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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚宙組「王家に捧ぐ歌」東京公演

2015-08-28 06:11:51 | TAKARAZUKA
もうすぐ8月30日の千秋楽を迎えるこの公演、
宙組7代目トップスター朝夏まなとお披露目公演として、7月31日の初日から3回、間にバレフェスをはさんで後半3回観ました。
主要3役が初演とはまた違った味で、しっかりと役として生きていたところに加えて、脇のエチオピア、エジプト両陣営の立場や考え方の違い、推移、現代にも通じる戦争・国家・平和の意味など、大きなテーマが男女の愛憎・父娘の情のタペストリーから浮き上がる、演出家木村信司の真骨頂とでもいうべき作品を、新生宙組がそのコーラス力、団体力で華麗に蘇らせた素晴らしい再演だったと思います。



個々に感想を・・・

■ラダメス(エジプトの若き武将) 朝夏 まなと

ステキなTOPさんになられた・・と感動。
もともと金管楽器のように響きの良いお声の持ち主でしたが、時折トランペット奏者がやらかしてしまうように”吹かす”ときがあるのが気になっていたのですが、この作品ではほとんどそれが見受けられず、歌の先生から声帯に負担をかけず、全身で発声する方法を伝授されたとかで、公演毎の声の好不調もなく、力強い歌声・雄たけびを効かせてくれました。
と同時に、平和を望む理想化肌のイデアリストとして、現実主義のエジプト人の中では浮いてしまい、却って外国の王族であるアイ―ダに自分に近い心を見出して惹かれるという役作りで思いだすのが、宙組異動第一作の「銀河英雄伝説」で敵対する勢力との捕虜交換式で敵軍の将と心通わせるキルヒアイス。
一貫した高潔な(故に友に囲まれていてもどこか孤独な)ヒーローが似合う人だと再認識。
ラストシーン、石室でアイ―ダと互いを暗闇で探しあい銀橋のセンターで手探りでまみえるところから頬が涙で濡れる熱演。気持ちの入った演技に惹きこまれました。
フィナーレ・ナンバーでの黒燕尾で長い腕を伸ばして落とした時に覗く細い手首が魅力的。大空祐飛さんが観劇後楽屋を訪れた時にそこがツボとおっしゃって、だからカッタ―(下シャツ)は着ない方が良いかもねとおっしゃったという話を聞いた時には思わずゆうひさん!!と膝を打ちました^^
デュエットダンスの時の実咲さんとの体格バランス差の加減やリフト回転の安定感など、ダンスもステキ。

■アイーダ(エジプトの囚人、エチオピア王女) 実咲 凜音

清らな美しさを持っているけれど、現実を見据えつつ、自分の中での価値観の優先順位はしっかりと持ち続けることのできる芯の強さも持ち合わせている女性。
オペラ「アイ―ダ」のアイ―ダはエチオピア王女としての自我が強く、エジプト将軍との愛に大いなる葛藤を覚えるのですが、この作品の実咲さんのアイ―ダは王女として周囲から望まれることにとまどいを覚え、現実の中でエジプト人にさげずまれようとエチオピア人に失望されようと、プライドよりも命を大切に考える、真っすぐで行動的な女性として造形されているように思いました。
ラダメスに心動かされる様を執拗に批難する兄ウバルドに対する「あら、いたの」のクールな言い方が好きでした^^;
そんな彼女が、強がってラダメスを突き放した時、ラダメスがそんな男を愛したのか!と怒りを見せるとプルプルと全力で頭を横に振る様は大層可愛らしかったです^^

■アムネリス(エジプト王ファラオの娘) 伶美 うらら

好評を得、芸術祭優秀賞も獲得したこの作品が12年の長きに渡って封印されてきたのは、アムネリス役の適任者がいなかったからでは・・・。
壇れい以来の美人娘役として一国を背負うファラオに自ら名乗りをあげるアムネリスを演じる重圧は特に以前から課題と言われた歌唱面で大きかったことと思いますが、美しさ、存在感、そして歌唱面の飛躍的な進歩は今後の彼女の躍進を期待させるだけのものがありました。
もともと、ファラオの一人娘として溺愛され、自らが王家の血統を絶やさぬために次期ファラオにふさわしい人物に嫁ぐ身であること、物質的な豊かさ・人々が自分に向ける愛全てがその対価であることを知る彼女は、初めてその自然の摂理と思っていたことが絶対ではないのだと、ラダメスの拒絶によって知らしめられます。
そして父王ファラオの暗殺・・・。そこで、彼女は自らの義務を果たし、もっとも辛い決断―父王の死を受け入れること、愛するラダメスの処刑宣告を同時に果たさなくてはならなくなり・・そして、ラダメスを密かに救おうとして再度の拒絶に会うという追い討ちも。
一度は父王を暗殺したエチオピア勢力の根絶を図りますが、最後にはラダメスの精神を理解し、戦いの空しさを知る彼女が賢帝としてその後エジプトを立派におさめたに違いない・・と、立派な「アムネリスの成長譚」としても読める作品に仕上げてきた伶美さんにやはりこの人ならではのスター性を感じました。
オペラでいつも楽しみにしていて、時折手ひどく裏切られるアムネリスのブドワールの場面、女官 にかしずかれる優雅な王女・・の姿も堂にいって、きっと重いであろう豪奢なヘッドドレスも含めたドレスの着こなし、身ごなしも娘役ならではの優雅さでありつつ、「エチオピアを滅ぼしに行きましょう!」の雄々しさも格別。
新人公演で主演の同期・桜木みなとに「ずんちゃんの幼馴染設定だから!」と挨拶に行き、同じく同期の七生眞希の化粧を真似したと言う新人公演のイケメンエジプト兵の彼女を観られなかったのが返す返すも残念ですxxx

■ウバルド(アイーダの兄) 真風 涼帆

星組3番手から宙組2番手に。この組替え、大成功でしたね!
もとより長身でザ・男役な面長のクールフェイスというなクラシカルなスター性を持つ彼女。
ギラギラ最下に至るまで自分の個性を主張するのがデフォの星組ではややおとなしくおっとりとした下級生ポジの枠組みで観られがちでしたが、素直でスマートな宙組生の中にあっては時折ギラリと光る星生え抜きの濃い輝きが良いアクセントになって、馴染みつつも一際カッコ良いウバルド兄さん。
冒頭の 時のさまよい人から中盤ナイフをかざしてアイ―ダを挑発し女たちをあおる場面、終盤のファラオ暗殺まで、初演では大した役ではなかったというウバルドという役をロミジュリで言えばティボルト格まで引き上げたのは彼女の功積ですね。
父王をかばうアイ―ダをかばうウバルドの図、妹に基本邪険にされながらも兄としていざという時には盾になる。
舞台袖からセンターへ一瞬で疾走するシャープな身ごなしも魅力。
ファラオ暗殺を決意したときの「神に赦されている」との独善。ためらうことなく自害しつつもエジプト側に火種を残すインパクトある台詞回しなど、センターをとったときの存在感・表現力も充分で、宙組は強力な補強をし得たと確信しました。
そしてなんといってもフィナーレ最初の通称「マカゼファイブ」
クールパステルのヅカ衣装に身を包んだエチオピア3、ラダメスの親友エジプト将校2人が仲良く(笑)登場して銀橋に並ぶ時、2番手マカゼセンターの収まりの良さといったら!
黒燕尾のまぁさま(朝夏)のソロの途中で一緒に踊るまぁマカの並びも新鮮で、これからの宙組の安泰感がいやがうえにも増したことでした。

■アモナスロ 一樹 千尋
■ファラオ 箙 かおる

初演の王、専科のお2人が同じ役を12年の歳月の後、再び演じます。
アモナスロの一樹さんは企みごとを行う2面性、国が滅びて尚、支配者としてふるまう狂気、人間というもののどうしようもなさ、を巧みに表現。
箙さんは独特のメイク、豪奢な衣装、ブランコで天井からつりさげられて降りてくる演出などに負けない強く響く声とファラオの人間的な大きさを大らかに演じ、さすがの専科という感じ。

■ケペル(ラダメスの戦友) 愛月 ひかる
■メレルカ(ラダメスの戦友) 桜木 みなと

ラダメスの戦友2人。
メレルカの桜木さんは新公で主役を演じるとあって、本公演ではあまり主張せず、最下ながら3人の中では一番年上設定で落ち付いている軍人という役作りだとか。自信に満ちた笑顔がどこか元花組TOPスターの真飛聖さんを思い起こさせます。歌も安定の実力派。
対するケぺルの愛月さんはこの公演から正3番手の扱いに。
ラダメスが理想を説く時に何を言っているんだというとまどい、裏切り者はおそらく自分だ、と告白した時になぜ・・!!と激しく慟哭するなど、対ラダメスとして細やかに心を動かして、それを表情に出しながら、その表情が男役としてカッコいい、という愛月さんの成長に、これが新公時代には本役の完コピと言われていた愛ちゃんか・・と感慨深いです。
凱旋のダンス、一度だけ観た2階席からの光景がすばらしく・・・。
1人1人、菱形のスポットライトが当たり、それが客席側に頂点を持ってきた三角形の陣営になっていて、奥の方に鏡でも使っているのか、どこまでも果てしなく金の鎧のエジプト兵が続く・・ように見えて、場面としての拵えも素晴らしいのですが、冒頭愛ちゃんのソロから始まるこのエキゾチックなダンス、センターの気合と存在感もバッチリでした。
実際に1人1人を観ると一番キレているダンスを見せているのは和希そらくんだったりするのですけれどもね^^

■カマンテ(エチオピア王家の元家臣) 澄輝 さやと
■サウフェ(エチオピア王家の元家臣) 蒼羽 りく

対するウバルド兄さんの脇を固めるエチオピア勢。
澄輝さんはアイ―ダに対してかなり大胆に厳しいことを言いますね。その歌と同様、表情も視線がキッと定まって、クールな面を出してきました。
アイ―ダのセリフ「優しかったお前が・・」が唯一サウフェの役作りの源となったのか。
キッと思いつめた風情のあっきー(澄輝)カマンテに対してりくサウフェはいつもどこか悲しそう。
戦乱の祖国で様々な辛い思いをし、今エチオピアの王族とともにエジプトの虜囚であることに深い悲しみを抱いている風情。そんなナイーブな少年(青年?)までもが、ウバルドの夢でお告げを得た=ファラオ暗殺は神に赦されている!の宣言に目を輝かせ 任務を遂行した後は迷わず自害し果てる。
全く疑問を持たず粛々と復讐劇に加担するというのがどこかリアルで恐ろしい。
冒頭のダンス、横たわるあっきーを飛び越えてターンする、という振りがあり、さすがダンサーだけあって不安はないなと安心して観ていたのですが、ご本人は決して踏んではならないと相当緊張していらっしゃるそう^^

