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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚宙組「白夜の誓い」 東京宝塚劇場 前楽

2015-02-15 04:55:44 | TAKARAZUKA
凰稀かなめ退団公演「白夜の誓い」

東京公演で数々の手直しが入り、日々の出演者の演技の進化・深化によって今や別モノと化した観のあるこの作品。
ラスト1週間で8日、11日ダブル、12日夜、そして14日もダブル・・・で15日の千秋楽を残すのみ、となった今、2月14日15:30公演、さよならショー付前楽で、ひとつの頂点を迎えたのでは?と感じました。



オープニング、汝鳥さんのテッシン撫育官が2人の子供にヴァ―サ王伝説、デンマークからのスウェーデン独立戦争を読み聞かせます。マイクが入っていないところで「始めますよ」「うん!」のやり取りあり。
後の軍の元帥アンカーストレムは木彫りの剣を仕上げながら聞き、それをプレゼントされたグスタフは自分の名が祖国の英雄グスタフ・ヴァ―サにちなんだものであると聞かされて、ヴァ―サ王の剣になぞらえた木彫りの剣を高々と突き上げて民を守る王となると誓います。組まわりの研一生、星風まどかちゃんが抜擢された子グスタフ、愛らしいだけでなくセンターで力強く剣をかかげる腕に一瞬のブレもなく舞台度胸も満点。彼女がセリ下がると同時にセリ上がってくる後ろ姿が大人のグスタフ。
後ろでアイボリーのリボンでまとめた金髪が明るいブルーの宮廷服に映える白セキの美青年ぶりがまぶしい凰稀かなめ氏。
銀橋を下手に渡ると舞台は上品な色調ながらも色とりどりのドレスに身を包んだ貴族男女の集うパリの夜会。
本舞台に赴く前に服の前立てを両手でつかんでシャンと整えて向う姿に気品溢れて。
その美しさに女性の視線が集まり、男達が嫉妬する・・という風馬翔くん扮する舞踏会主催の伯爵の言葉に呼応して、パートナーの女性の目移りに眉をひそめて咳払いをする蒼羽りく氏が毎回ツボに入ります^^
風馬くんはゆったりと愛嬌と余裕感に溢れていて新公学年に見えません。汝鳥さんの後釜目指して頑張ってほしいと先々までの期待を。
夜会の歌手は彩花まりちゃん。彼女は大人っぽいお姉さんキャラの歌ウマの美人。大空さんTOP時の「美しき生涯」で美沙のえるさん秀吉のお小姓での美しさで注目して以来チェックしている娘役。注目されると嬉しい。せーこちゃん(純矢ちとせ)ポジで活躍して欲しい人です。
ルソーを始めとする思想の話をするグスタフは恋バナを期待する伯爵に野暮と言われて席をはずし、パリにともに遊学中の親友アンカーストレム伯爵にたしなめられます。
そこに恋人である公爵の未亡人イザベル登場。
亡き公爵の蔵書で思想から戦術まで貪欲に学ぶグスタフの姿を頼もしく見守るイザベルは自身も聡明な女性。ライトグレーのドレスが映えてしっとりとした大人の女性の魅力が持ち味の伶美うららちゃんが好演。
スウェーデンでは父王が危篤。
王亡き後、政権乗っ取りの悪だくみをしているのは寿つかさ組長が敢えての大芝居で演じる大臣クランツ。
その親ロシア派(今のウクライナ情勢のNEWSを見るとこの言葉がダブって・・・)廷臣に天玲美音、松風輝、星月梨旺、実羚淳、秋音光、瑠風輝。松風氏、素は美形なのに全くそれを感じさせない(褒めてます)悪だくみ顔が堂に入っています。そこに通りかかるテッシン伯爵が聞き咎めますが、国王陛下ご崩御の報に従者にグスタフへ急いで伝えるようにと指示。この従者に秋奈るいくん。ヴァーサ王や二ルスの仲間で本格的に使われ始めた留依蒔世くんと同期の97期が使われ始めましたね。98期の瑠風くんも使われ始めた観あり。長身でシャープな風貌が元星の汐月しゅうくんっぽい。
その知らせを受けたアンカーストレムがイザベル邸で本について語りあうグスタフのもとへ急行。
イザベルを連れて帰国をと心はやるグスタフ。しかし、彼の本当の身分を知ったイザベルは、自分の存在が彼の立場にもたらすであろう影響を考えて固辞します。ここでドロドロしないのが知的で上品なイザベルらしいといえばらしいのですが、一緒に・・と言われて嬉しくないわけがない、その一瞬の喜びと自制の念をチラつかせる演技プランのほうが一層深みが出たのでは?とちょっと物足りない感じもありますが、ムラでの指輪渡しがなくなって、約束は「あなたにわたしの故郷をお見せしたい」だけになっているので、これで良いのかも・・・。
帰路、クランツの2重年貢に苦しむあまり、山賊行為を繰り返す農民二ルスとその一派の住むダ―ラナ地方を通ります。ムラでは二ルスと陽気な仲間たち、といった風情でしたが、東京で二ルスの怒りと苦悩の色が深まり、やむにやまれぬ農民の苦境が伝わる場面に。一方、春瀬央季、七生眞希、留依蒔世、秋奈るい、穂稀せり、潤奈すばるの面々は二ルスほどの緊迫感はなく、それぞれに自由にふるまっている感じ。名前のある役をさほど経験していない子もいる役として生きるラボラトリー場面なのね、と思いつつ、ここで経験豊かなモンチ(星吹彩翔)がサブリーダーとして指示をとばしている姿が頼もしい、お衣装もバッテン紐がピンクのシャツがかわいい。
2対8の山賊の襲撃を難なくかわしつつ、この地方の荒廃した様子はグスタフの記憶に刻まれます。

