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宝塚宙組中日公演「ロバート・キャパ~魂の記録~」

2014-02-21 06:51:28 | TAKARAZUKA
ここまで、ちょっと記事を書くのをお休みしていただけで、これだけ書きたい公演が溜まっていたことに驚いています^^;
時間があるときに、随時、中身を埋めて行くことにしたいと思います。

さて、宙組の中日劇場公演に、初日の2月4日、19日、20日、とTOTAL5公演観ての感想です→あまりに好き過ぎて26日を追加。



宙組TOPスター、凰稀かなめ2番手時代の主演作で、バウホールの初日に駆けつけ、青年館に通いつめ・・・で何度見たか!という思い出深い作品。
それを今、2番手朝香まなと引きいる梅田芸術劇場チームと2手に別れての中日公演。
初演メンバーの退団者の役を誰がするのか、初演と同じ役を演じても、相方が変わるとまた色々と見え方が違うだろうなと期待と不安がないまぜになった気持ちで向かった名古屋で。

・・・やっぱり作品自体は佳作で、タカラヅカ的な華々しさを排除している一方で、映画的なセンスの良いシックな配色の衣装とセットで美しい舞台。
平和を願う戦場カメラマンとしてのCAPAと彼の生きた時代の時代背景を、迫力ある群衆シーンを交えて立体的に描き登場人物のチョイスも(ピカソ、シャネル、アンリ・カルティエ=ブレッソン、セシル・ビ―トンなど)ツボを突いた選択。公私のパートナーであるゲルダ・タローとの愛の葛藤など、色々と胸にせまるものがありました。

配役を初演と比較して・・・

主な配役 出演者( )内は初演

アンドレ・フリードマン(ロバート・キャパ)   凰稀 かなめ
ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー) 実咲 凜音 (伶美うらら)
*~*~*
《BERLIN》
シモン・グットマン(キャパの恩人) 寿 つかさ (汝鳥伶)
チーキ・ヴェイス(キャパの親友) 七海 ひろき (春風弥里)
質屋の店主 穂稀 せり (風馬翔)
質屋の女房 大海 亜呼 (百糸糸)
《PARIS》
アンリ・カルティエ=ブレッソン(写真家仲間)  桜木 みなと(蓮水ゆうや)
デヴィッド・シーモア(シム)(写真家仲間)  星吹 彩翔
パブロ・ピカソ   蓮水 ゆうや(風莉 じん)
マリー=テレーズ・ワルテル(ピカソの愛人)  愛花 ちさき
セシル・ビートン(ハイソなファッション写真家)  天風 いぶき(鳳樹いち)
フーク・ブロック(パリのゴシップ通信社の社長)  風馬 翔 (松風輝)
ジャンヌ(フークの愛人・秘書)  美風 舞良
ヴァンサン・モンフォール(フークの友人)  星月 梨旺 (蒼羽りく)
ユリア・フリードマン(キャパの母)   京 三紗 (光あけみ)
コーネル・フリードマン  和希 そら(桜木みなと)
ピーター・アダムス(LIFE誌の編集長)  留依 蒔世 (風馬翔)
カフェの女給  綾瀬 あきな
カフェの女給  瀬音 リサ
カフェのギャルソン  実羚 淳 (朝央れん)
カフェのギャルソン  留美 絢

《MADRID》
フェデリコ・ボレル・ガルシア(人民戦線の兵士)  蒼羽 りく (鳳樹いち)
エンマ(フェデリコの妻)  花乃 まりあ
ルカ(戦場でキャパに救われる子供)  花咲 あいり
ルカの母   桜音 れい

