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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

マラーホフ版「眠れる森の美女」 ④

2009-01-31 04:16:08 | BALLET
第2幕。
オーロラ姫16歳の誕生日。
4人の求婚者の王子も招かれての舞踏会。



通常ですとオーロラの衣装は薔薇色やかわいいピンクで、キラキラした装飾で華やかに彩られていることが多いのですが、マラーホフ版のオーロラはこんな感じ。(写真は吉岡さんです)
しっかりとした素材のお袖のある華やかな衣装の宮廷人や妖精たちの中にあって、一人伸びやかに肩を出し、ブルーの質素と言って良いほどのシンプルな小花模様の楚々とした衣装。
ヴィシニョーワの濃い存在感を中和するのにマラーホフが知恵を絞ったのかしら・・などと想像してしまいましたが(笑)出の瞬間から生き生きとしたオーラを放つヴィシはさすが!
とりたててしなを作るわけでもないのにベテランらしいテクニックは見せつつもフレッシュな若さを感じさせて・・・。去年のロイヤルのサラ・ラムの希薄な存在感(失礼!)とつい脳内比較をしてしまいました。
やはりオーロラはプリマの役どころ、しかも感情表現によるものではない存在感と言う明確なキャラクターを備えていなくてはならないので非常に人を選ぶ演目だなぁと再認識しました。

この幕のもうひとつの見所は4人の王子。
東バ自慢のプリンシパル、ソリストを揃えてきましたが、中でも木村さんはオーロラに捧げる薔薇を妖精から手渡されるとその香りを楽しんでうっとりとオーロラに視線を送ったり、彼女をサポ-トした後、感に堪えぬ様子を見せたり、小芝居が彼ならでは、で、舞台を大いに盛り上げてくれました。
このプロダクションの王と王妃は若いダンサーが演じていることもあり、衣装も御伽噺らしくちょっとユーモラスなバルーンスタイルで威厳があるというよりは可愛らしさが先にきてしまう感じなのですが、王子たちが退出する場面で王と王妃の脇を抜ける場面では都度丁寧に礼をしているさまなど、ベテランならではの心配り。
演技力に定評のある平野さんも清々しい王子っぷりでした。
ちょっと残念なのはその衣装。
大きなマル衿に大き目のベレー帽・・・で色も曖昧な淡いグリーン、オレンジなどで舞台には調和しているのですが、男性的な魅力を引き立てるタイプのものではないので・・・。
中性的な魅力を持つマラーホフ本人ならさぞ似合うでしょうが一般的な男性ダンサーをステキに見せてくれるものではなかったのが惜しまれます。



変装してしのびこんだカラボスが手渡した薔薇の花。
その棘に指を刺されてフラフラと眩暈を起こして倒れるオーロラ。
騒然とする宮廷。
しかしリラが登場し、舞台中央に横たえられたオーロラの上に金の鳥かごのような薔薇のつるの撒きついた檻(?)が降りてきて幕、となります。


マラーホフ版「眠れる森の美女」 ③

2009-01-27 01:46:08 | BALLET
間が開いてしまいましたが、マラーホフ版「眠れる森の美女」レポ続きです。



オーロラの誕生を祝う妖精たち。
基本リラと同じラベンダー色の衣装でコンビネーションになっている色とヘッドドレスで妖精のキャラクターを描き分けています。カシュクールスーツのようなカチッとした上半身のデザインと大き目のクラシックチュチュが特色。
乾さん、高木さん、田中さんなどここはソリストクラスが集結。
カナリヤの精の佐伯さんがかわいい。
妖精にはそれぞれにおつきの騎士がつきます。
ここでは松下さんのクリアな踊りが目を惹きました。

