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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

2021 六月大歌舞伎「桜姫東文章」下の巻

2021-06-17 03:42:38 | Musical
2021年6月16日(水)歌舞伎座にて
第二部 14:10~
「桜姫東文章」下の巻を観てまいりました。
序幕「岩淵庵室の場」
二幕目「山の宿街権助住居の場」
大詰「浅草雷門の場」

桜姫は2004年歌舞伎座で、玉三郎と段治郎で観ています。
あの頃、市川猿之助一座のスーパー歌舞伎で大活躍されていたのですよね、段治郎さん。183㎝の長身で、並びが良く、ダイナミックな動きと手足の長いシルエットが荒唐無稽な鶴屋南北の世界によく似合っていました。
この時の配役で印象に残っているのは町人に身をやつして桜姫を見守っている忠義の家臣、葛飾のお十を春猿、粟津七郎を門之助という、この頃よく組んでいた並び。いかにも物堅いお侍の雰囲気の門之助と色っぽくて、桜姫の身代わりに置屋へ赴くのが品の良い若奥様が忠義のためとはいえ何たる自己犠牲・・・と思ったことが蘇りました。段治郎さんは今は喜多村緑郎として新派に、春猿は河合雪之丞として同じく新派に・・・。時の流れを感じます。

今回は36年前に大ヒットした玉孝再び・・・ということで、お二人の実年齢を考えると信じられない、美しさと様式美の世界に酔いしれました。
筋書の玉三郎のコメントに、体力的に厳しいかと思っていたが、上下に分けての上演ならば全精力を注げるのでは、と挑戦する気になった理由を残していらっしゃいます。

四月と六月、上下に分けての上演ということで、下段の前に、上段の説明が。

長谷寺のNO2,僧残月(中村歌六)と、桜姫の吉田家のお局長浦(上村吉弥)は密通が露見して、今や、ひっそりと北本所岩淵の庵室でほそぼそと暮らしている。
古物商とのやり取りの際、薬になるかと百姓が持ち込んだトカゲが毒と分かって落としていく。貧しい庵の衝立に掛かるは長浦が桜姫より賜った小袖。その向こうに臥せっているのは白菊丸の生まれ変わりと信じる桜姫をかばって長谷寺を追われた清玄。白菊丸と心中前に分け合った香箱を後生大事に懐に入れているのを金子と勘違いする残月と長浦。その後、葛飾のお十(片岡孝太郎)が亡くした子の供養を頼みに訪ね来て、清玄が連れてきた桜姫と釣鐘権助の赤子を連れて帰る。実はお十は桜姫を陰ながら守る吉田家の家臣チームの一員。残月と長浦は、蜥蜴を煎じて清玄を毒殺。穴掘り人足をして生計を立てている釣鐘権助のところに長浦を使いに出す。そこに連れてこられたのは流浪の桜姫。残月は驚き、襦袢姿の桜姫に件の小袖を着せかけますが、ムラムラと口説きモードになったところで権助と長浦が戻ってきて、腕の入れ墨を夫婦の証と、間男の罪だと言って、庵を乗っ取り、二人を追い出す権助。
ここ、小袖を着付け、長浦の化粧箱を見つけて、銀の髪飾りを装着、ティアラ?を付けて、姫の正装となる手順を舞台上で観られるのがなんとも興味深く、姫の日常を垣間見る思い。
このようにして、落ちてまた姫に戻り・・を繰り返す、落ちても本質の姫は変わらないという、桜姫の個の強さがこの作品の魅力だなぁと思わせるところ。
それにしても、桜姫の運命がジェットコースター過ぎて、本当に歌舞伎って・・・と面白くてたまらない。
愛しい権助との再会を喜ぶ桜姫。庵と墓堀人夫の体の権助と、絢爛たる赤姫の桜姫のGAPがスゴイ。これはまずいと下々の生活に慣れさせるために女郎をさせようと(この発想もスゴイ)話をつけるために出かける権助。はよ帰ってたも・・と繰り返し縋る姫が可愛い。行燈もなく暗闇に心細くしているところに、雷が落ち、清玄が息を吹き返す。(コワい)清玄は白菊丸との因縁を説明したうえで思いを遂げたいと心中を迫る。逃げ惑う姫。出刃包丁を振りかざす錯乱した清玄と怯えながら海老反る姫の型のの美しさよ・・・。逃げ追いかける大立ち回りの末、清玄は掘られた墓穴に落ち、手にした包丁が喉に刺さるが、その状態で穴から出てきて柳を両手に息絶える・・・。壮絶なり。
そこに(早変わり!一人二役の妙!)帰って来た権助、女郎屋へ連れて行こうとすると人魂が出て怯える姫。介抱する権助の頬に、毒に当たった清玄の頬に浮かんだのと同じ青あざが・・・。察する姫。

