La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

引っ越し

2023年08月28日 | ユカタン諸々

業務連絡兼ねて…

 家が売れた。

ここでもしつこく人が増えた増えたと書いてきたが、我慢の限界を超えたので引っ越すことにした。理由ときっかけは以下のとおり。

① 隣地に米人が建てている家が二階建で、絶景朝日を拝めなくなることがわかって嫌気がさした。

② 数年なかった長めの(3日くらい)停電があり、その後も同じく3日くらいネットに繋がらない日が続いた。原因は電力負荷の上昇とアクセスの集中、つまり人口増加にインフラ整備がついていってない。不便を承知で来てるので多少は構わなかったんだが、しばらくなかった現象の原因に移民増加が絡んでるってことで嫌気がさした。

③ 隣地の完成が見えてきて、毎日3組ぐらい来ては甲高い声の英語が聞こえる…のが続いて嫌気がさした。

人が増えても「メキシコの田舎らしい村が活気付いた」のなら気にならないんだが、最近は平日に村の中心部を通るとオサレ(っぽい)カフェにガイジン(西洋人)が溢れかえっている。アメリカのどこかにいるみたい。

以前は素朴なメリダ人が「ビーチ沿いの静かな漁村、遠いところ」と認識していたこの村にも、近代的な都市っぽいものへの憧れの波が押し寄せてきたのもある。波は、新しく建てられてる別荘の建築様式だったり、SNSで増えているメキシコ人リベラルの発言という形で感じられる。メキシコ中部東部から引っ越してきた人の共通観念に影響を受けたメリダ人は、今のユカタン政府の経済発展政策(州財政の立て直しを兼ねた街の開発・観光客誘致など)を喜んでるから。

 昔の村の野球広場。

毎日この馬が草を食み、ときどき村の子供達がベースだけ持ち込んで草野球をしてたとこ。そういえば姪っ子が来たときに行ったカウボーイ技術大会も、ここに古い木材で見物席を建ててやってた(動物愛護の流れで禁止されたのを受けて2年前になくなった、保守派はユカタンの伝統だ!と言ったが負けた)。

  中央政府の金で改装された。

人工芝にナイターができるライト。柵で囲って、予約制になったのか普段はアクセス不可。こういう開発に対して、喜ぶタイプはSNSで絶賛するが、自分ちの子供が好きなときに遊べなくなったと思ってる質素な暮らしの村人なんかは井戸端会議で愚痴ることはあっても声を荒立てたりしないんで(保健所や友達んとこなんかで耳に入る)、なんとなく「発展して嬉しいと皆が思ってる」イメージが出来上がっていく。

 先日、ホースでお隣さんの井戸から水を引かせてもらった。

再度の水圧低下でうちの貯水タンクに溜まっていかず、断水状態。新築時から貯水タンクを増やしたり地面を掘って水道管(ホース)の位置を下げたり…を何度も繰り返してきたが、去年の夏休みと比べてもガンっと別荘が増えたので、またしても。水道局曰く、もうこれ以上の対策は無理。

増えてきたガイジンのように深い井戸を掘れば水道に頼らなくてもよくなるんだが、ちょうどストレスになってきた頃で、この家に金をかけたくない。無自覚だったが少し前から引越の選択肢が頭にあったんだと思う。

さらに水道局の職員から聞き出したところによると、現在増強している(そして市長が仕事したと自慢する)ポンプは、去年まで少しずつ増やしてきたものより低性能らしい。市が資金をプログレソビーチの観光客向け整備など別のことに使っているため。

 以前は何もない海岸と野原だったとこ。

 うちの屋根から南西方面。

 北東方面。

草っ原や藪だけだったのが、家だらけ。お向かいさんとお隣さんとあと2軒のご近所さんの、ユカタンらしい(伝統的とまではいかないけど質素なブロック造)小さな家がポツポツだったが、このとおり。

