なんとなくしあわせ^^

美味しいものを食べると・・・・なんとなくしあわせになりませんか?

千曲川旅情の歌  島崎藤村

2023-05-04 08:32:34 | 
超久々の投稿(約13年ぶり)、うまくできるかな?

千曲川旅情の歌 
 
小諸なる 古城のほとり
雲白く 遊子悲しむ
緑なす 蘩蔞は萌えず
若草も 藉くによしなし
しろがねの 衾の岡辺
日に溶けて 淡雪流る
あたたかき 光はあれど
野に満つる 香も知らず
浅くのみ 春は霞みて
麦の色 わずかに青し
旅人の 群はいくつか
畠中の 道を急ぎぬ
暮れ行けば 浅間も見えず
歌哀し 佐久の草笛
千曲川 いざよふ波の
岸近き 宿にのぼりつ
濁り酒 濁れる飲みて
草枕 しばし慰む

「落梅集」

この詩は藤村29歳の年に小諸の懐古園で生まれました

惜別の歌  島崎藤村

2007-01-22 22:17:21 | 
(1) 遠き別れに 耐えかねて
  この高殿(たかどの)に 登るかな
  悲しむなかれ 我が友よ
  旅の衣を ととのえよ

(2) 別れと言えば 昔より
  この人の世の 常なるを
  流るる水を 眺むれば
  夢はずかしき 涙かな

(3) 君がさやけき 目の色も
  君くれないの くちびるも
  君がみどりの 黒髪も
  またいつか見ん この別れ

(4) 君がやさしき なぐさめも
  君が楽しき 歌声も
  君が心の 琴の音も
  またいつか聞かん この別れ



久々に、詩の投稿です

今日、車の中で聴いたCDにはいっていた曲です

自分の好きな歌なので、たまに聴くといいもんですね


歌詞は島崎藤村の処女詩集「若菜集」の「高楼」からピックアップされています

原詩は嫁いでいく姉を妹が送る8節の詩ですが、第1節のうちの「かなしむなかれ わがあねよ」が「我が友よ」に変えてあります




高楼(たかどの)

わかれゆくひとををしむとこよひより
    とほきゆめちにわれやまとはん


   妹

とほきわかれに
    たへかねて
このたかどのに
    のぼるかな

かなしむなかれ
    わがあねよ
たびのころもを
    とゝのへよ

   姉

わかれといへば
    むかしより
このひとのよの
    つねなるを

ながるゝみづを
    ながむれば
ゆめはづかしき
    なみだかな

   妹

したへるひとの
    もとにゆく
きみのうへこそ
    たのしけれ

ふゆやまこえて
    きみゆかば
なにをひかりの
    わがみぞや

   姉

あゝはなとりの
    いろにつけ
ねにつけわれを
    おもへかし

けふわかれては
    いつかまた
あひみるまでの
    いのちかも

   妹

きみがさやけき
    めのいろも
きみくれなゐの
    くちびるも

きみがみどりの
    くろかみも
またいつかみん
    このわかれ

   姉

なれがやさしき
    なぐさめも
なれがたのしき
    うたごゑも

なれがこゝろの
    ことのねも
またいつきかん
    このわかれ

   妹

きみのゆくべき
    やまかはは
おつるなみだに
    みえわかず

そでのしぐれの
    ふゆのひに
きみにおくらん
    はなもがな

   姉

そでにおほへる
    うるはしき
ながかほばせを
    あげよかし

ながくれなゐの
    かほばせに
ながるゝなみだ
    われはぬぐはん



参考 <惜別の歌>

落葉松 北原白秋

2006-01-19 22:29:21 | 

からまつの林を過ぎて
からまつをしみじみと見き
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり

からまつの林を出でて
からまつの林に入りぬ
からまつの林に入りて
また細く道はつづけり

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり
霧雨(きりさめ)のかかる道なり
山風のかよう道なり

からまつの林の道は
われのみか ひともかよいぬ
ほそぼそと通う道なり
さびさびといそぐ道なり

からまつの林を過ぎて
ゆえしらず歩みひそめつ
からまつはさびしかりけり
からまつとささやきにけり

からまつの林を出でて
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ
浅間嶺にけぶり立つ見つ
からまつのまたそのうえに

からまつの林の雨は
さびしけどいよよしずけし
かんこ鳥鳴けるのみなる
からまつの濡るるのみなる

世の中よ あわれなりけり
常なけどうれしかりけり
山川に山がわの音
からまつにからまつのかぜ


落葉松の碑を撮ってみました・・・写真をクリックすると大きくなります





詩の部分、拡大してみました



汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也

2006-01-06 19:18:03 | 
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おぢけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

初恋 島崎藤村

2006-01-05 23:56:03 | 
まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に
人こひ初(そ)めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな

林檎畑の樹(こ)の下に
おのづからなる細道(ほそみち)は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

村はずれの歌  [立原 道造]

2005-12-20 13:04:20 | 
咲いてゐるのは みやこぐさ と
指に摘(つ)んで 光にすかして教へてくれた-

右は越後(えちご)へ行く北の道
左は木曽へ行く中仙道(なかせんどう)

私達はきれいな雨上がりの夕方に ぼんやり空を眺めて佇(たたず)んでゐた
さうして 夕やけを背にしてまっすぐと行けば 私のみすぼらしい故里の町
馬頭観世音(ばとうくわんぜおん)の叢(くさむら)に
私たちは生まれてはじめて言葉をなくして立ってゐた