彼を待つのは母大后ロ―ザ・ウルビカ美風舞良さんとテッシンと親しい青年貴族たち。
慎重派の澄輝さやと、真っすぐな愛月ひかる、人情派の蒼羽りく、爽やかな桜木みなと、最下ながら落ち付いた声で説得力のある和希そらとここは全員新公主演を果たした路線チーム。
彼らに押されて政治改革を決意するグスタフ。
これから各場面、「何かを決意するグスタフ→暗転」の繰り返しに、緊張する場面が多いこともあっての疲れから暗転で寝落ちする率が高かった(え?)のですが、前楽の今回は緊迫感が高くて睡魔に襲われる余地なし^^;

そして朝香まなと近衛士官長率いるロイヤルブルーのスウェーデン国旗ののぼりを掲げた士官たちの行進から始まる式典。腕を前に突き出し脚を90度真っすぐに伸ばした行進の手がネコの手のようになっていてどこか可愛らしいが凛々しく揃った行進は宝塚ならでは。
下手からロイヤルブルーの裏地のついた黄金のマントをなびかせて登場するグスタフ。センターで待ち受けるのは王の黄金のロザリオを持つ母大后と王冠を持つ司祭。退団者の留美絢ちゃんのお役ですね。
青年王が意気揚々と抱負を述べようとしたその瞬間に割って入る大臣クランツ。ロシア大使が忠誠を期待しますとの口上を先に述べ、続いての御后紹介に。聞いてはおらぬと帰ろうとするグスタフを必死になだめるリリホルン。
美麗な音楽とともに長いベールの花嫁すがたのソフィアが美しい。
ちなみにここでのソフィアの侍童に潤奈すばる、侍女に花菱りず華雪りら。
ソフィアに納得してきたのかと尋ねるグスタフ。納得していない、かつての属国に嫁する日がこようとは・・の発言にざわめく貴族達。あなたも本意ではないのですねの皮肉のひとつも返すとあなたも、とは!と柳眉を逆立てるソフィア。失礼!と座を去るグスタフがソフィアのこれからはデンマークの流儀に従ってもらうとの発言に足を止め、王冠を外していきり立つ。上手にスポットがあたると麗しいパリのイザベル。暗転の中にライトを浴びて浮かび上がる伶美うらら嬢の美貌が際立つ。グスタフからの手紙で結婚を知り、静かな悲しみに耐える表情が美しい。この自制と情感のバランスが楽近くになると情感が溢れ出るような表情に観る側もうるっとなります。

一方のグスタフは青年貴族を集めて現状分析。
クランツらのロシアとのただならぬ関係を突き止めたところで王の親政をねらってのクーデターを決意。
段取りを決めてひとりになったグスタフのもとに山賊二ルスが突如姿を現す。
いったいどこから・・と驚く王に言い放つ「山育ちを甘くみるなよ」はあまりにセキュリティの甘い王宮に愕然とするばかりですが、七海氏の濃い風貌に漂う決死の覚悟からの立ち回りでみせるポーズの格好良さもさることながら殺すなら殺せ、からの想いがほとばしクランツに課せられた2重年貢の告発。
台詞に想いをこめ、わたしを信じてくれ、と協力を仰ぎ剣を返すグスタフに頷くところの緊密な空気が日々増していて・・・。

