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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

バーミンガム・ロイヤル・バレエ「ダフニスとクロエ」

2011-05-29 06:11:15 | BALLET
5月27日(金) 18:30から、東京文化会館にて

バーミンガムロイヤルバレエ団のもうひとつの演目、
アシュトン2本立ですね^^
初めて見る作品、「「ダフニスとクロエ」、
そして吉田都さんがタイタ―ニア役でゲスト出演される「真夏の夜の夢」を観て参りました。
まずはダフニスとクロエから・・・

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2011年日本公演
 
「ダフニスとクロエ」

音楽: モーリス・ラヴェル
振付: フレデリック・アシュトン
衣裳・装置: ジョン・クラクストン
照明: ピーター・テイゲン

クロエ(羊飼い): ナターシャ・オートレッド
ダフニス(山羊飼い):  ジェイミー・ボンド
リュカイオン(都会から来た人妻): アンブラ・ヴァッロ
ドルコン(牧夫): マシュー・ローレンス
ブリュアクシス(海賊の首領): アレクサンダー・キャンベル
パンの神:  トム・ロジャース
ニンフたち: ヴィクトリア・マール、ジェンナ・ロバーツ、アンドレア・トレディニック
羊飼いたち、海賊たち: 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団



これは・・・ですね、神話的なイメージですが、村の青年男女がまず、男性はシャツにチノパン、女性はシンプルなミディ丈のワンピースで普通の現代的な服装。そこにきちんと扮装した海賊やパンの神が絡むのでちょっとふしぎな演出です。
ラヴェルの音楽は終始美しく、アシュトンの何気なく見せて実は高難度の振付も破綻なくこなすカンパニーの相応の実力もわかりました・・・が^^;

愛し合う男女、ダフニスとクロエ。そこに牧夫ドルコンと都会から来た人妻リュカイオンがそれぞれを誘惑しようとします。
クロエはマッチョなドルコンに見向きもしませんが、リュカイオンの妖艶な誘いについいい顔をしてしまうダフニスを見て嫉妬してしまったり・・・という恋のさや当て。
主役二人は美男美女カップル。特にダフニスのジェイミー・ボンドは古典的な往年の映画スターのような整ったクラシカルな美男俳優のような顔立ち。横恋慕する二人も主役級で、カンパニー総力戦的な配役ですね。

そうこうするうちに、海賊たちが現れてクロエを誘拐。海賊の巣窟で、首領が襲いかかろうとします。
クロエは黄色いワンピースを脱がされて、白いミニドレス(下着?)に。
嘆き、必死にダフニスへの愛と貞節を訴えます。・・・すると、パンの神が現れて、海賊どもは追い散らされ、クロエが片方の肩にちょこんと座った体制でしずしずと海に向かって歩く神(凄いですね)故郷に送り届けてくれるのでした。
ここでは、海賊の首領を踊ったアレクサンダー・キャンベルがキレキレの踊りを披露。髭面の似合うマッチョな体型の彼はしなやかで力強い技巧派と見ました。

戻ったクロエを皆で迎えます。新たに服を身に付け、ダフニスとの愛のパ・ド・ドゥ。
パンの神に感謝の踊りを捧げます。

・・・細かいところは思いっきり省略してしまいましたが、何でしょうか、「シルヴィア」っぽいお話ですが、村の男女の総踊りのシーンなどは女性がスカーフを手に踊る最後など、特に、ちょっと「明るい小川」な風味も漂い、ちょっと作品としては習作的な印象を受けてしまいました。

続く「真夏の夜の夢」の前座(失礼^^;)という感じでしょうか。
群舞の女性陣の中に、「眠り」で赤ずきんちゃんを好演したジャオ・レイ、喜びの精で目立っていたセリーヌ・ギッテンスを確認。数作観ると、なんとなくソリストクラスも見わけがつくようになって楽しくなりますね^^