フィナーレで2番手マカゼセンターの「マカゼFIVE」、皆クールパステルのマカロン色のお衣装がお似合いですが、りくちゃんの紫がかったクールなブル―が黒塗りに映えてとてもお似合い。
ただ立ち位置が、愛ちゃん3番手確定により、愛りくシンメだったのが、学年順で、あっきーが上という扱いになり、新公主演トップ候補に名のりをあげた下級生ずんちゃん(桜木)とのシンメ位置になったこと、それに従い、パレードでも階段降りをせず、路線ではないスターの凛城さんと並びの扱いになっていること・・・にファンは若干胸が痛みますね。。。去年は愛月さんが初主演を決めたバウ、今年は桜木さん主演に出演も決まっているので花で言うあきらくん(瀬戸かずや)ポジを目指す感じになるのでしょうか。ダンスが素晴らしく、心のある芝居が出来るヒトなので、これからも長く活躍してほしいと願っています。

■ネセル 寿 つかさ
■ヘレウ(神官) 凛城 きら
■メウ(神官) 松風 輝

そして、愛月さんバウで上級生別格として2番手どころを務めた凛城さん、白塗りで眉を消し、ぽってりとした唇が映える無表情な神官、お似合いです。ラダメスを厳しくいさめつつも実はかなりの生臭坊主という組長すっしーさん(寿)をセンターに、芝居功者りんきらさん、実は美形なのにそれをけどらせない(笑)濃い演技のまっぷー(松風)という神官チームも「美人選び」の場面で”お金と力”を誇示し、見せ場がありました。
すっしーさんが公演中ずっと喉の調子が悪そうなのがちょっと残念。
フィナーレの黒燕尾で白塗りメイクのままシケを垂らした男役ヘアになったりんきらさんが色っぽくてちょっとツボでした^^;

■ワーヘド(女官) 純矢 ちとせ
■イトネーン(女官) 花里 まな
■女官 愛白 もあ
■女官 結乃 かなり
■タラータ(女官) 綾瀬 あきな
■女官 花咲 あいり
■アルバア(女官) 彩花 まり
■女官 瀬戸花 まり

そして”美人選び”の場面といえば・・・の女官たち。
2番手娘役どころから女王までなんでもこなせる美声のせーこちゃん(純矢)。
女官達の一人として衣装にも立ち位置にも差がないのが違和感なれど、細やかなリアクション、アムネリス様への絶対の尊敬のまなざし、アイ―ダへのイジメ場面で手ぬぐいをひねって打ちすえ、、アムネリス様が現れると冷静にそれを柱の陰にかたずける手際の良さといい怖さが際立ちまぎれもなくあなた様が女官長・・と言いたくなる迫力に満ちていました。
そんなせーこちゃんの本編での役の軽さとのバランスをとったのがエトワール起用で、それに割をくった形になったのが今回退団でエトワールを切望していた花里まなちゃん。
上品で、歌も上手で立ち居振る舞いの綺麗な娘役さんで好きだったのですが、残念です。
綾瀬あきなちゃんの笑顔のときに^^となるアイラインなど女官たちはアイメイクにこだわりがありそう。

■アウウィル(女官) 瀬音 リサ
■ターニ(女官) 遥羽 らら

「王家」再演が決まった時にまず、話題になったのが今回の「スゴツヨ」はダレ?
12年前の星組初演で、後に宙組TOP娘役になる陽月華ちゃんが抜擢された役、というのと、「エジプトはスゴイ、エジプトは強い」というなんとも言い難いインパクトのある歌詞と耳について離れないメロディのおかげで・・・。
GOLDまばゆい女官たちの中でこの2人だけ三日月のようなヘッドドレスをつけている、というモブ演技の多い娘役の中では美味しい役どころ。
つぶらな瞳なれど女子力高く、柔らかな美声のありさちゃん(瀬音)とこのところバウ2番手娘役ポジなど押されている?運動会で俊足も披露した遥羽ららちゃんが務めます。
”美人選び”神官たちが美人コンテスト?する場面、シナを作る女官たちの中で1人、ありさちゃんはまさかの力持ちアピール。ボディビルダーのポーズをとってすっしーさんの眼にとまります。日によってはラダメスの「うぉおおおお」の雄たけびも!^^;
2人目を選ぶときに一斉に女官達がボディビルダーポーズをとる中今度はキャピッとぶりっこポーズをとるららちゃん。2度とも驚いてマジマジとみるせーこちゃんの表情がツボ。

■ファトマ 美風 舞良
■ヤナーイル(囚人) 大海 亜呼
■フィブラーイル(囚人) 花音 舞
■マーリス(囚人) 桜音 れい
■マーユー(囚人) 真みや 涼子
■ユーニユー(囚人) 美桜 エリナ
■イブリール(囚人) 小春乃 さよ

対するのが、美風舞良副組長、アイ―ダ付の女官 ファトマ率いるエチオピアの女たち。
故郷を思って歌うアフリカ民謡的なゆったりした歌を歌うときにこの宙組自慢の歌ウマ娘役揃いのエチオピアメンバーが光ります。
煌びやかなエジプト勢との対比で簡素な衣装に黒塗りではありますが、それぞれアフリカ女性らしいヘアスタイルなどにもこだわりが。
特に真みや涼子さんの大きなお団子の野趣と腰を大きくゆったりと振って踊り歌う大らかさにアフリカの大地を感じました。彼女はいつも娘役芝居をちょっと超えた感触のある芝居心溢れる演技を見せますね。
今回で退団の名ダンサー大海亜呼さんにダンスの見せ場がなかったのが残念といえば残念ですが、生命感溢れる彼女ならではの存在感はしっかりだしてきていました。
副組長美風舞良さんはしっかりとしたテクニックで難しい発声も難なくこなし、宙バウで歌ウマ娘役と認識した小春乃さよちゃんがこのチームに入っているのにも安定感を感じたことでした。

■エジプトの戦士(伝令1) 天玲 美音
■エジプトの戦士(伝令2) 風馬 翔
■エジプトの戦士(伝令3) 和希 そら

ファラオのいる広場に駆け込み、戦況を絶叫しながら伝えると息絶える・・・というインパクトのある役割「伝令」。
濃いメンツが揃いました。
美声の天玲(の伝令って・・名前で選ばれた?^^;)さん、歌もダンスも・・・の翔・そら。
翔くんは兵士としてのふるまいにも雄々しさがあり、そらちゃんはダンス場面ではセンターでなくても目を奪うちょっとした振りのセンスの良いさばきかたに目を惹かれました。

■伝令 瑠風 輝
■エジプトの戦士 春瀬 央季

ラダメス将軍率いるエジプト軍の大勝利をアムネリス様に伝えるのが瑠風くん。今回新公ウバルドで2番手真風くんの役を務めて好評だった歌ウマ長身の98期。期待の若手ですね。他組の98期男役といえば、月の暁千星、星の綾凰華・天華えまといったところ。目が切れ長で、笑顔がちょっと左右対称でないので下級生のうちから可愛らしさで人気がでるタイプではなさそうですが、今回、真風くんにお化粧を観てもらっているとかで、見せ方であと一歩の華がでてくればと期待しています。
そして、宙組らしい長身のきれいどころが揃った94期の春瀬くん。
並いるエジプト兵士の中でもそのクールでエキゾチックな美貌ですぐ春瀬くんがいる、とわかりますね。
その先・・・の芸で何か秀でたものがあれば・・とずっと思っているのですが^^;

■エチオピアの戦士(歌手) 星吹 彩翔
■エチオピアの戦士 美月 悠
■エチオピアの戦士 星月 梨旺

宙組の宝、モンチ(星吹)が凱旋のエジプトにエチオピア捕虜として引きだされた瞬間、煌びやかな広場の様子にとまどい、これが自分たちの敵の実力か・・と驚愕して歌う「光ってやがる!」の美声にいつもほれぼれしていました。
演技も歌もダンスもそつなく、役を与えられるとそこの命を吹き込み、団体戦では下級生チームを率いてまとめる、本当に力のある中堅男役です。愛りくバトルの93期にあって、しっかりと宙を支えているモンチ、いつまでもいてください。
そしてエチオピア人って黒塗りだけれど、王女アイ―ダ王子ウバルドを筆頭に相当の美形ぞろいでは・・・という疑いが確信に変るさお(美月)りお(星月)。
ラダメス将軍率いるエジプト軍のエチオピア討伐の場面、1人のエチオピア人を5人のエジプト兵が囲み、刺し、切り、踏みつけ・・をたっぷりとスローモーションで見せながら、愛月、桜木の将兵格がとどめをさし、さらに5人が一斉に槍で刺す・・というすさまじい戦闘場面で、その激しい場面をスローモーションで見せる宙組生の体力筋力芝居力に、とりわけ前方席では愕然と見入ってしまったものですが、やはり、生徒たちはこの場面、筋トレ(笑)として、ムリな体勢もがんばっているのだとか^^;
常に大人数の豊かなコーラス、迫力のある戦闘や群衆場面が続くのですが、舞台裏では大変なことになっているらしく、例えばエジプトを称える歌を裏で歌った直後にはエチオピア捕虜として引きずり出される・・・という国や立場を超えた活躍を皆が一丸となって行っているとのことですが、その宙組の総力結集が素晴らしい舞台と言う形に見事に結晶した今回の公演だったと思います。







第14回世界バレエフェスティバル・ガラ 2015年8月16日

2015-08-17 04:37:13 | BALLET
楽しかったバレフェスの夏も最終日。
終らないで!と叫びたくなるけれども、これほどのものを見せていただいたのだから・・・と幸福をかみしめたりも。

2015年8月16日(日)14:00開演
第4部まで終了で18:00.通称「ファニー・ガラ」の第5部も入れて19:00頃の終了だったでしょうか。

■第1部■ 

「ドリーブ組曲」
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン

これは、オペラ座の名カップル、長身痩躯のジョゼ・マルティネスとやはり長身のアニエス・ルテステュのガラでの定番。ジョゼの振付アニエスデザインのお衣装。大きな白襟とロイヤルブルー~紫の短い丈のジャケットの男性のお衣装が爽やかでステキ。マチアスが今回組むはずだったミリアム・ウルド=ブラ―ムと初めてこの作品を踊った時にはプチな2人が長身ダンサーでインプットされている作品を踊るのが一瞬違和感でしたが、小柄でもこのお衣装は映えるのねと思ったことを思い出しました。
作品としては、角度の変化や逆方向への回転など、細かいところでテクニックを披露している玄人好み?で格調の高いものではあるのですが、素人が見てオオッと盛り上がるポイントがないので、ダンサー自体にオ―ラがないと退屈に思えてしまうかも。
フェスのオープニングとしては見た目にも爽やかでマチアスもBプロ最終日の乱調から戻していつものキレが戻っていたように思います。

「三人姉妹」
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

サーモンオレンジのハイウエストのミディ丈の薄物ドレスのサラも美しいけれど、なんといってもオリーブグリーンの軍服のムンタギロフが軍服が似合ってとてもステキ。技巧的な振付もサラリとこなすのがムンタギロフの持ち味。サラは所謂古典よりもこういうセミクラシック系の作品世界の方がしっくりくるかも。
 
