天使の図書館ブログ

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おかしな人生~Part.1~

2011-11-10 | 創作ノート
 ※今回の画像と本文には、まったくなんの関係もありません(笑)


「エイリアンの赤ちゃん」のところでいくつか短編小説のタイトルを書いたとおり……今回のお話は、そのうちのひとつということになります♪(^^)

「澄んだ瞳のヴァイオリン弾き」、「おかしな人生」、「闇と光の王国」、「蛇女房」、「夢の中の電話ボックス」、「ヴァージン・クラブ」、「間違った娘」……あと、これに「電信柱と街路樹」、「不満人間A to Z」も一応加えておこうかな、なんて

 とりあえず、次に書く予定なのは「夢の中の電話ボックス」で、これを書いたらまあ、他の話はもしかしたら書かないで終わるかもしれませんww

 でも一応、タイトルだけ書いておくと、自分でも話の内容だけは覚えておけるので、個人的なメモ書きとして残しておこうかと(^^;)

 ええと、今回のお話は、ですね……「エイリアンの赤ちゃん」に引き続き、またもエイリアンネタなのか!?みたいな感じかもしれません。。。

 2個下の記事「南極大陸。」でもエイリアンに触れてるあたり、「わたし、そんなにエイリアン好きだっけ??」と、自分でもちょっと驚きです(笑)

 ただ、エイリアンを扱った映画って、見てるとある種の人間の心理がわかって不思議な気もしたりww

 たとえば、人間の容姿的な基準から見るとしたら、その多くが人間よりも醜い化け物っていうパターンがほとんどだし、E.Tみたいに心を通いあわせることが出来る場合もあるけれど、アクション大作の場合は特に、ただの醜悪な侵略者みたいな設定で終わることが多いですよね(^^;)

 もしかしたら、地球上の人間なんかより、彼らのほうが心が美しいっていう可能性もあると思うんですけど、その設定だと面白い映画を作るのは難しいっていうことなのかなあ。。。

 なんにしても、わたしが今回書いた小説は、本当にささやか(?)ばかりの非日常を主人公が体験するといったような短いお話です(笑)

 まあ、誰かにお歳暮持ってく時に「ツマラナイものですが……☆」って言うのと同じく、「ツマラナイ小説ですが……☆」という感じで、こちらで何回か連載してみようかと(^^;)

 ではでは、もし気に入ってくださる方がいらっしゃったら、とても嬉しいです♪

 それではまた~!!



       おかしな人生

 わたしの人生は本当に奇妙な――おかしな人生だった。

 いや、もしわたしを知っている人が聞けば、「如月太陽、おまえの人生など、あまりに平凡すぎてちゃんちゃらおかしいほどだ」と言うかもしれない。

 そうなのだ……わたしが臨終を迎えたのは、五十六歳の時のこと。

 もしわたしの伝記を書こうなどという物好きな人間がいたとすれば、おそらくその人は四百字詰原稿用紙が五枚もゆかぬうちにペンを置きたくなったことだろう。

 そのくらいわたしの人生は平凡極まりなく、平坦でつまらないものだった――一応、<表面上>は。

 では一体、その平凡な人生を送った男の人生が、精神的な水面下で一体いつ頃からおかしくなったのか、わたしはその説明を時を遡って順に行いたいと思う。


 あれは、わたしが二十三歳の時のこと……わたしは、そこらへんによく存在している、「目的も夢も持たない若者」とかいうやつだった。

 わたしの育った家庭は、金銭的に中流よりも下流に近いといったところで、経済的な余裕といったものなど、まるでありはしなかった。だから、同級生たちが大学に進学するか専門学校に進学するかで悩んだりしている時期――わたしには悩むことなど、何ひとつありはしなかった。

 成績のほうはそう悪くもなかったのだが、わたしはいわゆる無気力な少年というやつで、何事にも無関心、その上学校の文集の嫌いな言葉の欄に「努力」と書いているといったような若者だった。

 つまり、大学に進学するにしても、専門学校へ行くにしても……奨学金を受けながら、それと同時に一生懸命アルバイトもして、なんていう「努力」をする選択肢は、わたしの中には最初から存在しなかったのだ。

 それならば、正社員として働くにせよ、アルバイトするにせよ、働いた分の給料を毎月全額自分のものに出来るほうが良い――わたしはそんなふうに考える、基本的に損得計算によって動くような人間だった。

 だが、最初にしたコンビニのバイトは長くは続かず……その後、数社の派遣会社に登録して、ある時は工場で仕分けの作業を、ある時はビルの清掃を、ある時は工事現場で警備員を、などという場当たり的な仕事をこなしていたある日のこと――わたしは、実に奇妙なものを目撃したのだ。

 時刻は午後の13時にもなろうかという時のこと、わたしは工事現場の近くのビルに、全身真っ白な体をした、ケモノの存在を目にしていた。

 何しろ、街中のビルのことで、十数階は上の薄黄緑の壁に、イモリかヤモリのような格好で、<それ>は張りついていた……わたしが警備員としてその日いなければならなかったのは、実に退屈な現場で、ただ通りかかった人に時々「段差にお気をつけくださーい!」などと声を掛ければよいという、それだけの仕事だった。

