カル×シェラな二次小説です♪(^^)
え~と、今回はですね……今までに書いたSSの中で、一番長くなってしまったというか
このくらいの長さになるともう、SSとも呼べないかなっていう感じなんですけど、長い分内容が濃くて充実してるかっていうとそんなこともなく(笑)、長い文章を面倒くさく読まされたわりには、大したこともないな……くらいな感じかもしれませんm(_ _)m
書きはじめたきっかけは、「ゲド戦記」のⅤ、「アースシーの風」を今読んでるからだったり♪(^^)
いえ、なんていうかほんと、「ゲド戦記」は最高です!!他のファンの方もそうだと思うけど、こんなにも魂にピッタリ☆くるファンタジー小説って、わたしには他にあんまりないので。。。
そんなわけで(どんなわけだかw)、カルと同じく真面目な王さま、レバンネンの姿を重ねあわせつつ(笑)、カルが理想とするのもきっと、レバンネンが目指してる<平和>と同じものなんだろうな~なんて思い、なんとなく駄文を連ねる形で書きはじめたというか(^^)ゝ
まあ、わたしが最初に書こうと思ったのは、シェラとカルがジューダスの城下町でお忍び的に、小さな世直しをするっていうものだったんですけど(「暴れない将軍、カル=ス」的なww)、なんか実際に書きはじめたら、全然違ってきちゃったぞっていう
いえ、他に候補としては、ジューダスの城下町の一郭に、「サラマンドラ教団」っていう怪しげな邪教集団がいて、その人たちが炎の魔人D・Sをどうやら復活させようとしてるらしいっていう噂を、十二魔戦将軍の一人が報告する……っていうのもあったんですけど、これもなんか自然とボツ☆(?)になったよーな。。。
「私の知っているダーク・シュナイダーという男は、もっと強い男だったぞ」的な話にしよーかと思ってたんですけどね(笑)
そんでもって、駄文をなんとなく繋げてるうちに書きあがったのがコレでしたっていうことなんですけど……自分的に長くなったのには、それなりに理由があると思ってます(^^;)
うん、だって原作のカルとシェラの絡み(?)って、長いところで十数ページあるかどうかっていう感じだから、いくらわたしが妄想好きでも、そこからだけでお話膨らませるっていうのは、流石にそろそろ無理があるというかww
そうなると、なるべくオリジナル的な設定を増やして書くしかないので、それで長くなったんだと思います
ちなみに、今回の小説の妄想背景には、「もしカルがアンスラに洗脳されず、またアビがああなった時点で、こんな破壊神などを使って世界を治めても仕方がない☆」みたいに気づいてたらどうだったか……っていうのがあったり(^^;)
まあ、もしそうだったら、バスタードっていう漫画自体が成立しませんけど(笑)、そんなわけでカルがジューダス城を拠点に良い王さまとして、ここから末長く平和な世を目指したとかだったらどーかなと思い、書いてみたといったところかも。。。
なんていうか、自分でも書いてて「原作忠実カル☆」とか「原作忠実シェラ☆」っていう感じじゃないな~という気がしたので(汗)、まあそんな感じで、あくまで別世界というか、別次元のお話だと思ってお読みいただけると助かりますm(_ _)m
あ、それと画集届きました!!
今回の一番の収穫(?)は、シェラの誕生日と血液型がわかったことだったでしょうか(笑)
そしてカルの血液型は、思ってたとおりのA型……まあ、このことについては、また次回♪(^^)
それでは、次回は「シェラ、魔戦将軍の一人に攫われるの巻☆」といったところです。。。
ではまた~!!