バーミンガム・ロイヤル・バレエ「眠れる森の美女」 ②

2011-05-26 04:26:20 | BALLET
バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が、来日公演のキャンセル・延期が相次ぐ中、フル・カンパニーで来日して予定通り公演を行ってくれる・・・。
そのことだけでもありがたいと思いますが、更にチャリティ公演を追加。
そのほかにも、会場では、バレエ・ミストレスで、当日カラボス役でもご活躍だったマリオン・テイトが着用したタイタ―ニアの衣装が展示されチャリティオークションにかけられていました。
芸術監督のデヴィッド・ビントリーが、現・新国立バレエ団の芸術監督を兼任している日本との深いつながりを別としても、
来日公演のキャンセルに日本人は心を傷つけられているとして(インタビューで)、震災後の日本へのエールとしての公演のスタンスをプログラムの挨拶文で述べているビントリーの言葉はカンパニーの姿勢として実に温かく響き、その舞台の美しさとともに、友情が心に染みる公演となりました



幕開きからゴージャスな舞台に目を奪われます。
重厚な黒と金とブロンズ、リッチな茶系の錦織が衣装にも装置にもふんだんに使われ、その質感の重厚なゴージャス感がなんともステキ。
プロローグのオーロラ姫の誕生を祝う準備をする宮廷の様子・・・。
「眠り」は何度も観ていますが、ピーター・ライト版を観るのは初めてですので、色々と演劇の国、英国らしい演出が興味深かったです。
カラボスを招待客リストに入れ忘れるという失態を犯し、宮廷が100年の眠りを経験しなくてはならない事態のきっかけを作った元凶?である式典長カタラビュット。
通常は、彼がうっかりして・・とカラボスに謝るも 怒りに燃える彼女に鬘を取られ、自毛をむしられ・・という彼ですが、この版では最初から、だれか忘れているような・・としきりと気にして神経質にリストをチェック。
王様にも眼を通していただき、王と王妃がWチェックを入れているのですが、鷹揚にスル―。
結果カラボスが招待されなかった怒りに燃えて登場(美しい女性の姿で、「エリザベート」のト―トダンサーズのようなカラボスダンサーズを引き連れています・・・東バの井脇さんに近い演出。)すると、王はこの責任は誰に?!と詰め寄られて、ついカタラビュットを売ってしまいます。
その後は通常通り鬘を飛ばされ毛をむしられ・・。それまで気取って人々を横柄に仕切っていた彼がその後はシュンとして下手端に控えているのが可哀そう。最後、王様も悪かったと思ったのか、掃けるときに肩に手を回して、いや悪かった、と言っているようでした^^;
演技が細かいな~と配役表を観たら、このカタラビュット、肩書きは「映像ア―キヴィスト」ですが、プリンシパル・キャラクター・アーティストを兼任。(ロイヤルで言えばギャリー・エイヴィスのポジでしょうか、いや、容姿からするとアラステア・マリオット?^^)
カラボス役のマリオン・テイトは奥方なのでした。
ノーブルで白粉にアプリコット色の頬紅の宮廷化粧が似合う王様ヴォルフガング・シュトルヴィッツァーはバレエ・マスターですし、こういう、脇にベテランの実力派を配するというのがなんとも英国的。

リラの精とカラボスは踊らないマイム中心での演技になるため、衣装もロングドレス。襟もとはシンプルで、袖口が広がって長く裾まで届くほどの、ナルニア国物語の挿絵にあるようなスタイルでリラの精は淡いラヴェンダー(2幕ではアイヴォリー)の、カラボスは黒のそれぞれゴージャスなレース。襟もとをノ―アクセサリーでデコルテをスッキリと見せている分、ヘアスタイルは大きくボリュームを持たせて同系色の羽やビーズでゴージャスさを出して華やかにしたバランス。
とても好きです。
リラの精のアンドレア・トレディニックは長身で長い首と美しいデコルテラインが印象的。手の動きや仕草が本当に流麗でエレガント。

リラの精の配下の妖精たちのソロは、美しさの精にプリンシパルのナターシャ・オ―トレッドや激しさの精に同じくプリンシパルのキャロル・アン・ミラ―という豪華な配役。
ただ、一番目を引いたのは、階級ではオペラ座でいうスジェに当たるのかしら?ソリストの下に位置するファースト・アーティストのセリーヌ・・ギッテンス。
とても美しいラインを持つ黒人のダンサーで、喜びの精を踊った人ですが、同じく黒人でお付きの騎士のタイロン・シングルトンと共にキレイで目立っていました。


うーん、プロローグだけでこの長さ!^^;
まだまだ続きます。。。。

第一幕

16歳のオーロラの誕生日。花婿候補の4人の王子が招かれての祝宴。
プロローグよりも明るい色調が全体のトーンに使われています。
正しくロココ調の金をベースにライトピンク、パウダーブルーを配して、豪華ではありますが、若き姫君の婚約者を決める宴にふさわしい若々しくロマンチックな印象。