 南東方面。

矢印の赤い建物は東西10キロくらいの間に一軒だけあった、コーラやジュースや袋菓子だけを売ってる、日本の新幹線ホームの売店みたいな店(弁当もアルコール飲料もないけど)。隣村までの通り沿いにあって、引っ越してきたときはうちの屋根から見えた唯一の建造物だった。それがこのとおり家だらけだし、今はそういう店も他にたくさんできた。夏休みとセマナ・サンタの週末しか店を開けていなかったのが、儲かっていると見え、今では一年中、毎日開けている。実際、その隣村までの道路、以前は村の中心部に行くまで一台もすれ違わないのが普通だったのが、最近は小道から入るのにも数台通過するのを待たなければならない。

 この小道にも、塀で囲まれた家が両側に建った。

昔、メリダ人がゴミを捨てていかないように遺跡風に石を並べたところ。夜は真っ暗、それも鼻をつままれても…レベルの暗さだったが、新しく建ててる家はもれなく防犯目的で大光量のライト、それもセンサーじゃなくて常時照らしてるやつをつけるんで、もう別の道である。

えーと、田舎趣味、近代化反対、西洋人嫌い…と言われればそれまでだが、我々は質素で素朴なメキシコらしい田舎を選んだつもりだったのである。さらに、他国から移住してきて、日本の日本人みたいに自分が住む地域のことを愚痴ったり批判したりするわけにはいかない。移民は移民らしく、内政に干渉したり現地の文句を言ったりせず、ありがたく住まわせてもらうものである。その上、金もないのにぐうたら暮らすために移住してきた身としては、ストレスを感じながら生活するのはまっぴらごめんだ。

。。。というわけで、5月に相棒と相談して引っ越し先を検討した。今はメキシコ全土が移住先として人気で、隣のカンペチェ州(ユカタン以上の田舎)なら海沿いもまだ…と期待したが、移民 の増加と土地価格の上昇はそちらへも押し寄せていた。さらにユカタン州は安全だっていうんで引っ越してくるメキシコ人も多く、人口増加がどの街どの村へどう広がるか、しっかり検討しなければならない。我々には、東京のど真ん中なのに朝の通勤電車に4人しか乗ってないような静かなところへ引っ越したら数年後には開発の嵐に襲われた…という失敗歴がある(月島のあたりです、豊洲なんか野原だったのに)。

しっかり検討しなければ、前回の二の舞になる、ただ好きなところへ引っ越すわけにはいかない。ポイントは、① 人気の海の近くじゃなくて内地(ついでに土地信託が必要なくなる)、② 有名な遺跡などがなく、無名な状態が続きそうなところ、③ マヤ鉄道の駅から遠く。海の近くに居たかったがどのみちビーチはもう人だらけで独り占めは無理、平日からガイジン年寄りが散歩してたりメリダ人がジェットスキーで遊んでる状態。で、南部の村の一つに絞った。同じ州内の引越なんで車のナンバープレートや運転免許の変更がなく、内陸なんで土地を買うのに余計な手続きもない。

何度か行って新たに買う土地の目星がついたので、今住んでる家を売りに出してから3ヶ月。ようやく売れました、万歳。時間がかかった理由の一つは為替変動。円と同じく米ドルとカナダドルも、対メキシコペソで爆下げしている。4、5年前?の3分に2近くまで落ちた。不動産屋曰く買い控えたり様子見したりしているらしい。

それから、最近になって移住してくる大勢ってのは、以前我々が享受していたメキシコの田舎でなく本国と変わらない便利さで自分たちは苦労のないところの、憧れの家に住むのを望む。我々が来た頃は、皆しっかり調べて不便でインフラも整ってないのを承知で来ていたが、今はそうじゃない。我々みたいに「こんな発展途上国の僻地なんだから不便さは我慢。自然の中のでっかい土地さえあれば!」とは考えない。高性能井戸+家の水回りの水圧を上げるためのポンプ+ソーラーパネルと蓄電池…で断水と停電対策をがっつりしてあって、プールがあって、塀で囲んであって侵入予防の監視カメラなどもついてて、ここの自然な環境でなくヤシを植えた小洒落た庭があって、比較的土地が狭くてもきれいな家が人気。金持ちはウォーターフロント限定。貧乏人(なんと借金してまで移住してくる年寄りがいるらしい!)は、お洒落だけどチンケなアパート(マンション)。

