La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

白いキュウリとイベス豆

2023年09月27日 | ユカタン諸々

ユカタンでしか見かけない野菜といえば、有名どころではチャヤという栄養豊富な葉っぱなんだが、他にもそうらしいと最近知ったものがある。ほとんど旅行に行かないし、ここんとこ(というか来てからずっと)ユカタンのことだけでも新たに知る情報がてんこ盛りなので、他の地域の食べ物をよく知らないため。メキシコの…と思ってたらユカタンだけというものが結構ある。ちなみにチャヤ はうちでも植えたんだが、塩気のせいか死んだ。引っ越し先にはあちこちに生えてるので、毎日ちぎってきて使えるようになる。

 白いキュウリ (c) Reina María Dzib koh

メルカドにもスーパーにもいつもあるので、メキシコのキュウリには2種類あるんだと思っていた。もうひと種類は緑なんだが、日本のよりずいぶん大きくて、皮は固くてつるつる。キュウリで緑色を足す和食って意外と多いんですよね。だから切り方を工夫して使うけど、はっきり言って美味しくない。

で、白いキュウリ。ビジュアルは逆にいただけないが皮が柔らかくて普通に食べられる分、緑のより味が濃い気がする。ここの人たちは結構色んな料理にのせる。

 ハバネロ和え (c) El Yucateco

一番上の写真のはすごく大きいが、店に並んでるのは緑の(ここの)キュウリと同じく長さ25〜30センチくらい。今ちょっと調べたけどユカタンだけってこともなさそうなんだが、メキシコ中部に住む人は見たことないらしい。ユカタン人が面倒なことをするわけないんで、限られた地質でしか育たないのかもしれない。不明。

 イベスという豆

ポルカンというスナックに入れる。他の料理にも使うらしい。この豆は11月から年末にかけてしか出回らないと聞いていたが、今年は早くて今月中旬に「できたよー」という人がもういた。生産高が少ないせいだと思うが、乾燥豆にしないため流通にほとんど乗らない。ユカタンでもメルカドだけ、スーパーには並ばない。

マヤ語でイブという白いんげんの一種が、スペイン語式に複数形になってイベス。実は食べたことがない。こんな海沿いではお目にかからないので、引っ越した後もまだ出回ってますように(来シーズンからはバッチリ)。

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 ユカタン人は小さい。

彼女たちはアマソナスというソフトボールチームの面々で、このイピルという民族服に裸足というスタイルで有名になった。最近、アリゾナの大リーグ?に呼ばれて、始球式と地元のソフトボールチーム?との試合に出た。この身長で子どもじゃないんですよ。大人も男性もだいたいこのくらい。

 で、困るのがこれ。

カウンターの上に仕切りがあって小窓がついているタイプの受付なんだが、見てください、ドアノブと同じ高さなんですよ。窓がないただのカウンターなら問題ないが、治安が悪い国だと、客が中に入れないように鉄格子越しに買い物をする店もある。日本の古いタバコ屋の窓に鉄格子がかかってるイメージ。ここは治安はそう悪くないが、ガスを買いに行くところの会計カウンターにはついている。屈まないと顔も見えないし、なにしろ声が聞きにくい。

我々(相棒180センチ弱、わたし160くらい)程度でも、ユカタンでは目立つ目立つ(痩せてるしw)。一般的に犯罪防止では目立っちゃいかんと言われているが、こればっかりはどうしようもない。


不動産売買契約(手付)

2023年09月17日 | ユカタン諸々

【売買契約に関する説明じゃありません。そういうのは(海外では特に)きちんとした専門家に尋ねることをお勧めします。】

えー、少し前に家が売れたと書いたが、なんとか仮契約までたどり着いた。正確には日本では?仮契約という概念はなくてこのステップ自体ちゃんとした契約で、最終的な段階は契約完了というらしい。こちらでは「売買の約束」という呼び名の契約を交わす。手付金が信託口座に入金されたのを確認して、互いにサインした契約書を公正文書にする。

それにたどり着くまでに一悶着あった。米人の買い手から来た最初のオファーに書かれていたのが、ドル換算した金額だったため。当然のことながら、メキシコ国内での不動産売買契約書にはペソで金額が記載されていなければならない。我々の不動産屋も我々も「ペソにすればいくら」という話だと思ったので、その後少し交渉して、まずは金額(米ドル表示)が決まった。