「雨」
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン

前回のバレフェスでもガラでこの2人がこの作品を踊りましたね。
肌色のショーツだけのシムキンと同じく肌色のスカート付レオタードのサレンコ。2人とも小柄ながらとてもバランスの良い体型で、自在にコンテンポラリーの振付をこなしていく様はバレエというものは肉体を通しての人間賛歌であることだなぁと改めて感じさせるものでした。

「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ

Bプロと同じ演目なれど、何度見ても泣ける・・・。
自分のおそらく死期を悟ったようなアイシュバルトのマルグリット。そこに走り込んで渾身の求愛をするリアブコ・アルマン。激しい回転とジャンプからの倒れ込みが若者の情熱を語ります。リフトを多用した振付が、デコルテを大きく開けてたっぷりとしたスカートの濃紫のタフタドレスのアイシュバルトの巧みなドレスさばきと相まってとても華麗。
アルマンの直情的な求愛を艶やかにいなしながらもその激情に心動かされ、この恋に残りの命を燃やしてみようかと揺れ動く気持ちが振りと仕草とあの小さなお顔の中心で燃える瞳に現れていて本当に引きつけられ、マルグリットの心が手に取る様にわかる。
最後、胸元の赤い花をアルマンの燕尾服のボタンホールに挿して艶然と微笑み、走り去るマルグリットとあまりの幸福で胸一杯になって上手隅に倒れ込むアルマン・・・で幕。
第一部から、ガラ・パフォーマンスとは思えない入り込んだ演技に涙。

■第2部■
 
「ヌアージュ」
ディアナ・ヴィシニョワ マルセロ・ゴメス

ヴィシニョ―ワの白で裾だけブルーのグラデになったロングワンピの衣装とゴメスのレギンスが爽やかというより、ちょっと幻想的で夢の中のような美しさ。ガラで見るキリアン作品ってとてつもなく魅力的に思えることが多い。
タイトル通り、空に浮かび流れる雲のような流麗な踊りを堪能。
2人の美しさとたくましさがリフトの滑らかさ、技巧を感じさせないスローな連続性を生むのだと思いつつ、それにしてもこの2人の並び・力量の相性の良さは素晴らしい。

「カルメン組曲」
ヴィエングセイ・ヴァルデス ダニーラ・コルスンツェフ

意外な取り合わせはガラならでは。
ラテンなカルメンはお手の物であろうヴァルデスと、誠実が服を着て歩いているようなコルスンツェフのホセは似合いそうだなとプログラムを観た瞬間腑に落ちた配役。
・・・ただ、この作品のカルメンってラテンな蓮っ葉娘じゃないんですよね。もう少し練れた色気で運命を狂わせる、運命とホセとカルメンとの三つ巴の象徴的な存在でないといけないので・・。
MyBestは白い肌とあのお御脚が発光するようだったイザべラ・シアラヴォラの大人の色気にくらくらさせられたカルメンなのですが。ヴァルデスはお衣装が悪いのか(ボディが赤レース、胸元と腰にフリンジでちょっと品がない)ちょっと表層的な感じ。
ダニーラはハイウエストの黒タイツで短い丈の深緑のジャケット姿を観ると、誠実なお顔だちが地味に見せているけれども、なんと脚のラインが長くて美しいのだろうとハッとさせられました。
ホセとしての踊りは思った通り、ピッタリですね。今度は挑発するロパートキナさまのカルメンとのいつものペアでも見てみたいです。

「ル・パルク」
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ

https://www.youtube.com/watch?v=ORI_z-Xi9js

最終章・解放のPDD.
あの女性がダウンヘアで白いナイトシャツ姿、男性が宮廷髪(後ろでまとめて黒リボン)に白いフリル付きぺザントシャツにベージュ7分パンツでラストキスしたままのフリーハンドの回転を見せる有名なPDDです。
まさかまたこの演目をこの2人で観られようとは!いえ、MyBESTはイレール&ゲランなのですが。ルグリ先生もステキですね。
何度か繰り返されるイザベルが一度口に入れた手で胸元をなぞってそのまま身体のセンターを下ろしていく振付がなんともいえない大人のエロティシズムを感じさせて。完全にバレエの様式美としての美しさと大人の男女の関係性のドラマとが均衡していてこれ以上ないほど惹きこまれました。

「さすらう若者の歌」
オスカー・シャコン フリーデマン・フォーゲル

イレールが水色のルグリが赤の胸元が空いたユ二タードで踊る、何10回と観た演目。
この2人で見るとどうなのかしら・・・。
若々しい瑞々しさと表裏一体な繊細な脆さを表すイレールを強く確固としたルグリが操り絡め取っていく・・という関係性が、フォーゲル&シャコンには希薄。
それぞれに美しいダンサーで永遠の若者という持ち味があるフォーゲルくん、求心力のある強さを踊りで表現できるシャコンならまた違った、でも振付の求めるところはしっかりと表現してくれるのではと期待していたのですが。
期待が大きすぎたようです・・・。

■第3部■ 

「ウロボロス」
振付:大石裕香
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ

面白い作品。最初はアッツォ―二はベージュのドレスに黒のフリル装飾、レースの仮面、リアブコはベージュのシャツ・パンツに黒燕尾、黒の仮面をつけて楕円のライトの中で人形振りで踊る。仮面を取り、黒の装飾、燕尾のジャケットをとると今度は人形振りから解放されて・・・という、衣装とライティングと振付で凝った演出で飽きさせない。
勿論2人の豊かな表現力も存分に活かされてスタイリッシュな味わいもあり、魅力ある演目でした。
カーテンコールで大石さんもご登場。

「白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ

オーソドックスなお衣装と振付で、堂々たるボリショイペア。
アレクサンドロワのオディール演技は小悪魔的というよりは堂々と企みごとを遂行する悪の女王的な雰囲気。
ガラとしての盛り上げポイントはコーダのフェッテでの両手挙げでしょうか。あと、ラントラ―トフさんがフェッテの最後でサポート入れて更に回していましたっけ。
ラントラ―トフの王子のヴァリエーションは決めの作り方がいかにもボリショイで、ジャンプやマネージュのダイナミズムと歌舞伎のようないちいち見えを切るところ・・・大好きです^^
マ―シャはカーテンコールでも一筋縄ではいかないオディールとしてラントラ―トフ王子を翻弄。客席を沸かせていました。

「ハムレット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ

小花プリントのワンピースを着たアンナ=オフィーリアと学生ハムレットのレヴァツォフ。
ノイマイヤーの作品は抽象的なものは物語を感じさせて素晴らしいと思うのですが、ナチュラルな現代設定解釈の古典文学ものはどうも自分と相性がよろしくないようだと改めてわかりました。
2人はとても良いノイマイヤーダンサーだと思うのですが・・・。
 
「シェエラザード」
上野水香 イーゴリ・ゼレンスキー

ゼレンスキーの金の奴隷は美しいジャンプの冒頭からさすが、というオ―ラが漂っていたのですが、水香さんの持ち味とゾベイダが合わなくて、ちょっと辛かったですね・・・。

「ヴォヤージュ」
ウラジーミル・マラーホフ

この演目はルグリ先生がソロといえば「エンジェル」を踊っていらした頃、マラーホフ氏は「ヴォヤ―ジュ」というのが定番だった時代を思い起こさせられます。とても懐かしい気持ちになります。
彼の若い頃の当たり役や風のように爽やかで軽やかだった時代を思い出してしまったりの郷愁タイムになってしまいました。

■第4部■ 

「ジゼル」
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

コジョカルはAプロ「シンデレラ」Bプロで情感溢れるコンテ作品、そしてガラで「ジゼル」。
自分の持ち味や能力を発揮できる作品選びが巧みですね。
オーソドックスな白いロマンチックチュチュで踊るアリーナは美しく可憐な村娘が精霊となってなお、恋人を思いやる気持ちを持ち続けるジゼルそのものでした。
過去の名演の中ではドラマチックで愛らしいアレッサンドラ・フェリの名演技が心に残っていますが、このアリーナを観て、今、コジョカルで全幕を観たい!と思ってしまいました。
今回はPDDだけでなくヴァリエーション付き。
コボーもソロを踊るのか・・とちょっと失礼なことを思ってしまいましたが^^;
もともとデンマーク・ロイヤルバレエで活躍していた彼はテクニックは万全ですが、バレフェス出場ダンサーの技術か華か両方かが突出した才能の中にあっては地味に見えてしまうのは否めませんね。
並びがお似合い、というわけでもないのですが、アリーナをもっとも自由に踊らせることができるのは彼の盤石のサポートあってのことなのでしょう。そんな彼も今はルーマニア国立バレエの芸術監督。愛妻に導かれ、愛妻を守り抜く人生か・・としばし感慨にふけってしまいました。

「タンゴ」
振付:ニコライ・アンドロソフ /音楽:アストル・ピアソラ
ウリヤーナ・ロパートキナ  

いやいや、感慨にふける暇はない!
キャー!ロパ様!!
驚愕のカッコよさ。美しさ。あの・・・ありがとうございます、バレエファンでありヅカファンであるわたくし(たち)のためにこんな極上の舞台をご用意いただき、なんと感謝したらよろしいのかと。
ボタン2つあけた黒のサテンシャツ、長い脚を包む黒パンツにカマーバンド、煌めくエナメル短靴、シャラっとかつぐ姿が様になりすぎているジャケット使い、ショートの赤毛を時折隠す目深にかぶるハット使いも完璧なカッコよさで・・・。
脚が長く身体のラインが美しいことはクラシックチュチュ姿でも勿論重々わかっていましたが、こういうパンツスタイル、男装の麗人姿ですと、もう、ハッキリわかるなんてものでは・・。
えーと、これ、本演目ですか?それともファニーじゃないファニーガラですか?
ピルエットもシェネもちょっとした振りのニュアンスもステキすぎて終って欲しくない!と。オペラづかいでUPにしても勿論、黒スーツで踊る輪郭が美しすぎて、オペラなしでそれを堪能するのもよろしくて・・・。
眼福でした

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
オレリー・デュポン/エルヴェ・モロー

去年全幕で3組のカップルを観てそれぞれに素晴らしかったのですが、エルヴェとオレリーの格調の高さと美しさは格別でした。その素晴らしい2人による第3幕のPDD。
黒衣で舞台中央奥にたたずむオレリーを感じる上手のエルヴェ。
白シャツ黒ベストの立ち姿が絵になること。
からの黒ドレスのオレリー=マルグリットを最初は拒絶するものの、並んで手を取ると奔流のように愛おしさが蘇り・・2人が並んでシンクロする振りで踊るところですでに胸が詰まって・・・。
長身で骨格の美しいエルヴェが高々と掲げたリフトでのオレリーのポジションチェンジもキレイで、過去の同じオペラ座の某エトワール(ペッシュです)がリフトしきれずふらついていたことは水に流して、オペラ座ダンサーの「椿姫」に対する拒絶反応がきれいに溶けてなくなるのを感じました。
黒ドレスを性急に脱がせてからの肌色スリップでの情熱の奔流・・・。
ゲラン・ルグリといい、オレリー・エルヴェといい、フランス人の恋愛の描き方、深さと昇華された美しさには感服致します。