チ―キは出番がほぼ前半だけで、親友として2番手格のスターが配されるにしては軽い役どころ・・でしょうか。
春風さんは流石に掛け合いの間や表現に幅があって上手かったなぁと初日には感じたのですが、2回目以降はなんといっても凰稀・七海の並びのVISUAL的なバランスの良さが光って、やっぱり美しいっていいなと思ってしまいました^^黒髪で引きしまった容貌の凰稀さんがカ―キ系のネクタイとシャツにニットを重ねたスタイルで地味派手なのに対し、赤ネクタイブルーのフラノパンツにグリーンの襟付カーディガンに茶系のツィードジャケット、金髪をのぞかせたグレーのハットで陽気な印象の七海さんというコントラストが良い感じ。
2人揃って長身小顔美形でなんとも眼福
書類を抱えてパリの街を走り回る様もチャーミングで、留守番任せとけ!な、頼りになるなんでも屋さんでした。
キャパの名前をねつ造された証拠を立ち聞きする場面のアワアワしているところも上手で可愛い。
そう言えば、フークの友人で、キャプションの挿し変えで嫌がらせをする協力者、パリ・ソワール編集長ヴァンサン役、好色な中年オトコの役で、初演で若手スターりくくんが演じていた時は扱い落ちた?!とショックだったことを思い出しました。
今回の星月さんは金髪長身のスマートな編集者で、ちょっと狡猾な感じを良く出していて電話だけの場面ゆえ、上手さが際立っていたと思います。
かいちゃんは台詞に情感をこめることができるので、2度挿入されるキャパの写真紹介場面のナレーターも良かったです。

パリのカフェで出会った写真家仲間2人もスターの役ですが、
初演のアンリ=蓮水さんがクールダンディ、シム=星吹さんがキュートなメガネッ子で対比をなしていたのに対し、今回のアンリは可愛い雰囲気の桜木さん。初日は2人のキャラがかぶってCAPAお兄さんと弟たちみたいだなぁと思ったのですが、中日を過ぎての観劇で観たら、桜木さんアンリが帽子を斜にかぶって目もとを隠したミステリアスキャラに。ただ、そうすると表情が見づらく、可愛いお顔も隠れてしまって魅力減ではあるのですが・・・トライアングルのバランスとしては良くなったと思いました。星吹さんは初演の登場時、カフェで落としたメガネを探す「メガネ、メガネ・・・」という萌え場面(?)がなくなっていたのが残念でしたが、編集者と稿料の交渉でやり合ったあとにキャパが声をかける、という自然な流れに。このイヤミで高圧的な編集者も星月さん。このヒトやっぱり上手いわ。少人数公演だとlこういう発見があって良いですね^^
写真家集団「マグナム」の結成&フラメンコ観賞(ここ、ダンサー若手蒼羽りくくんの見せ場でした)の場面がまるまるカットされたので、この2人とキャパの交流の比重は薄くなったかも。
シム役のもんち(星吹彩翔)の衣装が蝶タイに三つ揃いのブラウン系チェックのニッカボッカースーツにメガネ&ハンチング&首から下げたカメラ。このスタイルが可愛過ぎて、そのまま家に持ち帰って飾りたい!と目の前に立たれる度に思ってしまいました^^;

ピカソと愛人マリー・テレ―ズ。
ピカソをスターの蓮水さんが演じることで、恋多き天才の側面に説得力が。
愛人マリーはコミカルなブロンド美人で、愛花さんの軽妙な演技はぴったり。
「崩おれる兵士」のねつ造疑惑でCAPAを擁護するピカソの「ゲルニカ」の場面、初演では風莉さんが圧倒的な歌唱力でとても印象強い場面でしたが、今回台詞はしっかりとしていたものの、歌でトーンダウンしてしまったのがなんとも残念・・・。

