し、片羽をもがれたロットは力を失い、
倒れてしまいます。

悪魔の亡骸を見て、自由を実感するオデット。
抱きあい、そして二人で夜の終わりを感じて光に向かったポージングで終幕。

はぁ~。
本当に名作ですね。
それを高純度の決定版で見せていただいた、という感じです。
やっぱり、ロパートキナの白鳥は絶品・・・