「ゲド戦記Ⅳ~帰還~」を、大体のところ読み終えました♪(^^)
ええとですね、続きが気になるあまり、途中飛ばしたり、斜め読みしてしまった箇所があるので……もう一度その部分をちゃんと読む必要があるんですけど(汗)、とりあえず以下はストーリーを大体のところ掴んだ「ゲド戦記Ⅳ」の感想となりますm(_ _)m
一応、噂としては「これはちょっとひどいんじゃないかww」みたいな意見もある、というのは最初から聞いてました。
それでもまあ、最初に読んだ時にⅢ部作の中で第Ⅱ部の「こわれた腕輪」が一番好きだったわたしとしては――テナーの再登場は、本当に嬉しいことだったんですよね。
というか、これでもし、わたしの中のテナー観とかゲド観を根底から覆すような感じで描かれていたとしたら、「流石にこれはないww」みたいには思ったかもしれません。
でもわたしの中では、作者であるル=グウィン女史が今回描きだしたテナーもゲドも、自分の中で思い描いていたテナーであり、ゲドに限りなく近かった、というのがすごく嬉しかったというか。
ただ、これってわたしの今の年で読むからそう思えるのであって、十代の時に初めて「ゲド戦記」のⅠを読み、そのあと興奮しながらⅡとⅢを読み、Ⅳまで読み進んだ……とかだったら、第Ⅳ部まできて、初めて「ビミョ~かな」と思ったかもしれません(^^;)
第Ⅱ部でお互いの魂が深く共鳴していたように思えるテナーとゲドですが、その後一体どうなったんだろう、というのは、ゲドファンの誰もが思うことだと思います。
第Ⅲ部を読む限り、その後ふたりは結婚したとか、ゲドは魔法使いとしてあちこち旅に出はしたけど、結局最後はいつも、ゴント島にいるテナーの元へ戻っていった……といった記述は一切ありません。
どっちかっていうと、その後もゲドは独り身をとおし、テナーはどうなったかわからない――読み手に感じとれるのは、そんな程度のことですよね。
それで、テナーはその後「普通に結婚して子供を産む」という道を選択した、ということが、本書で明らかになってるわけですけど、これはゲドが相手では、テナーにとって仕方のない選択だったのではないかと思われます。
彼女にとって、ゲドとの間に欲しかったのは、<結婚>という形態より、「魔法使いとしてあちこち出かけるけれども、浮気はしないし(笑)、必ずおまえの元に戻ってくるよ」という、<約束の言葉>だったんだと思うんですよね。
でもゲドは魔法使いなので、そうした<約束の言葉>に人間がどう縛られるのかがよくわかっている。そしてそうした縛りのない自由な状態でいいなら、テナーの恋人にもなれるにしても、そんな都合のいいことを求めるわけにもいかないというか。
ゲドは一人の男として恋人を持つよりも、一人の魔法使いとして生きる道を選び、テナーは別の選択をした……でも彼女が本当に望んでいたのは、ヒウチイシの女房、ゴハとしての人生ではなく、ゲドの伴侶、テナーとして生きることだったのではないでしょうか。
テナーの死んだ夫の名前がヒウチイシで、息子の名前がヒバナって、これ、原語ではどうなってるかわからないんですけど、自分的にはすごく皮肉だなって思いました(^^;)
何故といって、テナーの魂にヒウチイシを打って初めてそこに明かりというか、炎みたいなものを点じたのって間違いなくゲドですよね。そして本当はテナーはゲドとの間にこそ、その結果として生まれるはずの子、ヒバナが欲しかったはずだと思うので。。。
その息子が何か「本質を備えていない」ように描写されてるのって、テナーがした選択の結果であるように思えて、すごく皮肉だなあというように感じてしまうのです。
そして、火傷した女の子、テルーの登場が最初にあります。この子は血の繋がりはないにしても、テルーが本当はゲドとの間に欲しかった子のように思うんですよね。だからこそこの子は、炎の子であるように描写されていると感じます。
ただ、ゲドとテルーが若い頃にあのまま結ばれていたり、結婚したりしていた場合……その炎の力というのは、両者どちらとも制御しがたい、凄まじい炎の力であったかもしれません。
そのことを思うと――ふたりは、中年である<今>こそ結ばれてしかるべきであったような気も、わたしはすごくするんですよね(^^;)
ゲドとテルーは本書の中で、「普通の恋人同士や夫婦がこんな話、するだろうか?」というくらい、物事の<本質>のようなことについて、語りあっています。テナーはゴハであった頃、夫のヒウチイシとはこんな話、絶対といっていいくらい、していなかったのではないでしょうか。
第Ⅲ部の最後で、魔法使いとしての力を使い果たしてしまったゲドですが、魔法というのは言い換えれば、異界の法則を自分のものとして操るということを意味しているように思います。そしてゲドは女性という異性――ある意味異界の女と交わることによって、違う世界の力を自分の中に導き入れ、受け容れることによって、魂の力を回復した……というように、わたしには読めました。
魔法を操るのは困難なことですが、異性だって同じくらい、自分の力ではどうにも出来ない(笑)、でも魔法使いとして竜のような存在と結婚してるような状態も素晴らしいでしょうけど、女性と結ばれるということも、ゲドにとっては同じくらい素晴らしい体験だったんじゃないでしょうか。
第Ⅲ部まで読むかぎり、全然女っ気のないゲドですが(カラスノエンドウの妹との関係は、軽い恋愛程度のことですよね)、わたし自身は「ゲドも男だから、遊女とそんなこともあったりしたよ。えへっ☆」みたいな展開より(笑)、ゲドが心の中では十五の少年のままだったっていう設定のほうが――より、わたしの中のゲド観に近かったのです(^^;)