見どころその1はオーロラの出。
タマラは天性のスター性と黒髪大きな黒い瞳で瞬間のインパクト大。
ここは彼女の見せ場です。
もらった薔薇を王妃に渡すのに、小柄な彼女と長身の王妃との身長差がGOOD.
一度目は小さなブーケにして手渡しし、2度目は踊りながら両親の座る上手側に向けてハラハラと落としていました。(女官がさりげなく回収)
時々おてんばなオーロラが両親の座る方向にバラバラとほうり投げるバージョンがあるのですが、あれは苦手なので今回は安心^^
ローズアダージョ最大の見せ場、アティテュードでのプロムナード(片手片脚をあげ、片手を王子に預けてポワントだけで全身を支えている状態で一周する)では、なんと、王子が変わる毎にきっちりアンオ―(両手を頭上に卵型にあげる)にしていました。さすがタマラ。バランスの女王!
とはいっても、王子がいなくても自立できるのでは(一時のギエムがそうでした^^;)という風情でもなく、ゆっくりと降ろした片手を王子に預ける様はあくまで優雅。
程よい緊張感を保ちつつ、見事に踊り切る、というのが醍醐味なのですよね



忍びよる魔の手は黒いマントをかぶったカラボス。渡したブーケのセンターに紡ぎ車が!
無邪気に持って踊るオーロラ。騒然とする周囲。痛い!取り落とし、心配するお友達に囲まれて、大丈夫よ、ほら、と再び踊るも急に目眩が・・・。
正体を現して豪快に笑うカラボス。
リラの精が登場して、眠るだけですから・・・と空気を変えて。舞台奥に柔らかそうなクッションが積み重ねられ、王子たちに運ばれてオーロラは眠りにつきます・・・。

第2幕

1,2幕連続。100年後の世の中、王子は伯爵夫人ら貴族の一行と狩りに出ています。
王子役のイアン・マッケイ。ロイヤルの名ダンサージョナサン・コープをちょっと庶民的にしたような^^;バランスの良い長身黒髪のハンサムです。
目隠し鬼など、アトラクションに誘われても、無関心な王子。一行を先に行かせて1人物思いにふけろうとするその時に、優雅なリラの精が現れます。すぐに膝まづいて手にキスをする王子。
眠るオーロラの幻影を見せ、救いに行ってほしいとのリラの言葉に夢中になる王子。現れては消え、近づこうとするとリラに優しく遮られ・・・のトロワが美しい。
ここ、音楽もいいのですよね・・・ハープとチェロが幻想的な雰囲気を盛り上げます。
あぁ、やっぱりチャイコフスキーは天才だなぁとしみじみ^^



森に踏み込むとカラボスの妨害。リラに、頭を使いなさい、さっきの話を思い出して!とヒントをもらい、オーロラに近づきキスをすると・・・
カラボスの魔力は弱まり、目をさましたオーロラと二人、感謝と愛情に満ちた、パ・ド・ドゥを踊ります。
初めて会った、そして一目ぼれ通しではある運命の二人なのですが、その気持ちと理解を深める、しみじみとしたパ・ド・ドゥで、これはライト版の独自の設定。
美しいですし、その後の結婚式への流れもスムースなので、とてもよいと思いました

第3幕



豪華絢爛、眠りから醒めての結婚式の祝宴。
物語の主人公たちが駆けつけて、祝いの踊りを余興で踊るディベルティスマン。
宝石たちの踊りが変則的なパ・ド・カトルに。
女性のソロ、女性のソロ、男性二人の揃えての踊り、と面白い趣向ではありますが、あのキラキラした音楽にはやはり金銀ダイヤモンドの女性が一斉にまわるあのキラキラ感がピッタリだと思うわたくしにはちょっと物足りない感じも^^;
そのほかは、普通はちょっとつまらない赤ずきんちゃんと狼が、赤ずきんちゃん役のジャオ・レイがとても可愛らしい容姿で顔芸の出来る人なのと、オオカミのヴァレンティン・オロヴィアンニコフのジャンプが高くてダイナミックなのとで楽しい場面に。
白ネコと長靴をはいた猫のカップルも、美脚をさわろうとする猫の手をピシャッとはたく勢いや間合いが絶妙な可笑しさでやっぱり芝居心のあるカンパニーだと、こういう場面も美味しいなと思えたフィナーレ。
見せ場その1の青い鳥は、テクニシャン系の若手ソリストの登竜門ですが、今回のジョセフ・ケイリーは左右に足を打ちつけながらジャンプするバットゥリーの柔らかさが印象的。
ダイナミズムよりもしなやかな弾力性が特徴的な踊りで、好印象でしたが、緊張していたのか、掃けるときに一際大きくジャンプするタイミングが合わなかった感じだったり、ところどころでの些細なミスが惜しい。
フロリナ王女のナターシャ・オ―トウッドはプリンシパルだけあって晴れやかな笑顔での落ち着いた演技でした。