迷宮のカル=ス。-1-
シェラと彼女の主君カル=スとは、お忍びでジューダスの城下町ティプトアを散策しているところだった。
町の目抜き通りは人でごった返し、左右に並ぶ屋台店では、何かの品物を値切る客の声や、それに応じる商人の威勢のいい掛け声など、とにかく喧騒でまみれている。
「ほーら、安いよ、安いよ!買った、買った!」
「このシヌアル製の外套が、たったの二千セルージュぽっきり!!」
「んなこといったってあんた、今は春だぜ、おかみさんよ」
「ばっかだねー。だから普通じゃこの二倍はする超上等な外套を、その半額ぽっきりで売ろうってんじゃないか」
「ははーん。ようするにこの冬の売れ残りってことか」
「ま、そゆこと。あんた、この外套を今年の冬のために今安く買っておおきよ。そしたらあんたの女房に大きな顔して「ほら、季節外れの時期に買っておいてよかったろ?」って威張れるようになるだろうからさ」
「ははは、馬鹿いうない。シヌアル製の外套なんか、俺っち平民たちが着ていい代物じゃないからな。うちの女房も近所の連中に「あれまあ、お上品ですこと。おほほ」なんつって笑われるのが関の山だ」
「ああ、そうかい。そいつぁ残念!!おっ、そこのにーさん、お目が高いね。その柘榴石の嵌まった指輪は、たったの五千セルージュだよ。そっちの青緑色のアマゾンナイトの指輪は三千セルージュ。どうだね?隣の連れのべっぴんさんにひとつ、恋の約束に買ってあげたらいーんじゃないかい?」
にーさん、と店のおかみに呼ばれたカル=スは、頭巾(フード)付きのマントから、頭巾だけずらすと、横にいるシェラのことを振り返った。
シェラはといえば、こんないんちきくさい屋台店のおかみの口車に乗っては大変とばかり、カルに向かってしきりに首を振っている。
「この水晶とやらは、ただのガラス玉だな」
そう言ってカルは七千セルージュもの値段のついている水晶のネックレスを、陽射しにかざしてみせた。
「だが、こっちの紅玉髄(コーネリアン)とオニキス(縞メノウ)、緑玉髄(クリソプレーズ)の嵌まった指輪には、確かに価値がある。だが、この六千セルージュもの値札のついたトパーズのブローチは真っ赤な偽物だ。六千セルージュどころか、その十分の一以下の値打ちさえない。そしてこのラピスラズリのネックレスと、金に嵌めこんだ柘榴石のイヤリングは……今ついている値段の五倍はしてもおかしくない一品だ。玉石混淆とはまさに、こういうことを言うのだろうな」
カル=スはまるで、独り言でもごちるようにそう言ってから、隣のシェラの首にラピスラズリのネックレスをかけ、そして耳許にローズカットされた柘榴石のイヤリングをつけてやっていた。
上着の内ポケットから一万セルージュ札を十枚取りだし、どこか呆気に取られた顔のおかみに、空中に放り投げるようにしてそれを渡す――そうしてカル=スとシェラは、宝石と衣類をおもに扱っている店の前から、姿を消したのだった。
「カル様、こんなに高価なもの、いただくわけにはいきません!」
どこかオロオロしたように、シェラが人込みの中で急いでイヤリングを外しながら言った。
「もしこれが本物だというのならなおのこと、王城の宝物倉にでもお収めになってくださいませ」
だが、当然のことながら、シェラの手のひらに乗ったイヤリングを、カルは受け取ろうとはしなかった。
「それはすでにもうおまえのものだ、シェラ。ジューダス城御用達の商人たちが、もし同じ品物を持ってきたとしたら……あの十倍の値段は軽くふっかけて私に売ろうとするのだぞ?そう思ったら、随分安い買物だったと思わないか」
「安い買物、ですか」
シェラは軽く溜息を着きながらも、やはり主君カル=スの言い分を認めないわけにはいかなかった。
ジューダス城へは、ジューダス王家があった頃からの長いつきあいの商人が、今も様々な品物を売りに列をなしてやってくる。彼らにしてみれば、顧客が王家の人間から成り上がりの権力者に取ってかわったというくらいの変化しかないのだろう……「氷のハイキングにおかれましては、本日も御機嫌麗しく」という口上にはじまり、あれやこれやの品物を並べ、なんとか買わせようという商魂の逞しさには、シェラもある意味恐れ入るものを感じていた。
そして「王ともあろうお方が、この一品の値打ちを見抜いてくださらないとは!!」などと演技がかった調子で言っては、『所詮成り上がり者には、本物を見る眼がないのよ』とばかり、見下げたような顔の表情をして見せるのである。
こうなっては、カル=スとしてもその商品を買わないわけにもいかず……何かそうした形で無駄に溜まった衣類や装飾品類などが、王の衣装部屋には数え切れないほどあるのだった。