この美しいオレリーが、もうオペラ座を定年退職して、この2人の「椿姫」は多分もう観られないのかと思うと信じられません。

「ドン・キホーテ」
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー

色々と濃すぎて、最後を観ないでロパ様とオレリー・エルヴェの面影を胸に帰っちゃおうかなとほんの一瞬思いましたが、いやいや、今回の功労賞を受けるにふさわしい大活躍のサレンコとマックレーに足止めされちゃいました(笑)

アイボリーに金のお衣装がバレフェス最後の大トリにふさわしい華やかさ。
2人のパフォーマンスもお衣装同様、華やかでテクニック満載でありつつも正統派であるという枠を外さない、品格あるものでした。
マックレーは回転やジャンプの連続技の途中、思いがけないタイミングで、でも音楽の流れを止めずに180度の空中開脚を挿入したり、サレンコは素晴らしいバランスキープや、トリプルを入れての高速フェッテなど、相当なことを果断なくやっているのにあまりに涼しい顔でさらりと行われるので様々な超絶技巧を見せつけられてきたこのフェスの最後でシレッと、ああ、わたしたちはそういうことは普段からやってますから・・的な余裕を感じさせられるという。
どこまでも小粋な2人でした。
それにしても赤毛気味の金髪といい、体型バランスといい、テクニックの強さと言い、この2人はまさに理想のペアですね。

ここまでは本編。
そして、恒例のNBSの高橋さんによる時間稼ぎ?第5部の案内アナウンスがあり、第5部のプログラムが改めて幕に映し出されての第五部、お待ちかねの「ファニーガラ」のお時間です。
今回はプロデューサー役のジョゼ・マルティネスがいないので、男女逆転の演目を淡々と見せるだけかな・・・とあまり期待しないで見始めたのですが・・・。

「カルメン組曲よりエスカミーリョのソロ」

白地に黒のエスカミ―リョ衣装のお髭を描いたヴェイングセイ・ヴァルデスによるポワントでの踊り。
男性パートを女性が・・ですが、ヴァルデスはこうして男性の衣装を着ると、とても曲線的な女性らしいスタイルの持ち主であるとわかり、男性パートを踊る凛々しさやカッコよさがなくちょっと退屈だったかも。

「瀕死の白鳥」

後ろ姿の大きな白鳥がポワントのパドブレで下手から上手に抜け、上手から往復するときに一瞬表裏逆転させてしまった!の表情。だれ?だれ?と思って観ると、瀕死翻訳ロパ様の信頼篤いパートナー、ダ二―ラ・コルスンツェフでした^^
ポワントで「瀕死」を踊るのですが、途中イラッとしてポワントを投げ捨ててスッキリした表情で続きを(笑)
途中で上手に出されたロープをダ二―ラが引っ張ると、台車?の上に天使の羽付きのマエストロ・オブジャニコフさんがハープ奏者として登場。かと思いきや、銃のようなものを取り出して、瀕死の白鳥にとどめをさします。

「お嬢さんとならず者」

ボリショイペアがAプロのゼレンスキーの演目をアレンジして。
リボンをツインテール状につけたボーダースカートにブラウスのラントラートフがポワント付きでお嬢さん役。ならず者をマーシャが演じたのですが、上手過ぎて、ハンチングをとったヘアスタイルもくしゃくしゃのショートで、一瞬だれだかわかりませんでした。
2人とも演技上手すぎです・・・

「こうもり」

Bプロのゲラン・ルグリの演目を。マラーホフが奥様で、ヴィシニョ―ワが電話をもってくる小間使いの役どころでお洒落な洋服で巨大なアイパッドを持ってきてそれで、検索するマラーホフ。
ウルリック役をお腹に詰め物をしたアイシュヴァルトさまとリュドミラ・コノヴァロワが分けあって。アイシュバルトさまの男役はせっかくの美形なのだからお腹の詰め物はなくてもよかったかも!
奥様マラーホフが本役より相当盛った(笑)ビスチェ姿に変身してここからはとても上手にポワントで踊ります。
さすが、ファニーガラ最多出演?の積み重ねがモノを言いますね!

「四羽の白鳥」×2

と思ったら、初心者?でもとても上手で驚いたクオリティの4羽の白鳥が!
下手からレヴァツォフ、オスカー・シャコン、マチアス・エイマンが3羽で、上手側に、フォーゲル、スティーブン・マックレー、アレクサンドル・リアブコ、そしてエルヴェ・モローの4羽が白鳥の姿でポワントであの振りを踊ります。
そこになぜかピカチュウの着ぐるみに白いチュチュだけつけたシムキンくんがレヴァツォフの隣に飛んできます(笑)
この並び・・・きれいどころズラりで、笑いというより、1人1人見るときちんとポワントで踊っているし顔つけてるし、もう目が足りません!全員1人ずつフォーカスして観たい!
最後エルヴェがキチンと手を揃えてラストのポーズを決めているところまで確認。
こんなことしない人だと思っていたのに、意外!嬉しいです^^
シムキンくんのどや顔も印象的。

「眠りの森の美女」オーロラの誕生日

アメリカのバースデ―ケーキのように鮮やかなピンクと白で盛りもりなお衣装の巨大なオーロラはゴメス様。
ローズアダージョの前半でしょうか、とても上手にポワントでおどるゴメス様。
・・と並ぶと2人のとても美形な小人のようなサレンコとアッツォー二が白い鬘に黒白の宮廷衣装で並んで渋い顔をするのが可愛過ぎ。
ゴメス様は王子の出す手の高さが合わなくて、いきあり頭を支えにしてのアラベスク、とかやりたい放題ですね。

フィナーレはいつものように、多分これから目黒の佐々木邸で催されるフェアウェルパーティ仕様でフォーマルドレスが美しいアレクサンドロワがいるかと思えば、ガラ演目の役のお衣装にリセットした大半と、間に合わなかったのでファニーガラそのままのゴメス様など、バラバラすぎる状態が、いかにも祭りのあと・・という雰囲気で
最後は恒例の手ぬぐい投げ、あと、NBSから一人ずつに手渡されたブーケを舞台近くの通路に詰めかけたファンに渡してあげる心優しいダンサーも^^

夏の祝宴が終わりました!
次は3年後の2018年、その次はオリンピックYEARの2010年だとか。
観られますように・・・




第14回世界バレエフェスティバル クラスレッスン見学会

2015-08-12 18:57:10 | BALLET
Bプロが始まって忘れかけていましたが^^;
2015年8月2日、10:15~のクラスレッスン見学会、今回も行って参りました。

東京文化会館のステージに客席に向かってタテに4本のバ―が設置され、すでにアップを始めているダンサーもいる中で、三々五々、思い思いのレッスン着でバレフェス参加ダンサーたちが現れては開いているバーの前に場所を定めて、談笑したり、ストレッチを黙々と行ったりしている様を、わたくしたちは客席(1階S席の後ろ半分くらい)から見ると言う企画。NBSのバレエの祭典会員向けの特別プログラムで、なかなか普段は観ることのないお稽古風景、ダンサーの素の表情を観られる良い機会なので楽しみにしています。


最初、下手側からバ―①にタマラ・ロホ、スティーブン・マックレー、バー②にアシュレイ・ボーダーと向かい合ってサラ・ラム。バー③にゲラン、その奥にマチュー。マチューは年上の女性の近くだと落ち付くのね、と思ったことは内緒です^^;いつもちょっとカワイイTシャツを着ているマチュー、上下黒、ですが、今回は「海王」と白文字が入ったものを。
スティーブンはオレンジ系の縞々のタイツを。
そしてバ―④、一番上手のバーにはマライン・ラドメ―カ―とヤ―ナ・サレンコが。
ややあって、①の手前にマラーホフとヨハン・コボーが加わり、②の奥にアルバン・レンドルフ、手前にルグリ先生が。
フォーゲルくんは④のマラインのところに「やぁ」、という感じで加わって。基本同じバレエ団のお仲間どおしで近くに固まる感じでしょうか。マラーホフは多分チャコットの自分ブランドのモノトーンのボーダータイツを着用。太くて長いゴムバンドのようなものを使ってピアノの下にもぐって?寝そべってストレッチをしていました。体幹トレーニングかしら?マラーホフは今回の出演のためにかなり身体を絞ったものと思われます。
その後に登場したのは結構厚着のアイシュバルト。バー①のスティーブンの手前、マラーホフの前に。
ハンブルグのアンナ・ラウデ―ルとエドウィン・レヴァツォフは遠慮があるのか、このバーの奥に。
バ―②には手前(客席側)にマチアス・エイマン。ルグリ先生に挨拶しながらいきなりこの位置なので、おぉ、さすが自信があるのだなと。シルビア・アッツォー二がサラとルグリ先生の間に。
バ―③に加わったのはリアブコ。なので舞台中央の客席近い側の並びがルグリ先生を挟んで下手マチアス・エイマン、上手アレクサンドル・リアブコとなりました。
イイ感じの並びですね^^
後から来たコジョカルはヨハンのいるバー①がいっぱいなので、バー③のゲランの前、アマトリアンの手前に。最初ヨハンに挨拶のキスして、客席にも挨拶したのがアリーナらしくてカワイイ。
バ―④には一番上手端、ヤ―ナ・サレンコの手前にワディム・ムンタギロフが加わり、この日のメンバーは以上。

デュポン、モロー、ロシア勢、キューバペアは加わりませんでしたが、このメンバーだけでも、目が足りない状況にホクホク。

各々ストレッチをしたり、水を飲んだりストレッチしながら、徐々に稽古着を調整したり・・・・。

イザベル・ゲランがスッピンに近いお顔でお稽古着もシックなお色目だったのにもかかわらず、ひとたびアームスをゆるやかに動かしただけで、そこに生まれた優美なフォルムに目が釘付けに。
ゲラン、流石。

そうこうするうちに、バーが撤去されて(マラーホフがユーモアたっぷりにお手伝いしてみせてくれました。彼は本当に良いムードメーカー)、平場でのグループレッスンに。先生役は前回のバレフェス同様銀髪ボブが美しいオルガ・エヴレイノフ先生。
先生の指示通りに生ピアノに合わせて、ジュテやフェッテを組み合わせた一連の動作を2~5名くらいのダンサー毎にグループを作って同時に踊るという、これは本当に観ごたえあり。
とりわけ、バ―での並びでおぉっと思ったルグリ先生センターのリアブコ、エイマンの並びでのジュテ連続などはワクワクさせられ、レディースグループにひとり交じるマチューに安定のマチューだわ・・と思ったり^^