・・・がやはり最大の見どころはグラン・パ・ド・ドゥ。
この中にあって、タマラはやはり断トツに別格ですね。
大のお得意である回転、ディアゴナルの超高速フェッテ、フィッシュのポーズ3連発なども全てキレイにこなして
センターで輝いていました

それにしても、今回の眠りの美術・衣装の美しさは好みにピッタリで、本当に美しい舞台を観た、という満足感を胸に劇場を後にすることが出来ました。

あとは都さんのタイタ―ニアで「真夏の夜の夢」も観る予定・・・
お席の当たりが良く、こちらも楽しみです



バーミンガム・ロイヤル・バレエ「眠れる森の美女」 ①

2011-05-23 01:27:12 | BALLET
日曜日、バーミンガム・ロイヤル・バレエ来日公演
「眠れる森の美女」を観に、東京文化会館へ行ってきました。
朝は夏日で夕方は冷たい雨・・・。
ころころ変わる天候に翻弄されつつも、タマラ・ロホの期待を裏切らない突出した技術と的確な演技、ゴージャスな美しい舞台に満足です。

当日の配役は・・・

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 2011年日本公演

「眠れる森の美女」 プロローグ付全3幕

2011年5月22日(日)1:30pm
東京文化会館

音楽:チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ、ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト
衣装・装置: フィリップ・プラウズ
照明:マーク・ジョナサン

国王フロレスタン24世: ヴォルフガング・シュトルヴィッツァー
王妃: ヴィクトリア・マール
オーロラ姫: タマラ・ロホ
フロリムンド王子: イアン・マッケイ
カタラビュット(式典長): デヴィッド・モース
カラボス: マリオン・テイト
リラの精: アンドレア・トレディニック

美しさの精: ナターシャ・オートウッド
お付きの騎士: ジョセフ・ケイリー
誇らしさの精: アランチャ・バゼルガ
お付きの騎士: ファ―ガス・キャンベル
謙虚さの精: レティシア・ロ・サルド
お付きの騎士: ジョナサン・カグイオア
歌の精: ジャオ・レイ
お付きの騎士: クリストファー・ロジャース=ウィルソン
激しさの精: (ダスティ・バットン) → キャロル=アン・ミラー
お付きの騎士: ヴァレンティン・オロヴィヤンニコフ
喜びの精: (サマラ・ダウンズ) → セリーヌ・ギッテンス
お付きの騎士:タイロン・シングルトン
カラボスのお付きの騎士: ジェームズ・バートン、益子優、ショーン・マクラフリン、ナサニエル・スケルトン、オリヴァー・テイル、ルイス・ターナー
リラの精のお付き: ジェンナ・キャロル、ローラ・ダベンポート、淵上礼奈、ジェード・ヒューゼン、アビゲイル・プルーダムス、ローラ・パ―キス

―第1幕―
4人の王子: ロバート・パーカー、ジェイミー・ボンド、ドミニク・アントヌッチ、タイロン・シングルトン
オーロラ姫の友人: ジェンナ・キャロル、ローラ・ダベンポート、淵上礼奈、ジェード・ヒューゼン、アビゲイル・プルーダムス、ローラ・パ―キス
ガーランド: アランチャ・バゼルガ、ジャン・イジン、セリーヌ・ギッテンス、イヴェット・ナイト、レティシア・ロ・サルド、ジェンナ・ロバーツ、ジョナサン・カグイオア、マティアス・ディングマン、ロバート・グラヴノ―、ヴァレンティン・オロヴィヤンニコフ、クリストファー・ロジャ-ス=ウィルソン、トム・ロジャース

