2012年7月26日(木)19:00~
サントリーホール 大ホールにて。
岩城宏之氏が創設された、日本最初の室内楽オーケストラである、
オーケストラ・アンサンブル・金沢(以下OEK)の東京公演に行って参りました。
今回の目玉!は、2009年ルーブル宮音楽隊を率いて来日公演を行い話題をさらった
指揮者、マルク・ミンコフスキの初めての日本のオーケストラとの共演。
プログラムが、20世紀初頭のパリ、というテーマで、興味深いラインナップです。
7月のOEKの定期公演はマイスターシリーズ、ということで,著名な客演指揮者が続々登場。
まずはダニエル・ハーディングとのベート-ベン。
続いて金沢、この日のサントリーホール、そして28日にみなとみらいで共演するのがマルク・ミンコフスキ。
ラ・フォル・ジュルネでもお馴染みのシンフォニア・ヴァルソヴィアの音楽監督も務めている方なので、バロックから古典派の専門家、というイメージが強く、今回の演目はかなり意外な感じもありましたが・・・。
いただいたパンフレットの曲紹介が詳しくてわかりやすかったので、そこから引用しつつ雑感を。
■ヴァイル:交響曲 第2番
ブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド映画で有名なクルト・ヴァイル(ワイル)。
1900年ドイツ生まれの彼ですが、「三文オペラ」で成功した後、1935年にアメリカに渡る前に、2年間パリで過ごしているんですね。
そのパリ時代に書かれた珍しい交響曲です。
初演はブルーノ・ワルター指揮、アムステルダム・コンセルトへボウ・オーケストラ。
第1楽章:ソステヌ―ト~アレグロ・モルト
「陰欝な序奏部で開始され、トランペットの悲痛なソロ。続く主部は闘争的な性格を持ち、t執拗なリズムの反復の合間に管楽器のソロが交代して現れ、合奏協奏曲風の印象を残す」
第2楽章: ラルゴ
「ノスタルジーを喚起させる葬送行進曲。しかし悲劇性の中に諧謔と機知が混在して複雑な表情を描き出す」
第3楽章: アレグロ・ヴィヴァーチェ~プレスト。
「軽やかな舞踏に愁いとアイロニーがつきまとい、解決されない気分のまま前進し、性急なコ―ダによって曲を閉じる」
確かに、独特のメロディライン、ジャズを想起させる展開など、クルト・ワイルらしい曲想があり、それがこういう交響曲のスタイルをとっている、というのがなんとも興味深い。
OEKの演奏は引き締まっていてレベルが高くしかも程よくつつましやかな品の良さがあり、これは・・・と居住まいを正して次にも期待。
■プーランク:2台のピアノのための協奏曲 ニ短調
2台のピアノのために書かれた協奏曲、ということで、珍しい演奏なのかと思いきや、このオーケストラにとっては定番の一曲らしいです。
逆に指揮者やソリストで化学反応に変化が生じるのを楽しむ、というのがOEKファンのスタンスだとか^^
ピアノは、ナントの「ラ・フォル・ジュルネ」で注目を集めたという若き天才と名高いギョーム・ヴァンサン21歳と
地元金沢出身のピアニスト田島睦子さん。
ヴァンサンは、演奏の小休止の最後の音のあと、パッと手足をばね仕掛けの人形のように伸ばしたり、軽快な感情表現が肉体的に連動して目に見えるタイプのピアニスト。
楽曲への親和性が機知に満ちた演奏と喜びに溢れた表現に現れていて、プ―ランクのフランス人らしいエスプリに満ちたこの作品に良く合った軽やかな演奏振り。
対する田島さんは、クールでエレガントなお姿なれどはんなりとした演奏で、好バランス。
初演は1932年。ヴェネツィア国際現代音楽祭にて、ソリストは作曲者自身とジャック・ファブリエ。
デジレ・デフォー指揮。ミラノ・スカラ座管弦楽団。
第1楽章: アレグロ・マ・ノン・トロッポ
「軽快で洒脱な楽想が次々に連続する中に時折思わせぶりなメランコリーが漂う。
ストラヴィンスキーやモーツァルトを想起させながら、意外性のある静謐な終結部へとたどり着く。」
第2楽章: アンダンテ・コン・モート。
「モーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調K467の第2楽章のパロディあるいはオマージュと呼ぶべきか」