一方リリホルンの顔色がさえない。明るい金髪に軍服が似合いすぎる王子なまぁさまの苦悩に気付いた婚約者ラウラ瀬音リサちゃん。彼女はお目目が小さくて小作りなお顔で印象は地味ですが、お声が柔らかくて可愛らしく女子力の高いタイプ。癒しのラウラが彼の様子がおかしいのを心配するも、彼女が誠実な人と信頼を寄せるのが却ってリリホルンの苦悩を深める・・・という場面。わけもなく苦悩してうざったくならないのはまぁさまの王子力の賜物。

いざ、クーデターの朝、走り込む桜木みなとくん。彼女もこの公演で満を持しての新公主役を成功させて自信を深めたのか まず、長年の懸案事項だった顎のラインがすっきりとしてとてもきれいになったところに宮廷服とぴったり色を合わせた赤銅色のウェーヴィーヘアがお似合い。それにしてもこの公演で、あとは顎の線がシャープになれば・・と経過観察してきた子たちがみなスッキリとしてVISUAL力が増していて、本当に頼もしい。
あと留依蒔世くん。二ルス組ですが随所で軍人や貴族のアルバイトもこなしている彼。もともと実力派で、冒頭ヴァ―サ王伝説でもセンターの踊りを任されている97期首席。眼のお化粧が変り、顎ラインがややすっきりし始めた結果、星組の麻央侑希くんタイプの美形に成長できるのではないかと期待が。留依くんがVISUAL力を身につけたらそれこそ歌える麻央くん・・。それって最強では?がんばって欲しいところです。
クーデターメンバーのうち2人が姿を消したという。捜しに行かせようとするところでクランツ派に引っ立てられての愛月・澄輝登場。密告者がいたせいでクーデターの計画がつぶされてメンバーは幽閉される羽目に。ひとりずつクランツの私兵に後ろ手に縛られて引っ立てられて掃けつつ残されたグスタフを気遣う・・・というところ、一人アンカーストレムオヅキさんだけは抵抗の度が激しいのかジャケットがほとんど脱げかけた状態で、でも捕えられたからにはさっさと肩をゆすって歩き出すという流れが男らしすぎ。ベルばらのアランでも思ったけれど、この方の濃く大人の男を感じさせる存在感って麗しの青年貴族達に囲まれると一際目立つ。
諦めて自ら幽閉先に向かうグスタフの様子を見咎めるソフィア。クランツに平民なら死罪ものだと告げられ驚くばかり。
胸のロザリオを手に祈りをささげるグスタフ、鍵が落ちる。この十字架からだ!もしや・・・宝物庫のような扉に合わせるとギギィーと開けたところに黄金の剣が。シャキ―ンと抜いて「勇気・知恵・仲間」と伝説通りの文字も見つけこれがヴァ―サの剣と確信。更に抜け道も見つかってグスタフはそこを抜けだそうとする・・・。ムラの初日ではその鍵どこから振ってきたの??状態で、剣を発見したあとは、その剣の不思議な力で全て解決風に見えてしまっていたことを想うと凰稀さん一人の芝居でここまで流れをスムースに出来たのはスゴイ。全然違ってみえます。途中で???とならないので緊迫感が持続する。

