舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

ダンサーに大切な「メーキャップ」の話

2013-11-11 00:56:03 | ダンス話&スタジオM
ネギ背負ったカモこと某大手業者さんからの美味し過ぎるダイレクトメールに刺激された記事、姿勢ネタに続く第2弾は、メーキャップの話でございます。

なんと、今回のDMにはこれまた大手の某舞台用化粧品メーカーとタッグを組んだ「出張メーキャップ講座」のチラシまで封入されていて、そのメーカーというのが常日頃からウチのメンバーの間で「直営店に行くと有り得ないモノを勧めてくる珍メーカー」としてネタにされている所なんで、そうとう香ばしいチラシがめでたく(?)誕生しております。


おそらくこのメーカーさん、フラとかタヒチアンに対して何か壮絶な先入観をお持ちなのだと思われます。
だからこそ、フラ(タヒチアン)・ダンサーが買いにくると珍妙なモノを勧めて来たり、メーキャップ講座の顔とも言うべきモデルの顔が壮絶に面白い事(※見出し画像参照)になっちゃったりするのでしょう。


ああまったく、私はなにぶん人間の顔を描くのが苦手なもんで、あの面白過ぎるモデル写真を克明に再現できないのが残念でなりません。
実際の顔はイラストの数十倍の面白さになっております。


何が哀しゅうて、舞台化粧で三の線を狙わねばならぬのでしょうか。
テレビで見かける女性芸人さんでさえ、舞台の上でどれほどウケを狙おうと、もっと美を追求したメーキャップをなさっておられるというのに。

しかしながら、哀しむべき事に舞台化粧がかなり面白い事になってしまっているダンサーは決して皆無ではありません。
というより結構多いです(笑)。

というわけで本日は、これ以上悲劇がくり返されるのを阻止すべく、このチラシのモデル写真を(悪い)例にして、ダンサーのメーキャップについて考察してみたいと思います。


まず大前提として、舞台化粧について声を大にして言わなきゃならない事があります。
それは、およそ人前で踊るダンサーは礼儀として化粧を嗜まねばならないという事です。


え?「フラはナチュラルメイクが望ましい」ですと???
そういう信条の人は人前で踊らないように(笑)。

もちろん日常生活においては、メイクが嫌いならしなくたっていいんです。
ちょっとしたお出掛けだってスッピンでいいんですよ。改まった場のパーティーや正餐でさえ、「…ぅゎ…」という他人様の視線なんて知ったこっちゃ無いわ、という人なら化粧しなくて大いに結構です。
しかしそれは、その場での貴女が「他人様から注目される立場」にないからに他なりません。

どれほど化粧嫌いの女性であっても、結婚式や披露宴の新婦という立場だったら、スッピンで登場というわけにはまずいかないでしょう。
それはなぜか。新婦を綺麗に見せるためじゃないですよ。
それが参列したお客様への礼儀であるからです。

もし、その結婚式なり披露宴がものすごくくだけたもので、身なりに頓着しない新婦と新郎と、それを一向に構わない内輪の親しい人だけが集まった場なら、もちろん化粧なんてしなくたっていいんです。
でも、日本のほとんどの式には自分の恩師や上司など目上の人、相手方のほとんど知らない親族といった、「礼儀をもって接しなければならない相手」が参列しています。
だからこそ、きちんと化粧して身なりを整え、礼儀にそった装いでお迎えしなければならないのです。


この事を舞台に当てはめて考えましょう。
舞台をご覧くださっているのは全員「礼儀を払って然るべき相手」です。
それがたとえ身内や親しい人であっても、わざわざ時間を割いて観に来てくれた相手なのですから、普段通りでない礼儀をもって感謝の気持を込めましょう。
まして全くの無関係であるにもかかわらず自分の舞台を観てくださっているお客様なら尚更です。


ハッキリ言って女性のスッピンだの、スッピンと見紛うナチュラルメイクだのに喜ぶのは、ごく一部の素顔美人信奉者の男性くらいのものであって(しかも彼らが喜ぶのはどんな美人でもせいぜい二十歳前後です)、通常の感性を備えた人が観たら、近所のスーパーに買い物に来たようなツラでステージに上がっている姿は、レッスン着みたいな格好でステージに上がっちゃうのと同じくらい見苦しい、恥ずかしい姿です。
人様に自分の踊りを観ていただく者の礼儀として、それに相応しいメーキャップを施すべきですね。


また、大変残酷な現実を敢えて申し上げるなら、
フラはハワイの踊りですが、我々は日本人です。
誰か生粋のハワイアン(カナカオレ・ファミリーの皆さんが好例です)を思い浮かべながら、自分のスッピンを客観的に見てみましょう。
ほとんどの日本人は、だいぶ違う顔立ちだと思います。

ああ、私はわかりやすく日本人日本人と言っているけれど、これは全ての「非ハワイアンの人種」に言えます。
例えばアジア系でも、国や地域によってはしつこめの顔立ちの人もいますが、よく見ると顔はもちろん踊り方もハワイアンとは全く違いますから、よく見てくださいね。
顔がしつこいからとか、日本語能力がアレだからといって、簡単にホンモノだと思い込まないようにね。


