京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 漱石忌

2015年12月09日 | 映画・観劇
「俺は学者で勉強しなければならないのだから、おまえなんかにかまっていられない。それを承知していてもらいたい」
新婚早々にこんな宣言をされたと、夏目鏡子さんが『漱石の思い出』で語っている。大正5年12月9日逝去。今日は「漱石忌」

               

7月中頃、新聞記事で大江健三郎さんと古井由吉さんの座談の概要記事を読んだ。その中で、お二人がそれぞれに漱石を代表する3作品を挙げられていた。大江さんが『虞美人草』『こころ』『明暗』、古井さんは『こころ』『草枕』『道草』だった。
まだ読んでいなかったこともあって、つい先ごろ『道草』を読み終えた。漱石の自伝的小説とも言われる作品だが、大正4年に朝日新聞に連載後、出版されている。主人公の健三とその細君、心に沁みる優しさがない、情愛のなさが夫婦に感じられて、読んでいても気分がよくない。

印象深かったのは「人間の運命は中々片付かないもんだな」という健三のことば。「世の中には面倒臭いくらいな単純な理由で已める事の出来ないものがいくらでもあるさ」とも。
縁の片付かなさの中で人は生きているのだと思えば、年賀状くらいのおつき合いの縁を、今ここで切ってしまってよいものがあるのかどうか、気をつけなくては…。断捨離ブームにしても、捨てるものを間違えては一生の大損だろう。


家庭の事情がさまざまに持ちあがって、この1年は御無沙汰が多かったが、女三人の都合を合わせて今年最後となる映画にランチ付きで一日を楽しんだ。「KANO海の向こうの甲子園」が期間限定で再上映されるからと、一人の友の積極的推奨作品に乗った。滋味だが暖かな感動をもたらすいい映画だった。
細くても、縁の糸を這わせて…。来年の春先再会を約して別れた。
コメント (6)
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