からの閲兵式。
またもはリリホルンが見事な行進を見せ、後方には娘役も含む最下の下級生たち渾身の行進・・と見ると目立つところにベルジェンヌ伯爵(風馬翔)、二ルスの仲間(潤奈すばる春瀬央季)と意外な取り合わせで豪華な印象に。翔君が入ると締まりますね。
後方にロシア大使モルコフ公爵をはじめ、クランツ一派が。王に代わって閲兵をと呼ばわった時に「待て!」と王の声。ヴァーサがわたしを導いてくれたと宣言して幽閉された一派を率いてクランツの2重年貢ロシアとの密約を暴き反対に一派をとらえる。形勢不利と見たモルコフ閣下は早々にその場から逃げだします。
クランツ貴様!と剣を振り上げる兵を「やめよ!」と鋭くいさめる王。
この地で一滴の血も流してはならぬという気迫のこもった信念に皆がひるむ。
そう、グスタフは積極的平和論者。眼には眼をではなく、全てを公正に平和裡に解決するため心を砕く。ちょっと理想主義的すぎて普通に演じると胡散臭くなりそうなほどの正論・理想論だが、敢えて深く静かにためて刻み込むようにその言葉を発する凰稀かなめの演技プランで、ある種の個人の信念が発する凄みのようなものを感じて、実に新しいと思ったものです。それを受ける側の力が拮抗していないとそこがすべってしまうのですが、東京後半、受け手が自分の役をつかんだうえで力強く受け止められるようになり、諸々厚みが増したような・・・。
この一部始終をソフィアは上手銀橋のたもとで観ているのですが、この時点では何を考えているのかつかめない表情でしたxxx。
ピンク系のドレス姿の貴婦人たちが幕前に並び、オペレッタ風にグスタフ親政・政治改革のようすを歌います。
有能な人材を大抜擢。パリに負けないオペラ座建設・・・。
二ルスたち、(七海、星吹、綾瀬)が銀橋でクランツの失脚と年貢高の正常化をよろこび、建築家(美月悠)が意気揚々とプランを説明する陰でアンカーストレムは首をかしげます。。。
銀橋上手からモルコフ大使筆頭にロシア派貴族たち。凛城きら、春瀬央季、朝央れんの美形長身並びで威圧感。どの場面にももれなく登場する春瀬くん。衣装替え回数グスタフ様級だったりしませんか?台詞が少ない美形は便利ですね。あまりに各陣営の主要場面全てに登場されるので、スパイはリリホルンではなくあなたでは・・と突っ込みたくなります(←やめて)
下手隅に姿を現したリリホルンを呼び付けます。銀橋半分の距離を早足で駆けつけるまぁさま。「あなたの役割はスパイです。わかっていますね!」「ハッ」・・・追いつめられるリリホルン。

机にリリホルンからの手紙が、とアンカーストレムから受け取った手紙に目を通したグスタフが「リリホルン!?」と鋭く叫び2人して走り出す。
上手に白シャツ赤黒ラインが細くサイドに入った白パンツ。黒のサッシュベルトとブーツ姿のまぁさまがこの公演で着たお衣装全ての中で最高の美しさ。BESTリリホルンの場面はこちらです^^補正がうまくなったのか、とてもきれい。
やめよ!と走り込んできたグスタフが銃を持った手を押さえて自殺は未遂に。
裏切りモノはわたしですと告白し、死をもって償うつもりだという彼に強く静かに悪いのはおまえではないと制し、眼を見て落ち付かせながら銃の持ち手を向けて返す。グスタフは凶器を一度は取り上げるけれど最後は本人に委ねることで全幅の信頼を身を持って示すのですね。これは二ルスのときも同様。ここをしっかりと溜める演技で魅せるかなめ氏。
わたしはロシアと闘おうと思う。と宣言。
アンカーストレムは驚くが、それまで温めていたのか、二ルスら3000人の農民を兵にしてロシアに宣戦布告すると告げる。貴族であり職業軍人としての人生を賭けた仕事への矜持を持つアンカーストレムには理解できない。
いきなりのこのやり取りを自殺未遂場面でおこなわれるまぁさま、実に身のおきどころに困りそうなものですが、東京では置いて行かれっぱなしにはならず、いつしかグスタフのプランに頷き忠誠を誓いつつ同意の構えになるという姿勢をひかえめに示してちゃんと存在していらっしゃいました。さすが次期TOP.

幕前芝居。下手にモルコフ。上手にエカテリーナ。海戦準備を進めるスウェーデンの状況を在スウェーデンロシア大使モルコフが報告。エカテリーナ様は小国といえどもあなどるわけにはまいりません!と高らかに。
せーこちゃん(純矢)は上手いなぁと。声の使い方、台詞回しからヘアメイクで女帝の存在感がバッチリ。
侍従に極美慎、侍女に華妃まいあ、星風まどか。きれいどころを判別させるための顔見せ場面に出してもらえている極美さんはすでにファンがついている模様のすっきり小顔な男役。花組の舞月なぎさくんっぽい感じ。華妃まいあちゃんは遥羽ららちゃんに次ぐ感じで使われるのかしら。宙99期の中では成績一番なので期待したいところ。星風さんは17日の組配属発表で宙娘になりましたが、組回りからのこの使われようは即戦力かつ娘イチ候補で強力な劇団押しがあるという感じでしょうか。星風さんは「アビアント」で退団された星組の娘役さん星風エレナさんの御親戚という説あり。単に名前つながり?かもしれませんが、子グスタフの演技も良く、ショーでもCUTEな笑顔が好印象なのでそういう血筋?だとしても不思議はない感じですね。

