( 8½ )(29)VR奥儀皆伝 TP-VR Attract. 謎解き・テーマパークVR Web版

2021-05-18 | バーチャルリアリティ解説
 Number29 / VR 研究者の サイトマップ   つづき   (15)~(17)
                          【( 8½ )総目次 
 Blog作者(私)のための「暫定 総目次」の 解説付き使い方

 科学には 3つの (ベクトルの異なった)アプローチ(源流)があります。

 【有機体論】(The Organic tradition)
 【機械論】(The Mechanistic tradition)
 【化生論、ヘルメス主義】(The Magical tradition)

 坂本賢三先生は、ある講演で、この 3つのOrigins 有機体論(目的を持った成長)、機械論(因果律に基づく永遠)に対する 化生論(色の変化、性質の変化や意味の変化などで示される遷移性と、大宇宙と小宇宙のコレスポンデンス)を明確に比較して論じ、化生論の起源としてのゾロアスター教や東方の思想について論じました。3つの科学の境界領域には、有機体論+化生論(錬金術)といった新しい科学も生まれています。

 私の新説ですが、バーチャルリアリティは、
   「化生論+機械論+有機体論」
の融合された なんでもありの科学です。

 主な参考文献は、以下の二つです。

(8½)坂本賢三氏講演「科学思想の源流をさぐる」
   「ヘルメス主義」的伝統の概要と起源について。
第一回(pp.42-47)第二回(pp.48-53)
   第三回(pp.54-59)第四回(pp.60-65)第五回(pp.66-71)第六回(pp.72-77)

 H.カーニイ著、中山茂・高柳雄一訳『科学革命の時代 
‐ コペルニクスからニュートンへ』(原著1971年、平凡社 1972年、改版 1983年)

 前記の講演は、小学館の総合誌『創造の世界』30号(1979年)掲載の「科学思想の源流を探る ‐ ヘルメス主義的伝統をめぐって」という坂本賢三氏の基調講演、そして 「シンポジウム」です。
 これについて、最近、面白いことが分かりました。こうした 研究者どうしの発表・討論の形式は、前田勉氏が『江戸の読書会』(2018年)で論じておられる「会読」と同じだったのです。つまり、身分の上下とか文理の違いとかを無視して、生徒たちが一室に集まり、所定の経典や章句について互いに問題を出したり、意見を戦わせたりして集団研究するもの。車座になって互いに切磋琢磨する共同学習、という江戸時代の伝統が源流でした。前田氏によれば、江戸時代の儒学の教授法には「素読」「講釈」「会読」の3つがあったそうです。自分一人で、フランセス・イエイツ女史の本を読んで、この先生、ヘルメス科学に関して やたらと勘が良いなと感心するのが「素読」。日本の古代史を学習するときに、例えば『日本書紀』『古事記』の中に書いてある事だけを「鵜呑みに」勉強しなさいと教える水戸藩の日本史の授業を受けるようなのが「講釈」。そして、日本の幕末期の科学技術に対する国民の素養を一気に高めて、開国時に日本の科学者が西欧の文明を一気に吸収するような文明開化ができた理由は 上記の「会読」という勉強方法にありました。
 坂本先生は「会読」という伝統の助けで、 3つの科学の源流の発表ができたようです。



 それから、私が、バーチャルリアリティは「化生論+機械論+有機体論」の融合された なんでもありの科学ですと言ってしまったことからは、とんでもない結論が導かれました。VRや サイバネティックスの構成要素は「フェロー武田の構成要素図」で表わせますので「一般システム」も同じです)、改めてノーバート・ウィーナーを読み直してみたところ、
   「人間の人間的な利用」(1954年第2版、新装版もあります)の中で 彼は、
   それは奴隷労働の経済と競争する事と全く同様に馬鹿げた結果になるのだから、フィードバック機構を自動機械の自己増殖と同じように運用して工業生産することや 兵器製造に使うことは、せっかくサイバネティクスを利用した新しい産業が芽吹いているのに それらを破壊する恐れがあると考えて、くれぐれも正しい管理を心がけるように、
と書いていました。(1954年第2版 p.170、「第一次および第二次産業革命」の章の末尾)