宴のさなか、暗雲がたれこめ、センターの薔薇の植木がくるりと反転して中からカラボスが現れます。
東バの王子、実は濃い味のキャラクテールもお得意な高岸さんがこの日はカラボス。
背が高くてアポロニックな陽性の魅力を持つ高岸さんですが、女性のカラボスを白塗りで演じます。
ウエストシェイプされた衣装が意外と女性らしいシルエット。
キャラクターのこしらえも、猛々しく怒るカラボス、というよりもちょっと拗ねているみたいで、王と王妃や宮廷の人もそれほど恐れている風ではありません。
妖精たちのとりなしにそっぽを向く姿も「ふん、そんなこと言っても知らないわよ!」とオネエ言葉でアテレコをいれたくなる感じです。
ここはちょっと歌舞伎の女形を意識したこしらえなのでしょうか・・・。
シュツットガルトでも白塗りだったし、流行なのかしら?と思ってしまいました。



傍若無人にふるまい、16歳のオーロラは薔薇の棘で指を刺して事切れるだろうと予言するカラボスも、リラの精だけには頭があがりません。
リラが近づくとまぶしそうに顔をそむける姿がわかりやすい力関係です。
ご安心を。薔薇に刺された姫は命を落としません。100年の眠りにつくだけです・・・とリラ。
上野水香さんのリラは、リラ役に求められる包容力・温かみといった部分では80%の出来かも、ですが周囲から頭ひとつ抜きん出た存在感と身長の高さ、持ち前のおおらかな雰囲気が良く似合います。
似合うといえば着る人を選ぶちょっとスーツっぽいリラの衣装・・・踊りにくそうな大きなチュチュも彼女のプロポーションに映えていました。

マラーホフ版ではプロローグと1幕が続きます。
幕の後ろで場面転換の準備をしている間、幕の前で成長する小さなオーロラをリラが保護しています。それを時折伺うカラボス。
リラに見つかるとそ知らぬ顔で通り過ぎて見たり、といった演出が面白い場面。



マラーホフ版「眠れる森の美女」 ② 

2009-01-12 22:05:59 | BALLET
マラーホフ版は2006年の初演から3年目の再演。
初演時のオーロラはマラーホフと相性抜群の東京バレエ団のプリンシパル、吉岡美佳さんでした。
今回のヴィシニョーワは砂糖菓子のような・・とマラーホフが評する甘くて繊細華奢な吉岡さんとはまた違った芸風ですが、彼女は濃い存在感にも関わらず、クララとかオーロラとか可憐な少女の役を踊ると、驚くほど純真で可愛らしさが滲み出る演技が出来る実力派。
今回もしっかりと見せてくれました。



「眠れる森の美女」自体はとても長いグランドバレエですが、マラーホフ版では第2幕の狩りのシーンが省略されており、3幕目のディベルティスマンでも招待客の踊りにシンデレラがプラスされているものの、赤頭巾ちゃんとオオカミではオオカミのいない赤頭巾ちゃん単体ですし踊りもほとんどなく、3つのディベルティスマンと宝石の踊りに集約されています。
ただ、王子とオーロラのグラン・パ・ド・ドゥではそれぞれのバリエーションも含め、踊りの見せ場的な部分はしっかりと確保されていて物足りなさはありません。
実はロシア・バレエの延々とキャラクターダンスが続く無駄に長いディベルティスマンもキライではないのですが・・・(^^)これはこれでよし、ということで。

このプロダクションで印象深いのはマラーホフ趣味全開の(笑)衣装や装置のデザイン・色使い。
自然が好きなので・・・と語る彼が設定したのは緑豊かな薔薇園。
丸く剪定された薔薇の木がくるりと回転するとその中から妖精たちが出てくる(最後センターからはカラボスも!)仕組み、オーロラが指を刺して100年の眠りにつくのは糸紡ぎの棒ではなく薔薇の棘・・・など随所にこだわりが。



マラ-ホフ版「眠れる森の美女」 ①

2009-01-09 04:04:01 | BALLET
1月8日(木)18:30~
東京文化会館にて、ウラジーミル・マラーホフ振付・演出の「眠れる森の美女」を観て参りました。

