まだ若いころ、自分で手を触れずにマッチ棒を動かしたり、スプーンを曲げたりする実験をしたことがあるが、もちろん全て失敗した。いわゆるESPカードも試したが、自分にはその類の能力がないことを確認しただけに終わった。
だが、自分に超常的能力がないからと言って、他の人にもないと言えるのだろうか。
息子たちがまだ小さい頃、カードを使ってESP能力の実験をしたことがある。
伏せたカードがどんな種類かを当てさせるというものだ。
カードは、子供たちが持っているゲーム用のもの。
毎回切って裏返しにし、しかもカードの裏に印があるといけないので、カード自体を手で隠して見せないようにした。
5種類のカードで行なって、当たる確立は5分の1。5回のうち1回当たれば平均的な数値ということになる。
私は技術者であるから、実験は厳密に行った。
5回ずつ5回、合わせて25回くらいは繰り返した記憶がある。
上の子は平均して5回のうち1回だったが、下の子は平均して5回のうち3回を当てた。
これは確率的にとんでもないことで、この時にある種の超常的な能力が実在すると確信したわけである。
下の子は七田の教室に通わせていた。
ある時先生が「この封筒の中身はなんでしょう」という授業を始めたが、封筒を見せた段階で息子が中身を当ててしまうので困ったそうだ。
たまたま一緒にテレビを見ていた時、息子が「あ、そういうことか」と一人で納得したことがあった。確か007の映画で、主人公が崖から飛び降りるシーンだった。
息子がつぶやいたすぐ後で、背中からハンググライダーみたいなものが出てきて無事に着陸したわけだが、結果が分かるまでの間が1秒か2秒くらいはあったと思う。
ちょっとだけ先の未来が分かるということかなと、驚いた記憶がある。
そういえば、幼稚園でみんながお遊戯をしている場面を昔のビデオで見ると、なぜかうちの息子だけ少しずつ動作が早い。てっきり早とちりしているものと思っていたが、彼だけ少し早い時間を生きていたのかも知れない。
十で神童、十五で才子、二十過ぎればタダの人という言葉があるが、うちの息子も大人になって、ほとんど能力が消えてしまったみたいだ。
ただ、小学生でそろばん一級を取ったが、その能力はまだ残っており、計算は鬼のように速い。
彼の超常的能力はどうも母親から受け継がれているようで、彼女はいまだに不可思議な能力を時々発揮するが、その話はまた別途。