第3楽章: アレグロ・モルト
「突き抜けた能天気さ、クールな詩情、快活さと陽気さを交錯させながら、ブリリアントなフィナーレを迎える」
これは名演。
客席の拍手も長く続き、第3楽章をまるまるアンコール。
ここで休憩20分。
サントリーホールはホワイエでもお茶が出来ますが、目の前のオ―バカナルに走って好きなもので喉を湿すことが出来るのがありがたいです
■ラヴェル:マ・メール・ロア(全曲)
タイトルは「マザーグース」で、フランスのおとぎ話ダイジェストの趣。
とはいっても子供だましではもちろんなく、ラヴェルらしい色彩豊かな幻想に心地よく酔わせてくれる作品。
はじめは友人夫婦の子供のための連弾曲として書かれたそうですが、その翌年1911年に連弾版を管弦楽化した組曲版、さらに曲順を入れ替えて場面と間奏を付け加えたバレエ版に進化。
>曲は満ち足りた「前奏曲」で開始され、「紡ぎ歌の踊りと情景」に進む。
王女は紡ぎ車の紡錐で手を刺し、魔法使いの呪いによって眠りに落ちる。
ゆったりとしたフルートのソロに導かれて「眠りの森の美女のパヴァーヌが奏でられる。
続いて「美女と野獣の対話」
クラリネットの美女にファゴットの野獣が応える。
囚われの美女が野獣の求婚に応えると野獣は王子に・・・。
「親指小僧」は森に捨てられた親指のように小さな男の子のお話。パン屑を撒いて帰り道を示したのに小鳥が食べてしまいます。迷子になって行った先には恐ろしい場所が・・・
「パゴダの王女レドロネット」中国の陶器の首振り人形がパゴダ。
呪いで観にくくなったレドロネット姫。見知らぬ城にたどりつくと人形たちが王女を歓待。
最後は「妖精の園」。
「眠れる森の美女」の終幕。王子が美女の目を覚まし大団円。
繊細で彩り豊かな管弦楽が終幕を盛り上げます。
こちらも色彩感溢れる良い演奏でした!
緻密に作り上げられた上で、曲の世界を大切に楽しみながら演奏している様子がソリストのみならず楽団員全員から感じられて、ステキなラヴェル。
アンコールは「パゴダの王女」。
中国風の銅鑼の音など、バレエ音楽でのデイベルティスマン部分でしょうか。エキゾチックで素敵でした
サントリーホール 大ホールにて。
岩城宏之氏が創設された、日本最初の室内楽オーケストラである、
オーケストラ・アンサンブル・金沢(以下OEK)の東京公演に行って参りました。
今回の目玉!は、2009年ルーブル宮音楽隊を率いて来日公演を行い話題をさらった
指揮者、マルク・ミンコフスキの初めての日本のオーケストラとの共演。
プログラムが、20世紀初頭のパリ、というテーマで、興味深いラインナップです。
7月のOEKの定期公演はマイスターシリーズ、ということで,著名な客演指揮者が続々登場。
まずはダニエル・ハーディングとのベート-ベン。
続いて金沢、この日のサントリーホール、そして28日にみなとみらいで共演するのがマルク・ミンコフスキ。
ラ・フォル・ジュルネでもお馴染みのシンフォニア・ヴァルソヴィアの音楽監督も務めている方なので、バロックから古典派の専門家、というイメージが強く、今回の演目はかなり意外な感じもありましたが・・・。
いただいたパンフレットの曲紹介が詳しくてわかりやすかったので、そこから引用しつつ雑感を。
■ヴァイル:交響曲 第2番
ブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド映画で有名なクルト・ヴァイル(ワイル)。
1900年ドイツ生まれの彼ですが、「三文オペラ」で成功した後、1935年にアメリカに渡る前に、2年間パリで過ごしているんですね。
そのパリ時代に書かれた珍しい交響曲です。
初演はブルーノ・ワルター指揮、アムステルダム・コンセルトへボウ・オーケストラ。
第1楽章:ソステヌ―ト~アレグロ・モルト
「陰欝な序奏部で開始され、トランペットの悲痛なソロ。続く主部は闘争的な性格を持ち、t執拗なリズムの反復の合間に管楽器のソロが交代して現れ、合奏協奏曲風の印象を残す」
第2楽章: ラルゴ
「ノスタルジーを喚起させる葬送行進曲。しかし悲劇性の中に諧謔と機知が混在して複雑な表情を描き出す」
第3楽章: アレグロ・ヴィヴァーチェ~プレスト。