テルーが魔法使いの修行をやめて結婚したと聞き、ゲドはがっかりしたと言っていますが、ここまで彼が鈍かったら、テナーは彼以外の誰かと結婚するしかなかったんだろうなあ……と、つくづく納得します。
そしてテルーが、「初めて会った時からあなたが好きだった」と告白してるのは、テナーファンとしては「やっぱりそうだったんだ!!!」という感じで、妙に感動してしまいました
それなのに、老いの入口に立ったくらいなところで、ようやく結ばれたふたり……でも、ふたりの性格のことを思うと、結果としてはこれで良かったんだろうなあという気がします。
まあ、本書はフェミニズムに関してのお話でもあるように読めると思うんですけど、わたし個人がその点に関して一番感じたのは、「ゲドほどの人であっても、男の人っていうのは勝手なもんだな☆」ということだったでしょうか(^^;)
いえ、魔法の力を使い果たしたところでようやくテナーのところへやって来たゲドって、本人にもしその気がなかったとしても、やっぱりちょっと勝手ですよね(笑)
魂に数え切れないほどたくさんの壺があって、ゲドの中ではその壺って常に魔法の力で満たされていた……それがゼロになって何をどうしようと二度とそこが満たされることはないと知った時――壺の数が多いだけに、ゲドの絶望は深かっただろうなとは思います。
でもタカが本能で狩りをしたり、自分が癒し満たされるためにはどうしたらいいかを知ってるみたいに、ゲドはほとんど無意識のうちといっていいくらい、当たり前なこととして、生まれ故郷のゴントへ帰ってきました。
そりゃ当然、自分の故郷なんだから、最後に帰ってくるのは当然だろうとも思いますけど、ゲドはどうも、自分がもし癒されうるとしたら、テナーの腕の中しかないと知っていた気がするんですよね。これも無意識のうちに、なんとなく……といったようなことではあるにしても。
後家となって、第二の人生をはじめる頃合だったテナーと、魔法使いとしての生き方を捨て、新しく人生を生き直す必要が生じたゲド、そしてふたりにとっての魂の子とも呼べるような子、テルー。
極限まで損なわれてしまったものは、二度とは元に還らない。でも、それでもなお人は<生きている>以上は生きていかなければならない。それは残酷なことであると同時に、神を恋人にするような、神秘を経験する機会でもある。
物語のほうに再び話を元に戻したとすれば、竜のカレシンが果たした役割も素晴らしかったですよね。
カレシンが本当は何者かなんて、ゲドとテナーとテルーくらいしか、アースシーの世界で知っている人はいないのではないでしょうか。
でもその<神秘>を三人は誰か人に自慢したりすることもなく……見た目は「老いぼれた上に魔法まで使えなくなった魔法使い」、「使い古されたような後家女房」、「思わず目を背けたくなるほどの、醜い火傷を負った女の子」として、<普通の人々>の間で生きていかなければならないのです。
でも、テナーが最後に「わたしたち、あそこで暮らしていけるわ、きっと」と言っているとおり、その「違い」は驚くほど違うものですよね。そのことを「知る」前と、「知ることが出来た今」とでは。
「ゲド戦記」の第Ⅳ部の評判は、基本的にあまり高いものではないと聞きますが、わたしにとっては評価の是非は正直、どうでもいいことかもしれません。あるひとつの作品を、のめりこむほど好きになってしまうと、それがよっぽどひどい出来でもない限りは――続刊が出たというだけでも、ファンとして嬉しい以外の何ものでもなかったので。
まあ、わたしがこの第Ⅳ部を読んで一番思ったのは、「ゲドがゲドで、テナーがテナーで良かった」(もっと言うならテルーがテルーで良かった)という、そんなことだったでしょうか。
もちろん、本書に関して色々言いたい方の気持ちもわからなくはないんですけど――個人的には「天才の仕事に口出しする気はない」としか思ってなかったり(^^;)
それではまた~!!
stktyさんの気持ち、めっちゃわかります!!
そうですよねー、第二部の「こわれた腕輪」を読んだ読者は絶対、ゲドとテナーの関係が気になって仕方ないですよね(>_<)
あはは。だって、ゲドってあれだけの大賢人だから……自分にその気がなくても女の人が自然と寄ってくるとか、どっかの村の族長が「助けてくれたお礼にうちの娘を嫁に☆」とか、実際あったんじゃないかな~なんて(^^;)
そうなんですよ!わたしもゲドを読んだきっかけは、宮崎駿監督の言葉がきっかけでした。でもその後、「もののけ姫」の時に一時引退宣言があって……「ええ~!?そんじゃゲドはどうなるの!?いつかアニメ化したいって言ってたのに☆」とか思ってたんですよね(^^;)
こちらこそ、stktyさんのコメント、とても嬉しかったです。本当に、ゲドとテルーが一緒に暮らすことになって良かった♪ファンとしてはここのところがなんといっても一番嬉しいところですよね(^^)
わたしは今日「帰還」を読み終えました。ほかの人の感想も知りたいと思い、ネット検索をかけてリンクをたどっていくうちにこちらのサイトにたどり着きました。
ゲドとテナーの関係がどうなるのかがわたしの最大関心事だったので、ルシアさんの感想は共感をもって、しかもとても楽しく読ませてもらいました。ふたりが一緒に暮らすことになってよかったわー。
文章もとてもじょうずですね。「ゲドも男だから、~」のところはおもわず笑ってしまいました。
ちなみにわたしも宮崎駿の発言がきっかけでゲド戦記を読み始めました。同じ理由で読んだ人がいてうれしくなって、コメントをさせていただきました。すてきな感想をありがとう。