下手からソフィア王妃。紺のレースのドレスが美しい。ここ登場時から実咲さんの眼に涙がたまってキラキラと輝いています。忘れることない鉛色の海の記憶・・・から始まる銀橋の歌。この愛は真実・・まで、聴かせます。
孤独と不安の中の輿入れから国を想う王の姿に憧れと愛が芽生えるまでをデリケートに歌い、聖堂に。
舞台中央にひざまずき祈る王妃の上手入口からテッシン伯爵が。
グスタフの戦を前に何日も祈り続けているソフィアをねぎらう会話の最後の「わたくしはデンマークの女ですから」の自嘲気味の言葉尻を戦前夜の祈りを捧げに来たグスタフに聞かれ、誤解されます。
君を人質に取る気はない。帰りたければデンマークに帰ればいい。自分のいるべき場所はここだというソフィアに「デンマーク流を押し通すと言ったのは・・君だろ」この「君だろ」の言い方が毎回微妙に変化するのがツボでした。
ちょっと皮肉っぽかったり、優しい中に嘲笑を秘めたり、諦めが漂ったり・・・。静かに辞去するソフィア、前楽と楽では分かってもらえない悲しさで「陛下・・・」と一言絞り出すように涙声で。心情が伝わる演技でした。
上手の入り口たたきのところに背を見せて留まっていたテッシンが聖堂で一人祈るグスタフのもとにやってきます。
思い出話からしんみりと語り合う2人。汝鳥さんと凰稀さんはこれまでも数々の舞台で心通わせる演技を積み重ねてきた信頼感がここでも現れていますね。愛情溢れる撫育官とその彼の言葉に真摯に耳を傾けるグスタフ。
王妃の祈りと献身を告げられ、ヴァ―サ王ゆかりの名を持つグスタフが歴史に名を残す王になられると信じている・・からの流れで、聖堂センターで戦いへの決意表明を歌うグスタフをそのままに聖堂のセットから艦隊の甲板上に、照明も薄暗い夜中の聖堂から朝の光にスムースに代わり、上下の花道から二ルス率いる農民軍、リリホルンの部隊、そしてグスタフの側近チームが次々と姿を現します。

ここ、全場面で最も盛り上がるところ。
ちなみに数あるお衣装の中で、ペーズリーのライトイエローのサッシュを巻いたこの黄色アクセントの紺白海軍将校姿のグスタフ殿下のお姿が一番好きです。兵を率いて瞬時の判断で指示を飛ばす真剣なまなざしも声も男役凰稀かなめの魅力が炸裂。もっと言うなら、ダンスで表現される海戦の模様、一生懸命で肩に力が入りまくりで振りだとわかっていてもジャンプするところがなぜかツボにハマって微笑ましく思えてしまう二ルス七海ひろき氏、その脇で、意外にも軍服姿がスマートに決まり、ダンスも軽快でカッコいいモンチこと星吹彩翔、きりりとした表情で戦局を見つめる愛月・澄輝と並んで、なぜか忠犬のような眼でグスタフを仰ぎ見る蒼羽りく氏がツボ。
(あまり演技者としての印象がなくダンサー認定だった蒼羽さん、今回の彼女の細かい演技が結構眼につき、楽しませていただきました。ショーでもアピール濃いですし・・・)
相並ぶ軍の司令官アンカーストレム緒月さんとはことごとく意見が分かれます。
自論を押し通すグスタフと常識はずれな戦法に反対むなしく・・・新戦法での勝利に沸くリリホルン以下将校たちと対照的に表情が硬いアンカーストレム。

