天使の図書館ブログ

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Cool&Passion-1-

2012-05-18 | 創作ノート
(いつもどおり、画像と本文の間にはあんまり関係ありません単にわたしがマタイ受難曲のことを知った時に、Passionに「受難」っていう意味があるのを知ったっていう、それだけです^^;)


 久しぶり(?)のカルシェラSSです♪(^^)

 久しぶり……なんて言っても、そんなに間空いてないとは思うんですけど(笑)、とりあえずこれは前にどっかで言ってた真面目(?)なほうのお話だったり。

 ただ、本当は来週の月曜くらいから連載しようと思ってたんですよねww

 というのも、土曜は例のアレ(?)が届くし、日曜日は更新できないし……【1】だけ今日しちゃうのもどーかなーと思いつつ、最近カルシェラネタあげてなかった気もするなあと思い。。。

 う゛~ん。タイトルのほうは今回もまた、なんかテキトー☆ですね(^^;)

 Coolといえばカルの代名詞っぽいですけど、Passionのほうはまあ、情熱というよりは、受難の意味合いのほうが強いのかなっていう気がしたり

 まあ、シェラの主君カル=スの心の氷を溶かす情熱っていう意味もあるかな~なんて思いつつww

 とりあえず今回は、序章みたいな感じでしょうか。。。

 序章なんていっても、そんなに大して長くもないお話なんですけどね(笑)

 とにかく今は、アレ☆(笑)が届くのをめっちゃ楽しみにしています!!

 それではまた~!!

 

       Cool&Passion【1】

 ――この気持ちは、欲望なのだろうか?

 あの人に触れ、あの人に愛されたいと願う気持ちは……いや、わたしは見返りなど求めていない。

 ただ、一臣下として以上にあの方を愛するのを許してほしいと思う、それだけのこと。

 そう、ただそれだけなのに――わたしは初めてこう感じてしまった。

 自分が一人の女として、どれほどあの方を愛しているかを伝えたいと……それも、わたしが<女>であるとさえ知らないあの人に……。


 もちろん、そんなことはシェラらしくもない物思いだった。

 これからもずっと、彼女は主君カル=スに<女>であることを知られずに生きていくつもりだったし、自分の密かな恋心を打ち明けることなど、当然もってのほかだった。

 というより――常人ならぬ魔力と強さをあわせ持つ、自分の主君に対する気持ちを、シェラ自身<恋>であるだなどと想像してみたこともなかった。

 確かに、氷の至高王とすら呼ばれるカル=スのことを、これ以上もなく崇敬してはいるにしても、それ以上の感情を持っているわけではないと……もしかしたらシェラ自身、自分の気持ちを無意識の内にもずっと、抑えつけてきたのかもしれない。

 でもつい最近、シェラははっきりと気づいてしまった。

 もしこの気持ちが恋――いや、もし愛ではないと言うのなら、おそらくこの世界に恋や愛などという感情は、存在しないに違いないということに。


 それは、春の訪れを感じさせる、三月も末の出来事だった。

 シェラはサウルハープを爪弾きながら、主君カル=スの寝所で護衛の任に当たっていた。

 もっとも、護衛などといっても、夜っぴて主君の寝所でそうしていたというわけではない。

 シェラはカルが眠るまでの間、彼の寝所で竪琴を弾くのを日課としており、主君がそろそろ眠ったろうかという頃には、自分の部屋のほうへ引き上げるのである。

 だがその日――いつもとは何か様子が違っていた。

 シェラ自身、うまく説明出来ない<不可思議な予感>のようなものを感じつつも、主君カル=スの寝姿を最後に確認してから、その場を辞去しようとした時のことだった。

 キィィィン!という耳鳴りにも近い音がし、カル本人が眠っている天幕の外に、その<映像>は現出した。

(この子供は……もしかして、カル様!?)

 幼年時代のカル=スと思しき少年が、美しくも賢そうな顔をして、シェラのことを見上げてくる。

「お姉さん……だれ?」

 シェラは、その澄んだ声音を聴いただけで、ドキリと胸を打たれたようになった。

 そして、もう一度天幕の内で眠る主君の姿を確認するけれど――主君カル=スは、すーすーと寝息を立てて眠るばかりだった。

「わたしは――わたしの名前は……」

(わたしは、あなたの臣下のひとりなのですよ)、そう答えるべきか否か迷い、シェラは結局、自分の名前だけを告げていた。

「お姉さんはね、シェラっていうの。それで、君の名前は?」

 自分でも、聞きながら(今更……)とは思った。だが、彼は主君カル=スが知らないこと――自分が男ではなく女であるとわかっているのだと、シェラは直感していた。

 そうでなければ、お姉さんではなく<お兄さん>と、そう呼んでいたに違いない。

「ぼくは、カル=スっていうの。村の子たちはだれもぼくと遊んでくれないけど……でもぼく、寂しくないんだ。だって、ぼくには母様がいるから」

「そう……」

 それでもやはり、カル=スという少年の瞳や顔つきはどこか寂しげだった。

 いや、彼自身の醸しだす存在自体がどこか、寂しげだといったらいいか――何か、人に寂寥感を誘うものがあるのだ。

 そしてそれは、彼が成人して大人となった今も、まるで変わっていないことであるように、シェラは感じていた。

「お姉さんは、吟遊詩人なの?」

 窓辺にある、サウルハープをちらと見て、カル少年はシェラにそう聞いた。

「ええ、そうよ。もし君が聴きたかったら、お歌をひとつ歌ってあげようか?」

「うん!!」

 少年がどこか嬉しそうにそう答えるのを聞いて、シェラも嬉しくなった。

 子供だけが持つ、屈託のない無邪気な笑顔……シェラは、自分の主君がこんなふうに笑うところを、これまでにただの一度として見たことはない。

(そういえば、これまで考えてみたこともなかったけれど――カル様はこれまで、どんな子供時代を過ごし、そして大人になられたのだろうか……)

 シェラは窓敷居にちょこん、と腰掛けるカル少年に微笑みかけると、彼に『ニーベルンゲンの歌』を聴かせることにした。おそらく少年の本体であろう、大人のカル=スが目を覚ますかもしれないとは、彼女は考えもしなかった。

 というより、そのことを契機に主君が目を覚ましたのなら――この少年の姿はその瞬間にかき消えてしまうに違いないと思っていたのだ。

 子供姿のカルが、頬を紅潮させ、熱心に歌に聴き入る姿を見て、シェラは不思議と彼と大人のカルの姿が重なって見えた。いや、自分の主君が頬を紅潮させたところなど、シェラは一度として見たことはない。

 ただ、自分の歌に聴き入る熱心な目つきや顔つきだけは、今の彼も大人のカルもまるで違わないのが、なんだかシェラには不思議でならなかった。

 そして、シェラ自身もまた、自分の歌の世界へ深く入りこむあまり――ほんの数秒、目を閉じた次の瞬間、少年カル=スの姿はどこにもいなくなっていたのだった。

(もしかして、カル様が目を覚まされて……!?)

 シェラはそう思い、そっと主君の眠る天幕のほうを振り返った。それからおそるおそるといった体で、中を覗きこみ――カル=スが相変わらず規則正しい寝息を立てる姿を見て、ほっと胸を撫でおろした。

(それにしても、あの少年は一体……)

 シェラはそう訝しく思いはしたが、この件についてそれ以上深く考えはしなかった。

 ただ、(不思議なこともあるものだな)と思い、今度こそ本当に自分の居室のある城の棟へ向かったという、それだけのことだった――とりあえず、その日の夜は。



 >>続く……。





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