シネブログ

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『素晴らしき哉、人生!』

2007年05月29日 02時02分55秒 | 映画レビュー
原題:IT'S A WONDERFUL LIFE
別題:素晴しき哉、人生!
製作年度:1946年
上映時間:130分
監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・スチュワート 、ドナ・リード 、ライオネル・バリモア 、ヘンリー・トラヴァース 、トーマス・ミッチェル 、ボーラ・ボンディ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
主人公のジョージという男は、いつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。自分のミスではなく大金を失った彼は、全てに絶望して自殺を図る。ところが、12月の冷たい河に飛び降りようとしたとき、彼より先に一人の男が身を投げて救けてくれと叫んだ。あわてて救けたジョージに、男は、自分は見習い天使だと告げるが……。



コメント:
あぁ、なんてすばらしい映画なんだ。

主人公ジョージはいつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。前半はとにかくパッとしないジョージの人生をひたすら見せ付けられ、映画としては退屈なシーンが多く流れも暗い。この映画のどこが素晴らしいんだ?と徐々に疑問を感じていく。だがそんな不満はラスト30分ですっきり解決してくれるのが本作だ。人生の理不尽さに追い詰められたジョージが自殺を図ったそのとき、彼の前に突然天使の見習いが現れ、そしてこう話す…

「8000ドルのために自殺などバカなことだ」
「君は善行をした、君がいなかったら…」

だが人生の破滅を目前にしたジョージにとってはそんな言葉は慰めにもならない。

「いっそ生まれて来なければよかった」

と言い放ってしまう。そして、天使の案内する“もし彼が生きていなかったら”という仮定の世界で、彼は自分の存在理由をかいま見る事になる。まさにこの部分が本作の要で、観るもの全てを感動の渦へと巻き込んでいくのだ。

おそらく誰もが人生の辛さ、理不尽さを体感したことがあるはずだ。そりゃもちろん人生というのは辛いものなのだからしょうがない(僕みたいな若者が言っても説得力がないが…)。だが辛い思いをしながら行ってきた自分の行動が、周囲の人間にどれほどの影響力を与えているのか考えたことがあるだろうか?これを考えると人生のすばらしさは無限大に広がるのではないだろうか?自分の中では些細なことにしか思っていなかった出来事が、当事者にとってはとても重大な出来事であったことを知ったときの喜びはなんとも計り知れないものである。全ての人間は知らぬうちにいろんな人へ影響を与え続けているということを本作では強く訴えているのだ。

本作は完全モノクロなのだが、僕には鮮やかな色がこの映画に見て取れた。観たまんまだと色もなく冴えない映画に思えてしまうのだが、視点を変えて観るととてもすばらしい映画に変わってしまう。人生もこの映画と同じように最初はモノクロだが、視点を変え世界を広げていくことにより”自分色”の人生を見出すことができるのではなかろうか?

”命”を捨てようなんて考えてはいけない。その”命”にどれだけ多くの人生が重なっているのか計り知れないのだから。その重さを考えたとき、きっと自分なりのすばらしき人生が見出せるに違いない。

あぁ、本当にすばらしい映画に出会えてよかった。