舞台銀橋下手で祈る王妃にテッシン伯爵が朗報を持っての登場。ここ、遂に実咲さんが心ふるわせる演技をしてくれました!王妃様、あなた様がお迎えして差し上げなくては・・!からの王宮和平交渉の本舞台。
アルムフェルト澄輝さやと氏の「この良き日に女帝迎え和平協定を・・」のソロあり。
白塗り白鬘のエカテリーナ様(純矢ちとせ)の両国の平和と友好のために!の声に威厳と品格が。
よかったですね、と微笑みかける側近貴族達からふと眼をそらして中座してしまうアンカーストレムを気に掛けながら、ご無事で・・と控える王妃に、「君は勝利の女神だ・・・国への、わたしへの想いに気付いてやれずにすまなかった」と謝罪。思い溢れて「・・・おぉ・・・;;」となる王妃。対岸の侍女大海亜呼さんの表情が 良かったですね!的にほころぶことでソフィアサイドの心情を推し量ったいたのですが、前楽ではソフィア妃自身が想いを溢れさせ、なぜか夫婦の事情を知る由もないはずのバハトマイスター蒼羽りく氏が良かったですね!的に一人うるうるしているのもツボでした(おかしいと気づいたのか千秋楽では他の側近たちと同様オフィシャルなポ―カ―フェイスでしたが^^;)
妻のソフィアです、と女帝に紹介。
~からのロシア語での挨拶。
女帝の女どおしの会話ご所望。
2人の幕前芝居・・へと続きます。
大劇場初日ではとってつけたような場面で、孤独に敵地へ乗り込んでロシアの大地に根を張るまでを語り歌う女帝に対して、わたくしはそんな大それたことは・・ただの貞淑な妻ですわ!的なソフィアにさぞかし女帝はイラッとされているのでは^^;とハラハラしたものですが(そしてそれに対する「お二人の愛の前にロシアは敗れたのですね」というお花畑台詞にドン引きしたあの日の衝撃xx)
この段階では、女帝の圧倒的な力と存在感に控え目な性格のソフィアが謙遜するのを愛情の大切さがわかった、と言っていただき感無量のソフィア、という正しい力関係に整い、「あなたの愛はスウェーデンの力となるでしょう」にグスタフの精力的な活動を静かに支えるソフィアの愛という構図が強化され、次の場面の夫婦の静かな語らいに味わいが増すと言う流れにつながる様になってきました・・・。





























 
この調子で語ると終わりませんね^^;
千秋楽もレポしたいのですが、芝居・ショーの詳細も語りおきたいので、続けてこの調子で参ります・・・☆


宝塚宙組「白夜の誓い―グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い―」東京宝塚劇場

2015-02-08 11:59:49 | TAKARAZUKA
2月に入り、6日の金曜日には、星組の柚希礼音さんらの退団公演も始まりました。
1月2日に幕を開けた宙組東京公演も、いつもよりも長い一カ月半公演とゆったりしていたら、いつの間にやら千秋楽まで1週間に。
早いですね・・・。
1月には花組公演でちょっと中が抜けましたが都合7回観劇し、2月は今日を含めて6回観る予定です。
まさにラストスパート!



嬉しいことに、大劇場からはお芝居の演出が随所で変っていて、色々と人物の描き方に疑問が??と湧きおこっていた部分の多くが改変されたことにより、納得しながら繊細な凰稀さんの演技に集中して観られ、また、周りの人物のリアクションにも入り込めるようになったのは本当に嬉しいこと。
もとよりお衣装、装置のシックでゴージャスなセンスの良さには、有村淳、松井るみ両氏の匠の技もさることながら、原田先生の古き良き映画のシーンを彷彿とさせる世界観の作り方の巧みさに改めて感動を覚える日々です。

変ったなと感じたところを覚書として
1)ソフィア王妃との関係
大劇場では終始感情を表に出さない王妃様とグスタフが真に分かりあえたのかしら・・・。
ソフィアの祈りを王に伝えたのは忠臣テッシン伯爵。それを聞いてそうだったのか!と「君は勝利の女神だ」につづくのが今一つ納得がいかなかったのですが、東京初日から一週間くらいから、ソフィアに感情の揺らぎが見え始め・・・。スウェーデンの対ロシア海戦の前1か月に渡って聖堂にこもって王の無事を祈った王妃にテッシンが告げる勝利のあと、銀橋での唄、大劇場ではすぐに朗々と歌い始めていたような感じでしたが、東京では、目に涙を浮かべている日も・・・。勝利をテッシンに告げられた時の喜びと感動の表現も未だ控え目ながら、やや変りましたね。大芝居の植田歌舞伎の「風共」ではスカーレットの無事をメラニーに聞かされたバトラーは、雷鳴をバックに「か・・み・・さ・・ま・・・!!」と絞り出すように祈りをささげつつ膝をつく、という場面に匹敵するかと思われるこの場面でのあまりのリアクションの軽さに物足りなさを感じていたので、良かったなと^^;
エカテリーナとの会見で、ソフィアに「君は勝利の女神だ」と言った上で、エカテリーナ女帝に「妻のソフィアです」と紹介する流れ、ソフィアの侍女役の大海亜呼さんがそれまで威厳たっぷりのおすまし顔だったのが、グスタフのソフィアへの言葉の度に王妃様・・良かったですねと言わんばかりの想いを表情ににじませるのを助けとしなくてはソフィア側の気持ちが伝わらなかったのが、実咲凛音ちゃん自ら、心動かされたリアクションをしてくれて・・・。
なので、エカテリーナ様が話をしたいと所望され、ソフィアの愛に言及する流れがスムースに見えるようになったかと。
あとは、リリホルンのオペラ座舞踏会出席取りやめの進言の前の夜の書斎。
先に休みなさい、の前に、グスタフがソフィアに近づきそっと抱き締める。
これは東京公演10日目くらいから自然と流れでそうなった・・・ように見え、後に11日のお茶会でそのことに対する質問に答えて、ご本人が「りおんの演技が変ってきたので彼女の演技に呼応して自然とリアクションした結果で、日によってはもしかしたら、そうしないことがあるかもしれない」と。あくまで自然な呼吸で生まれたアクションだったのですね。
大劇場では2人の関係性の薄さが最後までドラマを平板にしている観があったのですが、この一瞬の夫婦の安らぎがあることで、オペラ座舞踏会前のイザベルとソフィアの場面でのソフィアのものわかりの良さが、ゆるぎない夫婦のきずなゆえと納得できる運びに。