 我々の不動産屋のHP。

とてもいいんで、ユカタンで海のそばに不動産を買いたいって人がいたらお勧めします。英語可。

レート(最終金額)はまぁ、仮契約でサインする前日のとかで決めることで許してやるかと思っていた。今、米ドル爆下がり中で気持ちは理解できるのと、メキシコに来る前/来たばかり、あるいは来てからも結構、「ドル換算&表記+英語頭」を続ける外人も多いんで。我々も、物価の感覚に慣れるまでは「円にするといくら?」なんてよく考えたので、それは分かる。

ところが我々の不動産屋が「いつのレート?」の話をしたら、相手のブローカーが残金支払いの契約完了時のレートを使うと言ってきた。外国人は信託を組まないとこの辺の土地を買えないんだが、その手続きに3、4ヶ月はかかる。ペソに換算すると最初に合意した金額より減る可能性の方が今は高く、とてもじゃないがそんなリスクは取れない。

買い手のブローカー(米人)がああだのこうだの説得しようとしてきたが、それがエライ高飛車な言葉遣いなのである。やたらエラそう。白人ってそういうとこある人が多いと経験上思うんだが、今は人種差別って言われるんですかね? 歴史の産物なんでしょうがないし、個人と付き合うときは関係ない、ひどい人とは付き合わないだけなんだが。とにかくそういうわけでムカついたし条件として悪すぎるので、じゃあ、売らないと断った。

そんな条件を飲んで売るメキシコ人がいるとは驚いたが、あまり計画性のない国民なので、すぐに現金化したい(売買約束までたどり着きたい)売り手も結構いるのかもしれない。それにしても、金を落としてくれるからか知らないが、ちょっと相手の言うこと聞きすぎ(卑屈)じゃありませんかね?

こっちは日本人だ。ドル事情なんか関係ない。頭の中での計算はともかく、単なる「売買の約束」であろうと契約するのに現地通貨で表記しないなど、もってのほか。まぁ、我々には時間的余裕があるので断れたんだが、っていうか、現金化を急ぐなら信託手続きの必要な外国人でなくメキシコ人に売ればよろしい。すると、その2日後にペソでいいと言ってきた。こっちも本心では「また一から探し直しか〜」とガッカリしてたので、やった!という気分。一方ブローカー、悔しそうwww。

そこからは早い、書類作ってサインするだけと思っていたんだが、売却益にかかる所得税を下げるための要件で、少し時間がかかった。売る時になってから税金を下げることができるのは、まぁメキシコだからですよ。昔からいろんなやり方があるんだが、悪い奴らのマネーロンダリングを防ぐために政府があれこれ法令を厳しくするんで、現時点でできることをしたわけです。買い手の方も何らかんらすることがあったらしく、こっちが一方的に待たせたわけじゃありません。

メキシコでは、法令を厳しく…の絡みでいろんな公文書の扱い方がしょっちゅう変わる。今の連邦政府は特に「汚職と闘う!」好きなので、ホント、面倒臭い。具体的には、不動産を買うだけで収入はなくとも納税者番号を取らなきゃダメとか、その番号がいろんな書類に記載されてなきゃダメとか。さらに、収入がある人間は毎年確定申告が認められた後の、ない人間もなかったんでOKとアップデートされた「現時点での経済活動状況」という書類も。以前の不動産売買には必要なかった。我々が土地を買ったときは、ただの身分証明だけ。で、Lさんの元奧さんに土地の名義人になってもらってるんだが、彼女はただの主婦なんでいろんな書類が古いままになっていて、全部アップデートしなければならなかった。

それと、売買に必要なものだけでなく、売却益をごまかすために必要な書類を揃えるのにも時間がかかった。

 売買の約束。

しかし、メキシコの「お上の思う通りにはさせないぞ!」熱意と工夫はすごいですね。つくづく、日本ってのはいい方にも悪い方にも例外がない国だと思う。間違いはないが融通がきくこともない。

そのへんのやり方はやっぱり自国民が一番詳しいし、コネもある。ここユカタンには日本人のコンサルは少ないし(いるのか?弁護士ならいる?知らんけど)、そもそも我々は郷に入れば…と思っているので最初からメキシコ人に頼む。が、騙されることばかりを心配してガイジン御用達か同胞のブローカーなんかに頼んでると、決まり通りの計算で出費がかさむってことになることもある。