うちは当初はもう一生引っ越すつもりなんかなかったから、無駄に大きいだけで間取りは日本人の家。風呂とは別のトイレや段差のある玄関があるくせに、各寝室にトイレやシャワーやウォークインクローゼットがない。まぁ、広いだけで日本のマンションみたいな家です。リフォームするにしろ買い手はちょっと悩むって感じ。

人が増えてきている間にここら辺の不動産価格と建設費が上がったおかげで、幸いそういう状況にあっても最後には高くで売れた。時間はかかったけど。

外国人は信託を組まないと不動産を購入できないので、その手続きに数ヶ月かかり、最終契約は少し先になる。その後は、ディープなマヤ文化にとっぷり浸かります。あ、その前にまた新築工事の記事を書くことになるか。。。


ユカタン料理の語源

2023年08月21日 | ユカタン諸々

ユカタン料理を紹介するとき、必ずというわけじゃないが10品のリストなら入ってくる程度の料理にパパツレスというものがある。

 こういうの。

村で売ってたやつ。薄緑のはかぼちゃの種の粉末で作るサルサで、くるくる巻いたタコスの中身は、シンプルなものだとゆで卵、凝った(というほどじゃないが)バージョンだと肉入り。赤いのはおなじみのトマトサルサ。レストランだとゆで卵は輪切りにしてその上に乗せたものもある。

スペイン語というかアルファベットで綴ると(現代マヤ語には独自文字はない)、papadzules で、この dz はマヤ語にあるツァツィツツェツォの発音になる。来たばっかりで最初見たときは、どう発音するのかわからなかった。地名などに結構残ってるんだが、グーグルマップを日本語で開くと、dzi はドシになっているがこれは間違い。

スペイン語にはない綴りなのでこれが入ってるとマヤ語だとわかるんだが、数年前に「パパツレスは今でこそ dzu と書くが実は語源は papa azul=青いお父さん?で、マヤ語は関係ない」という見解が出た。料理自体は昔から伝わるマヤの料理だが、スペルは後付けだという。見解というより、どこかから昔の記事を見つけてきて「ここに証拠が!」って感じか。

で、今回、それより古い日付で語源はマヤ語だと書かれた記事を発見した!という文章に出くわした。

 証拠。「元の言葉はマヤ語の何それ…」

マヤ語は植民地時代に焚書があったりその後メキシコ政府によって使用を禁止されていた時期もあった。執筆者が見つけたのは印刷されたもので、そもそもそんなに古いものではない。まして研究レベルの話なんかじゃなくて、あくまでもユカタンの伝統や文化に興味がある人たちの間での話題。でも、この語源議論ってものが結構ホットなのである。

 似たようなものが最近出てきた。

こちらはコツィートといって要はタコスなんだが、半分折りじゃなくてくるくる巻いてある。メキシコの他の地方ではタキート(ミニ・タコスあるいはタコスちゃん)と呼ぶらしい。【追記:すみません、違いました。何らかの中身が入ってるロール状タコスにサルサ…じゃなくて、本来、コツィートはただくるくる巻いたトルティーヤを揚げてトマトサルサ…なんだそうです】例によってツィ(dzi)と書くが、この「語源、知ってるか?!」とドヤ顔の執筆者曰く、マヤ語の「kots´」が語源だという。こちらの ts は人によっては tz と書くけど(微妙に違う音をごっちゃにしてる可能性あり)サ行とタ行の中間みたいな音 。

でも執筆者曰くのマヤ語がわたしの持ってる辞書にはない。似たような子音並びの言葉が複数あって、それぞれ意味が違う。記事(上の写真)を読んで、ああこれも新たな発見が出続けるパターンだなと思った。