最後にタマラがお得意のフェッテを組み合わせて、わたくしたちのためにありがとうございます・・と言いたくなるような明らかに観客に向けてのパフォーマンスをしてくれて、この会はお開きとなりました。

さりげなく贅沢なお時間でした




第14回世界バレエフェスティバル・Bプロ 8月11日,13日

2015-08-12 00:59:07 | BALLET
第14回世界バレエフェスティバル<プログラムB> 
8月8,9,11,12,13と5日間にわたって繰り広げられるBプログラム。
My初日は11日。踊り慣れてこなれてきたところ・・・でしょうか。
猛暑の上野、東京文化会館に赴く夕べ。
パリオペ期待のペア、今回が初出場になるはずだったミリアム・ウルド=ブラ―ムは出産後驚異的な復帰を果たしたと聞いていたのですが、脚の故障でバレフェスは欠場。
Aプロはソロ作品で乗り切った相手役のマチアスはウィーン国立バレエ団のリュドミラ・コノヴァロワと組んで「眠れる森の美女」ガラでは「ドリーブ組曲」を踊るそう。
ABTとボリショイという真逆な持ち味のバレエ団をまたにかけて活躍中のデヴィッド・ホールバーグも怪我からの復帰のめどが立たず、今回は欠場。相手役として予定されていたスヴェトラ―ナ・ルンキナも同時に欠場。
シムキンくんとペアを組む予定だったマリア・コチェトコワは直前のローマ公演で脚に負傷でAプロには間に合わないとされていましたが、Bプロもムリとわかり、シムキンくんはソロで踊ることに。
そして驚いたことに、Aプロでは超難易度の高い作品をアイシュヴァルト様と組んで完璧なパートナーシップをみせていたマライン・ラドメーカーがBプロ2回までは勤めたものの、膝の故障で今日から出られず、代役をリアブコが勤めることに。
不足はありませんが、ラドメ―カ―が心配です。。。
そして、13日はBプロの千秋楽。
あと、日曜日のGALAも控えていますが、一応本公演としては本日が最終日という扱いなのでしょうか。
恒例の千秋楽企画、ダンサー全員のサインをプリントした手ぬぐいがフィナーレのあと、舞台上のダンサーから客席に向かって投げ込まれ、席番14の方も、第14回にちなんで、いただけるということで、大変に盛りあがりました。
ルグリたち男性ダンサーはねじり棒のようになった手ぬぐいを遠投で20列目くらいまでとどかせたり、アレクサンドロワたち女性ダンサーは逆に舞台近くまで押し寄せてきたファンに直接手渡したり・・・。
一投毎にくるりと回って見せたり、旺盛すぎるサービス精神ゆえに、最後舞台中央に取り残されたマラーホフをルグリが抱え上げて後方のポジションに戻らせる、というお茶目すぎる瞬間もあり、会場皆笑顔でのスタンディングオベーションと舞台客席双方からのお手振りで幕をA.Bプロ合わせて10回の熱演の幕がひとまず閉じました。

感想は11日のものですが、13日で改めて印象が変った演目についてはちょっと書き足してみました^^



第14回世界バレエフェスティバル  <プログラムB> 
8月11日(火)18:00開演  会場:東京文化会館


■第 1 部■ 18:00~18:55

「ディアナとアクテオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ/音楽:チェーザレ・プーニ
ヴィエングセイ・ヴァルデス オシール・グネーオ

「シナトラ組曲」より"ワン・フォー・マイ・ベイビー"
振付:トワイラ・サープ/音楽:フランク・シナトラ
イーゴリ・ゼレンスキー

「ペール・ギュント」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:アルフレット・シュニトケ
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ

「ライモンダ」より 幻想のアダージオ
振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ウリヤーナ・ロパートキナ ダニーラ・コルスンツェフ

「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ

<休憩15分>

■第 2 部■ 19:10~20:10

「眠れる森の美女」
振付:ルドルフ・ヌレエフ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン

「ノー・マンズ・ランド」
振付:リアム・スカーレット/音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

「ヴァーティゴ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
ディアナ・ヴィシニョーワ マルセロ・ゴメス

「ギリシャの踊り」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ミキス・テオドラキス
オスカー・シャコン

<休憩15分>

■第 3 部■ 20:25~21:15

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー

「伝説」
振付:ジョン・クランコ/音楽:ヘンリク・ヴィエニャフスキ
アリシア・アマトリアン フリーデマン・フォーゲル

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
タマラ・ロホ アルバン・レンドルフ

「レ・ブルジョワ」
振付:ベン・ファン・コーウェンベルク /音楽:ジャック・ブレル
ダニール・シムキン

「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ
オレリー・デュポン エルヴェ・モロー

<休憩 10 分>

■第 4 部■ 21:25~22:15

「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ ウラジーミル・マラーホフ

「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カミーユ・サン=サーンス
ウリヤーナ・ロパートキナ

「シルヴィア」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:レオ・ドリーブ
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ

「こうもり」よりパ・ド・ドゥ
振付:ローラン・プティ/音楽:ヨハン・シュトラウス2世
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「ノー・マンズ・ランド」、「椿姫」)
チェロ:遠藤真理、ハープ:田中資子(「瀕死の白鳥」)   
出演:矢島まい[東京バレエ団](「こうもり」)

個々に感想を・・・

■第 1 部■

◆「ディアナとアクテオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ/音楽:チェーザレ・プーニ
ヴィエングセイ・ヴァルデス オシール・グネーオ

Aプロの大トリで驚異の身体能力を見せつけたCUBAのペアが、筋肉隆々のテクニシャンがガラで披露するイメージのあるこの作品を選んで今度はオープニングを飾ります。
オレンジライトの背景に、ヴァルデスのモスグリーンのひらひらしたワンショルダーのディアナ衣装が映えますね。
ありえないバランスの長さ、初めて見る派手やかなア―ムスの使い方など、ヴァルデスならではのテクニックご披露場面はありましたが、とにかく大らかでどこか愛らしい笑顔と丁寧な手首から先の表情の付け方など、運動能力だけで注目されているわけではない魅力を感じました。
グネ―オは引きしまった褐色のボディもベージュの腰巻?のアクテオン衣装の一部のように馴染んでいますが、踊りそのものはシャープで端正。品があるので、この方は王子様役でもみたいかも、と思ったことでした。

◆「シナトラ組曲」より"ワン・フォー・マイ・ベイビー"
振付:トワイラ・サープ/音楽:フランク・シナトラ
イーゴリ・ゼレンスキー

ゼレ様はAプロのならずものから打って変って洒脱な紳士。ジャジ―なリズムに身を任せて、蝶タイをほどいて黒タキシードをひょいとかついでのベスト姿で。
この方、王子様をバリバリ踊っていた頃から、お顔は決して美男というわけではないのに(失礼)その役を踊っていることが実に馴染んで見えると言う、正統を知るからこそのナチュラルな演技派と思っているのですが、こういう味も出せるダンサーになっていらしたのですね。
肩の力の抜けた洒落た演目は万雷の拍手で熱狂することになる後半に向けての贅沢なプロローグ。といえるのもバレフェスならでは。

◆「ペール・ギュント」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:アルフレット・シュニトケ
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ

ラウデ―ル、レヴァツォフ。ハンブルグでリアブコ・アッツォー二ペアの他に1ペア、ということで選ばれてきただけある素晴らしきノイマイヤーダンサーなのだなと。
赤いオ―バ―オ―ルを素肌に来た短髪のレヴァツォフと白いナイトドレスのようなワンピースを着、頭部を肌色の透けるスカーフで覆ったラウデ―ル、どこか硬質な長身ダンサー2人が織りなす静謐で緊迫感の途絶えないドラマ性はスター揃いのフェスメンバーの中にあって見劣りしないものでした。

◆「ライモンダ」より 幻想のアダージオ
振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ウリヤーナ・ロパートキナ ダニーラ・コルスンツェフ

来た!古典、白いバレエ!ロパートキナのライモンダ衣装は上腕部の腕飾りと大きめのクラシックチュチュにのせた小さめのフリルに甘さのある、深く切れ込んだボディ部分の大人っぽいシンプルさとのバランスがステキなもの。
グレーがかったブルーにムラ雲が浮いている背景の前に、白いマントで仕える騎士仕様のコルスンツェフともども高雅な香りが漂うよう・・・。クラシックバレエ、かくあるべし、の演目でした。
それにしても、Aプロのボリショイライモンダとの持ち味の違いは改めて面白いですね。

◆「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ

舞台中央奥に金縁取りの姿見。下手奥に緋色のベルベットの寝椅子。姿見に自らを映し、激しくせき込むマルグリット。濃い紫の胸元に一輪の赤いカメリアのアイシュヴァルトのほっそりと美しいこと。エキゾチックな美貌とキャリアの後半にしてなお輝くダンサーとしての卓越した資質と何度も踊り込んできたノイマイヤー作品であることと、ほっそりと小柄でありながら内に秘めたエネルギーでどこまでもドラマを盛り立てつつ、いつで零度の地点に戻せる彼女の力量と。
その万全のアイシュバルト=マルグリットに渾身の力で走り込み激しく求愛するリアブコ=アルマン。
そんなリアブコの若さと情熱を少し離れたところから慈愛の眼差しで見下ろしながら、次第に心揺さぶられていくアイシュバルトの演技の流れに陶然とさせられました。リフトでいつも気になる、たっぷりとしたスカートに男性の顔がすっぽり隠れてしまう瞬間も、アイシュヴァルトはさりげなくポジションチェンジの手でスカートを押さえてリアブコの顔がはっきりと見えるように修正するなど、情熱の極致という場面での細部のさばき方も万全。
これがラドメ―カーだったらもっといいところのお坊ちゃまが道を踏み外す感が出るんだろうなと思いつつ、直情的で迷いのない充実したリアブコ=アルマンを見られたことはそれはそれで貴重な経験。
とても魅力的な作品なので、名ダンサーは好んで選ぶ演目ではありますが、今までたくさん観てきた中で納得したのは数ペア。今回はその短いリストに一行加えることができて幸せです。

<休憩15分>

■第 2 部■

◆「眠れる森の美女」
振付:ルドルフ・ヌレエフ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン

ヌレエフ作品をマチアスが踊るのを観られる幸せ。アイボリーに金の装飾、後ろでまとめた縦ロールの王子衣装が似合うこと。マチアスはそのゴムまりのような身体能力の高さとテクニックゆえにモダン作品が一見似合いそうですが、独特のセンターオーラがあるので、テクニックも堪能しつつ王子としての華やかさも楽しめるヌレエフ振付の古典はぴったりですね。逆に踊れない人が踊ると、テクニックに気を取られてせわしない印象になることもあるヌレエフ作品がマチアスが踊るとたっぷりと豊かな踊りの時間に見えます。
これに愛らしい姫のミリアムが組んでくれるとOPERA座の未来に大いなる希望が持てる時間になったかと思われますが、ここは代役のコノヴァロワが大健闘。多分ルグリ先生の推薦かと^^
黒髪純白衣装で、愛らしいタイプ、ではないのですが、完璧にオーロラを踊りこなして急ごしらえのペアには見えませんでした。
13日、マチアスにも疲れが?ジャンプの着地の乱れがちらほらと見受けられ、いつもの圧倒されるようなパワーが分散してしまったような・・・。その分、コノヴァロワの安定感が支えとなってカーテンコールでの2人の雰囲気も、よりなじんできたように思えました。
GALAの「ドリーブ組曲」が楽しみです。

