マグロチャンピオンの料理道場

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料理長が自宅で作る「簡単おつまみ」(46)とろみがついた、だし掛け卵

2011年11月24日 | 料理長が自宅で作る簡単おつまみ
ここのところ上海はめっきり冷え込んできて、いよいよ本格的な冬のおとずれを感じる季節となった。

さて、今回は「とろみがついた、だし掛け卵」を作ってみよう。

「出汁巻き」ではなく「出汁掛け」なので、誰にでも簡単に作ることができるだろう。

「出汁巻き卵」は居酒屋の定番メニューで好きな人が多いと思うが、実際、うちの店でもよく出てて、多い時には1日に10個以上のオーダーが入る時もある。

そして、オーダーが入ってからその都度焼くので、調理スタッフは1人で続けて5個以上の「出汁巻き卵」を巻くこともある。

何度か調理スタッフからは「出汁巻き卵」をメニューから外して欲しいとの提案があったが、調理スタッフのスキルの向上の為にも「出汁巻き卵」をメニューから外すことはまったく考えてもいない。

実は、「出汁巻き卵」にはちょっとした思い出がある。

それは、若い時に服部栄養専門学校(調理師学校)で学生だった頃のことだが、前期と後期にテストがあり、前期の実習科目のテストが「大根のかつら剥き」で後期のテストが「出汁巻き卵」だった。

「大根のかつら剥き」は大根を薄く1メートル程包丁で剥いて新聞紙の上に置き、下の文字を読み取れることができれは合格というものだった。

そして後期の「出汁巻き卵」のテストは5分間とかの制限時間内に、焦がさずに綺麗な出汁巻き卵を焼くことたっだ。

出汁巻き卵を焼く時には焦げるのが怖くて、弱火でたらたら焼くと油っぽくなってしまうし、強火の場合には手早く焼かないと焦げてしまうし、焼き過ぎると硬くなってしまって不味くなる。

また、薄く何層にも焼かないと卵のふんわり感がでず、上手に出汁巻き卵を焼く為には、かなりの練習が必要となる。

今はどうか分からないが、当時の服部栄養専門学校ではテストに合格しないと、合格するまで何度も追試を受けねばならず、また1回の追試の為に3,000円程を支払わなければならなかった。

貧乏学生の自分には当時の金額での3,000円はとても大きく、テストに一度で合格する為にたぶん100個以上の出汁巻き卵を自分の家で焼き、両親や兄弟からは『もう卵は見たくない』と言われしまうほど練習したものだ。

その甲斐があってかテストには一度で合格したものの、当時は夢にまで「出汁巻き卵」が出てきた程だ。

さて、3年程前だが大連店の中国人調理スタッフに「カンくん」というおもしろい子がいて、茶碗蒸しを作る時に「かつお出汁」ではなく「鶏ガラスープ」を加えて作っているのをたまたま目撃したので、なぜ「鶏ガラスープ」を加えるのか聞いてみたところ、『卵だから鶏ガラスープの方が合うのでは?』との返答だった。

その茶碗蒸しはお客さんのところに出ることはなかったが、蒸し上がったその茶碗蒸しを試食してみたところ、具にも鶏モモ肉が入りけっこう美味しかったし、彼のこの発想に妙に関心させられてしまった。

今回の「出汁掛け卵」は「かつお出汁」に水溶き片栗粉を加えてとろみを付けるが、とろみを付けることで卵にからみやすくなり、また、熱々の状態を長くキープすることができる。

この料理のポイントは卵を焼き過ぎないことだ。

中が半生でふわふわの卵に熱々のとろみが付いた出汁が絡みあって、とても美味しいし簡単にできるので、「出汁巻き卵」を作るのを諦めていた人に是非、作ってもらいたい。

◆「とろみがついた、だし掛け卵」の作り方。

1)用意する物。

写真の手前の左から「片栗粉」「卵」「万能ネギ」「かつお出汁」(150ml程)。写真奥「塩」。

2)作り方。
①万能ネギを小口切りする。


②ボウルなどに卵を割り入れ、塩を小さじ1加える。


③卵を混ぜる。(混ぜ過ぎてコシを切らないように注意しよう)


④フライパンに油を大さじ1/2敷く。(油はフライパンに薄く敷く程度)


⑤卵をフライパンに流し入れる。


⑥しゃもじ等で大きく2~3回混ぜる。


⑦半生の状態にふんわり焼く。


⑧皿に盛る。


⑨水100mlに大さじ1の片栗粉を溶いておく。


⑩鍋を中火に掛けてかつお出汁を入れる。


⑪火力を弱火にして、水溶き片栗粉を少しづつ加えながらとろみを付ける。(あまり濃くしないように注意しよう)


⑪皿に盛った卵に出汁を張る。


⑫万能ネギの小口切りを散らす。


⑬出来上がり。


この料理を食べている時にふと思ったのだが、出汁の代わりに「鶏ガラスープ」を使い、「たらば蟹のほぐし身」を入れたら絶対に美味しい料理になるだろう。

茶碗蒸しに「かつお出汁」ではなくて「鶏ガラスープ」を入れた「カンくん」の気持ちが今、なんとなく分かったような気持ちになった。

さて、次回もサッと作れる「おつまみ」を紹介しよう。





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