マヤ語には日本語と同じく長音があって、お母さんとカーディガンみたいに同じ伸ばす音でも高さが変わるのと変わらないのとある。その上、子音も、例えばカは2種類あったりする。はっきり言って、スペイン語が母語だと「かあ」と「か」の違いがわからないし、カ行とそれに似た子音に関しては我々も同じ。それでかどうか知らないが、そもそもマヤ語にも「あれ?前見たのとスペル違うじゃん」という言葉もある。アルファベットで書かれ始めた頃からバラバラだったのもあるだろうし、区別がつかないスペイン語人の感覚・不注意でバラバラになってるのもあると想像する。

一方、マヤ語人も、母語話者になればなるほど今度はアルファベットに弱かったりする。教育レベル、つまりひどい歴史のせい。あと、スペイン語や英語などの言語学者でなくマヤ語人自身によるマヤ語の研究がないらしい。

語源が何かの議論なんか、実はほとんどこれが原因なんじゃなかろうか? 上のコツィートだって、記事によると語源はマヤ語の「巻く」だそうだが、村のマヤ人の友達は巻いたものもタコスと言う。

 全部巻いてあった。開いたのはわたし。

メリダのレストランで巻いてあるのにトマトサルサをかけて粉チーズ振ったものが発祥(レストランによる命名)かもしれないw。

この「ユカタン料理の語源探し」自体が、当地の文化とか伝統に興味がある現在のユカタン人の趣味みたいなもんなのかも。好きにしてください…というか、語源への興味がなくなってしまった。

ーーー

 コチニータ・マアククン

…と呼んで南部の村で売られていた。似たような子音の言葉がないのでw、マアクは蓋だと思われる。クンは怪しいが、とりあえず鍋を意味する単語がある。有名なコチニータピビルしか知らなかったが、これは試してみたいし作り方も知りたい(作るとは言ってない)。

  おなじみの、キビ

普段と違って中にチーズが入っているのも買ってみた。ボラ・デ・ケソ(ボールのように丸いチーズ、ユカタン名物)が入っている。こちらの語源はクッペとかクベとか言い方は場所によっていろいろの中東料理。こちらはすでにユカタン語 kibi になっている(料理自体もユカタン好みになってるだろう)。

 海のぶどうでジャム。

完成写真を撮るのを忘れたけど、まあジャムなんで必要ないだろう。まだ走りなので、たくさん作って配るつもり。

 

 昔のプログレソ。

観光振興目的で、今は海岸通りには車は入れない。それについて、危なくなくなってよかったという人と、昔の方が自由でよかったという人の両方いる。個人的には、プログレソはつまらない街になった。


最近の村

2023年08月12日 | ユカタン諸々

夏休みになって例によって人が多いんだが、避寒に来る北米人(スノーバード。数週間から数ヶ月いる)が増えたのとそのまま移住した人も多いんで、以前と違ってバケーションシーズンで激増!って感じではない。常に人だらけ。村の中心部は例年通りの賑わいで、移動遊園地や屋台(食べ物・服・海水浴用品など)が出ている。

なのであまり敷地から出ないんだが、最近撮った写真を…。

 ハチドリ。

窓の真ん中辺の茶色いもの。木が減ってきたんで、遭遇する機会が増えた(我が家にはたくさん生えている)。巣作りをして卵が孵ったこともある。敷地内の木に巣を作るのは勝手だが、この「なぜか窓に…」は猫が見つけて興奮するので困る(網戸をボロボロにする)。

  「メリダはこちら」

この先のロータリーを右へ曲がるとメリダ - プログレソ自動車道へのバイパス。まっすぐ行くと、プログレソ。右の写真の緑の交通標識だけでなく、白地にメリダの文字の簡易看板ができてた。最初に見つけたとき、「これ、いいね、帰れ!帰れ!だね」なんて相棒と笑ったんだが、基本的に観光客が増えて経済が潤うことに反対してる人なんかいないんで、これは市長か村長のサービスだと思う。週末には渋滞するんで標識を見逃すはずはないんだが、平日も遊びに来る人向けなのかも。

 虫下し。

日本では今でも学校で配ったりするんだろうか? いや、我々の世代だと回虫検査はあったけど配られた覚えはないか。こちらでは、普通に薬局で売っていたりするんだが、これは保健所でもらった。たまたま降圧剤をもらいに行く日だったんで出くわしたが、保健所では事前のお知らせなど何もなく、その日ちょうど来ている人に配ったり話をしたりする。インフルワクチンなんかは「今日やってるって帰ったら近所の人にも伝えといて」という感じ。