 つまり、TWI2050のための VR製品を開発するときなどに、持続可能な社会の構築と言う大きな目標を忘れてしまい、例えば「海外での人気が高い VRの研究テーマ」に詳しい有識者のいう事ばかりを真に受け、既存の製品の製造効率の向上や 製造原価の低くなる研究計画ばかりに予算を多くつける経産省の官僚
(などはいないのですが、仮にそんな人)がいたとしたら、それは「一般システム理論」「サイバネティックス」フィードバック制御を自動機械の自己増殖に誤って使うのと同じ事になりますから、ベルタランフィや ウイーナーの そもそもの「主体的な判断をする人間が自分の機能を拡張するために一般システムを構築する」という最初の着想からすると明らかな「システムの誤用」です。その論理が行きつくのは、経産省の官僚を「海外の研究動向を正しく判断するAI」に置き換えて予算配分を厳正にさせよう、とする省内機械改革になります。どうしてそうなるのかは、ウィーナー博士が既に指摘していて、工場の自動制御によるフィードバック機構は、例えば、ギリシャ時代の優秀な奴隷が自分の体調や市場への影響を無視して「しゃにむに」生産することと同じですから、持続可能な社会が どうあるべきだ という目標設定を欠いた環境で「しゃにむに」競争した場合には 周囲の「人間の人間的な利用」のサイバネティックス科学の産業も破壊する方向に働くから、というのが その理由でした。奴隷労働を野放しにすると、やがて経産省の省内は効率だけが良い AIスパコンの無人施設になることでしょう。
 メアリー・シェリーも その問題を 1818年の小説『フランケンシュタイン』で指摘していました。自動機械は自身の当然の権利として自己増殖して その自動機械に関わる人を不幸にする。だから困るんです、と彼女は明快に予言していました。(15)参照) 従って、当然の結論として、VR作品の製作を「工場の生産管理」と同じような かっちりとした工程表でスケジュール管理して開発を行なうことについては「間違い」だ、ということにも なります。
 VR作品の工程管理には、工程表以外の技法が必要です。((30)以降に続きます。)

 VR作品の開発が、化生論を主にして行なわれる必要のあることは、なんとなく分かったと思いますが、IVRC参加の学生諸君には 国際学会クラスの論文発表会場での「発表実習」(登壇)が あることも忘れないでいて下さい。

 IVRC作品の 海外国際学会 技術展示での採択、発表展示
   ↑
 IVRC決勝大会での展示、観客大賞の受賞など。懇親会の参加経験が望ましい
   ↑
 IVRC予選大会での展示と通過。VR学会大会での登壇発表(予稿の作成が必要)
   ↑
 IVRC書類予選の採択
   ↑
 IVRC学生説明会   ここでは、2019年までの運営を例にしました。

 登壇(発表実習)のための予稿については 先輩の発表論文を読んでおけば、開発途中の自分たちの VR作品の不足・欠陥箇所にも気づくことができますから一挙両得です。私が 社外講演で皆さんに勧めている論文は、関西学院大学 井村誠孝先生が学生時代に仲間と開発された『バーチャル流鏑馬 : 騎馬^弐武者^弐』https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvrsj/7/4/7_KJ00007553829/_article/-char/ja/ です。【IVRC アーカイブ
 なお、予稿を書き始める段階では、中田亨著『理系のための「即効!」卒業論文術』(ブルーバックス 2010年)が とても役に立ちます。この本は、タイトルで損をしていますが、「まともな」論文を書くための好著です。

 同書では、「卒論の書きやすい順序」(p.141)として、
 ① 謝辞 ② 証拠提示(実験報告)の第4章 ③ 解決方法の可能性論証の第3章
 ④ 参考文献リスト
 ⑤ 解決方法選定の第2章 ⑥ 問題設定の第1章 ⑦ 結論の第5章
を挙げています。どんな論文でも、この順に書いてみて下さい。