2)二ルスの深まり
山賊二ルス。実は重税にあえぐ農民。
威勢の良いカッコいいお兄ちゃん的なスター カイちゃん(七海ひろき)の魅力は大劇場初日から炸裂はしていましたが、東京に来て日々、何かを伝えたいうっ屈した気持ちを抱えたしいたげられた者の重さが増してきて・・。
グスタフの書斎に突如登場して恨みを晴らしに来た!との場面、唐突感がありましたが、決死の覚悟で国民の窮状を直訴しに来たかったのが本音。本来は王を脅してでも・・と強気の構えが逆に追い込まれてあきらめるが、逆に王がその真意を見抜いて話を聞こうとします。信頼を得る過程。真摯に見つめ、奪い取った剣をの柄を手渡す間のとまどいと想いをめぐらし決意する流れ、七海さんのややくぐもった声質が丁寧な感情表現をともなった台詞回しとあいまって、緊迫した2人の感情が細やかに紡がれる名場面になりました。

3)エカテリーナとソフィア「女どおしの会話」
スウェーデンの勝利でロシアとの平和協定の調印式の場で、グスタフに紹介された「妻のソフィアです」に対してロシア語で「Ваше величество(陛下)、」と挨拶したソフィアにエカテリーナ女帝がグスタフに2人の会話の時間を所望する幕前芝居の場。
異国に嫁いだ身の孤独という共通点から自らのロシアに根をはる決意を述べる女帝に対し、自分はただただ夫の無事を祈るだけであったというソフィア。「お二人の愛にロシアは負けたのですね」というあり得ないお花畑発言に、いくらタカラヅカが花園だとはいってもこれはさすがにマズイでしょう・・・と、歌ウマ娘役の聴かせどころだけになんともいえない脱力感を覚えた場面でしたが、「人への愛が国を作る。あなたの想いはスウェーデンにとって力となるでしょう」に変って。実咲さんがグスタフからの愛ある謝罪と妻としての紹介に心ふるわせる演技があっての女帝の言葉という流れも見えて。
その分、せーこちゃん(純矢ちとせ)が威厳たっぷりの大芝居のセリフで場を持たせていた大劇場に比べて、やや自然な芝居になっていたようにも思えます^^

4)グスタフとヤコブの距離
幼馴染の親友どおし。
玩具の「伝説の剣」を前にだれをやっつけるんだい?と問うヤコブは後に軍を率い、剣で皆を守ると言うグスタフは王として広い視野で統治を考える。
パリ留学時代は、笑顔を交わし、敢えての厳しい進言も笑って受け止めることのできる近さがあったのに、ロシアへの宣戦布告の準備から、ヤコブの専門分野へのグスタフの進出?により、力関係の均衡が崩れ、軍への関与を禁止されるにいたったヤコブは居場所を失い、続く文化政策への財務支出やイザベルの救出劇にも不満をくすぶらせる。
結果、イア―ゴのような反国王派の貴族ヴェールヴァルド(凛城きら)が近づいてそそのかし・・・。
大劇場では農民を兵に、とのグスタフの言葉にどれほどの訓練が必要か!軍隊を甘く見るなとのヤコブ・オヅキさんの言葉の方に常識人としての重みがあり・・・といいますか、オヅキさんの持ち味である重厚感、リアル感溢れる芝居に説得力がありすぎて、グスタフがやや夢想家に見えていたのが、東京ではだんだん荒々しく頑固な気質を浮き彫りにしてグスタフの理想主義を打ち砕こうとするヤコブという、ちょっと観ていてつらいほどの対立構造を見せつけていて。
この場面については会社経営を生業とする友人との観劇時に、新しい勉強をおろそかにして過去の成功例をもとに新しい施策に反対するエキスパートに手を焼くことがあるので、共感できた、との感想を聞いて、眼から鱗だったことも^^;