◆「ノー・マンズ・ランド」
振付:リアム・スカーレット/音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

簡素なレオタードにミディ丈のスカートがついただけ、のような衣装で、さまざまなリフトからアリーナの四肢がゆっくりと伸ばされる・・・。反戦テーマの最前線間の無人地帯で繰り広げられる命を落とす兵士と嘆く女性のPDD.
笑顔のときもどこか泣き顔に見えるアリーナの表情と情感を称える体いっぱいに使った演技と、過不足なくしっかりと支えるコボーのいい意味での重さと。
抽象的な作品でここまで「伝わる」のが素晴らしいと。
アリーナの今まで観た舞台で一番と言っていいほど、心打たれました。
会場の反響も大きかったように思います。

◆「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

スッキリ爽やかな淡い青の背景に青のハーレムパンツがアリだと分からせる記号にはなっていますが、どうしても奴隷には見えないスッキリ王子スタイルのムンタギロフが軽やかに空気を切って魅せるジャンプやスピードのあるマネージュは本物。対する紫ピンクのチュチュでどこのディズニープリンセスか?という風情のラムも2人揃ってスッキリ優しげなのに魅せるべきところはしっかりと魅せるテクニシャン。持ち味も魅力も能力も惜しげなく見せてくれました。多国籍でインターナショナルなロイヤルバレエ団ですが、金髪長身しなやかな持ち味の若い2人が特に古典作品では軸になりそうだなと。今後のロイヤルバレエのレパートリーも更に楽しみです。

◆「ヴァーティゴ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
ディアナ・ヴィシニョーワ マルセロ・ゴメス

登場した瞬間からため息ものの2人。
暗闇の背景にそこだけスポットの当たる黒髪・引きしまったマッチョボディの美男美女。
黒ショーツのゴメス、透けた部分がグラフィカルな模様になる黒レオタードのヴィシニョ―ワが繰り広げる緊迫感とその造形美にただただ酔いしれる一幕。
この強さと強烈な女性性を持ち合わせる濃い芸風のヴィシニョ―ワとがっぷり四つに組める相手は今はゴメス一択だと言わざるを得ませんが、その一対をこれほどまでに味わえる演目を観られて・・・それこそありがたくて眩暈がしそうです^^;

◆「ギリシャの踊り」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ミキス・テオドラキス
オスカー・シャコン

プログラムに並ぶ大御所の名前に紛れているように見えてしまった、ベジャールバレエ団唯一の参加者。
オスカー・シャコンは ベジャール作品が持つ、民族的なものを時代も地域も越えてグローバルな祝祭性を持たせる機能を、最大限にみせることのできる表現者であるということを証明しました。
暗闇の中に浮かび上がるドレッドヘア、褐色の肌、緩やかなひざ下の裾をちょっと絞った絶妙なシルエットの白いパンツ。ギリシャの民族舞踊のようでありながら、海を、祭りを、人間を賛美し愛したベジャールの魂が蘇ったような気がしました。
第2部終わった時点でもう・・・満足です。

<休憩15分>

■第 3 部■

◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー

薄物のジュリエット衣装をまとったサレンコが素晴らしい。バルコニー登場からロミオが忍んで来たのを発見2人で気持ちを伝えあい、別れを惜しむまで・・・の名場面ですが、オペラを使わなくても初々しい少女のトキメキが踊りに現れていて。マックレーも登場から颯爽として彼一流のロミオ。
ジュリエットが踊るのを座って眺めるときに、以前とはちがってやや落ち付いた風情が・・と思うのはハードルあげすぎ?

◆「伝説」
振付:ジョン・クランコ/音楽:ヘンリク・ヴィエニャフスキ
アリシア・アマトリアン フリーデマン・フォーゲル

淡いピンクのスカート付きレオタードのアマトリアンと薄い控えめなフリル付きの白いぺザントブラウスに淡グレータイツと言うシンプルなスタイルの長身の2人。思えば2003年のバレフェス初登場の若々しく愛らしい2人から結構な歳月が・・・。未だ若手に見える2人。灯台か蝋燭のように直立するアリシアを高々と掲げたリフトが印象的。

◆「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
タマラ・ロホ アルバン・レンドルフ

タマラの髪は地毛?定番の黒髪アップ耳隠しのマルグリットヘアがボリューミーで意外と似合わない・・・。
別れを告げたマルグリットのもとに納得がいかず尋ねてきたアルマンと再び激情が湧きあがり・・・という情熱的な名場面なのですが、レンドルフ、途中で5列目センター席に聞こえるレベルで激しい息遣いに・・・。
熱中症で倒れでもしたらどうしよう!と気が気でなかったのですが、彼は最後まで激しく踊り切りホッとしました。
レンドルフ、体型はガッチリ目でありつつひざ下はスッとしてお顔はパーツがセンターに集まっているせいか横幅のある気の良い青年、という感じなので、ロホが思いのほかたくましくて死病に侵されている感がないことと相まってなかなか作品世界に入り込めませんでした・・・。
この場面はなんといっても、2006年ジョエル・ブーローニュとアレクサンドル・リアブコのバレフェスAプロでの演技がMyBEST。すでに揺るぎないテクニックで日本ではまだ無名ながら注目を集めたリアブコの情熱と高いリフト、ブーローニュの作品世界にピッタリの枯れてなお色香のある女性という風情が素敵でした・・・。となぜか遠い眼。

13日、タマラのヘアスタイルが改善されていました!TOPのボリュームを押さえてルネサンスの婦人のようにしとやかなイメージに。それだけでもずいぶんと受ける印象が違います・・・。レンドルフはご本人のせいではありませんが、アルマンという役と持ち味はやはり異なるかも?

◆「レ・ブルジョワ」
振付:ベン・ファン・コーウェンベルク /音楽:ジャック・ブレル
ダニール・シムキン

童顔シムキンくんのもう一つの顔、「くしゃおじさん」バージョンの「レ・ブルジョワ」。
白シャツ黒ネクタイの中年男?がタバコ片手にひたすらヤサグレながら超絶技巧を見せる、という1人舞台。
昔話が止まらなくて申し訳ないのデスが、2003年、2006年のバレフェスで、シュツットガルトのフィリップ・バランキエヴィッチが無精ひげがセクシーな大人の男の魅力たっぷりに見せた演目で、きゃーステキ!となった記憶が。
シムキンくんはこれをもうすでに何度も踊っていて、シムキンくんの「レ・ブルジョワ」はきっちりと作り上げられている感があるのですが・・・・。
童顔小柄金髪超絶技巧の持ち主の彼を活かす演目って「パリの炎」「レ・ブルジョワ」この真逆な2路線しかないのかしら・・・。
会場を沸かせる素晴らしいテクニックと緩急完璧に掌握したパフォーマーとしての資質、ディカプリオ系の狆顔(失礼!)の彼を打ち眺めながら、このままでいいのかしら・・となぜかプロデューサー目線に^^;

◆「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ
オレリー・デュポン エルヴェ・モロー

演目発表からとても楽しみにしていたデュポンのマノン。
手紙を書くデグリューをコルセット姿のマノンがいたずらっぽく邪魔して・・からの愛のPDD.
マクミランらしい超絶技巧リフトを多用しながら若い恋人たちの疾走感を楽しむピースです。
美男美女のマノンとデグリュー。とても素敵ではあったのですが・・・。
リフトされて脚を小刻みにハサミのように動かす振りとか、この作品の振付のデフォルトがギエムになってしまっている自分を発見。もっと高い位置で・・・もっと素早く・・もっとダイナミックに・・・・。
ギエム全盛期には見過ぎて勿体なくも「またか」的な感情を持たないでもなかったのに(こら)そのパフォーマンスが如何に貴重であったかを改めて。
オペラ座卒業時にはかなわなかったデュポン・モローペアでマノンを観ると言うこれまた貴重な機会を得ていると言うのに勿体ない。

ちょっとこの第3部、観る側の自分が疲れていたのかも。

13日、デュポンのマノンヘア(くるくる巻き毛のアップ)の具合が良い感じに結いあげられていて、11日より一層美しく見えました。そして踊りも2人の息がますます合ってきて、本当に2人の世界に入り込めました。
Bプロ初日を観た友人が、デュポンの差し出した手にモローがすぐに合わせることができなかったりちぐはくなところが随所気になった、と言っていたので、だんだんと練り上げられてくる部分もあるのでしょうね。

<休憩 10 分>

■第 4 部■ 21:25~22:15

◆「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ ウラジーミル・マラーホフ

さて、シンデレラ。サレンコのお衣装、彼女お気に入りのカット(ややアメリカンスリーブ気味のノースリーブにやや詰まった襟もとの胴着)にセンターがやや短い凝ったフォルムのラメやスパンやオ―ガンジーが上手に仕込まれた一見とてもシンプルなお衣装のサレンコが、丁寧なマラーホフのサポートを受けて輝いていました。
後ろから見るとちょっとアンドロイドっぽい?シ―ムが入った王子のお衣装はやはりノースリーブの胴着とタイツの組合せで、着こなしとしての難易度が高いタイプなのをマラーホフが気合で(ダイエットも頑張ったのでしょうね!)で着こなしていました。
マラーホフ自身はご自分のHPを立ち上げられた時に「TRUE PRINCE」というタイトルをつけていらしたことからも、やはり王子役に踊り甲斐を感じるタイプでいらっしゃるのでしょうね。
前回はこれが最後かも・・と思ったことを想うと感慨深いです。

◆「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カミーユ・サン=サーンス
ウリヤーナ・ロパートキナ

ロシアバレエの伝統を継ぐのはあなたです!
ロパートキナ様がプリセツカヤの伝説を受け継がれるのだなぁと。
ひそやかに、ひそやかに息絶える白鳥の麗しい姿。
これだけ幽玄の世界のヴェールをまとってなお優美さに客席が沸くパフォーマンスができるのは、やはり今はロパートキナだけなのかもしれませんね。

◆「シルヴィア」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:レオ・ドリーブ
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ

