記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

1959年発行の冊子「観光福岡」の写真考察

2020年04月19日 17時39分05秒 | 福博まちの記憶

外出自粛で講座やイベント、ロケ等がなくなり在宅ワークの日々。こんな時しかできない手持ちの資料整理や調べモノ、自著本の執筆を粛々と進めてます。先日は1959(昭和34)年、観光PR映像(16ミリフィルム)と共に制作刊行された「観光福岡」を久々にチェック^_^。

掲載写真のなかで一番気になったのは、東公園の亀山上皇像と日蓮上人像が一緒に映った写真です。説明キャプションは「亀山上皇のお伴をしている日蓮上人」と洒落てますが、こんなアングルで当時撮影できる場所があったのか気になりました。

さっそく先日ブログでも投稿したアプリ「航空写真・日本の戦後から現在」で閲覧し、当時の空撮写真からこの写真が撮れそうな建物やアングルを考察。SNS上に投稿したところ、いろんな方が情報や考察を投稿してくれて、だいだいの撮影場所が判明しつつあります。リモート会議的にこの類の考察をやるのも楽しいな、と感じました。

ちあみに、この手の古写真考察は日々行なっていることで、その一端は福岡市都市景観室のWEBマガジン「FUBA」に2017年度に連載させていただいた「古写真・観光絵葉書にみる福博景観史」にも書いています。時間的な余裕がある今、ブログ上で続編を書こうかと思います。

昭和30年代、全国的に旅行ブームが起きるなかで福岡県や福岡市は観光PRを積極的に展開し、PR冊子や書籍、さらに観光誘致のPR映像(16ミリフィルム)まで制作していました。冊子は古書市や骨董市、古書店めぐり等で少しずつ入手してきましたが、映像については西日本鉄道さんの映像アーカイブスの中に見つけて、西鉄ライオンズの貴重映像などと一緒に解読させていただきました。(以下の写真は「観光福岡」から)

この時代の福岡市は、今では九州NO.1の都会となった天神地区が激変した頃。2020年現在、天神ビッグバンで再度激変期を迎えている天神地区のターニングポイントになった時代です。戦災からの復興事業により渡辺通りの2倍拡幅工事が進み、その一環で西鉄大牟田線の西側移設&高架化(連続立体交差事業)と高架下に全国初となる鉄道駅一体のバスターミナルが完成(1961年)。同時期に日本で初となる高層ビル「天神ビル」が完成(1960年、完成当時は国会議事堂に次ぐ全国2位のビル)、さらに「福岡ビル」が西日本一の複合ビル(1961年、オフィス・貸会議室・商店・飲食・完成時は屋上ヘリポート)が完成するなど、その後の福岡・天神を象徴とする施設が相次いで登場しました。

同じ頃、国鉄博多駅も現在地への移転計画(1963年12月移転)が進み、博多港・博多埠頭には客船ターミナルや「博多パラダイス(博多ポートタワー他)」計画が進むなど、高度経済成長期を迎える前の都市発展の転換期でした。空の玄関口「福岡空港(当時は板付飛行場)」は米軍板付基地の一角で民間航空輸送が始まって数年でしたが、この時期はまだ国内線ターミナルも完成前の簡素な施設だったことが「観光福岡」掲載写真からも分かります。

「観光福岡」には福岡県内の都市や観光名所など200点以上の写真が掲載されていますが、福岡市のイメージの中には「水辺都市」としての写真もたくさんあります。上の写真は那珂川の光景として使われているもの、レガッタのようなボート競技風景のようですが、この頃のレジャーの代表格は「ボート遊び」で大濠公園やだざいふえん、北九州・小倉の紫川など各所の観光写真がボート遊び風景です。昨今、水上公園などの整備で「水辺都市」として魅力発信する福岡市ですが、この頃すでに始まっていたということですね。余談的に遡ると、戦前の絵葉書などにもボート風景はあるのですが、その頃はまだ生活のための渡船「那珂川の渡し」があった頃で、博多情緒の代表が那珂川の水辺景でした。

福岡市が本格的な都市計画(マスタープラン)を作成するのは1960年代のこと。福岡アジア都市研究所に併設されている都市政策資料室には、戦前からの福岡市の政策資料や貴重な研究図書があり、西日本鉄道創立110年史テーマ史「天神発展史」執筆期間中は毎週入り浸って研究。参考にした研究論文もたくさんありますが、風景デザイン研究会でご一緒している福岡大学の柴田先生・石橋先生が2014年に発表した「1960年代の福岡市政の変遷にみる都市戦略のあり方に関する史的考察」などにとても刺激を受けました。

私の研究はもともと古地図や古写真・絵葉書・パンフレット等の資料が基になっていますが、石橋先生の博多港研究論文などに資料協力するなかで、これら収集資料の活用方法のヒントもたくさんいただき、テレビ番組などの企画協力にも活かされています。西鉄さんや福岡アジア都市研究所など各種企業団体の主催する講座の講師役もこれまで累計50回以上担当しましたが、経験を積ませていただくことで見えてきたこともたくさんあります。

時間的な余裕がある今、書籍執筆だけでなく、ブログ上でも少しずつ書いていきます。

 

記念フォトブック「福ビルと天神の60年〜さよなら福岡ビル・再開発記念フォトグラフ」残数わずか!

LOVE FM 76.1MHz 「JAL九州歴史ロマン街道」2019年4月より第2クール放送開始(毎月第3・第4・第5土曜日13:00〜13:30)。

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新刊Vol.24「天神大牟田線80th 歴代車両図鑑」等フォトブックシリーズ全27冊通販ページ

にしてつWebミュージアム(企画構成を担当)

西日本鉄道創立110周年記念誌『まちとともに、新たな時代へ』第1部は「天神発展史」

アーカイブ画像ライブラリー(アンティーク絵葉書に観る懐かしの風景・町並みアーカイブス)

KBC「栄光の西鉄ライオンズ」DVD紹介の特設ページ(企画構成・台本・監修を担当)


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