 そしてこうなってくると、退屈であるがゆえに(実際わたしは、五分おきに時計を見てばかりいた)、わたしはますますその高層ビルの壁から、目が離せなくなっていた。とはいえ、そのおかしなケモノが、張りついている場所から動く気配はまったくなく……わたしはだんだんに、「あれは作り物だろうか?」と思うようになっていった。理由はよくわからないが、物好きな人が一時的にあそこへ張りつけたのかもしれない、と。

 だが、わたしがそう思い、そのビルから目を離して、隣の高級ホテルのほうへ目を移した瞬間(というのも、ミニスカートをはいたなかなかの美女がそこにいたため)、その白いケモノはサカサカサカ、と若干の移動を開始したのである。

(うおっ!動きやがった!!)

 長い髪をなびかせた美人がタクシーに乗りこむのを目線で見送り――それからまたビルの壁に視線を戻してみると、そいつは前いた場所よりも少し下へおりてきていたのである。

(くそっ!携帯に撮りてえ~!!そんで、速攻ようつべにでも動画をアップしてえ~!!)

 だが無論、勤務中のことであるゆえ、そんなことなど出来るはずもなく……それでもわたしは、三時に十分ほど休憩時間が与えられた時、工事現場の作業員に、こう聞いてみた。

「見てくださいよ、あの壁のところ。なんか変な生き物が這いつくばってますよね?」

 すると、その元ヤンキーといった感じの若い作業員は、わたしに対してあからさまに不審な顔つきをした(というか、極限まで剃りあげたといった感じの眉をひそめ、わたしのことをギロリと睨んだのだ)。

「てめえ、何言ってんだ?そんなことより、ぼんやり突っ立ってばかりいねえで、ちゃんと仕事しやがれ!!」

 そんなこと言っても、こちとらそのぼんやり突っ立ってるってのがおもな仕事なわけで……などと言い訳するわけにもいかず、わたしは黙りこんだ。

(まさかとは思うけど、もしかして<あれ>が見えてるのは俺だけとか?)

 そんなこと、あるはずないよなあ、と思いつつも、また別の人間に同じことを聞く勇気も持てず――それから下番時間となる午後の六時までの間、わたしは鼻水をすすりつつ、その工事現場の傍らに立ち続けた。

 何しろ、クリスマスも近い12月中旬のことで、風が冷たいといったらなかった。けれどもその後、いつもよりは時間の経過が早かったように、わたしには感じられていた。

 何故といって、例の気になる奇妙な生き物が……せわしなくサカサカと上下したかと思うと、隣のホテルの白い壁に、一度などジャンプして飛び移っていたからである。

(うおっ!野郎、飛びやがった!!)

 わたしは新鮮な驚きとともに空を見上げ、その白いケモノに対して拍手すら送りたいような気持ちになっていたが――何分、勤務中のことゆえ、あまりそちらを見てばかりもいられなかった。

 それで、時々人通りが途絶えた時などに、何度もそちらへ視線を送っては、白いケモノがどうしているかと見守っていたのだ。

(1、2、3、4、5、6、7、8、9……よし、ちょうど9階と10階の間の壁だな。そして部屋のほうは右から数えて、四つ目の窓だ。ここのホテルは一泊二万円くらいするらしいけど、あいつのいるところを窓からのぞけるなら、そのくらい払ってもいいかもしれない。よし、仕事が終わったらいっちょ、そうしてみるか)

 きのうが派遣会社から給料の支払われた日だったこともあり、わたしの財布にはその日、二万五千円ほどのお金が入っていた。しかも、明日はなんの仕事も入っていないオフなのである……この期を逃す手はないとばかり、わたしは仕事終了後、現場監督から伝票にサインをもらうと同時、目の前の高級ホテルのエントランスへと飛びこんだ。

 上下青で、えんじ色のネクタイといった警備服は多少目立ったが――それでも、ホテルのフロントマンはわたしに対して礼儀正しく対応しただけだった。

「部屋が気に入らなかった場合、変えてもらえるものでしょうかね?」

 わたしが、西側の十階、ホテルの正面から見て四番目の部屋がいいと言っても微動だにせず微笑んでいたフロントマンが、この時は若干眉を曇らせていた。

「ええ、まあ。ご入室になってみて、気に入らなかった場合は、別の開いている部屋をご用意できるかと思いますが」

「そうですか。ありがとうございます」

 わたしは白いスーツを着た中年のフロントマンから部屋の鍵を受けとると、彼に会釈してからエレベーターへ向かった。

(やべっ!携帯の電源切れかかってんな。でもまあ、充電器は持ってきてるから、なんとかなるか)

 あちこちにクリスマスの装飾が施されているホテルの中を、わたしは自分が泊まるべき部屋――1029号室に向かって口笛を吹きながら歩いていった。

 もしここから窓をのぞいて、奴の姿が見えなかった場合、他の部屋へ移動するつもりでいたが、そんな心配などまるでいらなかった。

 わたしが1029号室に足を踏み入れ、早速とばかり窓を開けて壁を見ると、例の白いケモノは相も変わらず寒風の中、這いつくばった姿勢でいたのだから。

「よーし、暫くそのままでいろよ~……」 

 わたしは早速携帯で奴の姿を撮影しようとしたのだが――その瞬間、驚くべきことに気づいた。

 なんと、携帯を通してでは、白いケモノの姿は確認することが出来ないのだ!!