―第2幕―
伯爵夫人:  イヴェット・ナイト
王子の側近: ジョナサン・カグイオア

―第3幕―
パ・ド・カトル: アランチャ・バゼルガ、、ローラ・パーキス、(マティアス・ディングマン)→クリストファー・ロジャース=ウィルソン、オリヴァー・ティル
長靴をはいた猫と白い猫: ロバート・グラヴノー、カリー・ロバーツ
青い鳥とフロリナ王女: ジョセフ・ケイリー、ナターシャ・オートレッド
赤ずきんと狼: ジャオ・レイ、ヴァレンティン・オロヴィヤンニコフ
グラン・パ・ド・ドゥ: タマラ・ロホ、イアン・マッケイ

指揮:ポール・マーフィー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

プロローグ:13:30-14:10 休憩15分 第1-2幕: 14:25-15:30 休憩15分 第3幕: 15:45-16:25




宝塚雪組「ニジンスキー」 ②

2011-05-20 15:17:56 | TAKARAZUKA
長くなったので分けますね^^
感想です。

■チギンスキー
ちぎたさんのニジンスキーはバレリュスの両性具有的なスターはまた異なる、夢追い少年でした。
「自由になりたいんだ」
「イカロスのように飛びたいけど飛べない・・・」
「自分の心のままに踊りたいんだ」
普通の大人が言ったらバカ言うんじゃない、と一笑にふされそうな台詞が、ボーイソプラノ(に聞こえる)で、憧れとほんの少しの戸惑いと時にちょっと拗ねたような甘さを孕んで発せられるとき、それはこのお願いをディアギレフは無視できないよね、ロモラは全身全霊で励ますよね、と納得。
見た目爽やかで、でも本人は悶々と悩んで・・・そんな純粋な少年の心を持った舞神で、
すでに持っていたニジンスキーのイメージとはちょっと違うのですが、これはこれでアリですね。
心配していたお歌も、キーに無理のない楽曲と台詞を言うような感情をのせた歌いっぷりで破綻なく、特に問題なかったかと思います。
スーツや衣装もほとんどお似合いでしたが、、南米に向かう船上での白いスーツと帽子でのダンスシーンは、バックに長身の若手が並ぶとかなり不利です・・・。特にアドバンテージであるお顔が帽子の陰になるとそれは顕著なので、振りは工夫してほしいなぁ。パリに戻ってからの追い詰められる場面での茶系のブラウス姿のときの身体の薄っぺらさに震撼しました。
大丈夫?!
追い詰められて憔悴するシーンなのであれも演出?・・・それにしても痩せすぎです~。(余計なお世話)
Visualが良く、的確な演技が出来る人なので、これからも楽しみですね^^

■緒月ディアギレフ
いや~長身で濃ゆいお顔に細い口髭が似合う!ステキ!ダンディ!
ただ、ですね・・・ディアギレフってもちょっと悪魔的というか、自分の目的のために容赦なくまわりを巻き込んでいくような推進力というか押しの強さが華やかに前面に出てくると面白い役どころだと思うのデスが、キタさん(緒月遠麻)は、根が良い人なのでしょう・・・なんだか理解のある大人で、あまり破綻が見えてこないので、ヴァーツラフがしきりと「セルゲイと言う鳥篭から自由になりたいんだ」と言うのがどうにも子供のわがままに聞こえてしまって・・・。
いや、、切実に、父親的圧倒的な存在のセルゲイは優しければ優しいほど、理解があればあるほど、抗いがたく、自分の行動に深い影響を与えるとわかっての叫びなのでしょうが・・・

パリに帰ったヴァーツラフを新聞記者がパネルで囲んで追い詰めますが、そのパネルが正しく組み合わされると複数のディアギレフの顔になる、という場面がむやみと怖かったです・・・^^;

■あゆっちロモラ
かわいい~。しかし、根は大変な強さを持っていますよ、この人。
一介のファンから、母親に頼んでバレエ団のコールド入り。大好きなヴァーツラフを折に触れて慰めついには妻に!
ってどれだけ意思が強いのかしら。
ディアギレフとの対決シーンも一歩も引かずに対峙する姿は、すでに母である女の強さ、以上のものを感じさせ、
かといって、どーんとオバサンというわけでもなく、芝居、上手いです。
南米行きでヴァーツラフと二人ではしゃぐ姿は少年少女カップルそのもの。かわいい~。
ただ、丸顔さんの運命か、スッキリ顔かつ痩身の早霧せいなちゃんと並ぶと・・・。