そして、初演を鳳樹いちさんがその名演でこの役を一気に準主役級に盛ってきた伝説の兵士、フェデリコ役。
ソロの長いダンスシーンが印象的なので、ここは絶対ダンサーで・・・。
で、朝香さん主演公演との振り分けが出たのを観た瞬間から、絶対このヒトにやってほしいと熱望していた蒼羽りくさんが配役されてから、ずっと楽しみにしていたのですが・・・。
いや、本当に良かったです
鳳樹さんがその引きしまった筋肉質の体型で実にシャープで男らしい兵士を作っていたのに対し、バトラー新公を経験したことが影響しているのか、若々しい伸びやかなダンサーという印象だった蒼羽さんが、包容力ある大人の男になっていて。ダンスも力強く、発声や台詞回しも男らしさ満点。
正直、今まで可愛がっていた甥っ子がある時突然声変わりして大人になっていた!くらいの衝撃です^^;
カメラだけで実戦参加出来ないことを歯がゆく思うキャパを諭して使命を明らかにさせる場面では悩める凰稀さんを力強く励ますりくくんが学年逆に見える幻が・・・。
身重の妻エンマ(花乃まりあ)に対する時は小さな彼女の頭を包み込むように優しく添える手が大きく見えました。
・・・が、帰りましょう、と促すエンマに「そうだね」と返す時の台詞声がそこだけ素の女の子声になっているのが密かな萌え(?)ポイントだったのですが、26日にはそこが「すまない」と大人声に変っていて^^;
残念です(?)
人民戦線の闘いの中で、ソロで歌い上げる場面、あ、そういえば歌があったんだ・・・いちくんは歌もダンスも上手かったけどりく・・・大丈夫??と初日には手に汗握りましたが(失礼)、音程が多少不安定でも最初から声が出ていて。日が経つにつれ、安定してきたようにも思います。ダンサーなので、腹筋の使い方など、歌唱のコントロールもの見込みが早いのかしら?今後も特に歌のスキルは伸ばして大きなスターに成長してほしいなと思う存在感ある人なので。色々と期待してしまいます^^;

エンマ役の花乃さんは台詞も少なく小さな役で。新公主演を繰り返し、今度花組に異動が決まった宙組最後の作品にしては扱いが小さいなという感じです。夫の戦場に向かう夫に一言「いやよ・・」と振り絞るように言う声が唯一の見せ場?花組に異動して、蘭乃はなさんの後に来るであろう明日海りおさんの2番目の相手役候補に挙げられているにしてはちょっと・・・??

カメラマン(特に戦場)という危険な仕事に反対する母とそれに付き添うしっかりものの弟は、初演より上手い方が入ってやや違和感が薄れたとはいうものの、やっぱりやや蛇足?
特にライフ誌の編集長と引き合わせたベルリン時代の恩人である社長が、挨拶もなく飛び込んできて滔々とキャパに語る母に、気を使ってチ―キとともに退散する・・とか、KYすぎる家族に引きます。
あと、近所に住んでいる設定でもなくはるばる遠い故郷からパリに訪ねてきた設定なのに家でスープでもかき混ぜていそうな肩掛けストールの姿というのも違和感。
弟が医者を志していたのに兄に感化されてカメラマンを目指す・・・という母の心配2倍増設定が納得(きれいだけど人に騙されそうな兄弟)の桜木弟から、医学生を目指してかならずや合格するであろう和希弟に変更になっていたのは設定とあった配役だなと^^;

恋人ゲルダの実咲さんは、「銀英伝」で有能な秘書役が似合っていたのにプラスして、「風共」のメラニー役で天使のような笑顔を習得した成果か、素敵なゲルダでした。初日はちょっと物固く、初演のうららちゃんは色々技術が拙かったけれどもっと情感があったのに・・・とやや不満を感じましたが、中日以降の日々刻々と演技が情熱的に変化する様は眼を見張るものがありました。
ゲルダの台詞って、直接愛を語るのは一言、「もう俺を愛していないのか」に対して「愛しているわ。愛しても愛しても愛し足りないくらい愛しているわ」という台詞だけで、後は彼の才能を称え、励まし続ける・・・という感じですが、その言葉のひとつひとつの感情のこもり具合がどんどん強くなっていて。
2人が寄りそってのデュエットが、甘い声質の凰稀さんに寄りそう透明感のある歌声でとても美しく、うっとり。
2人の駅での別れの場面、キャパが彼女の後姿に向かって「ゲルダ!」と声をかけ、振りむいた笑顔を撮る、というシーン、19日夜の、間が最高で。振り向くのにやや間があるんですよね・・・で、笑顔で振り向くんですが、ライトが落ちる寸前にその笑顔がクシャっと泣き顔に崩れそうになるの・・・グッときました。
26日はふりむく前にためて、そこでちょっと肩をふるわせて、それから満開の笑顔を、という風に変えてきていて。
みりおんちゃん(実咲)は、これと決めたら演技は固定で変えられないタイプだと思っていたので、これは新鮮な驚きでした^^