15分の休憩を挟んで2幕目は、桜姫の身請け代で長屋の大家に収まった権助の新居。「山の宿町権助住居の場」
この頃はまだ街外れだった浅草。町内の捨て子を添え金目当てで引き取った権助、この子がお十の夫仙太郎(中村錦之助)が勝手に捨てた子と知って仙太郎を強請る。金の代わりにお十を置いていかせるが、そこに置屋から桜姫が戻されてくる。権助と同じ釣鐘を彫ったのが細腕故に風鈴にしか見えず、「風鈴お姫」と人気女郎となっていたが、枕元に化け物が出るというので、戻されてきたのだった。身代金を返せという代わりに、お十を差し出す。籠に乗せられたお十に物陰で見ていた仙太郎が「粟津七郎が離縁する・・・」と書かれた離縁状を渡す。実はこの二人が吉田家の家臣で、桜姫守護のための働きを称える文であると観客は察する流れ。下町の女郎生活を経た姫は、赤姫の衣に黒白だんだらのつぎはぎをした小袖姿同様に、話し言葉も伝法な江戸っ子言葉と姫言葉が奇妙に入交じり、それをスッとした顔でさらりと言うものだからおかしくてたまらない。枕を並べて二人が煙管片手に横になる様は今や似合いの一対の夫婦。くつろぐ時間は短くて、町内の寄合いに呼ばれる権助。一人になった桜姫に清玄の霊が、傍らの赤子が桜姫の子であり、権助は清玄の弟であると告げる。酒に酔って帰宅の権助、松井源吾にあてた密書を取り落とし、自身が信夫の惣太という侍であることを明かす。自分が奪ったものとして都鳥の一巻を取り出して桜姫の父である吉田少将と弟の梅若、そして一巻を狙った入間悪五郎を殺害したことを口走って寝入る。全てを知った桜姫は、我が子を探して流浪していたこともあり、葛藤の末に権助の血を引く子を手にかけ、続いて、権助にとどめを刺し、敵討を果たす。

大詰 浅草雷門の場
幕が降り、幕が上がると浅葱の幕。それがパッと一瞬で消えるとそこはパァッと明るい雷門の門前。葛籠を背負うは武者人形の如き奴の軍助(中村福之助)。粟津七郎とお十、そして桜姫の弟の松若(片岡千之助)が捕手を追い落す。葛籠を開けるお十と松若。都鳥の一巻を持った桜姫が現れます。松若が家宝の都鳥の一巻を手にしたことで吉田家再興は果たせたと、夫と子を殺したことで自害を図る姫を止めるところに、大友常陸之助頼国(仁左衛門3役目!)と七郎、軍助が現れる。権助の悪事が露見した以上、桜姫は自害するに及ばず。吉田家再興を祝しての大団円で幕。

鶴屋南北ものならではの江戸の夜、雷、人魂とおどろおどろしい闇が濃く、同時に桜姫のあでやかな姿と共に、華やかで明るい場面のコントラストが強い。高僧は心中未遂故の心の弱みから堕落し、生臭坊主が落ち延びていく。聖と俗のコントラストもまた、強く、男の未練は転生した先、自身が殺害されて霊となっても連綿と続く。
一見、運命に翻弄されているような桜姫は、罪びとを愛し、自らは身を落としながらも、最後まで、お家再興という望みを捨てず、あばら家で見つけた化粧箱から、髪飾りを取り出して立派な姫の姿を再生させたと同様に、艱難辛苦が夢であったかのように、姫として再生を果たす。家に翻弄される時代の姫であるのに、とことん自分自身であり続けるスーパーお姫様として、初見では衝撃と興奮がなかなか収まらなかったのを覚えています。

玉三郎丈の筋書でのコメント、「改めて実感したのは、精神的負担のまるでない役だということです。様々なものを抱えた人たちの中にあって、ひとりだけ逸脱しているのです。遊女にまでなっているのにお家騒動も解決して、あっさり姫に戻っていく。五代目(岩井)半四郎のために桜姫本意に書かれた作品で、非常に不思議な、とても良いお役です」
これが全てですね。
玉三郎様の声のトーンの自在さと赤姫が似合う美貌、仁左衛門様の粗末な着物の裾をからげておみ足を晒しても穴に落とされ、喉に刀を突き立てて蘇っても・・・思いのままに生きる悪党と前世の迷いに絡めとられる僧侶の2役を鮮やかに演じ分ける技量。
このお二人の、錦絵の如き美しさ。
鶴屋南北の描く江戸の光と影の強さ、深さと共に、一生忘れられない舞台、でした。