「何も必ず月に一度、あの者たちから物を買ってやらねばならぬ義理もないと思うのだがな」
カルが隣で溜息を着くのを見て、シェラは少しだけ笑った。
「どうした?私が今、何かおかしいことでも言ったか?」
「いいえ、そうではありません、カル様。家宰のディロン・トニティがこの間、こう洩らしているのを思いだしたのです……ジューダス城では毎日、いつも決まったパン屋や牛乳屋から配達を頼んでいたのに――カル様がそうではなく、別のパン屋や牛乳屋にも頼むようにしろとおっしゃったでしょう?でもそれだと、美味しさや鮮度などが微妙に違ってきて、城内の料理人から苦情がでるんですよ。この間あそこの店が配達した魚は最高だったのに、今日は最低だとか、また肉や野菜類もまったく同様で、料理人頭のオレイユなどは、これからは朝一番に自分が市場で買いつけるといって聞かないのだとか……ですが、そうした苦情が執事を通して家宰のトニティの元にまで届いても、彼としてはこう言うしかないのですよ。すべてはカル様の御命令だから、と」
「そんなことがあったのか」
カルは再び溜息を着きそうになりながら言った。
「私は、ただ……城にはひとつの業者からだけでなく、色々なところから配達を頼んだほうがいいと言っただけなのだがな。ひとつの業者から小麦粉なりなんなり、すべてを頼むとしたら、その業者だけが年間を通していい思いをするということになるだろう?一般の平民相手に何か物を売るよりも、魚にしろ野菜にしろ、城へおろすものはその値段の二倍以上で買うのが普通だからな。単に私は、そうした依怙贔屓のようなものをなくそうと思ったという、それだけだったのだが……」
「もちろん、そのことはわたしもよくわかっています」
そう言ってシェラは、どこか嬉しそうに、そして少し誇らしそうな顔をして、隣の主君のことを見上げた。カルは用心のために、再び頭巾を被り直していたが、おそらく通りの群集の中に、自分たちの今の王の顔を見たことがある者は――おそらくひとりもいなかったに違いない。
カル=スとシェラが、こうした<お忍び>で城下町を散策するようになったのには、いくつか理由がある。ひとつ目は王であるカルの気晴らし、そしてふたつ目が市井の暮らしがどのようなものか、彼が自分の目で直に見ておきたいと思ったことが大きかっただろう。
というのも、カルがジューダス城の家宰であるトニティに、城への毎日の配達物は、ひとつの業者だけでなく、複数の業者に頼むようにしろと命じたのには、あるきっかけがあったからだ。
半月ほど前、その時もシェラとカルは今と同じように城下町の喧騒の中をはぐれないようにして歩いていた……すると、通りの外れに出たところで、闘鶏が行われていた。カルはその残酷な競技があまり好きではなく、興奮した人だかりからすぐ離れようとしたのだが――その時、小さな荷車の前で牛乳売りが牛乳を売っている姿を見かけたのである。
初老のその男は腰が曲がっており、なんとも人生に疲れきったような、物哀しい目つきをしているのが印象的だった。
「一杯いくらになる?」
カルがそう声をかけると、男は枯れたような小さな声で「半リブラでごぜえます、旦那さま」と答えたものだ。
カルはシェラの分もと思い、1リブラで二杯分の牛乳を買った。男はブリキのカップにひしゃくで二杯の牛乳を汲むと、ふたりにそれぞれ手渡したが――その手指はリウマチに冒されているのが明らかなほど曲がっており、その手つきもどこかおぼつかないものだった。
だが、その牛乳を一口飲んだ途端、シェラとカルとは顔を見合わせた。そのくらい、普段飲んでいるもの以上に、とても美味しかったのである。
「その、この商売で一日、一体いくらになるものなんだ?」
初老の男にそう聞いた時点で、シェラにはカルが何を考えているのかがよくわかっていた。この男のことを、ジューダス城御用達の牛乳配達人にしようと思っているに違いない。
「そうですねえ。配達の店が何軒かと、あとの残りはこうして街角で売っておりますが……それでも一日三十リブラになるかならないかといったところでして……」
「そうか。それで、うちでもこの牛乳を毎日配達してもらいたいとしたら、どうすればいい?」
カルは男の名前と住んでいる場所を聞くと、のちほど部下の者に契約書を持って伺わせることにしようと言った。初老の男は最初、カルの申し出を嬉しそうに聞いていたが、この段になると、自分が何かの詐欺にでもあったように――また元の、人生のすべてを諦めたような顔に戻っていた。