キャパの凰稀さんは・・・。
全てのお衣装が素敵に似合っていて、それだけでももう、この作品が大好きです。
とりわけ鉄板なのはカーキ色のラルフローレンのローゲージニットの下にシャツとネクタイ、カーゴパンツにブーツ敢えて下に垂らしたサスペンダーの戦場での姿。
後、名声を得た後のシュッとした3つ揃えのダークスーツも絶品で。
黒髪で短めの髪形がとても良くお似合い。ラインハルトやオスカル様のような金髪ロン毛は勿論お似合いですが、ショートなら、中途半端に衿脚長め、というのが星組時代結構あったのですがあまり好きではなく・・・今のようにスッキリ短くした方が可愛らしさもカッコよさも両方増すと思います。
演技派の彼女、チ―キと2個イチの若者時代の軽快な感じ、カメラマンとしての使命に迷いを覚えるところ、決意、ゲルダへの愛情表現、など繊細に作り込んでいて、これは本当に当たり役だと思います。
ちょっと気になったのは、新聞や書類を握りしめて丸めるという悔しさの表現をする場面が二つあるのですが、ともに、ゲルダ、そしてチ―キにそのゴミ(新聞)を渡しているんですよね・・・捨てとけ、的な。これちょっと演出的に他の処理方法はなかったのでしょうか・・・。大事な友人たちを助手扱いで俺様過ぎて、優しいキャラ設定が台なしなのですけど^^;あと、事務所で留守番中、ヌードモデルの応募者の電話に対して上から目線すぎ。そういう仕事を展開している会社にいる焦燥感はわかるけれど、相手の事情をガン無視で感じ悪すぎ。このエピソードはゲルダの登場に対しての最初の誤解、独立後嫌がらせを受ける場面などに展開して使われているのでマストなのかもしれませんし、若者故の潔癖さかと解釈してみましたが、キャパの人柄にそぐわない気が・・・。
ゲルダの死を受けて慟哭する場面、さすがに求心力があって上手かったですが、こういうストレートな演出よりも、ふと手に取った書類が、ゲルダがキャパのための推薦文を書いた、その原稿で・・という方がグッときました。

原田先生の演出は、幕を閉じる時に上下左右から黒い枠が迫ってきて、ちょっとカメラのファインダーをのぞいているような感覚になる機構とか、八百屋舞台の背景に蒼紫~薔薇色の夕闇を見せたり(これは照明の手柄かも)、デモの場面の看板の使い方とか、良き時代のハリウッド映画を思わせる美しさが魅力でいいところもたくさんあるので、もう少しここがこうだと・・・と思ってしまったり^^;
初演から思っていたのですが、写真家仲間のマグナムメンバーに対する存在としてセシル・ビ―トンを持ってきたのにはオッと思いました。
貴族出身でお洒落な叔母を観て育った彼は、映画界におけるヴィスコンティ同様、真の贅沢を知っている、という強みを持って、新しいメディアを使って美を想像する表現者だったのですよね。彼の「ファッションの鏡」(文化出版局)という本を中学生の頃とても興味深く読んだことを思い出しました。

初演ではバウと青年館、今回は中日・・・。大劇場に掛けるより、やはり小劇場向けの作りではありますが、もっと多くの人に観てほしい佳作で。全ツにも良いのでは・・・と思いました。
宝塚初心者の方をお誘いしてもストレートプレイ感覚で、違和感なく作品世界に入っていただける作品なので