コロナ下で、客席両隣が空席に設定されていたのがなんとももったいないことでした。。。




2021 四月大歌舞伎「桜姫東文章」

2021-04-23 03:03:44 | Musical
2021年4月21日(水)歌舞伎座、第三部「桜姫東文章」
行って参りました。

前半後半、2回に分けて、後半を6月上演予定という形式で。
玉三郎、仁左衛門での上演は36年ぶりとのことで、話題の作品です。

わたくしは、2004年の玉三郎桜姫、清玄・権助を段次郎、残月が今回と同じく歌六、葛飾のお十を春猿、粟津七郎を門之助で観ており、その時も、お姫様のUPDOWNの激しい奇想天外なピカレスクロマンに度肝を抜かれ、これは再演するなら必ず観たい!と思っていた演目。

である上に、今回は、大好きな仁左衛門様と玉三郎様の並びで観られるというこの幸せよ・・・。

記事にしそびれてしまいましたが、2月にも「於染久松色読販」の悪党夫婦、そして「神田祭」の粋で清々しいカップルの踊りを堪能しており、やはり、わたくしにとっての歌舞伎は「玉孝」なんだなぁと。

さて、この「桜姫」、
鶴屋南北の悪の華が咲き誇り、美しい姫が転落する様を華麗に見せて飽きさせない、そのストーリーとは・・

清玄/釣鐘権助 片岡仁左衛門
入間悪五郎 中村鴈治郎
粟津七郎 中村錦之助
奴軍助 中村福之助
吉田松若 片岡千之助
松井源吾 片岡松之助
局長浦 上村吉弥
役僧残月 中村歌六
白菊丸/桜姫 坂東玉三郎 

「江の島稚児ヶ淵の場」からのスタート。
美しい僧侶清玄と、稚児の白菊丸が心中を決意して、香箱の蓋と本体にそれぞれの名前を入れて持ち、当に飛び込み自殺を図ろうとする場面です。白菊丸が飛び込むも、清玄は怖気づいてしまいます・・・。

そして時は流れて17年後、「新清水の場」
清玄は高僧となりました。今や、鶴岡八幡宮の阿闍梨。
一方、父と弟と家宝を失い、賊に襲われその子を密かに産み落とす・・・というずらりと居並ぶ腰元たちにかしづかれる美しいお姫様にしては過酷な人生を既に歩んでいる桜姫。出家を希望して高僧清玄に十念を授けられますと、生まれたときから開かなかった左手が開き、香箱の蓋が・・・。
それを観た清玄は桜姫が白菊丸の生まれ変わりと確信。
一方で、お家乗っ取りを企む一派、松井源吾と左手が解けた桜姫を妻にと文を用意する悪五郎が、桜姫の父と弟梅若を手にかけて家宝都鳥の一巻を奪った実行犯、釣鐘権助(じつは信夫の壮太)に文を託す。

「桜谷草庵の場」
権助が向かったのは、剃髪の準備をする桜姫のいる草庵。
話の流れで腕まくりした権助の釣鐘の入れ墨をみたとたん顔色を変えて皆を下がらせる桜姫。なんと、同じ入れ墨をわたくしも・・・とお姫様が腕まくりするとそこに釣鐘、という衝撃の展開。更に、手籠めにされたとき、その男が忘れられず、手がかりを自らに彫ったという更なる衝撃。
にやりと告白を聞き悪い顔をする権助。姫の胸元に手を差し込み、帯を解く・・・という様式美の型の中に濃密な色気が立ち上ります。
ここ、型の美しさと悪い男と崩れ落ちる姫の妖艶さが見事に両立し、客席の息を奪う様、さすがのお二人・・・と。
御簾が落ち、そこから姫の着物の裾がはみ出ているのがなんとも想像力をかきたてます・・が。清玄の寺の後釜を狙う僧侶残月と密会を重ねていた腰元長浦が通りかかり、御簾の隙間からのぞき見るが、この時、長浦に書かされた起請文が落ちたのに気づかない。
戻らぬ権助にしびれを切らして草庵に踏み込む悪五郎と源吾。
権助は素早く逃げおおせ、残されたのは恥じ入る桜姫ひとり。
そこに、剃髪のために清玄一行も現れる。桜姫をかばう清玄に、先程左手が解けた時に転がり出た香箱に書かれた清玄の名を持ち出して、相手は清玄ではと疑いがかかる。
白菊丸との縁から、否定できない清玄と、権助をかばって真実が言えない桜姫。
これに乗じて清玄の後任を名乗り出る残月だが、起請文を拾った忠義な家臣粟津七郎により、長浦との不義が露見し、追放されます。

