ホテルで荷物を預けると、早速目当てのM嬢ご推薦の昼食場所に連絡をしてみたのだが残念ながら予約は一杯で入れそうもなかった。そこで3人で5分ほど相談して、清水の奥丹で湯豆腐に決めた。京都には京懐石、精進料理などと和食の名物が揃っているのだが、豆腐や湯葉料理も有名で至るところに店がある。その中でも奥丹は順正などと並び称される湯豆腐の名店だった。とは言っても、昼食はお手頃価格である。夜は諭吉先生が同伴しないとダメらしいのだが、昼食なら漱石先生か一葉先生の介添えで食べる事ができる。電話をすると11時からオープンで予約制ではなく先着順だというので、少し時間は早かったが先に昼食にすることに。
駅前でタクシーを拾うと、この季節は観光地はどこも大渋滞になるためか「今日は行きたくない、行きたくない…と思っていたら、早速お客さんがその場所に行くんですよ」などとドライバーは軽口を言いながら裏道を走っていく。八坂神社の袂、道の突き当たりで車を降りる。降りたタクシーの前ではナンチャッテ舞妓が記念撮影をしていて、いきなり萎えてしまった。@幕張はかつて、過去に佳つ乃さんや豆狸さんなど、祇園や先斗町の舞妓さんや芸妓さんに何人かお会いした事があるが、皆、凛とした雰囲気があり、時にはそれがひどく冷淡に見える時があった。しかし、ナンチャッテ舞妓は顔に締りがなく、着物の着付けもすぐに乱れて気品が感じられないので、誰でもすぐに見分けがつく。一時、舞妓の格好でタバコを吸ったりカメラを構えたりと、「京都の顔である舞妓の名誉を汚す」として総スカンだったナンチャッテ舞妓も、最近は業者が観光客にきちんとお願いをしてから舞妓姿に変身させているので随分マシになったのだが、それでも本物は大口を開けて笑ったりなどしない。
八坂の塔から清水寺の方角へ写真を撮りながらブラブラ歩き、11時過ぎに奥丹に到着すると、すぐに奥の座敷に通された。
既に何組かの客が入っており、開店早々だというのにあちらこちらの座敷から賑やかな声が漏れてくる。奥丹は寛永12年の創業で、おそらく湯豆腐では最も古くからある店。清水店の方は南禅寺店より新しいのだが、人一人がやっと通れるような狭い廊下や急な階段を歩いていると、それで十分に京都らしさを感じる事ができた。
<奥丹の湯豆腐。旨い!>
最初にゴマ豆腐、次に木の芽田楽が出る。豆腐は昔豆腐という江戸時代の製法で作られたものだそうで、いつも食べている木綿豆腐等に比べても締まって食感は固い。絹ごしよりも木綿ごしと、食感の固い豆腐が好きな@幕張としては美味しい料理を食べるのは最高に幸せな時間。田楽を食べているとお待ちかねの湯豆腐が出てきた。3人分が一緒に入っている鍋はかなり大きく、一人あたりの分量も一丁以上あるのではないかと思えるほど。この湯豆腐のだし汁は一子相伝というか、店に一人しか調合できる職人さんがいない門外不出のだし汁なのだそうだ。昆布と鳥か何か動物系の出汁が合わさっているような気もして美味しいのだけれど、薄味なので中身は全然分からない。続いて天ぷらとご飯が出てきたのでとろろ汁をかけて食べたが、この時点でお腹一杯。大食漢の@幕張にとっても、かなり量が多い食事だった。
帳場で昼食代を精算していると、店の入口付近にはずらりと順番待ちの列ができている。中の一人に聞いてみると、もう30分も並んでいるのだとか。
二年坂から産寧坂(三年坂)に入り清水寺に向かう。通りは観光客でびっしり。思わず山ちゃんとユッキーに「貴重品に気をつけて」と声をかけた。そうなのだ。ここは昔から人混みを利用するスリが出没していて、観光客は懐中を狙われる要注意箇所なのだ。肩に下げたバッグを前に担ぎなおし、人を掻き分け前に進む。人の流れの沿って歩くが、後ろからおばさんたちのグループがぐいぐい押してくる。どうやら前を行く団体さんの一行らしい。「すみません、失礼します」と一言あれば快く道を譲るのに、失敬にも後から両手で@幕張の背中を突いてくるので道を譲らなかった。挙句に身体をグリグリと強引に間に割り込んできたので思わず独り言。
「ったく、常識のないオバンだぜ…」
たぶん本人にも聞こえたはずなのだが、3人のおばさんはそ知らぬ振りで今度は前を歩いているカップルをどついていった。
だから、中年のオバンはイヤだ。
<もう人、人、人… >
なんとか清水寺に辿りつき、清水の舞台から周囲を見渡すと周囲は素晴しい紅葉。紅葉の清水寺には初めて来た@幕張だが、これほど美しいとは思わなかった。清水の舞台で写真を撮っていると、ユッキーがおみくじを引いている。山ちゃんが何気に「どうだった?」と聞くと何とも複雑な顔。
「…凶だった」
エッ? 凶?