だが、おそらくその後彼はとても驚いたに違いない、とシェラは思う。何故といって契約書を携えた王の家来たちが、立派な馬に乗って男の貧しい家屋を実際に訪れることになったからだ。そして今では安定した収入を毎週得られることを……妻とともにとても喜んでいるに違いなかった。
まあ、そのようなことがあって、カルはジューダス城の家宰であるトニティにひとつの業者だけでなく複数の業者に商品を頼むようにしろと命じたのだったが――まさか城内の料理人たちの間で、そのような混乱が起きていようとは、想像してもみなかったのである。
「わたしは、カル様のお食事を運ぶために、厨房のほうへはしょっちゅう出入りしてますから……それで、色々なことを見聞きするんですよ」
何故そのことがわかったかと聞かれて、シェラはそう答えていた。
そして通りの外れ――以前、牛乳売りが牛乳を売っていた場所では、年端もゆかぬ襤褸をまとった少年が、レモネードを売っている姿が見受けられた。
カルはまた、樽の中のレモネードを二杯分買うのと同時に、この少年にも色々なことを聞いていた。この商売で一日いくらになるのかとか、親兄弟はどうしているかといったことなど……そして彼が自分は孤児だと告げた時、隣のカルが何を考えているのかが、シェラには手にとるようにわかっていた。
今日はおそらく、城下町の救貧院や孤児院がどのような状態にあるか、そうしたことを調べるために、午後中の時間が割かれることになるだろうと……。
救貧院や孤児院を運営する聖職者たちと会見したのち、あとはもうジューダス城へ戻るばかりと思っていたシェラは、背後に夕陽を受けて輝く礼拝堂の前で――カルが城へ戻るのとは、まったく別の道を行こうとしているのに気づいた。
「カル様、あの……城へお戻りになるのでしたら、そちらの道では遠回りになると思いますが?」
シェラがどこか気遣わしげにそう聞くと、不意にカルがシェラの腕をとった。
「そうだな。本当に何かと色々遠回りすることになった。今日はある場所へおまえを案内するのが、一番の目的だったはずなのに……」
この時、厳かな礼拝堂の鐘が六つ鳴り、シェラはそれを合図とするように、何故か突然黙りこんだ。シェラ自身にもうまく説明することは出来なかったが、まるで沈黙の魔法にでもかかったみたいに、口が聞けなくなってしまったのだ。
もちろん、魔導士であるカル=スが、何かそうした呪文を自分にかけたのでないことは、彼女にもわかっている……けれど、カルに手を引かれて城下町の石畳を歩いていく間、目的地に辿り着くまで、シェラは黙りこんでいたし、カルもそうしていた。とにかくそれが今のふたりにとって、何故か一番自然なことだった。
「さあ、ここだ」
カルはそう言ってどこか嬉しそうに、川を挟んだ対岸にジューダス城の見える<リハイラ王妃の館>と呼ばれる場所へ、シェラのことを案内した。
今は使われていないはずの館の前には、ふたりの衛兵がおり、カルの姿を認めるなりふたりとも――完璧な儀礼によって、王とその連れに敬礼している。
「あの、この館は今はもう使われていないはずでは……?」
壁にかけられた燭台の蝋燭に、次々と炎の明かりが灯っていくのを見て――カル=スが手ひとつ動かすでもなく魔法を使ったことが、シェラにはわかっていた。
入口からホールへ続く廊下には、どこか甘いような心地好い芳香が満ちており、また広いホールに出るとそこは吹き抜けになっていて、中央には真紅の絨毯の敷かれた大理石の階段があった。そしてその大理石の親柱には、どこか荘厳な顔つきのライオンが彫刻されている……カルが今度はシェラの手を引かずに、さっさと二階の一室へ向かおうとしているのを見て――シェラも彼のあとを急いで追いかけることにした。
そこは、川に面して大きなバルコニーのある、広い寝室だった。外海へ漁にでていた船舶が停泊中の、波止場が遠いところに見える。その時シェラの耳には、市場で魚を売っていた威勢のいいおかみの掛け声がもう一度聞こえる気がしていた。「安いよ、安いよ!ニシンが十匹、たったの五リブラ!さあ、晩のおかずに買っていきな、お嬢ちゃん!!」――それから、生け簀で魚が元気に泳ぎまわっている姿を思いだし、シェラの頬には自然、微笑みが広がっていった。
「気に入ったか?」
バルコニーで、微かに潮の匂いを含んだ風に晒されながら、カルはそう言ってシェラのことを振り返った。夕陽の照り返しを受けたその顔がなんだか眩しくて、シェラは思わず目を細める。
「あの、でもここは……カル様がジューダス城を征服した時に、閉鎖状態になったと聞いていたのですけど……」
「閉鎖というか、なんというか」
と、カルは少し複雑な顔の表情をした。