「稲瀬川の場」
稲瀬川堤で、百杖の刑を受ける桜姫と清玄。
赤い衣の姫君と、高僧が公開処刑を受ける、これまた衝撃の場。
そこに、長浦がひそかに預けていた権助との赤子を、この先施しを受けるにも子供連れの方が実入りが良かろうと身もふたもない理屈で桜姫におしつける百姓夫婦。哀れに思って布施として薬を与える清玄。白菊丸=桜姫との思いから、かくなる上は夫婦にと、数珠を切るという破戒行為を。
自らのせいで巻き添えに・・・と申し訳なさでいっぱいだった偉大な僧の思わぬ変身に驚愕する桜姫。そこにしつこい悪五郎が現れて赤子を奪い、七郎がそれを追いかける。源吾が桜姫を連れ去ろうとすると清玄との争いとなり、桜姫のちぎれた片袖とともに稲瀬川に転落する清玄。七郎との書状の奪い合いで赤子を置いていった悪五郎。岸に這い上がった清玄がその赤子を見つけて桜姫を見つける手立てにと連れて行く。

「三囲の場」
都の外れのうらぶれた三囲神社。春雨の夕暮れ時に、赤い振袖にくるんだ赤子をあやしながら、物思いにふける清玄。暗闇迫る中、そこに通りかかった桜姫、赤子の泣き声を耳にして、乳を与えようかと思うが、鳥居にまで尋ね人の人相書きが貼られる身故、そうもいかない。
くすぶる焚火の跡と破れ傘を見つけた清玄、せめて衣を乾かそうと火をおこす。その破れ傘に書かれた恋歌を読む桜姫。清玄からもらった薬をせめてもと投げよこす桜姫。その袱紗を観てもしやと思う清玄だが、その瞬間火が消えて、暗闇の中すれ違っていく二人・・・・。

と、ここまでが上段。下段は6月。楽しみです!

しかし、お二人とも、70過ぎにはとうてい思えない若々しさ、瑞々しさ。
玉三郎の可憐なお稚児と姫君。
片肌脱いで肌を魅せてもなお清潔感のある仁左衛門。
また、それぞれが演じ分ける、愛ゆえに、絶壁から身を投じることも厭わないまっすぐな稚児、世間知らずのようでいて、それゆえに大胆な姫。
若き美青年である僧侶、立派な阿闍梨として多くの僧を従え、仏門を極めた高僧、そして愛欲故に身を持ち崩す転落の破戒僧、赤子を連れてなすすべなくうらぶれた姿・・・と、悪事の相談を聞きとがめられるや、かんたんに首をひねって端女を殺すことも朝飯前の悪党ながら姫を前ににやりと笑う色悪としての顔も持つ悪党の極端な2役。
なんとも演者の魅力と力量が迫る演目であり、舞台も、桜咲く春爛漫の寺、草庵から、罪人をさらし者にする川べり、そして街外れの雨の神社の闇の深さ。。。と、華やかな表舞台と陰影深い業の世界と、光と闇を極端に描き出す南北の世界を駆け巡るこの演目。通しで見るとアップダウン、そしてアップのジェットコースター振りの凄まじさに目がくらくらするのだけれど、今回は2回にわけて、その世界観をじっくりと味わう趣向故、6月大歌舞伎のチケットも必ずや確保しなくては、と誓って客席を後にしたのでした。

今回、開演前と幕間に、イヤホンガイドで玉三郎、仁左衛門それぞれのインタビューが聴ける趣向との情報を得て、普段は使わないイヤホンガイドを借りたのですが、おふたりの役への想い、また、互いへの感想などが・・・
若い頃は、役の解釈について、幕が引けたらすぐに言い合いをしたり、ということもありましたが、今は阿吽の呼吸で・・・とおっしゃる仁左衛門様のお言葉が聴けたので、満足です^^




東京バレエ団の「くるみ割り人形」

2020-12-12 12:10:05 | Musical
2020年12月11日金曜日19:00公演
久方ぶりの東京文化会館。
東京宝塚劇場と共に、一カ月に何度も足しげく通う、我が心の劇場・・・
コロナ禍で、来日公演がバタバタと中止になり、すっかり足が遠のいてしまって、上野の公園口の位置も変わった。
横断歩道を渡るとすぐに、東京文化会館の楽屋口に続くスロープがあったのだが、今は、西洋美術館側にあるJR改札から斜めに進んで、客席に続く正面入り口を目指す形になる。