< 凶... >
おみくじにも凶が入っているのは知っているが、実際に引いた所出くわしたことは少ない。だいたい、小吉とか末吉とか「吉」の最後の方でも凹むのに、出てきたのは「凶」。ユッキーはおみくじを結ぶ枝を捜しているが、周囲には「枝結びご遠慮ください」と書いてあって結ぶ場所がない。気を取り直して、清水の舞台の奥にある地主神社でお参り。地主神社は別名「縁結びの神社」といって恋の病を治す神社として有名なところ。山ちゃんに促されて@幕張もお参りする。どちらかというと@幕張には転職の方が先な気がするが、この際どっちが先でもイイや。
<清水の舞台も大混雑>
地主神社でお参りをしてから音羽の滝までぐるりと一周して歩き、もと来た産寧坂から二年坂を経由して丸山公園へと向かった。 (続く)
駅前でタクシーを拾うと、この季節は観光地はどこも大渋滞になるためか「今日は行きたくない、行きたくない…と思っていたら、早速お客さんがその場所に行くんですよ」などとドライバーは軽口を言いながら裏道を走っていく。八坂神社の袂、道の突き当たりで車を降りる。降りたタクシーの前ではナンチャッテ舞妓が記念撮影をしていて、いきなり萎えてしまった。@幕張はかつて、過去に佳つ乃さんや豆狸さんなど、祇園や先斗町の舞妓さんや芸妓さんに何人かお会いした事があるが、皆、凛とした雰囲気があり、時にはそれがひどく冷淡に見える時があった。しかし、ナンチャッテ舞妓は顔に締りがなく、着物の着付けもすぐに乱れて気品が感じられないので、誰でもすぐに見分けがつく。一時、舞妓の格好でタバコを吸ったりカメラを構えたりと、「京都の顔である舞妓の名誉を汚す」として総スカンだったナンチャッテ舞妓も、最近は業者が観光客にきちんとお願いをしてから舞妓姿に変身させているので随分マシになったのだが、それでも本物は大口を開けて笑ったりなどしない。
八坂の塔から清水寺の方角へ写真を撮りながらブラブラ歩き、11時過ぎに奥丹に到着すると、すぐに奥の座敷に通された。
既に何組かの客が入っており、開店早々だというのにあちらこちらの座敷から賑やかな声が漏れてくる。奥丹は寛永12年の創業で、おそらく湯豆腐では最も古くからある店。清水店の方は南禅寺店より新しいのだが、人一人がやっと通れるような狭い廊下や急な階段を歩いていると、それで十分に京都らしさを感じる事ができた。
<奥丹の湯豆腐。旨い!>
最初にゴマ豆腐、次に木の芽田楽が出る。豆腐は昔豆腐という江戸時代の製法で作られたものだそうで、いつも食べている木綿豆腐等に比べても締まって食感は固い。絹ごしよりも木綿ごしと、食感の固い豆腐が好きな@幕張としては美味しい料理を食べるのは最高に幸せな時間。田楽を食べているとお待ちかねの湯豆腐が出てきた。3人分が一緒に入っている鍋はかなり大きく、一人あたりの分量も一丁以上あるのではないかと思えるほど。この湯豆腐のだし汁は一子相伝というか、店に一人しか調合できる職人さんがいない門外不出のだし汁なのだそうだ。昆布と鳥か何か動物系の出汁が合わさっているような気もして美味しいのだけれど、薄味なので中身は全然分からない。続いて天ぷらとご飯が出てきたのでとろろ汁をかけて食べたが、この時点でお腹一杯。大食漢の@幕張にとっても、かなり量が多い食事だった。
帳場で昼食代を精算していると、店の入口付近にはずらりと順番待ちの列ができている。中の一人に聞いてみると、もう30分も並んでいるのだとか。
二年坂から産寧坂(三年坂)に入り清水寺に向かう。通りは観光客でびっしり。思わず山ちゃんとユッキーに「貴重品に気をつけて」と声をかけた。そうなのだ。ここは昔から人混みを利用するスリが出没していて、観光客は懐中を狙われる要注意箇所なのだ。肩に下げたバッグを前に担ぎなおし、人を掻き分け前に進む。人の流れの沿って歩くが、後ろからおばさんたちのグループがぐいぐい押してくる。どうやら前を行く団体さんの一行らしい。「すみません、失礼します」と一言あれば快く道を譲るのに、失敬にも後から両手で@幕張の背中を突いてくるので道を譲らなかった。挙句に身体をグリグリと強引に間に割り込んできたので思わず独り言。
「ったく、常識のないオバンだぜ…」
たぶん本人にも聞こえたはずなのだが、3人のおばさんはそ知らぬ振りで今度は前を歩いているカップルをどついていった。
だから、中年のオバンはイヤだ。
<もう人、人、人… >
なんとか清水寺に辿りつき、清水の舞台から周囲を見渡すと周囲は素晴しい紅葉。紅葉の清水寺には初めて来た@幕張だが、これほど美しいとは思わなかった。清水の舞台で写真を撮っていると、ユッキーがおみくじを引いている。山ちゃんが何気に「どうだった?」と聞くと何とも複雑な顔。
「…凶だった」
エッ? 凶?
< 凶... >
おみくじにも凶が入っているのは知っているが、実際に引いた所出くわしたことは少ない。だいたい、小吉とか末吉とか「吉」の最後の方でも凹むのに、出てきたのは「凶」。ユッキーはおみくじを結ぶ枝を捜しているが、周囲には「枝結びご遠慮ください」と書いてあって結ぶ場所がない。気を取り直して、清水の舞台の奥にある地主神社でお参り。地主神社は別名「縁結びの神社」といって恋の病を治す神社として有名なところ。山ちゃんに促されて@幕張もお参りする。どちらかというと@幕張には転職の方が先な気がするが、この際どっちが先でもイイや。
<清水の舞台も大混雑>
地主神社でお参りをしてから音羽の滝までぐるりと一周して歩き、もと来た産寧坂から二年坂を経由して丸山公園へと向かった。 (続く)