雲の上には宇宙(そら)

 雪国越後にて、30年ぶりに天体写真に再チャレンジ!

『オフセット』に ケリを付ける。(ひとまずまとめ)

2024年01月28日 | 画像処理のはなし
オフセットに関するこの連載記事も4回目になりました。

前回までは、オフセットとはなにか を踏まえて
室内にて取得した極めて低い輝度の画像のヒストグラムを比較することで検証してきました。
今回はいよいよ実際に天体を撮影した画像を使っての検証を行うのですが、
その前に
前回記事 の最初に掲載したオフセット”のヒストグラムで、
Gainが高くなると逆にピークレベルが下がって”0”になるという不可解な現象について
以下、私なりに説明してみたいと思います。

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ヒストグラムではなく、輝度レベルの最小値・最大値で別のグラフを作成してみました。
Gainを上げると輝度レベルの幅も広がるのですが、最小値の方は元々”0”レベル付近の画像ですので
最大値との差が広がると、レベル値が”-”の領域に入ってしまう事により
”1”未満切り捨てで、レベル”0”のピクセル数が大半をしめて、
ヒストグラムでもピークが”0”になるのだと思います。

さらに、このグラフから次の事が言えると思います。
Gainでカメラの感度が変わるわけではないと良くいわれますが、
そのソフト的(?)な処理は”オフセットの後に行われている”という事。
順番が逆ならば
このカメラのデフォルト値であるオフセット値”でも レベル最小値”0”はありえない。
オフセット”0”レベルとなる基準電圧を変えている というのは、わたしの推測ですが・・・)

ちなみに、オフセット値30”の検証データで同じグラフを作成してみると。
オフセット値30”によるレベルの大幅な底上げ(下駄をはかせる)により、
Gainが上がっても輝度レベルの最低値が”0”以上になりました。

他のオフセット値のグラフも作成しているのですが 、
今回は各オフセット値Gain毎のレベルの最小値・最大値の数値だけを。 ⇒ こちら

以上で納得してもらえるでしょうか?
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納得してもらえないとしても、このシリーズは今回でひと区切りにしたいので
話を戻します。

できる事なら あたらしく購入したステラショットオフセット値を設定して撮った画像を
使いたいのですが、日本海側では星が見えない季節のため いまだ”初撮り”ができません。
そこで昨年ステラショット2で撮った撮影画像を使う事にしました。
ステラショット2オフセット設定ができないのですが、
これまでの検証の結果、カメラのデフォルト値ASI533MCの場合 デフォルトのオフセット値=””)
で撮影されている事がわかりました。
関連記事は ⇒ こちら

まずは昨年撮った撮影画像の中で、検証に使えそうな画像を探した結果、
昨年9月に検証のためGainを変えて撮ったペリカン星雲の画像を見つけました。

露光時間は変えずに、Gainだけを変えて撮ったRAW(モノクロ・ベイヤー配列)画像です。↓
Gainは102・204・300の3段階、いずれも露光時間は180秒、ステラショット2での撮影のためオフセットは””としています
右側のヒストグラムの『最小値』というのは、「自動レベル調整」ボタンで表示された撮影画像内の最小輝度レベルです

上の画像のヒストグラムを検証する際に留意すべきは、
室内で取得した画像とは異なり、輝度レベルの『最小値』につながる右側にあるピーク(山)は
撮影したペリカン星雲の画像の背景となる空の明るさだということです。
ただしその輝度レベルについては、オフセット”で底上げした分も含まれている事に注意。
これまでの検証結果では、Gain100なら、輝度レベルは最小値303の内70くらい底上げされていそうです。


今後 星の見える夜があったら、ステラショットでオフセット””と””で撮って比較すれば
オフセットにより各Gainでどれだけのレベルが底上げされるか明らかにできます。
わたしの予想では
オフセット”なら、画像の背景(空の明るさ)レベルに比較して底上げされるレベルはかなり小さいと思います。


もう一つ、撮影画像によるオフセットの検証を行っています。
こちらは昨年12月にステラショット2で撮ったオリオン大星雲(北部)です。

モザイク撮影の多段階露光用に撮ったもので、Gainは150のままで 露光時間だけを変えています。
こちらもヒストグラムの表示レンジ( △ ~ ▲ )はそろえています

Gainに比べれば単純で、露光時間を増やすと背景レベルも上がっていきます。
ここで注目したいのは、露光時間の短い30秒のヒストグラムでは背景レベルのすそ野が
『最小値』の"0"付近まで伸びている事。
ということは、
もっと短い露光時間や、低いGain設定では 空の背景レベルのピークがより””に近づき
裾野の一部が”0”以下で切り捨てられる事もありそうです。

以上の検証結果から、わたしの持論も少し変更が必要なようです。
たとえばこんな風に
天体撮影においては 光害や月明かりにより、
オフセットが必要となるケースは少ないが、
低いGainや短時間露光で撮影する場合は、
撮影画像(特に空の背景部分)の輝度レベルが
”を上回っているのか確認する必要がある

これで”ケリ”をつけていいんでしょうか?
ご意見・アドバイスを コメントまたはメッセージ(PC表示で右サイドバー)にてお待ちします


くどすぎたかも知れない検証の最後に、しつこく もう一言。
オフセットを意識し過ぎて、過大なオフセット値を設定してしまい、
高めのGain設定とあいまって、貴重な諧調(ダイナミックレンジ)
を損なわないようくれぐれも注意したいものです。

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初撮りできる機会が訪れたら、ステラショット3を使って
オフセットの検証用画像を撮る事を最優先にしたいと考えています。

「星のふるさと館」スタッフでもあるAKIYAMAさんから、1/24に館の点検に上がった際の写真をいただきました.。
心配していた能登地震の機器への被害はなかったそうで、
積雪は駐車場110㎝ 屋上88㎝と 例年に比べればずいぶん少な目だったようです.。

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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いつになったら初撮り? (雲上(くもがみ))
2024-02-04 16:37:12
いっささん コメントありがとうございます。
今年は小雪となっていますが、やはり冬は星はまず無理ですね。
(そちら長野県北部も同じようなものだと思いますが・・)

星ナビの情報ありがとうございます。
探してみたのですが、その時期は「天ガ」を定期購読していたようで残念ながらありませんでした。
返信する
Unknown (いっさ)
2024-02-04 09:37:36
雲上さん、こんにちは。
CMOSカメラのオフセット興味深く拝見しています。
月刊 星ナビ2019年4月号のラッキーイメージング3 ページ42Pにオフセットやゲインについて解説が掲載されています。ご参考になれば幸いです。
返信する

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