さて、本日の配役は・・・
マーシャ:沖香菜子
くるみ割り王子:秋元康臣
ドロッセルマイヤー:柄本弾
ピエロ:樋口祐輝
コロンビーヌ:中川美雪
ウッデンドール:岡崎隼也
- 第1幕 -
マーシャの父:ブラウリオ・アルバレス
マーシャの母:奈良春夏
弟のフリッツ:岸本夏未
ねずみの王様:岡﨑司
- 第2幕 -
スペイン:秋山瑛、池本祥真
アラビア:三雲友里加、生方隆之介
中国:岸本夏未、昂師吏功
ロシア:伝田陽美、岡﨑司、鳥海創
フランス:涌田美紀、足立真里亜、南江祐生
花のワルツ(ソリスト):政本絵美、加藤くるみ、上田実歩、髙浦由美子
            ブラウリオ・アルバレス、和田康佑、後藤健太朗、山下湧吾

指揮:磯部省吾
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
協力:東京バレエ学校
※16:00現在、下線の配役に変更が生じております。何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
(元の配役は中国涌田さんでフランス金子さんだったから、金子さんが体調不良とか?金子さんは13日のマーシャ役だから大事をとったのかしら、などと)

~上演時間~
第1幕 19:00 - 19:55 休憩25分 第2幕 20:20 - 21:10

東バのくるみと言えば、ベジャール版の母を思う子供がモチーフになったバージョンを思い浮かべるが、今回は、ロシアにゆかりの深い斉藤由香里芸術監督肝いりの新制作。ロシアに発注したというお衣装もすてき。
雪の精のヘッドドレスにクリスタルガラスがたくさん使われていてとてもきれい。
今の東バでお気に入りの沖さんが主役ということで、この日を選んだのですが、東京バレエ団のプリンシパル、ソリスト総出演で、とても豪華な配役。
ボリショイに学んだ主役二人の伸びやかで端正な踊りはもちろん、気になる人がいっぱい。
まず、オーバーチュアからして胸いっぱい・・・。
生オケのチャイコフスキーですよ・・・。それが、この、東京文化会館の空間を満たすのですよ・・。久しぶりのこの感覚。ありがたいありがたい・・・。
で、温かな親族揃ってのクリスマスパーティ。
少年少女たちを女性のバレリーナさんが演じているのがとても可愛い。
中でもとりわけ目を惹く美少年が・・・。表情が豊かで、演技が上手。あとで、スタッフの方に確認したところ、セカンドソリストの加藤くるみさんと判明。12日には弟のフリッツ、13日には2幕のロシアを踊るのか・・・そちらも観てみたかったなと。
ドロッセルマイヤーを東バの看板、柄本弾氏が。人形劇で出てきて、最後までマーシャのお供をする3体のお人形の内、ピエロの樋口祐輝くんが上手かった。人形ぶりの重心が高くてカタカタ動く感じとともに、飄々とした味わいがあって^^。
1幕終わりに、生コーラスのNHK東京児童合唱団のご挨拶があったのもほっこり。白のブラウスに紺のジャンパースカートが可愛い。
2幕はマーシャたちの船をねずみたちの船が追いかける冒頭から、夢の世界に。舞台背景に窓があり、ディベルティスマンで踊る各国のダンサーが窓から顔をのぞかせているのが楽しい。
スペインの池本祥真くんの踊りが実に爽快で。後方に伸びる脚の高さ!
秋山瑛さんの華やかさも。
打って変わってのアラビアの長身ペアの優雅でまったりとした味わいがまた素敵。三雲さん、大人っぽくて長い手足と引き締まったボディが鮮やかなグリーンのお衣装に似合ってました。
ロシアの男性二人、岡崎司さん、鳥海創さんもはじけてましたね。これからの注目株かな。
フランスのお衣装がピンクとブルーに巻き毛で、とても可愛らしくて。
足立真里亜さんと涌田美紀さん。涌田さんは、元宝塚宙組の彩花まりさんにちょっと似た美人さん。セカンドソリストで、サンノゼバレエにもいらしたそう。
なんだか、ちょっと見ないうちに東京バレエ団のメンバーが世代交代したのかなと、色々と新鮮に鑑賞しておりました。
大好きな沖さんは、マーシャがぴったりな豊かな表情と少女らしい清潔感のある演技。秋元さんもさすがの端正な王子っぷりでしたね。
ただ、くるみのGPDDは、観るだけで落涙するバーミンガム時代の吉田都さん、イレク・ムハメドフペアの圧倒的なオーラを期待してしまうので、このお二人の繊細にして軽やかな演技はちょっと物足りない・・などと、贅沢な印象を持ってしまいました。
新演出、お衣装も装置もとても良いです。東京文化会館の装花も、ロビーのそこここに飾り付けられていたクリスマスツリーも華やかで、久しぶりのバレエ鑑賞を満喫しました。