「ジューダス国を治めた最後の王は、正妻であるリハイラ王妃のことよりも、別の愛人のほうを大切にしていたらしい。だから、彼女にこの館を与え、そして愛人と昼間から大っぴらに城の中庭で戯れていたという話だ。我々がジューダス国を攻めた時――この館はすでにもぬけの殻で、王妃の姿も、彼女に仕える侍女の姿もなかったと聞いている。ただ、混乱に乗じて何者かが、この館に残っていたであろう金目のものを色々持ち去ったので、とりあえず人を寄せつけない処置をしたという、そういうことだな」
「あの、でも……」
(そのことと、わたしをここへ案内したことの間には、どんな関係が?)と言いかけて、シェラは不安に顔を曇らせた。(まさか)との思いが、胸の内をよぎっていく。
「あれからさらに色々手入れして、細かい調度品に至るまで、かなりのところ整えたつもりだ。もしここにある物の他に、シェラに欲しいものがあったら……」
「嫌です、そんなの!!」
滅多に、というよりは、これまでシェラはただの一度として、主君のカル=スに言い逆らったりしたことはない。だが、その彼女が夕陽の炎をその瞳に宿らせて、自分のことを毅然と見返す姿を見て――その怒りに、というよりは、その美しさにカルは思わずハッとした。
「わたし――わたし……これでも一応、わかっているつもりです。わたしではカル様の正妻にはなれないっていうこと。それに、城の勤め人たちも、わたしとカル様の関係をあやしみはじめているってわかっています。カル様がいつまでも正式に妻を娶らないのは、おそらくそちらの趣味なのだろうとか、どんな完璧な人にも、一つくらいそうした欠点があるものだとかなんとか……そんなふうに思いはじめているらしいって。だから、あまりカル様の寝所へは毎夜のように入り浸らないほうがいいってわかってるし、これからはもっと気をつけるようにもします。だから、わたしのことを城から追いだすようなことだけは……」
「誰が、追い出すだなんて言った?」
そう言ってカル=スは、上着の内ポケットからビロードの小さな箱を取りだし、さらにそこから小さな指輪を取りだすと、跪いてシェラの左の薬指にはめた。
「私と……正式に結婚してくれないか?シェラ」
一瞬、まるで完全に時が静止してしまったようだと、その時シェラは感じた。もはや聴こえなくなったはずの、礼拝堂の鐘の音が、幻聴のように耳の内側に響いてくる。
彼女はこの時――本当にどうしていいのかわからなかった。自分の目の前にいる愛しい人が、本当に本気なのだということが嬉しい反面、彼の部下としては、魔戦将軍の一人としては、その気持ちを突き返すべきだとの気持ちがあった。自分は愛人のような身分でも十分だと、正式な婚姻などという大それたことは望んでいない、そう言うべきなのだと……けれど、口が動かなかった。
そしてそのかわりに流れたのは、小さな涙だけだった。
「ごめ……なさ………わたし、どうしたらいいか……っ!!」
シェラの涙の理由については、カル=スにはよくわからなかった。ただ、まだ時期尚早だったのだろうかと彼は思い、立ち上がると、シェラの小さな身体を抱きよせた。
「いや、いい。私も少し、急ぎすぎたのかもしれない。だが、どちらにしてもこの館はもうすでにおまえのものだ。リハイラ王妃が使うようになる以前は、ここは王や貴族たちが集う別邸のような場所だったらしい。だから、王城ではそういうわけにもいかないが、ここでならおまえとふたりで、誰の目を憚る必要もないだろうと思ったという、それだけのことだからな」
シェラの心の内では、相反する感情による苦しみと、強い魂の喜びとがないまぜになっていた。この人に愛されたい――出来ることなら、もっと、もっともっと強く………!!でもそう思えば思うほど、激しく甘い痛みが、胸の奥底を貫いていくようでもあった。
「カル様、わたし、わたし……!!世界で一番、あなたのことを……!!」
「ああ、わかっている」
それからふたりは、「愛している」という言葉はあえて言わずに、ただ口接けだけを交わした。
そして本当にどちらからともなく――豪華なしつらえの寝室にある、天蓋つきのベッドへ、自然と向かうことになったのだった。
>>続く……。。。
えーと、うちってそれほどたくさん人の来られるブログじゃないので、大丈夫かなとは思うんですけど……メールのアドレスが見えるようになったままで、大丈夫だったでしょうか?
ぱぴこさんの元に迷惑メールっぽいものが届いた場合、ここを見た人が実は……とか、ありうるかもしれないので
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それでは、よろしくお願いしますね