グリーンの背景に大きな三日月。ブルーグレーのレトロなスーツ姿のアッツォー二にグレーのスーツのインはTシャツ?のリアブコが神話をベースにした古典を現代的な男女のドラマに置き換えたノイマイヤーワールドを踊ります・・・と聞けばどれだけ素晴らしいのか、心ときめくところなのですが・・・。
どこがどうしてダメなのかわからないのですが、これを2003年にデュポン・ルグリで観た時も、作品が意味するところもパフォーマンスも素晴らしいのになぜか・・・。
こんなこともあります。作品と自分との相性でしょう。

◆「こうもり」よりパ・ド・ドゥ
振付:ローラン・プティ/音楽:ヨハン・シュトラウス2世
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ

ゲランが白い室内着で(簡単なロングのワンピース)あたふたしている。電話を小間使いが持ってきてゲランが電話の相手(ウルリック)と色々と相談しているのですが、電話線に引っ張られる小間使いとあたふたするゲランの小芝居にドラマティックバレリーナはドラマ(悲劇)だけでなくコメディ(喜劇)もお得意なのねと頬が緩みます。
夜な夜な出かける夫の浮気を疑う妻がウルリック男爵の入れ知恵で艶やかな女性に変身して夫を誘惑する・・・ために出かけるまで、の一幕。
颯爽と現れてコミカルに入れ知恵しつつも素晴らしく音楽にフィットした素早いフェッテなど、踊りも演技も円熟味を増したことが嬉しく素直に受け入れられるルグリ先生の作品選びは「若さの芸術」と言われるバレエ界で、プロデューサー的な視点を若い頃から持っていた彼ならでは。
さて、お着替えして登場!のゲランのふくいくとした艶やかさも含め、幸せな気持ちでヨハン・シュトラウス2世の音楽と洒脱な舞台進行をたっぷりと楽しんだ演目でした。
この2人の楽しさ、美しさ、達者な芝居心をみるにつけ、もはやバレエは「若さの芸術」とばかりは言っていられないかも。これからは「大人の芸術」というジャンルを是非ルグリ先生中心に掘り下げて極めていただきたいと切に望みます。
ルグリ先生のどこまでも高揚する音楽にぴったりの生き生きとした表情、素早いスピンとステップ、ゲランと小間使いの矢島まいさんとの掛け合いが素晴らしく、ヒロインゲランともども、会場を大いに沸かせました!

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ

来た!サービス精神の塊のようなボリショイペアが大トリを飾ります。
まってましたといわんばかりの笑顔の登場から、片手の大リフトの連続、フェッテ合戦。・・に釣られるように、オケがかなり走ってましたので合わせるのが大変だったはず・・・。
実際アレクサンドロワのサポート付きのフェッテは珍しく何度か軸が傾いてひやっとしましたがそれを気どらせないサポートと決めポーズや笑顔やキスの応酬の華やかさ。
コ―ダでのキトリのフェッテはほぼオールシングル。ダブル入れたら大変なことになりそうなオケのスピードでしたから・・・。
それにしても、PDDからそれぞれのソロに移るために掃けるときでさえ、キュッと扇を使ってポージングを決めてから大きなジュテで幕の向こうに消えるマ―シャの客席を幸せにしようと発するエネルギーはスゴイ。
ラントラ―トフさんもほっそりとした体型のどこにあのエネルギーが?と思わせるボリショイ男子ならではのダイナミズムを存分に披露してくれました。

カーテンコール、この日は第一部の途中で2回になってから大御所続きだったこともあり、2回を通常運行で進み、ロパ―トキナの「瀕死」とゲラン・ルグリの「こうもり」で3回に。
ラストも?と思いましたが一回当たりのファンサが濃く尺をとったせいか(笑)オケが早々にフィナーレの音楽を鳴らし始めての2回、でした^^この流れは13日も変わらず^^

それにしても・・・4時間半がアッという間。さすがバレフェス
Bプロをあと一回、そしてGALAで最後とは・・・。早いものです^^;




第14回世界バレエフェスティバル Aプロ初日・8月6日

2015-08-09 10:26:23 | BALLET
NBSが世界に誇る名企画、「世界バレエフェスティバル」
優劣をつけたり順位を決定したりするものではないが、その世界中から超一流ダンサーを集め、一同に会して踊るというバレエファンなら胸踊るその企画こそ、3年に一度の”バレエのオリンピック”と称される通称”バレフェス”。
第14回の今年もまた、東京文化会館に新たな記憶が刻まれるのだと赴いた初日8月1日14:00公演、そしてAプロ2度目の8月6日18:00公演の感想をさっくりと。



◆第1部◆

■「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 振付:ジョージ・バランシン
ヤーナ・サレンコ-スティーヴン・マックレー

オープニングを任されたのは安定のテクニックを誇る小柄で若々しい2人。サレンコは登場するたびに若く、ダンサーとしての品も安定感も向上しているように思えます。
この日もマックレー、シムキン2人のパートナーを務める盤石ぶり。
サーモンピンクの薄物衣装の女性と水色の男性・・が定番なのですが、スティーブンはアイボリー系のお衣装で。その分背景がブル―で、チャイコパワールドからのバレフェス、盛り上がっての開催です。
小柄な2人で思いだされるのは2003年のアリーナ・コジョカルとアンヘル・コレ―ラ。世にも愛らしい容姿のテクニシャン2人が揃ったら(しかもバレエ団違いで共演も多分初めて)いったいどうなってしまうのだろうと期待MAXで観たら、音を早取りするコジョカルが走り気味なのに加えてアンヘルが爆走するように加速度をあげて、最後大きく反った女性の背中を高々とリフトして掃けていく・・・ラストはもうグチャグチャでした(笑)
今回の2人は全くそのようなことはなく、落ち付いて爽やかに余裕さえ感じる出来栄えでした。

■「3つのグノシエンヌ」 振付:ハンス・ファン・マーネン
マリア・アイシュヴァルト-マライン・ラドメーカー

サティのグノシエンヌを生ピアノで。今回バレフェス参加のピアニストはフレデリック・ヴァイセ=クニッテル氏。
バレフェスピアニストといえば、某東バプリンシパルダンサー嫁という暗黒時代もありましたが(ありえないミスタッチの多さで本当にストレスでしたxxx)良い時代になりました。
シンプルなスカート付きレオタードのアイシュヴァルトとレギンス姿のラドメ―カ―がとてつもなく高い身体能力を必要とする振付を静謐な音楽のテンションとリンクするように淡々と(と見える)こなす。音楽と振付の一体感が素晴らしく、ドラマチックヒロインの印象が強いアイシュヴァルトの新しい(いえ、わかっていましたけれど)一面を見られた演目。
Bプロもモダンだとエッとなりますが、Bプロでは「椿姫」が観られるとわかっていてのこういう作品選びは良いですね。

そうそう、8月6日公演で特筆すべきことが!
静謐な音楽に合わせての超絶技巧で2人の男女の関係を描くこの作品、会場が水を打ったように静まり返っている中、軽度の地震があったのです。
ピアノが中断され、2人は並んで揺れがおさまるのを一呼吸待ち、会場は静まり返ったまま、ほんの10秒もなかったかもしれません。おさまったと判断したのはピアノかダンサーか。自然に再開される音楽とダンスにまた会場が引きこまれていき、最後は中断されたことすら忘れさせてしまう集中力、でした

■「お嬢さんとならず者」 振付:コンスタンティン・ボヤルスキー
アシュレイ・ボーダー-イーゴリ・ゼレンスキー

面白い作品。無声映画をバレエの小品に仕立てたという作品で、あの白地に金刺繍の王子衣装をさんざん着てきたノーブルなゼレ様が、モスグレーの半袖シャツにモカ茶のズボンでハンチングのならずものを演じます。
冒頭、大げさな音楽に合わせてのならず者踊りがダイナミック。
そこに通りかかったアメリカの良いところのお嬢さん、ボーダーが思わずベンチの後ろに隠れるも、ならず者に見つかって・・・一目で恋に落ちた彼は強引ながらも紳士的に振舞い、彼女もとまどいつつもペースを取り戻して膝を揃えて坐り彼にお行儀よくするのよ、的に説得して去るまでの一連の流れ。
あのゼレ様が、胸元をバッとはだけてアピールし、お嬢さんが思わずドン引きするところなどコミカルでもあり、大型犬のようにおとなしくお嬢さんの言うことをきくならず者が可愛くもあり。
ボーダーが初日はアメリカンスリーブ気味に内に入ったノースリーブで襟もとのつまったフワッとしたシルエットの黄色いミニワンピで、6日では白い大きめの襟と前立てがスポーティなテニスドレスのような淡いピンクのノ―スリワンピとお衣装を変えての登場。金髪の編み込みヘアと健康的なスタイルと相まって如何にもアメリカのGOOD GIRL風。芝居心もテクニックもある方とお見受けしたので、他の作品でも見てみたいと思ったのですが、Aプロだけのご出演なのですね。

■「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ" 振付:マリウス・プティパ
タマラ・ロホ-アルバン・レンドルフ

変化球が続いたところに正統派。
背景もロイヤルブルーにシャンデリア。そこに黒に金のチュチュの艶やかなるタマラオディールが得意のフェッテで王子と観客を魅了します。
タマラに選ばれた王子はデンマーク・ロイヤル・バレエのレンドルフ。彼女が芸監を務めるイングリッシュ・ナショナル・バレエに客演しての縁なのですね。
金襴緞子のノ―カラ―ジャケットから伸びる脚はとても立派な太腿とすっとした膝下。パワフルで安定したテクニックを持つダンサーで、タマラのお眼鏡にかなったのも納得の実力派。華やかさには欠けるかも。

■「フェアウェル・ワルツ」 振付:パトリック・ド・バナ
イザベル・ゲラン-マニュエル・ルグリ

フェスの陣容が発表されて一番驚き興奮したのがイザベル・ゲランの出演決定。
ヌレエフ時代のオペラ座全盛期、古典演目のドラマチックヒロインとして君臨したゲラン。。。
その後大カンパニーの芸監、バレエマスター、バレエ学校長と活躍の場を移した同時代のエトワールたちとは異なりその後の活躍が聞こえてこなかった彼女が、まさかの出演。しかもルグリと!
もう、出てきたところから佇まいが変らず、ドラマチックヒロイン、でした。
仕立ての良い白シャツ黒パンツのルグリ先生と黒のロングのスリップドレスのゲランは如何にも大人のイイ男イイ女。そんな2人が織りなす求愛とためらい、抑制と情熱のドラマに、タメ息しかでませんでした。
ふと腕を上げるだけでその腕と手首から指先までと横顔の角度に至るまで、さりげない仕草が美しく、日常的なドラマなのかもしれないのですが、全ての瞬間に「素」が見えない、真にプロフェッショナルなダンサーの成熟し、えも言われぬ香りを醸し出す様を堪能しました。