国連MUSICAL「赤毛のアン」

2013-11-06 09:35:07 | Musical
2013年11月3日(日)17:00
DPI/NGO国連クラシックライブ協会主宰の市民ミュージカル「赤毛のアン」を観て参りました。

国際フォーラム ホールCにて。



友人にお誘いいただいてのSS席1階上手にて・・・。
物語を時系列で追う形で、駅舎にてマシューを待つ子供時代のアン、から始まり、大人になって進学し、帰郷してマシューを失い、アヴォンリーでの教師の職を得るまで・・・、原作で言うと、「赤毛のアン」「アンの青春」あたりまで、でしょうか。
CASTは子供時代、少女時代、大人のアン、と3役で。
ギルバートやダイアナをはじめとする同世代の友人たちも同様で、それぞれ3役。
しかも日替わりで4公演中、3パターンというたくさんの人が活躍できるように・・という趣旨らしく。
大人たちは通し役で、演技の、歌の、プロが支えます。



今回は、宝塚星組2番手娘役として活躍されていた白華れみさんが大人のアン、「仮面のロマネスク」の主役が印象深かった、元TOPスター高嶺ふぶきさんがマリラを演じるというのに興味を惹かれて、お誘いいただいたこともあり行って参りました^^

〔CAST〕
アン:大人・白華れみ 少女・出口桃子 子役・西原かえで
ダイアナ:大人・瀧本真己 少女・田畑圭南 子役・長谷川美空
プリシー:大人・白河優菜 少女・佐々木彩香 子役・山口皐
ギルバート:大人・上杉輝(TOKYO流星群) 少年・高畑翼
マシュウ:三浦浩一           マリラ:高嶺ふぶき
リンド夫人:春日宏美          フレデリック(雑貨屋):友石竜也
ルシーラ(洋服屋):加賀ひとみ    ベル先生:白石拓也
アラン牧師:山口浩史          スペンサー夫人:かわづ恵
バーリー夫人:北嶋マミ         リチャード(駅員):荒川智大
マダムハリス:水野まき         ミシェル夫人:水咲まゆ花
ブリューエット夫人:内海京       孤児院のアン:一色真綾
友人:岩崎真央 星乃心美 瀧山うさぎ 大西彩子 工藤康平 中村梨咲 佐々木章

太田真琴 北野詩 本田弥沙希 行橋安美 林さゆか 牧初美 浅野友里恵
牧野花菜 小山雅子 増原ゆうみ 今村凛々帆 牧瀬ほほみ 小岩井友愛 
前北知花 木村恵美 千葉あけみ 千葉友理佳 千葉瑛利佳 木村美緒 
清水桂子 中村心咲 山口絵美 今泉紀香 清水武 望月富雄 宗像雅子 
鈴木路子 近田とき子 坪井七美 杉浦美登里 Aoka 小坂桃子 中友香 
杜山和恵 増田美香 興田柚香 山本理紗 高尾真由 有田緋奈乃 
有田芙友乃 赤石玲子 木村佳祐 潮崎遥 三上若奈 亘理弘一郎    他

脚本・演出:橋本真理子
原作:ルーシー・モンゴメリ
振付:膳亀利次郎 石向智絵 武藤智穂 呼川茜
コンダクター:尾花輝代充
上演時間:3時間(含・休15分)

一般公募で群舞の場面に出演するCASTを選んだり・・・で拙いながらも楽しんでいらっしゃる風情の方々と、時折、バレエや声楽のプロらしき方がそのために作られた?場面(行商人のカンツォーネ、洋服屋のアリア、お楽しみ会?のバレエ、レクイエムの牧師さんなど)でその芸を披露されたりする一方で、、プロの役者さんが大事な芝居の場面ではしっかりと締めて・・という構成。
オープニングの赤いワンピースの群舞の振りのあまりの単純さに、「しまった・・・^^;」と思ったのもつかの間、
子役のアン、西原かえでちゃんの透明感のあるきれいな発声と、アンらしい品のあるおしゃまな聡明さが伝わる演技、ヒトの良いマシューが引き込まれる様に、原作を何度も読み返した少女時代の読書体験を思い出し、そこからもう、随所で涙。
自分でもびっくりするくらい感動してしまいました^^;