閑話休題。
もちろんハワイの人はかなり混血が進んでいますから、100%ハワイアンという人は実を言うとかなり少ないです。
ミカさんを始め、日系の血が濃いダンサーもかなりいらっしゃいます。
しかしながら、メリモの群舞を見渡しても、全員が全員日本人顔という事はまずありません。
とすると、もし彼女達がノーメイクだったとしても(※脳内イメージとしては数年前までのマプアナ・デ・シルバさんのお教室のカヒコ群舞が適切です)、完全な日本人がそれを真似したのでは、決して同じ絵は生まれないでしょう。
「ハワイの誰々(どこどこ)はノーメイク/ナチュラルメイクだ!」と主張する前に、この現実はハッキリ直視した方がいい。


フラは表現力がモノを言う踊りです。
喜びも悲しみも、ハッキリした目鼻立ちで表現するのと、遠目からではのっぺらぼうに見えちゃうような目鼻立ちで表現するのとでは、伝わり方がまるで違ってきます(って、そもそものっぺらぼうでは何も伝わりませんが…)。
だからこそミカさんも、あれほどしっかりメーキャップしておられるのです。


まあフラ・ダンサーである以上、せっかくメーキャップの力を借りるのなら、ヨーロッパのアンティークドール顔にしても仕方ないので、ハワイアンの方々をお手本にしましょう。

ちなみに私はステージメイクをするとよくロパカさんに似ていると言われます。
ハッキリ言ってこれは自慢だ(笑)。なぜなら、私の元の顔立ちがロパカさんに似ているのではなく、努力してロパカさん方面の顔に近づけているからです。
スッピンをご存知の方ならお分かりのように、私は元々しつこい顔立ちですが、本来の私の顔のしつこさは決してハワイアンらしいしつこさではないんです。
そこの、自分の嫌いな部分を修正して、出来るだけ理想の顔に近づける、そういう美術品の修理工みたいな作業をステージメイクのたびにやっているわけです。


と、ここでもう一度例のイラストを見てみましょう。



も~、まるっきりの日本人顔ですね。
日本人顔を日本人らしいまま濃くしているだけなので、たんに日本人らしさが強調されているだけです。



しかし、なんでこうもまた日本人らしい顔なのか。
第一のヒントはです。
正確にいうと眉の位置ね。
この人の眉と目の位置、離れ過ぎです。

カナカオレ一族の皆さんを始め、ハワイアンらしい顔を思い浮かべると、「目と眉の間が近い」という事に気づくと思います。
なのにこの人ときたら、目と眉が完全に乖離している。
実際の写真を見ても、眉の位置がアイホールの軽く2cmは上にあります。


とはいえ、実際の眉毛…というより表情筋の位置を無視して眉を描く事は出来ません。
しかし、表情筋に載せなければならないのは眉山の部分ですので、眉頭や眉尻は出来るだけ目に近づける事をお勧めします。
細い眉でこれをやりすぎるとアンチエイジングに過剰に熱心な大御所女優さんみたいな形相になってしまいますからほどほどに(笑)、必要に応じて自然に内側を太くしましょう。

眉毛はメイクの中で最も難しいパーツですので、本番にいきなりやっても上手く出来ません。事前の練習が必要不可欠です。
あるいは、自信がなければプロの方を頼る方法もあります。その際は、余程フラに詳しい方でない限り、具体的な見本の写真などを見せましょう。
私も理想の眉毛に到達するまで10年近くかかりましたし、今でも調子が悪いと絶望的な失敗をやらかします(笑)。


眉の事に触れたので、次はアイメイクの話をしましょう。
正直申しまして、元ネタの写真のアイメイクは何の効果を狙っているのか全く分りません。
そもそも平面的すぎます。
まるでこの白黒のイラストのよう(笑)。


そもそもアイメイクの目的とは、「目を大きく見せる」「理想の形に見せる」「立体感をつける」この3点に絞られます。
これらの効果を持たない作業は無意味ですから、徹底的に排除しましょう。

なのに何ですかこのアイシャドウは。ムダに青いだけじゃん。
現物をお見せできないのが本当に残念なのですが、元ネタの写真は陰影をつけるアイシャドウがほとんど使われておらず、目尻の青いシャドウばかりが悪目立ちしているのです。
こんなとこ、オッサンのひげ剃り跡みたいにうっすら青くしたって、何の効果もありません。
メイクを手がけた人は「青い衣装と合ってる☆」とか悦に入ってるのかもしれませんが、こんな青、舞台の照明があたったら一発で消し飛びます。
あとには何の立体感もない、ちっちゃな目が残るだけ。


だからといって、青とかの色物シャドウを「うっすら」レベルではなく「こってり」塗るのもそれはそれで問題です。
これをやり過ぎますと、極度に野暮ったい、下品なメイクになってしまいます。
「メイクの濃くし方」を分らないまま闇雲に濃くしようとすると、この系統の下品さが生まれます。
そうですねえ、イメージを例えて言うなら場末のぼったくりバーか、田舎のキャバクラか…。
尤も、バーだろうがキャバクラだろうが、ドア開けてそんな娘が出て来たら私ゃ速攻で「チェンジ!」と叫ぶかドア閉めますけどね(笑)。