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(15)DL以外の「テーマパーク」の テーマは何 ?
 ほかに、「パラマウント映画テーマパークの豊富なコンテンツ」「セガ・エンタープライゼスは、年商6000億を目指していた」「未来館の IVRC観客投票、未来観客賞は最重要」
 「ロジャー・コーマン監督の ものすごく豪華なバイト生たち」(逆ですね。ここで バイトをしたから優秀な監督になれたのです。)
 「2001年からセガ・エンタープライゼスは、業務用機中心の開発方針に戻していた」( ちなみに、その成果が出始める前の 2004年に、オーナー会社の交代があって、鈴木久司本部長と 佐藤秀樹社長=元取締役が辞めさせられ、家庭用ゲーム供給中心という全く間違えた経営方針が採用されました。理想から言えば、もし 新しいオーナーが「三顧の礼」で中山隼雄元社長の復帰を強く乞い、鈴木本部長と佐藤取締役の旧体制復活で、世界ジョイポリス100か所=国内・海外50か所毎を改めての方針として、大川功元会長の当初の英断と同じように中山社長に100%の自由裁量を任せておけば、今頃は 年商6000億円の企業を傘下に持てていたかも知れません。)
 【補講】 ジョン・ディー博士は 制御工学者でした。薔薇十字団は、数理科学者の同好会です。
 「コンピュータ・ソフトウェアの権利を 著作権法正で保護するというのは機械論的な方法ですが、1992年に IBM社が大赤字を出して機械論のオフコン・プログラマーと弁護士を 大量に解雇してしまっていることを考えると、90年代にその根拠を失っている」「機械論のソフト開発者は、フランケンシュタインの作ったと同じ怪物しか生まない」
 「日本のロボット開発者が 1884年のフランス、マルセイユ港で入管手続きをしたら、無神論者がいたと投獄される」

(16) ウォルトは なぜ 「テーマパーク」の構築方法 を秘密にしたのでしょう。 併せて VR之極意。
 「このVR奥儀皆伝Blogを読めば、
   ① ディズニーランドが10倍楽しくなります、
   ② 数理モデルの科学の起源が 化生論 = ヘルメス主義だと納得できます
   ( AIやスーパーコンピュータでは 1992年までの IBMオフィスコンピュータ = オフコンのような機械論のプログラムで演算が行なわれますが、プログラムが書かれる段階で 現実に発生したデータは『化生論』= 数理モデルによってシンボル操作され結果が導かれます。)
   ③ 観客 = プレイヤーに 評判の良い VR作品が、化生論を使って設計できるようになります
   ( ディー博士は『数学への序説』の「絵画術」として、与えられた平面で視覚のピラミッドを切断した面を 線と適当な色で表現する技術を論証し教える
〈坂口勝彦氏訳〉と書いています。この 絵画術 の説明は、カメラ・オブスクラの作る視覚の四角錐を平面で切ることですから、つまり 写ルンですや プリクラの前身について書いていました。)
 【天使のお告げ】の一覧(極めて重要。梅棹忠夫先生の「古典芸能」についての発言を参照
(38)
   ③ 悪魔との契約のアレについては、映画 『悪いことしましョ!』(2000年)を参照。
   ① の 天使のお告げの例としては、パゾリーニ監督の映画 『奇跡の丘』(1964年)を観て下さい。このほか、
   ② 聖人による奇跡、と、
   ④ 数理モデルによる科学研究が 天使のお告げの事例です。( 科学革命の時代に アンチ化生論者が ① と ④ のことも ③なのだ と吠えたてました。これが、ロマン主義の時代になって、血で契約書にサインすると悪魔が願い事を7つかなえてくれる話として広まり、ディー博士が魔法使いにされた理由です。)
 「アイバン・サザランド氏が DARPAの予算を組み換えたので、人類は月に到達しました」(今後、日本で化生論の科学者が研究開発予算の組み換えを試みると、機械論の科学者が反発することが予感されます。)「450年の科学研究の流れを、3分で まとめました」
 「ウォルトの体験した、
オズワルド効果 の話」((16)は、確かに話題を盛りすぎていました )
 「森林太郎
(鴎外)のドイツ留学(1884年)の船に、日本のロボット開発者がタイムスリップで紛れ込んだら、マルセイユ港で拘束されて、神を冒涜したとして獄死します」

(17) 数理モデルへの薔薇十字団の愛が「科学の未来」。
 ほかに、「バックキャスト」(CAVE経営層の明白な誤り)「逆工場」
   テーマパーク運営の公式
   「バーチャルは仮想にあらず」
   「大和朝廷は 九州王朝の分家だった」)

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 ところで、「薔薇十字団物語」の準備についてですが、このあたりまでは分かってきました。

 英国王立学会
   ↑
 ニュートン(フリーメーソンとして薔薇十字思想を研究)

