今年の春に、
クマと間違えた@幕張を散々ビビらせてくれたニホンカモシカに再び会った。
日本固有種で、しかも生息数が減少したために特別天然記念物に指定・保護されながら、近年はこの地域の生息数が増えすぎたからという
人間様の勝手な都合で年に数回は駆除されている可哀そうな動物でもある。
写真は11月初めに撮影したもの。
本当はすごく臆病な動物のに、なぜかこの日は民家から300mほど離れた高速道路のすぐ近くに雄雌2頭が現れた。
< 左側の山の開けている場所に小さくカモシカが見える。 > < カモシカが現れたのは高速道路のすぐ脇、カメラの後方には民家が建ち並ぶ場所。 >
現れた場所は高速道路と並んで走る側道のすぐ脇。
山の中にぽつんと窪地になっている場所で、周辺に木がないため中央の小高い丘に登ると周囲を良く見渡せる場所。
その場所は周囲に木がないため、逆に側道からでもすごく目立つ場所だった。
そこにたった大きな雄カモシカは、じっとしたまま身じろぎもしない。
いわゆるカモシカの『寒立ち』というやつで、顔だけ動かして周囲に敵がいないか休息しながら警戒する行為だといわれている。
そのすぐ後ろでは一回り小さな雌カモシカが葛の葉を食べているので、雌が採餌する間は雄カモシカが周囲の警戒行動をするとともに、
自分の縄張りを誇示する示威行動をしていた…、とも考えられる。
< カモシカはウシ科の動物。どことなく、シルエットは似ているような気も・・・ >
さてこのニホンカモシカ、「~シカ」という名前なのに実はシカではない。
同じウシ科ではあるものの、ウシ科ヤギ亜科のヒツジやウシ科ヤギ属のヤギに近く、“カモ
シカ”とはいってもウシ亜目シカ科のホンシュウジカとはだいぶ違っている。
ニホンカモシカの身体はズングリムックリの胴太・短足で、見るからに急峻な崖を歩く逞しい腰つきだ。
ほっそりとした美しい脚を「カモシカのような脚」などと例えるけれど、実際のカモシカの脚は太ももが発達して全体的に太くて短く、お世辞にも美しいとは言えない。
せめて「鹿のような脚」とか、百歩譲って「ヤギのような脚」といえばかどは立たない気がするが、この逞しくて太い脚を目の前にして「カモシカのような脚」などと
うっかり言おうものなら、世の女性に袋だたきにされても文句は言えないかもしれない。
シカはジャンプが得意で、1m位の高さがある柵などは簡単に乗り越えてしまうが、カモシカはそこまでジャンプができない。
その代り足の蹄が開くため、シカが立ち入れないような傾斜地でもしっかり蹄で大地を掴んで歩くことができる。
どちらかというとシカが森や草原をテリトリーとするのに対し、カモシカはもっと標高の高い山岳地をテリトリーにしている印象がある。
もっとも、実際にはシカとカモシカの生息地域は大きく重なっているので、彼らの生活を調べることができる糞を見ただけでは
どちらの糞なのか見分けがつかないこともしばしば。
それにしてもこの2頭のニホンカモシカ、雌が草を食べ始めてから1時間以上もここにいた。
人や車を恐れる風もなく、道路際を@幕張が歩いていても一瞥をするだけで身動き一つしない。
試しにカモシカに向けて手を振ったり、カメラのフラッシュを光らせたり、声を出したりしてみたものの逃げる気配がない。
野生の動物にはそれぞれ、安全距離という天敵から身を守るための範囲があるんだけど、このカモシカはその範囲がすごく狭い。
それはたぶん、人間が道路から外れないことを学習してるのではないか…などと勝手に思ってみたりしている。
左から雄カモシカ、雄ヤギ、雄シカ。すべて同じウシ科の動物なのに、比べると随分と違う。
左から雌カモシカ、雌ヤギ、雌シカ。