その数日前にエパソテという葉っぱ(ハーブw)を買ったんだが、虫下し効果がある。で、それが見たこともない立派さで、普段は煎じたものを犬に使う程度なんだけど、ついでに飲んでいた。なので保健所では最初遠慮したら、周りのおばちゃんたちが「この人(看護師)、全部配らないと上司に怒られるんだからもらっとけw」と言うのでもらってきた。まぁ、医薬品のほうが確かであろう。虫とか食中毒とか、衛生観念が日本とは全然違う国なんで、日頃から気をつけるに越したことはない。(いなかった)

  マヤの石垣。

左が南部の村で撮った本物。右は近所を散歩していて見つけたもので、ガタガタだしモルタルで繋げてあるし美しくない。メリダでも古い地区(オサレで植民地時代の名残がある歴史的地区とかじゃなくて、昔マヤ人の村だったとこ)には、こういう石垣の家がある。いや、8年前にはあったけど、建て替えたりしてなくなっちゃってるかも。先週書いたチュクムと同じで、最近マヤ風ってのがもてはやされてるので真似したってことですかね。ユカタンの建設現場作業員はマヤの血が入ってる人が多いんだが、それでも都市化近代化に合わせて生活自体は普通のメキシコ人なんで、上手にできなかったんだと思う。

 鳥居。

紋が飾ってあるコンドミニアム(リンク記事の下の方)に続き、村に鳥居が出現したw。飲料水を買っているところの隣の家で、あれ?と思って見たら住人が出てきた。カッコつけに日本物を使ってるだけの外人資本のコンドミニアムと違って、こちらはこういうのが好きなんだと言うメキシコ人。タイの挨拶?(いただきますみたいに手を合わせるやつ)をされたけど、まぁ細かいことは抜き。


反面教師② チュクムなど

2023年08月04日 | 新築

メキシコでは、敷地境界いっぱいのところに建てた外壁そのものを塀がわりにすることがよくある。隣の土地側の表面は法的には仕上げる必要がなく、ブロックを積んだ状態か下地モルタルを塗った状態のままになる(見苦しい)。

おばさんの外壁のこちら側は相棒が手を入れた庭だったので仕上げまでしてくれるとのことで(ありがたい)、内外壁の仕上げが始まった頃、3色(黄色と青とネズミ色っぽいベージュのうちのどれがいいかと聞かれた。

 3色。完成後の写真。

一瞬、ペンキの色の話だと思ったんだが、マヤの素材でベージュのやつはプールにも使うという。

それで、あるご近所さんが以前プールを造るときにマヤのだなんだと話していたのを思い出した。あと、以前FBの売ります買いますで「マヤの仕上げ用モルタル」という投稿を見て、へぇいいじゃんと思ったのも思い出した。

 見たのと別だがこれみたいな広告。

柔らかい色といい「マヤの…」ってな点といい、印象がよかったのである。おばさんやるじゃんと思っていたら、そのうちにその「マヤの素材」が搬入された。普通のセメントより小さい袋に粉が入っていて、水と混ぜるという。が、施工されていくのを見てると、なんか違う。ベージュの色合いも微妙に違うし、考えてみれば昔見た広告にはどぎつい青とか黄色のオプションなんかなかった。

ちなみにその「マヤの…」という仕上げ材、チュクムという。左官工事で仕上げる。プールに使えて、漆喰のように呼吸をするので内装材としてもいいという。防水?でかつ湿度調整するってのが分かるような分からないような。いっぱいに吸うとそれ以上吸わないんで貯めとけるってことか?