史実のロモラは浮気でヴァーツラフを苦しめたり、もう一段階複雑なヒトのようですが、タカラヅカ的には、母性愛の人、最大の理解者、でOKなのかも。
しかし、少年期に父が蒸発、母と弟妹を抱えて苦労した代わりに、恋人二人がそれぞれ父キャラ、母ポジ、とは・・・
業の深さを思わずにはいられません。

■彼らを取り巻く才能たち
豪華です。
最初から最後まで美術を担当、舞台とディアギレフを支えるレオン・バクストを専科の磯野千尋さん。さすが、包容力たっぷり。
振付家としてのライバル、ミハイル・フォーキンをスラリとした大凪真生。彼の振付助手、マリー・ランバートを美形の若手男役の彩凪翔くんが女装で。全く女装感がなく、普通にきれいな長身の女の人でした。フォーキンと並ぶと兄妹のようにシルエットが相似形になってキレイだから敢えての配役?
ストラヴィンスキーは蓮城まこと。黒髪メガネでなり切り度高し。
この人、ラストのフィナーレ黒燕尾で左右に分かれて壁にもたれてセンターの踊りを暫し余裕で眺める・・・という上手側担当だったのですが、そのときの目つきがなんとも・・・上から目線で余裕感があって、不思議なカッコ良さでした。
瞬間目を奪われセンターを忘れました^^;
ヴァーツラフの後釜、ディアギレフの新・恋人、スターダンサー、レオニ―ド・マシーンを まなはる こと真那春人くん。
爽やかで可愛い。ロモラに紹介された時、ニジンスキーさんの大ファンです!と喜ぶ無邪気さが愛らしく、後でまた部屋に、とのディアギレフの言葉にあぁ、と笑うその笑顔がちょっとコワい^^;
ロシア・バレエ団のプリマ、タマラ・カルサヴィナを専科の五峰亜季さん。
バレエ団の練習シーンで1人ポワント。ちぎちゃんのサポートでアティテュードでまわらされていたときの不安定感が!
でも、そのあと、あなたが下手だからやってられないわ!とキレるのでそれで良いのかも・・・
ダンスの名手ですが、多分、クラシック・バレエのレッスンはそんなになさっていないのでは。
普段のジャズダンス的な踊りの上手さを知っているだけに勿体ない感じがしないでもありませんでした。
わがままも言い放題の大御所プリマ、という役どころには熟した美貌でピッタリでしたが。

あ、1人ポワントで、他のバレリーナちゃんたちがボリュームのあるロマンティックチュチュで並んでいたのですが、そのコールドバレエのお嬢さんたちの、まさかのモッタリ感にビックリ!
娘役さんたちのウエストの細さに日頃驚いている身としては疑問が沸々と・・・といいますか、日頃見慣れているバレエダンサーってどれだけ細いの!?ということかと怯えつつ良く見ると、皆足元がバレエシューズ。
20cmくらいシルエットが変わるわけだからモッタリとして見えて当然でした。
宝塚の娘役といえば踊れる子も多いでしょうし、皆ポワントを履いてほしかったな・・・(つぶやき)

娘の頼みで、バレエ団に押し込む(^^?)大女優エミリー・マルクスの涼花リサちゃん、一瞬の出番でしたが、眉をあげて社交界仲間と会話する表情だけでも、役をつかんでいることがわかります。



それにしても、ガッチリと主役の踊り、演技を掘り下げた結果、豪華キャストが皆一瞬の出番・・・逆に言えば、それだけの出番のためにしっかりと役作りが出来るメンバーを一瞬のために揃えることができる今の雪組の充実を喜ぶべきなのでしょうか。
しかし、雪組、全ツ組「黒い瞳」チームも相当上手い人が多かったなぁと思うのですが、
こちらのチームもまた、贅沢な配役、と想わせるとは、どれだけ人材豊富なの?

すっかり雪組贔屓みたいですね。
いや、星ファンなのですが^^;(あ、今日からは宙も!)