アイメイクは眉毛ほど難しくはありませんが、全体の印象を決定づける重要度を占めています。
もちろん、ハワイアンっぽくするためにはテクニックを最大限に振るい、奥行を持った説得力のある目に仕上げなければならないのですが、闇雲に濃くしようとしたのでは「チェンジ!」顔になってしまいますから(笑)、これも練習を積んで徐々に濃くできるようにしていきましょう。
一つヒントを申し上げるなら、仮装やコスプレではなくダンサーとしてのメイクであるなら、「ムダな色は使わないこと」です。


続いてファンデーション。
これは本当に絵に出来ないのが残念です。
ただ一つ確かなのは、この某メーカーさん、店頭で「フラダンサーです」と言うとおそろしく濃い色のドーランを勧めてくるそうです。
実際にウチの生徒さんがそういう目に遭っていて、「フラだとは言わない方がいいかも…」とさえおっしゃってました。


確かに顔は最も照明を浴びるので、あまり白く塗ると、ハレーション起こしちゃうってのはあります。
そして美肌メイクもいただけません。肌を透き通ったような色に見せるためのファンデーションは、えてして緑などが使われている事が多く、照明があたると却ってゾンビメイクになってしまう事があるからです。

しかし、だからって何も腕やデコルテより黒く塗るこたぁありません。
今時ハワイにだって色の黒くない人はいくらでもいるし、全身くまなく黒塗りするのならまだしも、顔だけ塗ってもわざとらしいばかりで、ロコの健康的な日焼けに見せかける効果はゼロです。

そりゃ、自分の肌が黒ければいいんですよ。
要は「本当の肌の色と合っていること」が大切なのです。
ところが、普通の色の人が濃いドーランを塗りたくった結果、写真のモデルもお面を被ったように首から上と下が違う色になっています。おおこわ。

でもって、やたら黒く塗ってる割に、立体感が皆無なのも気になります。
全体が黒ずんだだけでは、単に顔色の悪い人に見えるばかりで、ハワイアンらしい彫りの深い顔にはとうてい近づきません。
黒っぽいドーランを使うなら、シャドウ的に使いたい部分のみにすべきです。


それから口。
この写真のモデルさん、風水の先生から思いっきり「金運ないですね~」と言われそうな唇です。
ドリカムの吉田美和さんのような口の持ち主ならともかく、小さな口や薄い唇の元々の形通りに口紅を塗ったくったって、小ささが強調されるばかりです。
母マミちゃんなど、実際の口の数倍のサイズに描いているらしいですよ(笑)。

アイメイクと違い、口はあるままになぞる事しか出来ないと思っている人が多いですが、そんな事はありません。
サイズや形もある程度変えられますし、ベースを使って発色を良くする事も、何色か使って立体感を出す事も出来ますし、グロス以外の方法で艶やかに見せる事も出来ます(グロスは長時間の舞台だと保ちません)。
また、リップスティックのみでぼんやりと色を付けるのではなく、ペンシルで縁を取り、ブラシで塗るなどしてハッキリと描く事も大切です。


そしてお待ちかね。これが一番言いたかった。

そうです。
頬紅です。

このモデルのメーキャップを担当した人は、一体何の効果を狙ってこんな赤線を引いたんだッ
これじゃ完全にサルだ。
ワイは猿や。プロゴルファー猿や



私のイラストにも、一昔前の恋愛漫画のヒロインのようなわざとらしい斜線が引いてありますが、驚くべき事に実際の写真も、このような不自然極まりない赤線が頬骨にそって引かれているのです。
境界線をぼかす努力も一切行われず、顔を上と下に分断する位置にこってり盛られた頬紅は、もはやサル顔を作り上げたいという意図しか感じられません。

こんな顔にされてしまって、モデルさんは怒らなかったのでしょうか。
私だったら激おこです。怒り狂います。
いえ、どんな珍仕事も仕事と肝に銘じて黙って受け入れるのがプロというモノなのかもしれませんがこの場合、彼女が正直に怒り狂ってくれた方が事態がたしょう好転したような気がしてなりません。


何より目眩がするのが、このチラシが自信を持ってお勧めしている幾つかのアドバイス項目の中に、「目を大きく綺麗に見せるアイメイク」「立体感でメリハリのある顔の作り方」という、いやむしろ君らがそれ習った方がいいよと突っ込みたくなるような項目が存在している事です。
あ…そうか、悪い例を実地で示してくれるんだね!?…そうだよね!?……そうだと言ってくれ、頼むから…(笑)。


この出張メーキャップ講座、講師派遣費用が3万円らしいです。
3万円…叙々苑や聘珍楼の個室で暴食したって一人じゃ食べきれないであろう金額で、学べる代物はコレ(※イラスト参照)なのか………。


ちなみに、ウチの生徒さんには希望があれば母マミちゃんがメーキャップ講座を実施してますが、もちろん無料ですし、モノの押し売りもしませんし、悪い例ではなくちゃんと良い例を示して説明します(笑)。

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