とにかく、その正体はユカタンに生えてる木の樹液で、樹皮を煮出した汁とセメント(それも厳密にはユカタン半島産の原始的なセメント)を混ぜて使う。

  こんな木。

ってか、この系統のマメ科の木、めっちゃくちゃ多い。食べられるものも結構あるし、きれいな花が咲くのもある。そこいらにいろいろ生えてるんで、見ても違いが分からないと思う。(c) CICY

マヤの…とはいえ、今も南部に行くとあるマヤ人の家なんかでは使われていない。おそらく遺跡のどこか(何か)で見られるんじゃないかと思う。あるいは、ピラミッドとかはチュクムが使われていたために風化が遅くて遺っているから今我々が見ることができる…とか。スペイン人侵攻以降、建築材料としてどうやって生き残ってきたのか、残念ながら調べても資料がすぐには見つからない。

でもってそのチュクムが、今オシャレな現代建築で人気なのである。広告を見た6年くらい前はそうでもなかったが、今はプールから街中の家から何から何まで、ユカタンに家を建てるってな人たちに大人気なのである。こんな感

 プールに使うとこんな感じ。

水の色がなんともきれいなエメラルドグリーンになる。

 おばさんちのプール。

 一回水を張ったあとの状態

剥がれている。ご近所さんは絶賛してたんで、この時点で何か違う、これチュクムじゃないんじゃないか?と疑問が湧いた。ネットで調べたり、メリダにある本物のチュクムの生産&施工業者のところにも行ってみた。なんと、メリダに数社しかない。実はそのくらい希少だったのである。

結論を言うと、こういう流れ。本物のチュクムと似たような仕上げが売りの人工モルタルができて使い分けられるようになった。ガイジンの家とかで使われた本物の写真がネットに出て、素敵だと注目されて人気が上がるにつれ、ユカタン内外の建築士も知るようになった。ところが人工のものも特別なものヅラして売られるようになり、ネットの写真じゃ本物と区別つかない…というか、人工のをチュクムだと思って使う人が増えた。そうすると、オサレな家、オサレな仕上げとしてどんどん拡散され、チュクムとチュクム風の区別がつかなくなってきたのである。もちろんきちんと調べればわかるんだが、混同しているアホな建築士もいるし(ほらメキシコ人ってただでさえすぐ「わかった!わかった!」だし)、スペイン語がわからないガイジンも多いんで。

おばさんの建築士もそういう「ホントはわかってない」1人だったか、予算を言われて本物を除外したか、ルイス・バラガン風にする(ひとつ前の記事)ためには色が豊富な人工のほうがよかったか。

実際のところ、材料費だけだと平米単価は大して変わらない(ユカタンにしかないので、他の地域で使うと輸送費で結構いく)。一瞬、水と混ぜる人工のほうが施工がラクに思えるが、そうでもない。粉と液体を混ぜる、つまり普通のモルタルと同じなんで、下地の準備とか施工後の表面の均し方とか、逆に細かいことを気にしなくなるリスクがある。で、ちゃんとしないと、本物同様不具合が出る…と。後からわかったんだが、おばさんのプールもその辺をテキトーにした上、水を張るタイミングを誤った模様。どうせ人工ならどうにかしたれよと思うが、バケ学の話なんでしょうがないんでしょうか。

 プール脇の外壁。

業者んとこで見たのと仕上がりが全然違う。本物のチュクムは表面をきれいに均すと磁器みたいになる。つるっつる。硬いものを強くぶつけたりしたら別だが、そんな簡単に傷にならないし、普通のモルタルとはいろいろ違う点に気をつけて施工するんで、簡単に剥がれたりしない。

というわけで近い将来、本物のチュクムを使う予定なんだが、このブログでは後のお楽しみにとっておくw。

ーーー

 玄関前の地面を削っている。

砂利などを搬入してモルタルやコンクリを混ぜていたところ。数日前まではずいぶん盛り上がっていた。引越しの土曜日(前の記事参照)を過ぎて、ここんとこおばさんと作業員の両方が出入りしてわけわかんなくなってる。それに乗じておばさんが監督に泣きを入れ、予算がなくて削ったはずの外構で作業させられている。セメント混じりの硬い地面をツルハシを振るって崩し、「掘ったんだけど使わないことになった貯水槽」跡の穴に入れていた。追加工事費をもらってるのかどうか知らないが、なんともかわいそう。。。