ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

34.晴れ晴れとした顔

2016-07-15 23:38:58 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 初めて再就職関係のセミナーに参加した時の、彼の表情は暗かった。浅黒い顔に鋭い眼光、短髪、やや細身に黒っぽいスーツ、白いシャツにノーネクタイ。ラフな服装で参加する受講者も多い中で、彼は目立っていた。少し近寄りがたい印象だった。

 セミナーが始まると、彼の眼はますます鋭くなった。そして、講師の話を聞き漏らすまいと懸命にテキストにメモや書き込みを始めた。真剣だった。セミナー途中、受講者が履歴書や面接の自己PRを考えるワークの際に、手が止まっていた彼に前職のことを聞いてみた。前職は飲食関係で料理の仕事をしていたとのこと。好きで始めた仕事で、学校を出てから修業を重ね腕を磨いてきたが、意に反して退職せざるを得なくなったようだ。詳しいことは聞かなかったが、人間関係の問題の様だった。

 彼が10年以上、料理人の世界で厳しい親方の下で修業し腕を磨いたこと、その中で身につけた段取りや手際、食材の扱い方や盛り付けを季節によって変える細やかな感性、衛生管理や道具を大事にするという基本など、身に付けていそうなことを引き出してみた。すると、彼自身があたり前にやってきた事が立派な自己PRになり得ると気づいたとき、彼の目の輝きが柔らかくなり、口数も増えた。

 後日、同じセミナーに彼が参加した際、同じ話を晴れ晴れとした表情で聴いていた。そして、帰り際に少し遠慮がちにメモを渡された。実は、自分で小さな食堂を始めることにしたとのこと。メモ用紙には、その場所の丁寧な手書き地図と電話番号があった。

 その彼が、今度は就職面接を受けるためのセミナーにも、また参加するという。今度は、自分が人を雇うときのためにも勉強しておきたいとのこと。10年後、彼が有名店のオーナーになっているかもしれないと考えると嬉しくなる。彼の晴れ晴れとした顔にその可能性と一期一会の大切さを感じた。




 

 

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