マグロチャンピオンの料理道場

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料理長が自宅で作る「簡単おつまみ」(5)タジン鍋を使った鴨とネギのすき焼き風

2011年09月26日 | 料理長が自宅で作る簡単おつまみ
昨日、上海の日本料理店のテレビで「NHKのBSニュース」を見ていたら、東京の風景が映しだされていたが、日本もこれからもっと寒くなっていくのだろう。

上海の今日の気温は26度で半袖では肌寒いがとても過ごしやすく気持ちがいい。

秋は「食欲の秋」「実りの秋」とも言われるように1年中でいちばん食べ物の美味しい時だ。

以前、ヨーロッパのベルギーという国に10年程住んでいたが、日本料理店で働いてもらった給料のほとんどは友人(日本大使館の大使の専属コック)と一緒にフランス料理店やスペイン料理店での食べ歩きに使っていた。

1人でフランス料理店に入るのは気が引けるし、彼も料理を勉強していてお互いにとても気が合った。

そして、ヨーロッパでも秋は一番食べ物の美味しい季節だ。

ベルギーではムール貝も太ってくるし、丸い生牡蠣(ベロン)も甘みが増してくる。また、キノコもたくさんの種類が市場に出回るようになるが秋に収穫されたキノコはとくに美味しい。

また、秋は「ジビエ」というハンターによって狩猟された「真鴨」(マガモ)や「キジ」等の料理がフランス料理店のメニューに登場するが、野生の鳥は冬を前に栄養を蓄える為に果物や穀物を食べているので味がいい。

ちなみに「フォアグラ」は冬を前に餌をたくさん食べて、自ら「脂肪」を蓄える鳥の習性を知って、人間が「ガチョウや鴨」などに強制的に餌を与えて人工的に脂肪肝にさせたものだ。

さて、日本でも最近は大きなスーパー等で「鴨肉」を買うことができるが、ほとんどが「合鴨」でアヒルと野生の鴨を交配させたものだが、適度の脂があり、また真鴨のような特有のニオイも少ない。

ベルギーのフランス料理店で何度か「真鴨」のジビエ料理を食べたことがあるが、野生のニオイというかクセのある味なので、赤ワインで煮込んだりオレンジの甘いソースでそのニオイをマスキングしている料理が多い。

驚いたのは、食事の最中に口の中に何か異物を感じて取りだすと散弾銃の弾だったので、どうやらこの店は本物のジビエを使っているのは分かったが、お客に散弾銃の弾を食べさす店は初めてだった。

日本ではよく「鴨が葱を背負ってくる」という「ことわざ」を使うが、「合鴨」と違い「真鴨」はクセのある味なのでネギのように強いニオイの野菜と一緒に食べることで、真鴨のニオイを抑えてくれるのだろう。

また、「ネギ」は野菜のなかでは珍しく酸性で、消化液の分泌を促しビタミンB1の吸収をよくするともいわれ、ネギを薬味に添えるのにも意味がある。旬は冬で寒さが増すごとに甘くなってくる。

さて、今回の「料理長が自宅で作る簡単おつまみ」は、鴨とネギを使った料理を紹介しよう。

上海では「真鴨」が入手できないので「合鴨」を使うが、これがけっこう旨いので「鴨ロース煮」や「鴨山椒」にして、うちの店ではお客様に出しているが、家ではもっぱらこのすき焼き風の食べ方をしている。

それは、「タジン鍋」を使って簡単に作ることができるからだ。

下が1人用の「タジン鍋」の写真だが、もっと大きな物もある。


タジン鍋とは、モロッコやチュニジアといった国々で、鶏肉や羊肉を野菜と一緒に煮込んだ「タジン」という料理を作る時に使用する鍋なので「タジン鍋」と呼ぶようだ。

砂漠の多いこれらの国では水はたいへん貴重だが、この鍋を使えば蒸し焼きにすることができるので、水を使わなくても蒸し料理を作ることができるし、食材のうまさが凝縮され栄養価も高くなる。

また、この奇妙な形の蓋のてっぺんには穴が無く、密閉された鍋の中では食材から出た水蒸気は蓋の上で冷やされて再度食材のところに戻るので香りを逃がすこともなく、特に蒸し料理にはピッタリの鍋だろう。

今回は「鴨とネギ」をこの鍋で蒸し焼きにするが、鴨肉は蒸すことで柔らかく「ロゼ」に火を通すことができ、ネギの甘さもこの鍋で凝縮される。

◆「タジン鍋を使った鴨とネギのすき焼き風」の作り方

1)用意する物。

写真の手前「長ネギ」。写真中央「合鴨ロース肉」「ヨード卵」。写真奥の左から「タジン鍋」「醤油」。

2)作り方。
①鴨肉の皮をフォーク等で数か所刺して穴を開ける。


②テフロン加工のフライパンを中火に掛け、油を敷かずに鴨肉を焼く。


③裏返して裏面も焼く(裏面はさっと炙る程度)


④焼き上がった鴨肉を薄くスライスする。


⑤ネギを3㎝~4㎝の長さに切る。


⑥鴨肉を焼いて後の油で、ネギを焼く。

こんがりと焼き色を付ける。


⑦タジン鍋の底にネギを並べる。


⑧ネギの上に鴨肉のスライスを並べる。


⑨醤油を大さじ1程度、上から振る。


⑩蓋をして3分程蒸し焼きにする。(蒸し過ぎに注意!)


⑪出来上がり。(このまま、山椒や唐辛子を付けて食べても美味しい)


⑫生卵(ヨード卵)で食べるとすき焼き風になる。


この料理に使用する調味料は、大さじ1程度の「醤油」だけで、水も油も、料理酒も味醂も砂糖も一切使っていない。

「タジン鍋」を使うことで、ネギの水分が蒸発して鴨肉を蒸し上げ、ネギの甘さも凝縮される。

料理のポイントは、鴨肉を加熱し過ぎないことだ。ロゼに仕上げて熱々を食べよう。

さて、また出張に行くことになり今日の夜の便で青島に飛ぶことになった。

青島郊外の工場なので、また3日間程はインターネットも使えないので残念ながらブログも3日程お休みする。

この青島の工場での楽しみは、仕事が終わってから飲む「青島ビール」と食事だ。

地元の野菜を使ったとてもシンプルな料理が多いが、上海で食べる野菜より数段も美味しく感じる。

それでは、次回は韓国の調味料「ダシダ」を使った料理の話をしよう。







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