前日7日に41歳のお誕生日を迎えたマラーホフ本人が王子として主演の初日。
相手役・主役のオーロラ姫を務めるのはディアナ・ヴィシニョーワ。
美貌と素晴らしい身体能力を持つ情熱的なヴィシニョーワは芸術家の魂の響きあう相手としてマラーホフが好んでパートナーを組むバレリーナですが、観客の目から見ると、存在感の濃いヴィシニョーワが時として、繊細で軽やかなマラーホフの精気を吸い取って輝いているように見えなくもないときが・・・(笑)
今回はそのあたりのパートナーシップもいかがな感じか気になるところです

配役は以下の通り

オーロラ姫  ディアナ・ヴィシニョーワ
デジレ王子  ウラジーミル・マラーホフ
リラの精  上野水香
カラボス  高岸直樹
フロレスタン国王  永田雄大
王妃  坂井直子
カタラビュット・式典長  野辺誠治

妖精キャンディード(純真の精)  矢島まい
妖精クーランド(活力の精)  乾友子
パンくずの精(寛大の精)  高木綾
カナリアの精(雄弁の精)  佐伯知香
妖精ビオラント(熱情の精)  田中結子
妖精のお付きの騎士  松下裕次、長瀬直義、宮本祐宜、横内国弘、梅澤紘貴、柄本弾

オーロラ姫の友人  西村真由美、奈良春夏、吉川留衣、渡辺理恵
             森志織、福田ゆかり、村上美香、阪井麻美 
4人の王子  木村和夫、中島周、平野玲、柄本武尊

ルビー  西村真由美
エメラルド  阪井麻美
サファイア  岸本夏未
ダイヤモンド  奈良春夏

シンデレラとフォーチュン王子  井脇幸江・木村和夫
フロリナ姫と青い鳥  吉川留衣・中島周
牡猫と子猫   河合眞理・平野玲
赤ずきん  森志織

指揮:デヴィッド・ガーフォース
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

プロローグ・第一幕18:30-19:40 休憩25分 第2幕・第3幕20:05-21:10





ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2009

2009-01-05 02:35:45 | MUSIC
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。

年末、仕事が押して連日深夜残業。
大晦日、元旦は年賀状書き・・・と準備がずれ込み、ちょっと疲労気味のお正月休み。



無理をせず、静かに過ごすことにしましたが、はずせないのが毎年恒例の元旦、ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサート。
都度テーマを決めたアレンジメントが美しい、今回は朱赤系の花で一杯のウィーン楽友協会の大ホールで、今年は初登場のダニエル・バレンボイムの指揮。
ウィ-ン・フィルとの共演は数あれど、彼ほどの世界的指揮者がこのニュー・イヤーコンサート初登場とはちょっと驚きですが、バレンボイムと言えば、ワーグナーかマーラー、というイメージがあるわたくしにとって、軽妙洒脱なヨハン・シュトラウスのワルツを重厚でドラマチックな作品を多く指揮する彼がどう料理するか・・・そしてウィーンフィルの面々がどう受け止めて反応するかが大いなる見所。

演目は以下の通り。

- 第1部 -                      
                              
「喜歌劇“ベネチアの一夜”序曲(ベルリン版)」       
「ワルツ“東洋のおとぎ話”作品444」           
「アンネン・ポルカ 作品117」              
「速達ポルカ 作品159」                 
「ワルツ“南国のばら”作品388」             
「ポルカ“百発百中”作品326」              
                  ヨハン・シュトラウス作曲
                              
 - 第2部 -                      
                              
「喜歌劇“ジプシー男爵”序曲」               
「喜歌劇“ジプシー男爵”入場行進曲」            
「宝のワルツ 作品418」                 
                  ヨハン・シュトラウス作曲
                              
「スペイン風ワルツ」          ヘルメスベルガー作曲
                              
「ザンパのギャロップ」     ヨハン・シュトラウス父・作曲
                              
「アレクサンドリーネ・ポルカ 作品198」         
「ポルカ“雷鳴と電光”作品324」             
                  ヨハン・シュトラウス作曲
                              