宝塚雪組「ニジンスキー」 ①

2011-05-20 10:03:10 | TAKARAZUKA
2011年5月18日18:30~
日本青年館で、雪組2番手 早霧せいなさん主演の
バウ・ミュージカル「ニジンスキー -奇跡の舞神-」を観て参りました。



ムラでのバウ公演を終えて、青年館も翌日が千秋楽というタイミングでの観劇でしたので、かなり作品としても練れてきたところでの観賞かと。

今回の観劇ポイントは3つ
① バレリュス好きゆえ 
もともとバレエでも、バレリュス関連の演目は大好き。
また、リアルにこの時期のバレリュスは衣装・装置・音楽・振付と、後世にその名を残す大物が偶然にもつながって公演に尽力したという、奇跡のようなコラボレーション。
どの人物をメインに持ってきても、個性豊かな周りの才能をどう舞台で表現するのか・・・という興味から。
② 小林十市氏
振付に元・ベジャールバレエ団スターダンサー、現・俳優兼ダンサーの小林十市さんが、振付ご担当。
今でもご自身のためのレッスンは継続されていますし、ベジャール氏のレパートリーを東京バレエ団が公演にかけるときには必ず指導に入られるので、バレエ・マスターとしては現役といって良い方ですが、宝塚に振りつけるのは初めてということで、どうバレエダンサーではないショーダンサーにあの振りを落とし込むのか・・・というところにワクワク。
③ チギキタ
雪のロミジュリでマーキューシオをキレキレに演じていたちぎたさん(早霧せいな)。
演技力と顔立ちの美しさは確認済なので、この主演作で伝説のダンサーにして狂気の天才をどう演じるのか、ということと、稀代の興行師、セルゲイ・ディアギレフを雪で配役するとしたらキタさん(緒月遠麻)しかいないな、と思ったら配役されていたので、これは観なくては!と。

で、、またもや、いつもの星組ファンの観劇仲間とは離れて単独行動(笑)
青年館の6列目は近い!そしてサブセンター通路側ゆえ視界良好。オペラ持参で行きましたがメイク確認以外不要でした。

オープニングはヴァーツラフ・ニジンスキー演じる「シェへラザード」の金の奴隷のソロ。(上の画像がその場面です)

・・・踊りってスゴイ。
その人の全てが出ますね。いきなり。

小林氏の振り付けは実に巧みで、エキゾチックなフォルムをキメのポーズに盛り込みつつ、バレエ的なテクニックをさほど要さず、早霧さんのお得意な跳躍を活かしたダイナミズムのある振りで、ちぎたさんも実に渾身の踊りで応えていました。
小林氏のブログによると、東京公演前にチェックをされたそうなのですが、バウ公演の前と後では「早霧さんの踊りが一回り大きくなっていて嬉しかった」とか^^

・・・ただ、あまたの男性スターダンサーによる、リアル「金の奴隷」を観てきたバレエオタクからすると・・・。
惜しまれるのが、金の奴隷の圧倒的な色気が欠落しているところ。

「シェへラザード」って王様のお留守に寵姫がたくましい奴隷を解放して禁断の悦楽に浸る・・・という大変 色っぽい物語なので、この、姫のお相手である金の奴隷のソロとは、牢から出された解放感と姫を籠絡するフェロモンを爆発させる、「俺を観ろ」的なナルシズムと一体化したオーラがまぶしい・・・そんな場面なのですよね。
それを冒頭に、というところが、ですね。
解放感、というか、踊りの真摯さとキレの良さはGOOD。
ただ、ここでこのポーズの指先に這わせる視線を更に忘我の境地に持っていくことで醸し出されるものもあろうものだのに・・・と思われるところできちっと寸止めるチギちゃんって・・・。
あぁ勿体ない。
その代わりに、美しい端正なお顔から広がる清潔なオーラがあり、ひたむきな踊りと相まって、それはそれで若き天才ニジンスキーのひとつの魅力を感じさせてくれました。
そして、この印象は最後まで付きまといます。

【STORY】

終演後のパーティで、興行主ディアギレフは上流社会のパトロンたちにヴァーツラフを引き合わせますが・・・。
社交嫌いの彼は耐えられず、席を立ってしまいます。
その後ディアギレフの部屋で明かされる二人の関係。
ニジンスキーの才能と美しさに男色家であるディアギレフが惹かれ、現在に至る強固なパートナーを持つに至った経緯と現状を比較的直截な表現で説明してしまいますが、とてもきれいな並びなので、違和感はなかったですね。

