その女性は、特急電車の中で見かける人だ。歳は60代半ばくらい。小柄で眼鏡をかけ、おばあちゃん役女優のようなどこか上品な面立ち。私が県内出張する際に利用する特急電車の中で、社内清掃員をされている方である。作業服を着て黄色いビニール袋を持って、飲み終えた珈琲のカップや食べ物の袋などを回収する仕事だ。揺れる電車の中で、時折よろめきながら緊張した面持ちで、小さな声で「ゴミはございませんか」と通路を歩いていた。最初に見かけたのが、3年前。「この仕事をされているのには、何か事情があるのだろうか。お一人で暮らしているのだろうか?」「長くは続かないだろうな。」と勝手な想像をしていた。
その後、特急電車に乗るたびに見かけたり見かけなかったり、気がつかない時もあっただろうが、少し間をおいて見かけると、「まだ続いていたんだ。少し慣れてきたみたいだ。いつまで続くかな。」と、期待も込めて気になるようになった。そうして、1年、2年と経ったと思う。
しばらく、私が特急電車に乗る機会も減り、タイミングも合わなかったのか見かけることが無かったが、先日久しぶりにその女性を見かけた。車両前方のドアが開き、後方に座っていた私は。近づいてくるしっかりした足取り、左右の座席に目配りする動作、乗客に声掛けする時の表情を見て、ちょっと嬉しくなった。飲みかけのコーヒーを急いで飲み干してカップを黙って差し出すと、ビニール袋を広げて「ご協力ありがとうございます。」と、少ししゃがれた声ではっきりと言った。
この人は、週に何日、一日何時間働いているのだろう。売り上げにより報酬が変わることもあるワゴン販売と違って、決まった時間やって当たり前の仕事だろう。でも、もう3年は続けておられる。心の中で応援したくなる。次に会うのはいつかわからないが、その時はゴミを出したら「ありがとうございます」と言ってみようと思う。
その後、特急電車に乗るたびに見かけたり見かけなかったり、気がつかない時もあっただろうが、少し間をおいて見かけると、「まだ続いていたんだ。少し慣れてきたみたいだ。いつまで続くかな。」と、期待も込めて気になるようになった。そうして、1年、2年と経ったと思う。
しばらく、私が特急電車に乗る機会も減り、タイミングも合わなかったのか見かけることが無かったが、先日久しぶりにその女性を見かけた。車両前方のドアが開き、後方に座っていた私は。近づいてくるしっかりした足取り、左右の座席に目配りする動作、乗客に声掛けする時の表情を見て、ちょっと嬉しくなった。飲みかけのコーヒーを急いで飲み干してカップを黙って差し出すと、ビニール袋を広げて「ご協力ありがとうございます。」と、少ししゃがれた声ではっきりと言った。
この人は、週に何日、一日何時間働いているのだろう。売り上げにより報酬が変わることもあるワゴン販売と違って、決まった時間やって当たり前の仕事だろう。でも、もう3年は続けておられる。心の中で応援したくなる。次に会うのはいつかわからないが、その時はゴミを出したら「ありがとうございます」と言ってみようと思う。