というわけで、毎回いろいろ勉強になる。あとは信託を組む手続きが終わるまで、何も起こりませんように! 逆に我々が買う方(南部の村の土地)も、ただのシンプルな売買契約じゃないんだが、それはまた別の機会、サインするまでたどり着いたときに書きます。


マヤブルー

2023年09月04日 | ユカタン諸々

家が売れた件は、前回からいろいろあったんだが、また状況が変わったら恥ずかしいので契約書にサインした後にあらためて書く。

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トーハクで古代メキシコ文明展をして、結構人気だったという話はSNSなどで見た。マヤ・アステカ・テオティワカン…ですか。メキシコでなくとも古代文明ってのはロマンが感じられていいものですね。どこも多かれ少なかれ同じだと思うが、今でも当時の人たちの子孫がいて、マヤ人もマヤ文化(文明じゃなく)のことを死に絶えた…などと形容していると「消滅なんかしてない!」「私、マヤなんだけど…」などと怒る。

でもまぼろしの…ってものもある。もちろんスペインの植民地だったからで、何しろ当時の侵略者ってのは「新大陸見つけたー!」「土人の文化なんかクソ食らえ、全部教えてやるー!」だったので、容赦なし。消滅してしまったものもいろいろある。(人口だってスペイン人が持ち込んだ病気のせいでずいぶん減った。)

そのひとつが、古代メキシコ文明展にも出ていた埴輪の色、マヤブルーの顔料。今では化学的に作れるらしいが、もちろん当時のマヤ人はケミカルをいじっていたわけではないのでしばらくの間、謎だった。ウィキには「インディゴ染料とメソアメリカの豊富な鉱床に存在するパリゴルスカイト…」と書かれている。インディゴ(藍)、つまり植物の何かと鉱物を…ということも分かっている。

  こういう色になって遺っている。

この顔料に興味を持った現代美術家(ユカタン人)がいた。数年かけて、マヤの村に住む高齢者に聞いて調査したり、協力してくれる機関をみつけて実験を繰り返したりして、とうとう伝統的な材料で作り出すことに成功した。細かいことを言えば、古代にも同じ製法で作っていたかは不明だが、とにかく原材料は当時からのものだとのこと。今のユカタンで使われてるわけじゃないので、聞き取り調査もすごく大変だったと思う。

 なんと、こんな木。

マヤ語でチョホみたいな発音だけどハッキリ言って結構違う。名前はともかく、ここにはマメ科の木が山ほどあって、よく見たってどうせ忘れるし、生えてるのを見たって「この木だ」と分からないと思う。それにこの辺のセメントを混ぜると、マヤブルーと名前までついた色になるらしい。セメントといっても当然ホームセンターで売ってる工業製品じゃない。セメントの生産地である「この辺の」ってところがミソで、そういえばチュクムにも「この辺のセメント」を混ぜる。同じ「この辺のセメント」かどうかは不明。

その美術家は、自分の作品に自分で作った顔料で着色したり、作った顔料をちょっとだけ売ったりしている。

 こんな土産物っぽいものから、ガチの現代美術作品まである。

壁画の修復なんかにも協力しているらしい。で、その彼が顔料製造工程のワークショップをするというので参加したかったが、隣の州のある村で二泊…ということで今年は諦めた。諦めたんだが、その募集要項に過程の写真が載っていた。以下、すべて (c) Luis May。May というのは、Chan と並んでこの辺に多いマヤ苗字です。

  

えー、工程を知らないんで順不同ってことで。途中間違ってるかも。チュクムみたいに樹皮を使うのでなく葉をどうにかするらしい。

それにしても、こんなに鮮やかな色の原料が植物由来のものって驚きだ。日本人が「自然の色」と言うとき、日本の自然にあって、それほどどぎつくない色を思い浮かべる。ところがメキシコってとこは花でもなんでも結構どぎつい色の物がある。うちに生えてるマメ科の木も、なんて言う?豆の周りについてるワタ?の色がどピンク。

 この白い部分がどピンク。 (c) まめそら

あたしは実はメキシコの民芸品などガチャガチャしていてあまり好きじゃないんだが、これだけ自然界に極彩色が存在するんだから、彼らが鮮やかな色、それも同時に複数使うのが好きなのも納得できる。