 (※ 現在のフリーメーソンは秘密組織ではなくて電話帳にも載っています。)
   ↑
 薔薇十字団ロンドン支部
   ↑
 トマソ・カンパネッラ『太陽の都』/ F・ベーコン『ニューアトランティス』など
   ↑
 ジョン・ディーの「数学への序説」(1570年)「聖刻文字の単子」(1564年)



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 以下は、次回以降の予告ですので(30)の公開後に消えるかも知れません。

 EPCOT 2032(仮称。50年祭)の VR『飛雲閣』
   ↑
 EPCOT 1982 スペースシップ・アース
   ↑
 NY EXPO 1939 シンボルゾーン


 (23)~(26)では、テーマパークVRアトラクションとして『飛雲閣』を実際に造る方法を述べました。 ここで言いたかったことは、海外の VR研究者が日本人科学者に期待していることは何だろう、ということです。
 予算が余ったので、期末までに「海外企業のアマゾンや Googleにいる研究者に人気の AIや VRシステム」の並行研究を引き受けてくれる研究室を探して、日本独自の開発力の誇示や 特許交換の取引材料ができた、と(機械論的に)日本の予算を配分することは、(それを公表しさえすれば)全く問題ありません。その論文の「① 謝辞」に、期末までの予算が余ったので、その時点で興味を持つ研究室を探したところ、転部したばかりの手すきの学生もいたので、ちょうどよかった。その成果は、上記の結論に記した。といった文章が書ければ、問題は何もないと思います。ただ、議論になりそうなのは、そういう研究は概して 海外のVR研究者が日本人科学者に期待していることとは違うということで、もし仮に、成果は全く未知数でも 三振覚悟のホームラン狙いの研究を探さずに(あるいは、期末までに結果を出す可能性が低いと判断して)、バント打法で期末に確実に論文を仕上げてくれる研究室に研究を丸投げしたとしたら、そのことでは批判を受けると思います。
 私は CSKで新規事業開発担当をやっていましたが、例えば、クラブツーリスムの「VR飛雲閣」ツアーの参加者に外国の有名ソフト開発会社の副社長夫婦が交じっているのが分かったら、先ずは茶室で、おいしいお茶をふるまっただろうと思います。そして、「このお茶菓子は京都の 少し不便なところにある老舗のものですが、今日はあなたたちが見えるので京都大丸の開店と同時にお菓子コーナーに走り、そこに委託販売されている少数のお茶菓子から選んで買ってきました」と接待の準備の努力を話します。茶席というのは不思議な空間で、機械論で互いにコンピュータの知識をひけらかさなくても、客人と心が通います。
 主人と客人の座る場所は(畳の目をグリッドの線と考えた方眼紙のように)決まっているのですが、この距離は千利休の昔から「互いに安心して腹蔵なく話し合える」魔法の位置関係です。例えば、主客互いの「SDGsという共通の開発テーマへの 共感(没入感)・開発意欲・開発能力 八卦見の天命堂よろしく「黙って座ればピタリと当たる」のですから、茶席で話せば、意気投合して、共同研究を先方から持ち掛けられる可能性も出てくるように思います。化生論的な空間では、全員(お茶の製造者・座の主人・客人)の心が一つになります。

 日本製のラジカセ、ウォークマン、カラオケなどは世界に衝撃を与えた家電製品でした。でも どの製品も、どこかの国に先行研究があって「ブレークスルーが見つからない」と困っていた製品ではありません。世界は日本に「魔法」を期待しているのです。このことは、EPCOTの日本館 の VR展示を考えれば一目瞭然ではないでしょうか。米国のディズニーランドのゲストたちは、ここが魔法の国だと知っています。だから世界に「これが日本です」と誇れるものを展示することが、ここでは期待されているのです。
 ※ AIや VRの研究テーマも、世界の人たちと「共感」できる化生論的なテーマを選びたいものです。
 そこで、念のために記しておきますが、

 EPCOT 2032(仮称)の VR『飛雲閣』
   ↑
 横浜ジョイポリスの 1994年の ライド・アトラクション「VR-1」など)
   ↑
 ディズニーランドの 1955年の ライド・アトラクション((19)を参照)
   ↑
 ルードウィッヒ2世の『ビーナスの洞窟』((18)を参照)

