雪散華 杉本健吉
寒気が身にしみる薄暗がりの中に、お仏飯の湯気が立ちあがります。
ぴたぴたとした音が耳に入って、どうやら雪がふっているらしい気配。大きな白いものが、みぞれのような水っぽさで暗い空から落ちてくる音でした。
草木国土、生き仏さん含めたあらゆる諸仏を、雪の花(華)で供養するかのような「雪散華」。何度口にしても美しい響きの「雪散華」。もうちょっと降ってくれたら。
おりんを鳴らし、さっと手を合わせ、長居は無用とばかりに早く引き上げたいですわ。
今日は大寒。寒さのどん詰まりの日。ということはこの先の寒さはなくって、立春にむかい春を待つ日々に…、なればいいんですけどね。
こんなに寒い日は、春を待ちつつ力を貯える。ありがたいことに「いつだって読書日和」の私です。
『荒仏師 運慶』(梓澤要)を読み進めた。平重盛による南都焼き討ちの描写、諸堂のお像を運び出さんと力を合わすさまが、一人称「わたし」の目線で物語られます。この南都焼打ち場面は、澤田瞳子さんの『龍華記』と重なるので一寸読み比べてみたりして。
ところで、例えば桜庭一樹、有川浩、梓澤要さん。このお名前は、一見したところ男性の名前に思えてしまう。「男性かと思った」と、先入観で口にすることは今やまずいのかしら。