 しかも、奴はまるで、わたしが「チッ!」と舌打ちし、携帯を畳むパチンという音に反応でもするかのように、こちらへギョロリ、と顔を向けたのである。

(やべえっ!!)

 わたしはその瞬間、慌てて部屋の窓を閉めた。

 何故といって、ああ、何故といって――奴には<顔>がなかった。いや、正確には顔らしきものはあった……そしてわたしはその時の心象としてギョロリ、と表現してしまったが、実際には奴には目などなかったのだ。ついでに鼻も耳もなかった。奴にあるのは、顔の半分くらいもの大きさがある、馬鹿でかい口だけだったのだから!

 わたしは恐ろしさのあまり、急いで窓のカーテンを閉め、必死に「自分は何も見なかった」と自己暗示をかけようとした。それとも、今すぐホテルのフロントまで駆け下りていって、部屋が気に入らなかったから、もっと上の部屋かずっと下のほうの部屋に変えてもらいたいと言うべきか……わたしがドキドキという自身の胸の鼓動を聞きながら、ほんの数秒の間にそこまで考えていると、さらに恐るべきことが起こった。

 なんと、しっかり鍵をかけたはずの窓から――例の不気味な生き物が、ぬうっとその全身をあらわにしたのである!!

「うわああああっ!!!」

 わたしはすぐに1029号室を飛びだした。

 だが、例の白いケモノは壁をすり抜け、さらにわたしの後を追ってきた。エレベーターのボタンをしつこいくらい押したが、四台あるエレベーターはどれも、遠い階で止まっているばかりだった。

「くそっ!!」

 わたしは非常階段のあるほうへ走っていったが、そのドアを開ける直前に、気づいたひとつのことがある。

 つまり、1015号室からビジネスマン風の男が出てきた時――彼は白いケモノを見たはずなのに、まるで驚かなかったということだ。いや、それどころか彼は白いケモノに向かって、何事もないかのように歩いていくことさえしたのだ。

「お、落ち着け、俺……」

 白いケモノのほうでは、ビジネスマンにはまるで目もくれず、一目散にわたしのほうへやってきた。わたしは再び大声で叫びだしたかったが、なんとかじっと堪えた。

 他の人間の目には見えない――ということは、だ。奴はわたしに危害を加えたりすることは出来ないに違いないと、わたしはそう踏んだのである。

 だが、奴は確かにわたしに対して危害は加えなかったにしても……顔の半分くらいある大きな口を開け、そこから突きでた赤い舌で、わたしの顔を犬のようになめる、ということはした。

 そしてそのざらざらとした感触を頬に感じた瞬間、わたしにはわかったのだ。<彼>が決して邪悪な怪物などではなく、人間に友好的な感情を持つ生物であるらしい、ということが。

「やめろって!気持ち悪いな。ほんと、犬みたいだぞ、おまえ」

 ハッハッと生温かいような息がわたしの顔にかかったが、それでいて同時に、その感触は肉体的なものではない別の何かだということも――わたしにはわかっていた。

 うまく説明できないが、<彼>はとにかく、そのような存在だった。

 おそらく、他の多くの人々に<彼>の存在は見えない……だが、わたしに<彼>のことが見えるのが何故なのかわからないのと同様、<彼>にもまた、他の人間たちに自分の存在が見えないのが何故なのか、わからないに違いなかった。

「おまえさ、俺と一緒にくるか?あんなところにずっと張りついていて……本当は寂しかったんだろ?いいよ、俺で良ければ一緒にいてやっても」

 白いケモノは、忠実な犬のように再び四つん這いになると、俺の足許に顔や体をこすりつけてきた。まるで、猫が人間に甘える時によくそうするみたいに。

 おそらく、多くの人がこの時点でこう疑問に思うかもしれない。

 そんな他の人間の目には見えぬ恐ろしい容貌の化け物を、何故わざわざ引き取ろうという気になったのか、と。

 だが、それに対するわたしの答えというのは、実に単純なものだ。

 確かにわたしは――<彼>がわたしの顔を犬のようになめはじめるまで、彼のことが恐ろしくてならなかった。けれども初めて「接触」した瞬間、<彼>が何かの心理的な飢えを有した、孤独な存在であるということがよく理解できたのである。

 なんにせよ、その日わたしは<彼>と高級ホテルの一室で一緒に眠り(彼のほうは、それこそ犬のように体を丸め、ベッドの片隅で横になっていた)、翌日にはわたしのアパートで一緒に暮らすということになったのである。



 >>続く……。





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