「軽やかな舞踏に愁いとアイロニーがつきまとい、解決されない気分のまま前進し、性急なコ―ダによって曲を閉じる」
確かに、独特のメロディライン、ジャズを想起させる展開など、クルト・ワイルらしい曲想があり、それがこういう交響曲のスタイルをとっている、というのがなんとも興味深い。
OEKの演奏は引き締まっていてレベルが高くしかも程よくつつましやかな品の良さがあり、これは・・・と居住まいを正して次にも期待。
■プーランク:2台のピアノのための協奏曲 ニ短調
2台のピアノのために書かれた協奏曲、ということで、珍しい演奏なのかと思いきや、このオーケストラにとっては定番の一曲らしいです。
逆に指揮者やソリストで化学反応に変化が生じるのを楽しむ、というのがOEKファンのスタンスだとか^^
ピアノは、ナントの「ラ・フォル・ジュルネ」で注目を集めたという若き天才と名高いギョーム・ヴァンサン21歳と
地元金沢出身のピアニスト田島睦子さん。
ヴァンサンは、演奏の小休止の最後の音のあと、パッと手足をばね仕掛けの人形のように伸ばしたり、軽快な感情表現が肉体的に連動して目に見えるタイプのピアニスト。
楽曲への親和性が機知に満ちた演奏と喜びに溢れた表現に現れていて、プ―ランクのフランス人らしいエスプリに満ちたこの作品に良く合った軽やかな演奏振り。
対する田島さんは、クールでエレガントなお姿なれどはんなりとした演奏で、好バランス。
初演は1932年。ヴェネツィア国際現代音楽祭にて、ソリストは作曲者自身とジャック・ファブリエ。
デジレ・デフォー指揮。ミラノ・スカラ座管弦楽団。
第1楽章: アレグロ・マ・ノン・トロッポ
「軽快で洒脱な楽想が次々に連続する中に時折思わせぶりなメランコリーが漂う。
ストラヴィンスキーやモーツァルトを想起させながら、意外性のある静謐な終結部へとたどり着く。」
第2楽章: アンダンテ・コン・モート。
「モーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調K467の第2楽章のパロディあるいはオマージュと呼ぶべきか」
第3楽章: アレグロ・モルト
「突き抜けた能天気さ、クールな詩情、快活さと陽気さを交錯させながら、ブリリアントなフィナーレを迎える」
これは名演。
客席の拍手も長く続き、第3楽章をまるまるアンコール。
ここで休憩20分。
サントリーホールはホワイエでもお茶が出来ますが、目の前のオ―バカナルに走って好きなもので喉を湿すことが出来るのがありがたいです
■ラヴェル:マ・メール・ロア(全曲)
タイトルは「マザーグース」で、フランスのおとぎ話ダイジェストの趣。
とはいっても子供だましではもちろんなく、ラヴェルらしい色彩豊かな幻想に心地よく酔わせてくれる作品。
はじめは友人夫婦の子供のための連弾曲として書かれたそうですが、その翌年1911年に連弾版を管弦楽化した組曲版、さらに曲順を入れ替えて場面と間奏を付け加えたバレエ版に進化。
>曲は満ち足りた「前奏曲」で開始され、「紡ぎ歌の踊りと情景」に進む。
王女は紡ぎ車の紡錐で手を刺し、魔法使いの呪いによって眠りに落ちる。
ゆったりとしたフルートのソロに導かれて「眠りの森の美女のパヴァーヌが奏でられる。
続いて「美女と野獣の対話」
クラリネットの美女にファゴットの野獣が応える。
囚われの美女が野獣の求婚に応えると野獣は王子に・・・。
「親指小僧」は森に捨てられた親指のように小さな男の子のお話。パン屑を撒いて帰り道を示したのに小鳥が食べてしまいます。迷子になって行った先には恐ろしい場所が・・・
「パゴダの王女レドロネット」中国の陶器の首振り人形がパゴダ。
呪いで観にくくなったレドロネット姫。見知らぬ城にたどりつくと人形たちが王女を歓待。
最後は「妖精の園」。
「眠れる森の美女」の終幕。王子が美女の目を覚まし大団円。
繊細で彩り豊かな管弦楽が終幕を盛り上げます。
こちらも色彩感溢れる良い演奏でした!
緻密に作り上げられた上で、曲の世界を大切に楽しみながら演奏している様子がソリストのみならず楽団員全員から感じられて、ステキなラヴェル。
アンコールは「パゴダの王女」。
中国風の銅鑼の音など、バレエ音楽でのデイベルティスマン部分でしょうか。エキゾチックで素敵でした