でした。この矢印について、なのですが、有機体論でしたら、

 サラブレッドの子馬 (有機体論、繁殖)
   ↑
 サラブレッドの種馬   … 薔薇の育成と販売、お米の田植えから収穫まで、なども同じ、

ですけれど、化生論では 伝わるものが違います。また、機械論でしたら、

 日本標準時 (明石市立天文科学館などの日本標準時子午線の平均太陽時)(機械論、日時計)
   ↑
 グリニッジ子午線の標準時   … ここで、子午線は「機械論」の事例、

ですから、これも違いますね。では、化生論では、
   何が 矢印で伝わったら、
「化生論的に影響を受けた」と言えるのでしょう。

 ディズニーランドの ライド・アトラクション
   ↑
 ルードウィッヒ2世の『ビーナスの洞窟』

 それは、演出の技法、他人をびっくりさせて感動させる手法のことでした。

 印象派(ドガの踊り子など)。クリムトの金屏風風絵画。ビアズリーの『サロメ』
   ↑                ↑
 北斎漫画をドガが一生懸命に練習    ↑
   ↑                ↑
 パリ万博 1867年 1878年、 ウイーン万博 1873年

 これは、間違いなしの影響関係です。

 ※ オーブリー・ビアズリーの「日本風」は、直接にはラファエル前派からの影響です。別述します。


 画像借用元:https://www.fashion-press.net/news/68591 渡辺省亭《鳥図(枝にとまる鳥)》1878年
 愛知県 岡崎市美術博物館 2021年5月29日(土)〜7月11日(日)〈予定〉
 静岡県 佐野美術館 2021年7月17日(土)〜8月29日(日)

 渡辺省亭(せいてい)は 日本政府から派遣されて、1878年のパリ万博に参加しました。印象派の画家が交じった会合で、ドガのために「ちょいちょい」と描いてあげたのが上の絵です。ドガは、終生の宝物としました。
 省亭は 画家の中でも描写力が抜群でした。おそらく長時間の観察で、小鳥の 3D立体画像 が頭に入っていたのでしょう。ですから、頭の中の鳥の姿を、頭の中でぐるっと回転させ、ある任意の方向から見た鳥の頭を 先のつぶれた絵筆で描けたのです。

 ドガは、北斎漫画を一生懸命に勉強しました。モネも 浮世絵収集家でした。


 画像借用元:https://otekomachi.yomiuri.co.jp/monthly/arttime/20171016-OKT8T40371/

 印象派絵画や ジャポニズムにおける浮世絵の影響は、美術史家の小林太市郎氏、大島清次氏らが先駆的な研究を世界に示しました。その結果、西欧で「日本風だ」と漠然と思われてきた芸術作品・工芸に関しては、その作家たちが、何を学んで、本当はどんなものを作りたかったのだけれど「自分たちの感性・技術レベルに見合った作品」として、例えば、こんな作品を作ったのだ、ということまで分かってきました。
 日本から輸出される VR作品も同じコースをたどるのではないか、と思います。

 ただ、急いで付け加えると、ジャポニズムは少し特殊な例です。有田焼などは 17世紀後半から 西欧の王侯貴族に珍重されていましたが、その延長としてコレクターの収集品になりました。万国博展示の見事な作品は、完売しています。

 20世紀に入ると、アールヌーボーという流行を生みました。



 比較文化論として 19 - 20世紀の西欧と日本の美意識の違いを論じるのは、ちょっと勇気が必要です。浮世絵が印象派を生んだとよく言われますが、モネは浮世絵を額に入れ、壁を埋め尽くすように掛けていました。日本人とは違うのです。
 ですから、TWI2050で 日本人のVR製品が、いずれ欧米に多数 輸出されるだろうと思うのですが、そのときに「何が」欧米人に受けたのか、上手く分析できない可能性も高いと思います。(日本人に、力士をモデルに踊り子を描く画家がいたでしょうか。)
 機械論にイノベーションは含まれませんから、海外の新製品をひな形にVR作品を真似て作るという方向は だめ。かといって、「これから生み出されるヒット作品」に関しては 統計的手法も使えませんから、作家は、自分の感性に忠実に従い、世の中の感性が自分に追いつくのを待つことだけしかできません。評論家が褒めると早く忘れられます。無名ならゴッホみたいに、没後約17億円で売れる作品が出てくるのかも。彼こそ三振覚悟で場外ホームランを放った打者でした。
 ただ、生きている間は、全く評価されません。あの世のゴッホが 約17億円という値段を聞いたら、もう少し周囲から金を借りておいても良かった、と思っているかも知れません。

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