少女役の方は、ちょっと普通のお転婆さん、という感じ?
様々なトラブルを引き起こすアンの失敗と活躍を見せる場面。イチゴ水で酔っぱらうダイアナ、緑の髪事件、ギルバートと石板など、懐かしいです。

そして、待っていました、大人のアンの白華れみさんは、宝塚時代そのまま・・滑舌も動きも良く、とてもチャーミングな美少女で・・・。
最後はマシューが倒れて、2人っきりになったマリラとアン。
「夕飯はマシューが帰ってきてからだね」…とマリラが言う。
そんなマリラを1人にしておけない、と思うアンのもとにギルバートがやってきて、アヴォンリーでの教職を譲ると。
三浦さんのマシューの温かさ、高嶺さんのマリラの一見厳格実はリベラルで情の深いクリスチャンという役作りが効いていました。
口数の少ないマシューが言う、「男の子を12人もらうよりも、お前1人が良いよ」との言葉に込められた深い愛情に泣かされました。

アンが、手違いで手伝いの男の子の代わりに派遣されてしまい、そのことで兄妹が戸惑っている と気づき、夢見ていた家庭が遠くなるのを嘆く場面、アンが両親を亡くしてこの方、親類縁者ををたらいまわしにされてきた過酷な半生とそれを乗り越える想像力、知性の力が息づいているのに気付いたからなのかどうか・・・
役に立たないから、男の子じゃないから、女の子だから要らないのね、と嘆くアンを観て、マリラが
「この子は役に立たないかもしれないけれど、わたしたちが、この子の役にたてるのかもしれない・・」とつぶやくところにクリスチャ二ティの最良の精神の発露を観、感じ入りました・・・

なぜ国連?と不思議に思っていましたが、ミュージカルとして市民に参加してもらい、物販(Tシャツやクリアファイル)での協力を促すと共に、子供の教育、支え合う社会の在り方など・・・アンのテーマと世界のあり方への方向付けとは共通する部分も多いのでは?と思い至ったことでした。


「マイ・フェア・レディ」霧矢イライザ

2013-05-25 09:24:29 | Musical
前後しますが、2013年5月11日(土)17:00~
日生劇場にて。
G2さんの新演出で話題のMusical,「My Fair Lady」を観て参りました。

言わずと知れたオードリー・へプバ―ン主演の名作映画、そして舞台でもジュリー・アンドリュースをはじめとする名優が演じてきたイライザ役。
日本でも 長年、大地真央さん主演で親しまれてきたミュージカルの定番ですが、この度演出を一新するとともに、主演女優を宝塚を退団してまだ日の浅い男役TOPスター、元花組の真飛聖、元月組の霧矢大夢が役変わりで・・・という話題作。



踊りに歌に、舞台人として高いクォリティのパフォーマンスを見せてきた霧矢さんの舞台女優デビューを観てみたい、と霧矢さん主演の舞台を、前方席センターで、しかと見届けて参りました

とても良かったです!

霧矢さんは男役だった片鱗を欠片も見せず、とてもチャーミングな花売り娘として登場。
中高のお顔立ち、ごくわずか上を向いた高いお鼻とキラキラの瞳がチャーミングで、ロンドン下町訛り(江戸っ子っぽく、ひをしと言ってしまう設定に)でまくしたてるも、乱暴でガサツ・・・というよりは、赤毛のアンのような少女っぽさが際立つ容姿がなんとも可愛くていたずらっ子のよう。
お歌は、アルトはきれいで、初日、2日目辺りのレポでみるとちょっと伸びていない、とか、裏声になっていると評された高音域も、伸びやか・・・とまではいかないまでも、違和感のない仕上がりだったと思います。
ちなみに、熱烈な霧ヤンファンで、5月5日の開幕以来ほとんど毎回観ている・・・という方は、今夜がBESTパフォーマンスだったと^^
公演期間が東京では28日まで、大阪も含めると6月23日までありますから、まだまだ進化する彼女を観られるでしょうね。


お話は、言わずと知れた、菫の花束を街角で小商いしているコックニ―訛りのロンドンの花売り娘イライザの成長譚。
自分の言葉を研究材料として書き取っていた、出身地をピタリと当てて見せる言語学者のヒギンズ教授(寺脇康文)が漏らした言葉、どんな下町の娘でも、自分の教授法で、6か月以内に宮廷舞踏会で貴婦人として通用するまでにして見せる、というのに、かねてから憧れていた一流花屋の店員になる夢へのステップと見て、自分のなけなしの財産を手に、教授邸を訪問。
居合わせた教授の友人ピッカリング大佐(田山涼成)との賭けの対象となり、家政婦長のピアス夫人(寿ひずる)ら召使たちの見守る中、イライザと教授の特訓の日々が始まる・・・。
長く苦しい訓練の末、コツをつかんだイライザに、教授はお試しの場として、上流階級の社交場であるアスコット競馬場に連れて行き、母親(江波杏子)と引き合わせる。そこで、時折飛び出す下層階級ならではのスパイシーな話題と率直な活き活きとした魅力を放つ彼女に、居合わせた上流階級の若者フレディ(平方元基)が夢中になり・・・。