5)イザベルとの関係
大劇場では、スウェーデンに戻らなくては!とイザベルに告げて同行を願う場面で指輪を渡し、如何にも婚約まで・・していたのに、というのがあったので、その後あの約束はどうなったのだろう・・・とちょっともやもやする部分があったのですが、東京では指輪の件が省かれて、皇太子と知ったイザベルが同行を固辞することですでに一線が引かれ、グスタフとの約束は「あなたに故郷を見せる」の一点のみで、それは後に果たされ、関係性も「恩人」で「かつて心から愛した人」と位置づけることで最後王妃との会話でも互いに尊敬の念を持って接するというキレイごとにムリがなく見える。

6)伝説の剣を見つけてから幽閉先から脱出するまで
悪徳大臣の差し金でのリリホルンの裏切りでクーデター失敗、王は幽閉され・・・の件。
舞台下手で一心に王家の十字架ペンダントを手に祈るとそのペンダントトップから何やらシャリーン!と落ちた。
鍵だ!これはもしかすると・・と開かずの扉を開くとそこが伝説の王ヴァ―サが城の奥深く収めたと言われる剣の保管庫。剣に刻まれた文字でそれと確認したとともにその保管庫から続く秘密の通路が見つかり・・・という流れを凰稀さんの細やかな演技の積み重ねでしっかりと見せて行く流れに。
もとは、鍵が天から降ってきたの?剣を見つけると次の場面で、これが伝説の剣だ!おぉ・・といきなり形成逆転!?なぜ出てこられたの?剣を見てすぐに参った!となるのが可笑しくないか?など色々と疑問だったところがスッキリ。

7)グスタフ臣下の路線男役たち
議会の大多数とされる親ロシア派の貴族たちに対抗して国王親政を支持する若手貴族たちに新公経験者の所謂路線スターがわかりやすく配されているのですが、パリから戻ったグスタフに決意を促す場面など、ひとり一言ずつ順番に話すというのがなんとも学芸会的で、どうかと思っていたのが、主に話す人を数人に絞り、結果極端に台詞が少なくなった人もいますが全体にスッキリ。
あと、これは各人のお茶会で語られていたらしいのですが、台詞の上がりが驚くほどギリギリだったようなので・・・^^;
台詞の口調、表情など、東京では随分と個性が出てきたなと。澄輝さやと、愛月ひかるの常に眉が上昇しているスッキリキリリ感対 折に触れて下がり眉になる泣き虫系士官蒼羽りくの対比が個人的なツボです。更に言うなら、りく氏はグスタフがこと切れた瞬間の嘆きと悼みに満ちる瞬間の場面で、眼を閉じて胸に手を当てて礼をするところが印象に残ります。澄輝さんの常に真摯な表情が晴れやかなものに変ってソロを歌いあげる和平交渉の始まりの部分も各士官の個性が出てきたなと感じました。

原田氏が一本モノくらいの分量張り切って書いてしまわれて必死に削って尺を合わせてギリギリのタイミングで舞台に載せて・・・という想像をしてしまったムラの仕上がり、台詞削ったのにセリ下がりだけ残っていたりの演出のアラを手直しするには東京へのお稽古をまたなくてはならなかった、ということなのでしょうが。
東京でも初日近くに一度観た友人が今日ご一緒して、随分と印象が変った・・と言うくらいですから、ムラでご覧になって一定の評価を下された方々に、今の東京公演での舞台を見ていただきたいな・・と、本当に思います・・・。
もとよりお衣装と装置がシック&ゴージャスで大変に美しいので、中身が伴ってきた今、ステキな作品がそこにある、と言えることをとても嬉しく思っています。
あの「原田センセイxxx」とうなだれた初日からここまで仕上げた組子の日々の努力をドキュメンタリーのように感じ、観てきた舞台、TOP退団公演ということでいつも以上に思い入れがある作品ですが、舞台がナマモノであることを日々感じた作品でもありました。
まだ後5回観ますので(笑)、また気付いたことがあれば追記したいと思います