◆第2部◆

■ 「アザー・ダンス」 振付:ジェローム・ロビンス
アマンディーヌ・アルビッソン-マチュー・ガニオ

ショパンのマズルカとワルツをピアノの生演奏で。音楽にピッタリとあった若い二人の踊りは生の喜びと一抹の哀愁を漂わせる・・・ステキな作品ですが、とても美しいマチュー・ガ二オの淡いグレーの濃淡のお衣装とピッタリ合ったブーツ、そしてしとやかで控え目なアルビッソンがストライプの地模様の入った薄いラベンダーグレーのハイウエストのドレスで合わせる様子を観ながら、なんとも不思議な感覚に陥っていました。
マチューはこんなにバレエに愛された容姿を持っていて高名なダンサーである両親譲りのテクニックもあるのに、どうしてこんなに発散しない芸風なのだろう・・・。
舞台を降りた彼は美しい容姿で笑顔の絶えない華やかなスターなのに、舞台だとなぜか内にこもると言うかなんだか地味に見えてしまうのですよね・・・。アルビッソンも同じ演目を過去のバレフェスで踊ったオレリー・デュポンの艶やかさと時折煌めく生命感がデフォルトになっているので、おとなしい優等生みたいで物足りない・・・。
美しい音楽と美しいダンサーの姿をうち眺めつつ、贅沢を言ってみました^^;

■「マンフレッド」振付ルドルフ・ヌレエフ 音楽チャイコフスキー
マチアス・エイマン

そこでエイマン!実際の容姿の好みで言うと、わたくしはマチュー派なのですが、白い襟元を緩やかにしたぺザントブラウスに淡グレータイツの簡素な姿で、1人激情を炸裂させる姿が・・。
ジャンプ一つに閃光が走る。軽やかさと内から発するエネルギーが共存している。
非常に強い光を放つダンサーであり、やはり彼はモノが違う・・と実感せざるを得ませんでした。
最後床をゴロゴロと転がって・・・までの流れが一瞬のような。
鮮烈な舞台でした。

■「ジゼル」 振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー
サラ・ラム-ワディム・ムンタギロフ

うーん、ロイヤルバレエの衣装って昔はなんて趣味の良い!と思っていたのですが、このところ、現代的なアリスとかは素晴らしいのに「眠り」やこの「ジゼル」はちょっとどこかズレているんですよね・・・。
サラ・ラムの金髪耳隠しにワイン系のシャープなチーク、そしてゴージャスに光りもののついたアイボリーベージュのロマンチックチュチュのお衣装が、全体のバランスからすると村娘の精霊に見えない。
どこのハリウッドセレブのレッドカーペットですか?といった風情。なので、「ジゼル」の2幕としては観られませんでした。
ムンタギロフはノーブルな小顔にスラリとした長身の今どき得難い王子的な外見に確かなテクニックを兼ね備えた逸材であると確認できました。

■「ライモンダ」 振付マリウス・プティパ
マリーヤ・アレクサンドロワ-ウラディスラフ・ラントラートフ

白と青の2トーンカラ―のお衣装が金ベースのイメージの強い「ライモンダ」としては珍しい。
酷暑の東京での一服の清涼剤として考えてくれたのかな?などと思うほど、このペアは観客に対するサービス精神が素晴らしい。
マ―シャはラインストーンを編みこんで耳上でリング上にした装飾的なヘアスタイルと鉄壁の笑顔で観客を魅了。
ラントラ―トフさんは冒頭のPDDのみマント付きのお衣装で。勿論お二人とも、軽快で勇壮な、これぞボリショイの姫と王子!な演技を見せてくれました。
アレクサンドロワが大好きなわたくしはもう大喜び(笑)
本当にひまわりのようなバレリーナですね。

◆第3部◆

■失われた純情「いにしえの祭り」 振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:リヒャルト・シュトラウス
シルヴィア・アッツォーニ-アレクサンドル・リアブコ
アンナ・ラウデ―ル、エドウィン・レヴァツォフ

背景にテーブルと黒執事2人。飲み散らかされたシャンパングラスを彼らが静かに片付ける中 前景で、ワインカラ―のロングドレスのラウデ―ルと素肌に直接黒スーツを着た短髪のレヴァツォフが踊る。
レヴァツォフ掃けて、戻ると上着がカ―キのア―ミ―シャツに。
長身の2人が硬質な踊りを見せて掃けると、今度は小柄で熱情的に踊る2人が。
ア―ミ―シャツをボタンを留めずに素肌に着たリアブコと、ホットピンクのドレスにすっぴん風の薄い顔立ちながらその踊りに感情の全てを表出するアッツォー二が圧巻。
第2次大戦出兵前夜という設定の一幕で胸に迫る作品でした。

■「シンデレラ」 振付:フレデリック・アシュトン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
アリーナ・コジョカル-ヨハン・コボー

小柄でキラキラした笑顔ながらどこかいたいけな風情がただようアリーナは星空のもとつかの間の舞踏会を夢のような気持ちで楽しむシンデレラにピッタリ。コボーはキラキラ王子、ではなく、そんなアリーナをしっかりと支え、影に徹した演技でした。

■「オールド・マン・アンド・ミー」 振付:ハンス・ファン・マーネン
ディアナ・ヴィシニョーワ-ウラジーミル・マラーホフ

ヴィシニョ―ワとマラーホフの長年のパートナーシップによりなんともいえないこのコミカルな作品が選ばれたのでしょう。白シャツ臙脂ベスト黒パンツのマラーホフが冒頓と立っている周りを紫ベルベットロングドレスのヴィシが時に動物のように、時にあだっぽくアピールして回るが彼は無反応。空気がキレてペタンと横たわるヴィシの傍らでマラーホフが空気を入れるジェスチャーをするとその息に合わせて空気人形のように蘇ったり、その逆パターンを見せたり・・の、クスリと笑わせるコミカルな小品。
2人のセンスの良さは堪能できたのですが、今、超絶技巧でどんな作品でも踊れる踊りざかりのヴィシニョ―ワにはちょっと物足りないかも。
Bプロでゴメスと組むのが本番で、これは贅沢な前座と受け取ります^^

■「パリの炎」 振付:ワシリー・ワイノーネン
ヤ―ナ・サレンコ-ダニール・シムキン

白シャツライトグレータイツにトリコロ―ルのカマーバンドのシムキンくんと、白チュチュに斜めがけのリボンと髪飾りをトリコロールにしたサレンコが繰り広げる超絶技巧を見せるガラ・ピース。
既視感ありありではありますが、やはりシムキンくんの540を始めとする体いっぱいに使ったダイナミックで軽やかな跳躍は素晴らしいし、サレンコの安定したフェッテもステキ。
ただ、テクニックは万全、小柄で童顔・・な男性ダンサーが成長に従ってふさわしい作品を踊っていくのって難しいのだなと改めて余計な心配をしてしまいました。

◆第4部◆

■「白鳥の湖」より第2幕アダージオ 振付:マリウス・プティパ
ウリヤーナ・ロパートキナ-ダニーラ・コルスンツェフ

いきなり会場の空気が高原の朝のような白い靄と冷涼な空気に変ったような・・・。
白鳥にして高雅なる姫、姫にして魔法にかけられた白鳥・・という幻想的な世界が当たり前のようにそこに繰り広げられているのをひそやかに息をつめて見守る東京文化会館客席。
異次元空間を一瞬にして作り上げるロパートキナの至芸。

■「トゥギャザー・アローン」 振付:バンジャマン・ミルピエ
オレリー・デュポン-エルヴェ・モロー

とてもとても楽しみしていた、オペラ座アデュー公演にモローの怪我で実現しなかったというこの2人の並び!
なのに・・・。ミルピエ作品の振付はまだしも、お衣装の設定がこの2人には似合わないと思うのですけれども・・・。
白いレーサーバックのタンクトップのオレリーと白Tシャツのエルヴェはふたりともブルージーンズ。
滴るようなゴージャスな美貌が活きない。エルヴェの美丈夫ぶりも・・・。
という不満で悶々としながら観てしまいました。

■「オネーギン」第1幕のパ・ド・ドゥ 振付:ジョン・クランコ
アリシア・アマトリアン-フリーデマン・フォーゲル

第一幕、手紙の場面ですね。都会から来たクールな青年オネーギンに夢中になった田舎の文学少女タチアナの夢に出てきた彼の姿・・・。タチアナが部屋の姿見に自らを映すと、その背後に彼の姿が・・なぜ?すると鏡から彼が飛び出して彼女と激しくPDDを踊る・・という少女の妄想の中の冷たく、でも情熱的なオネーギンはカリスマティックかつドラマティックに踊って男性的な魅力をアピールできる場面。ガラでよく踊られる人妻になったタチアナに再会したオネーギンが求愛する場面は人生経験がにじみ出るような演技が必要だけれど、ここは若いフォーゲルくんでもOKかと思いきや・・。
うーん、なぜ笑顔なのかしら?ニヤニヤしたオネーギンというのがなんとも違和感で、どうも素敵に見えず・・・。
演技プランを見直してほしいと思ってしまいました。
アリシアのタチアナは彼が去り、猛然と恋文を認め始めるラストまで、完璧だったので、勿体ない限りです。

■ドン・キホーテ」 振付:マリウス・プティパ
ヴィエングセイ・ヴァルデス-オシール・グネーオ

バレフェス名物、CUBAのペアによる、見たことのない超絶技巧、あり得ない身体能力の発露に会場大興奮!のコーナーです。
ヴァルデスは2006年のバレフェスでもこの演目を踊っているのですよね。お衣装がかなり強烈で、驚いたことを覚えています。
今回は随分と洗練され、長~いバランスやアティテュ―ドから脚のポジションチェンジをするなど、今回もまたあり得ない!超絶技巧で会場を沸かせました。グネ―オもジュテやフェッテなど自身の見せ場もさることながら、遠く離れた位置にいたヴァルデスが後ろ向きに飛び込み一瞬でフィッシュのポーズにおさまるとか、目がテンになるような美技を繰り出し、フェスのラストを華々しく決めてくれました。

ただ・・・あり得ないことが客席でも起こってしまいました。
8月1日の初日、コ―ダのフェッテをヴァルデスが延々とダブルトリプル取り交ぜて繰り出す中、ノリノリの音楽に合わせて手拍子が・・・。
10列目で見ていたわたくしの前のお席の御婦人も手拍子されていたので、え~、普段バレエを観慣れている観客にはありえないのだけれども・・・。追加席でとったお席だったので、お友達に頼まれてと会員が手配して他の方が座ってらしたゾーンだったのかもしれませんが、かなりショックでした。
音楽が聞こえなくなるし、自分の感覚でバランスを取っているダンサーにとっては迷惑であるというのが周知のはずなのに^^;
8月6日のAプロ最終日に行った時には、配役・演目表の「ドン・キホーテ」のところにご注意が書かれていましたので対応早い!と思いましたが^^;

フィナーレ、踊り終えたダンサーが次々とセンターに走り込んで登場、拍手を浴び、全出演ダンサーが舞台いっぱいに広がる・・この場面、どれだけのスターダンサーがこのフェスに出演しているのか一望できて、本当に感動します。
Bプロ、ガラも楽しみです