弁の立つ下町の呑んだくれイライザの父、アルフレッド・ドゥ―リトルに松尾貴史、彼を含めた教授、大佐のおじさま3人衆(?)がそれぞれ色濃くキャラクターを持って伸び伸びと演じていてじつに楽しい舞台。
松尾さんはセンターを取って歌い踊る場面なども、ミュージカルにおいて、キャラクター>歌唱力ってアリなんだわ・・・と思わせる説得力がある役作りでした^^;

教授の母親役の江波杏子。
息子の変人ぶりに辟易しつつ、個性的ながらまっすぐなイライザに共感し、ファンになったわ、と公言。
後半の成長後のイライザvsそれを認めない息子の対決部分では全面的にイライザをサポートしてちょっとした出番でも強い印象を残すところはさすが。優雅で遊び心もある器の大きさが良く出ていました。

寿さんのピアス夫人、情が細やかで品の良い役柄にぴったりでしたが、かつての男役?の面影はいずこ・・・の丸さ加減、100周年の宝塚スペシャルイベントとかで、呼ばれたりしたときにこれではマズイのでは?とつい余計な心配を^^;
召使たちのアンサンブルの息もぴったりでしたが、ここで惜しまれながら昨年退団した元宙組のエトワール要員、美声の娘役七瀬りりこ嬢を発見。ソロで歌ってほしい・・・勿体ないですね。相変わらずコロコロされていましたが^^;

フレディの平方さんは小池修一郎演出の東宝ミュージカル「ロミオとジュリエット」のティボルト役で観た時には凄い声量のワイルドな役者、というイメージでしたが、歌唱力も安定し、恋する若者フレディを軽快に演じていて、幅の広い役者さんだなと。再演の「ロミジュリ」では、今度はベンヴォーリオ役に配役されていますよね。楽しみな人です。

霧矢さんは、教授宅でのレッスン中の白いブラウス、ウエストに菫のコサージュを飾った地味なジャンパースカート、といった簡素で少女っぽい姿がとにかく魅力的!
もとから、あわよくば・・・ではなく、自分で貯めたお金を手に、レッスンを受けようという誇りと矜持と向上心。
レッスンを受けた後、もといた下町のコミュニティではすでに浮いた存在である自分が、上流階級の教授からは道具としてしか扱われていない・・・居場所をなくして心元ない時でも、結婚でもすればよいと軽く言うヒギンズ教授に、貧しい時でも花は売っても身体は売らなかった自分が、ここにきて自分しか売るものがないなんて!と啖呵を切る。
いや、イライザって深い役だったのですね。
霧ヤンのイライザはリアルに応援したくなる向上心ある自立した少女でした
勿論、アスコット競馬場でのあの有名な(上のポスターでも着ている)黒白の細身のドレス、そして、王女様と間違えられる王宮の舞踏会でのイブニングドレス姿もキレイではあるのですが、大地真央さんのイライザで、変身してご登場!の場面で思わず「おぉ・・・」と観客が仰ぎ見るようなオーラはあまり感じられなかったかも?
美人で似あってはいるのですが、そこがキャラクターなのでしょうね。
一方の真飛さんは、男役時代のちょっとやんちゃな雰囲気とは打って変わって女優さんとしてはおしとやかで艶やかなイライザで、このドレスに変身!シーンではタメ息がもれるインパクトと聞き及び、これはちょっと両方観て見比べてみたいなと。

ただ、今月、宙組東京公演が始まり、(実はこのMyFairLady観劇前日に宙組の初日を観ているのでした^^;)、マラーホフのGALAもあり、歌舞伎座のこけら落とし公演に玉三郎と仁左衛門さまがご出演、そしてミ―マイを大阪に・・・という詰まりに詰まった5月故、どうしても見ることが出来ず・・・。
残念です。

そう言えば、翌々日に観劇した「Me&My Girl」で、最後にすっかりレディになって登場したサリ―が、ジョン卿の計らいで、ヒギンズ教授のもとに送られてランべス訛りを矯正してくる、という設定があり、思いがけない2つのミュージカルのつながりに思わず運命を感じてしまった(!?)公演でした