「ワルツ“天体の音楽”作品235」ヨーゼフ・シュトラウス作曲
                              
「ポルカ“ハンガリー万歳”作品332」           
                  ヨハン・シュトラウス作曲
                              
「交響曲 第45番“告別”から 第4楽章」   ハイドン作曲
                              
         (演奏)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
               (指揮)ダニエル・バレンボイム
                              
  ~オーストリア・ウィーン楽友協会から中継~ 

ヨハン・シュトラウスでもワルツやポルカだけでなく、歌劇からの抜粋を入れている辺りに指揮者の個性が?
ハイドンの「告別」は没後200年ということで。
領主の都合で家族と別れて仕事をさせられている楽団員の不満を上手く伝えるために楽団長ハイドンが考えた演出・・・ということで、楽曲の最後になると一人また一人と演奏家が去っていき、最後に指揮者一人になる、という趣向。
そのオリジナルに乗っ取っているものの、いたずらっぽく、淡々と、こそこそと、乾杯しながら、と一人ひとり芝居っ気たっぷりに消えていくのはご愛嬌。最後コンマスとヴィオラの二人になったところでバレンボイムが君はまさか行かないよね、といわんばかりにヴィオラ奏者の隣に腰掛け、頭をなでたりするが、うつむいて指揮をしている間に彼にも逃げられ。
だれもいないと情けない表情をする辺りがなんとも憎めません。

注目のバレエは3曲。
マラーホフの振付・主演による「宝のワルツ」



ピンクのシャツにシルバーグレイのスーツ姿のマラーホフが白いふわっとしたドレスにサーモンピンクのアクセントが動きをきれいに見せて効果的な衣装のウィーンのソリストエレナ・ピュリスと踊ります。
それにしてもマラーホフの動きは指の先まで神経が行き届いていて本当にきれい。
8日からのマラーホフ版「眠れる森の美女」を彼が主役の初日に観に行く予定ですが、一層楽しみになって参りました。



こちらは「ハンガリー万歳」のときに挿入されたバレエシーンから。
ちょっとエキゾチックなハンガリー風の旋律を取り入れたでも軽快なポルカに合わせて男女とも美しいダンサーが踊ります。
男性は鮮やかなブルーサテンがちょっと中国服っぽい軍服風デザインのスーツ、女性は白いブラウス、エプロンにブルーのスカートとベストのチロル調。
女性が一瞬、男性をリフトしようとしたりするコミカルな振りが楽しい一幕。



ラスト近くの「美しき青きドナウ」は今回は趣向を変えてバレエ学校の生徒さん男女3人ずつによる踊り。
男の子は金の筋肉つき(?)半袖Tシャツに天使の羽。ブルーサテンのハーフ丈パンツ。
女の子はブルーサテンの襟ぐりとヒップにフリル飾りのあるユニタードで子鬼(天使?)と妖精たち、といった風情。お城から会場へ、という演出で最後はホールの通路で観客の目の前で踊るのですが、優雅に落ち着いた風情の中に茶目っ気もありなかなか。

音楽的に気に入ったのはヘルメスベルガーの「スペイン風舞曲」。
カスタネット、ハープなどを効果的に使った優美な音色に心惹かれました。
そしてヨハンの弟、ヨーゼフ・シュトラウスの「天体の音楽」。
透明感溢れるゆったりとした音色にうっとり。オーストリアの山岳地方のダイヤモンドダストなど映像も美しかったです。

プログラムの最後はアンコール曲として「美しき青きドナウ」に続いて「ラデツキー行進曲」
バレンボイムが楽団そっちのけで観客の方を向いて手拍子を入れるタイミングをピシッと指示していたのが面白い。

恒例の指揮者と楽団員による新年の挨拶は簡潔なものでしたが、イスラエル国籍でパレスチナ和平に特別の思いのあるバレンボイムにとって今の情勢はどんなに苦しい心持でいらっしゃるのかと思わずにはいられませんが、やはり、挨拶の言葉に「正義が中東において実現されますように」と一言。

後一回再放送の予定があるそう・・・
見逃された方は是非!

2009年 1月24日 (土)  21:00 ~ 24:00 NHK BS2