バレエ団の稽古風景。音楽はジゼル。
ダンサーとしてはソロは天才的だけれどもパ・ド・ドゥは踊れない、とプリマ・バレリーナであるタマラ・カルサヴィナ(五峰亜季)にダメ出しをされるヴァーツラフ。
皆の前で言い込められてその場から走り去ります。
追いかけてきたのは、大女優の母(涼花リサ)を持つハンガリーの財閥の令嬢タマラ・ド・プルツキ―(愛加あゆ)。
彼女はヴァーツラフのファンが高じてバレエ団に入団。ある意味究極の追っかけ、といえますが、育ちを感じさせる芸術への理解、孤独で複雑な過去を持つヴァーツラフを包み込む彼女の明るさが、彼にとっても救いとなっていきます。

一方、ミハイル・フォーキン(大凪真生)の振付で踊ることに飽き足らなくなったヴァーツラフはセルゲイに直訴。
「自分の心のままに踊りたいんだ・・・」
振付をしたくなったのだな、と理解したディアギレフ。パリの目の肥えた観客に飽きられないように、常に新鮮な企画を捜している自分のニーズにも合う、ということでラヴェルの新曲に振りつけたフォーキンと、ドビュッシーの曲で挑むヴァーツラフを真っ向勝負させる商売上手。
このあたりの話の流れは面白く、フォーキンが選んだダンサー、アドルフ・ボルムをダンサーである大湖せしるがキャスティングされていたので、てっきり踊り比べを観られるのかと思いきや、アドルフのダンスは観られず・・というのがちょっと不満でしたが、その分、ほとんどフルで踊られた「牧神の午後」はオリジナルの雰囲気を上手く伝えつつ、宝塚的なショーアップされた作品として、とても良くできていたと思います。
眉を塗りつぶして目張りを入れ、金髪を立ててサリーちゃんのパパ(笑)のようにして、ドレープで牧神のシルエットを作った衣装を着た早霧せいなちゃんはヴィジュアルも良く、そのダンスは音楽にも内容にも合っていてとても良かったです。
最後、ニンフの残したショールを持って自○行為で締めるのはオリジナルの「牧神」通り、デフォですが、そのことをご存じない宝塚ファンの方には演出がやりすぎだと思われた方もいらっしゃるようで・・・^^;
このことがセンセーションを呼ぶのが大事なので、省くわけには行きませんし、振りとしては猥雑でもなく許容範囲かと。
むしろ、ニンフたちのアルカイックな振りが中途半端に思えたことの方がちょっぴり残念でした^^;

話題性充分のニジンスキー。彼は自身の信じる新しい芸術を、ロシア出身の作曲家イゴール・ストラヴィンスキー(蓮城まこと)と手を携えて作り上げていきます。
衝撃作「春の祭典」(この作品は今観てもモダンです)
従来のバレエの枠を取り去った意欲作は時代の先を行きすぎていて・・・。
興行的には難しいと打ち切りを判断。ディアギレフは芸術を理解しつつ、現実との折り合いをつけることのできるバランス感覚の持ち主。アーティストにもそのことをキチンと伝えます。

失意のヴァーツラフを慰めるロモラ。欲しい言葉、慰め、励まし。彼女なしではいられなくなるヴァーツラフ。
船旅が苦手なセルゲイが同行しない南米ツアーにロモラを同行させて、ブエノスアイレスで結婚します。
報道で初めてそれを知ったセルゲイは激怒。
ロシア・バレエ団を解雇されて自身のカンパニーを立ち上げたものの不慣れな経営、生まれた子供への責任感などに直面。あげくにハンガリーで皇太子暗殺事件が起きたのを受けて、ロシア国籍を理由に軟禁状態に置かれる羽目に。
袂を分かったセルゲイに手紙を書き、スペイン王家からの働き掛けで釈放。
再びディアギレフのバレエ団に所属したヴァーツラフの昔日の輝きはなく、その精神は日に日に蝕まれ・・・。
ロモラが単身ディアギレフを訪ね、真っ向から夫の不調の原因を尋ねますが、その答えとして、助けを求めたヴァーツラフからの手紙が提示され・・・。
真実は(史実的にも)闇の中。
そして、遂に狂気の世界に旅立つヴァーツラフ。

数年後・・・劇場に車椅子の夫とともにロモラが訪れます。
その舞台で踊るのは、ニジンスキー。冒頭と同じ、金の奴隷の踊りで・・・。