VR奥儀皆伝( 8½ )謎解き・テーマパークVR Web版( 8½ )[4]

2020-08-26 | バーチャルリアリティ解説
「科学思想の源流をさぐる」第四回(坂本賢三講演記録 pp.60-65)
                          【( 8½ )総目次 

p.60

p.61

p.62

p.63

p.64

p.65

※ 17世紀の「有機体論」「機械論」「化生論」は、今と少し違いますから注意して下さい。テーマパークの原型のひとつである17世紀の「プレジャーガーデン」の機械アトラクションが故障した場合、修理には 2、3ヵ月掛かることも ありました。通常一品生産ですし、開発した職人でなければ直せなかったからです。一方で「有機体論科学」は、通常 1年サイクルで ほぼ正確に循環していました。「お客さん、マツタケの土瓶蒸し、さっき出たので終わっちゃった。堪忍してよ。来年また食べに来てよ」ということです。有機体は、植物か魚、家畜ですね。今、会計報告を1年単位でやっていますが、それは会計制度ができたときの住民の職業が ほとんど農業だった時代の名残りです。起業会社の創業時の収益の安定は「扱う商品によってまちまち」なのですから、会計士が起業会社の監査を毎年やっているのは、会計士が自社の社員の給料を年俸で支払っている都合が主な理由です。IT企業の年単位の会計報告の数字には、あまり意味を持たせないほうが健全だと思います。従って、ハイテク企業の現在の株価は たいていが幻想です。
 1981年発売の IBM-PCの場合、責任者のドン・エストリッジ氏は、IBM-PCの発売。翌年の「ソフト開発ツール」のサードパーティからの発売。その翌年の開発ツールを使った「アプリ」の発売。そして、翌年の IBM-PCの上位互換機の発売と、3年ごとのハードウェアの進化を計画していた様子がありました。しかし、不慮の飛行機事故で彼が亡くなり、サードパーティを巻き込んでの開発サイクルの音頭を取れる人がいなくなりました。その 3年の循環サイクルが、もしも確立していれば、IBM社は IBM-PCを今も主力商品にしていた筈ですし、ITバブルも起きなかった可能性があると思います。ITバブルの崩壊は、証券会社の単年度会計と、IT会社の開発サイクルのミスマッチが原因だったと考えるべきではないでしょうか。
 話を元に戻すと、17世紀当時の化生論は、まだ 少ししか見るべき成果を上げていませんでした。それこそ、そんなことができたら良いね、の「魔法使いのお話」レベルが ほとんどです。(20世紀の石油化学では、化生論由来の化学で 儲かりましたが、環境汚染対策に ほとんどお金を使わずに利益を上げたことが今になって批判されています。)しかし 20世紀のスパコンなどの技術の進化で、21世紀のコロナ肺炎の流行では 統計学(主要部分が化生論の科学)が大変的確に事態の推移を把握できています。これは、社会シミュレーションの教科書を読んでみると、これまでの伝染病の伝播が、かなり精密に調査されてきたというデータ蓄積の成果だったようです。だから、面白い応用事例もあります。例えば「毎日 20分以上の運動を習慣づけていくと、運動不足で糖尿病などになる不健康な人たちと比べて、年単位で数万円もの医療費が不要になる」とか「禁煙は健康維持に確実に効果がある」といった健康情報があるのですが、この健康情報を「健康増進のボランティアの方々」が周囲に教えてあげると、その情報は「伝染病」と極めてよく似たパターンで拡散する、のだそうです。つまり、裏を返せば、伝染病の拡散経路が非常に良く調査されていることで、そのパターンと健康情報のパターンに類似のあることが直ぐに分かったわけです。だから、こんどは本物の「コロナウィルス」が来たときに、都民が外出を控えるとこれだけの効果が期待できる、と直ぐに発表できたのは そのためでした。
 19世紀以降の数学の急速な発達と 21世紀のテクノロジーで、ようやく化生論の科学にも正当に評価される活躍の場が用意された、ということなのかも知れません。


【参考写真】鱧松茸うどん (東京の美々卯閉店で「鱧松茸うどん」が食べられなくなったのが非常に悲しい。)
 画像借用元:https://ameblo.jp/lapiece/entry-10341387416.html

第五回(坂本賢三講演記録 pp.66-71)に続きます。→ こちら
第一回(pp.42-47)第二回(pp.48-53)第三回(pp.54-59)
第六回(pp.72-77)

VR奥儀皆伝( 8½ ) 『謎解き・テーマパークVR』(8)「化生論という希望」はこちら。→ こちら

VR奥儀皆伝( 8½ )(9)「暫定総目次」は こちらです。→ こちら