伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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ミッションX(エックス)

2007-06-07 20:27:51 | 行政経営
前回のブログ
「公務員の場合、そもそも成果とは何なのか?」では、
自治体の職員が組織として共通の価値観を共有していないことが、
バラバラな改革の原因ではないかと推測しました。

同様な趣旨を、
日本有数のシンクタンクの一つである
日本総研の山中俊之さんも述べています。
公務員人事の何が問題か

山中さんによれば、
現在の公務員の人材マネジメントの問題は、次の3つに集約されます。
1 組織のミッションが不明確であること(顧客の視点が弱い)
2 マネジメントが欠如していること
3 キャリアの重要性の認識が不足していること

以下、
山中さんの論じるミッション部分から引用します。
 
 ミッションとは、顧客である住民や国民や役所に対して
 望む内容を記したものです。
 例えば、自治体の水道局であれば、
 「安全で安価な水道水を安定的に供給する」
 といった、部署ごとに顧客を定義して、
 その顧客が何を望んでいるのかを真剣に考えて、
 明確化したのもです。

 慶応大学教授で改革プロデューサーの上山信一氏は、
 近著にて、「民間企業の場合は、顧客ニーズに応じて、
 仕事の流れは変えるものだという意識がもともとあります。
 だが、行政機関の場合、仕事の定義の転換はなかなか難しい。」
 と述べています(「だから、改革は成功する」)。
 
 仕事の定義を転換するために顧客を定義して、
 何を望んでいるかをミッションという形で
 明確にすることが大事です。

 公務員の世界では、
 これらのミッションがなんとなく分かっていても、
 実際には認識されていないことがあります。

 ミッションが不明確であるため、
 組織における成果や目標についての議論が十分にできない。
 成果や目標が不明確であれば、
 目標管理を通じた業績評価の基準など、
 適切な人事評価項目が設定できません。

(山中さんの引用、ここまで。)

山中さんは、
お役所組織の目標や成果が不明確な原因を、
ズバリ、ミッションの不在であると指摘しています。

具体的なミッションは、水道事業や農業、福祉など
行政の各現場において相当異なります。
したがって、組織としては各職場を包括する
ミッションの上位概念を持つ必要があります。

ミッションの概念は、企業にとって重要ですが、
非営利組織にとっては、
営利団体以上に重要であると
P.F.ドラッカーは指摘しました。

以下、
ドラッカー著「非営利組織の経営」ダイヤモンド社から引用します。

 第1章 使命とは何か

 非営利機関は、人と社会の変革を目的としている。
 したがって、まず取り上げなければならないのは、
 いかなる使命を非営利機関は果たしうるか、
 いかなる使命は果たしえないか、そして、
 その使命をどのように定めるかという問題である。

(中略)

 リーダーとして真っ先になすべきは、 
 よくよく考え抜いて、
 自らのあずかる機関が果たすべき使命を定めることである。
   「具体的な行動目標を設定すべし」

(中略)

 使命達成に必要な三つの要点
 要するに、
 「何が機会であり、ニーズであるか」を問うことである。
 次に、
 「その機会やニーズに自らが合っているか」を
 検討することである。
 そして、
 「しかるべき成果をあげられそうか」、
 「能力を有しているか」、「自分たちの強みを発揮できそうか」、
 「本当に信念を持ってやれるか」ということを検討すべきである。
 製品についてだけでなく、サービスについてもこのことはいえる。

 したがって、三つのものが必要である。
 機会、能力、そして信念である。
 使命の表現は、必ずこの三つを示していなければならない。
 さもないと、究極的な目標を達成することはできず、
 目的を果たすこともできず、最終的な成果も得られない。
 なすべきことを成し遂げるべく
 組織の人間を動員することもできない。
(引用、ここまで)
 
ドラッカーによれば、
組織のリーダーとして真っ先になすべきは、 
よくよく考え抜いて、自らのあずかる機関が果たすべき
使命を定めることです。

そして、
そして使命の表現には、
必ず、機会、能力、そして信念
の3がを示されていなければならないのです。

自治体に当てはめるなら、
首長が最上位の使命を定め、
そのもとに各現場が具体的なミッションを定義するという
順番でしょうか。

また、
ドラッカーの同書の中にある対談では、
次のようなやり取りがあります。

ドラッカー対バーテル神父
(多くのボランティアが無給のスタッフとして生き生きと働き、
 学校や病院を経営し、非常に成功している教会)

<バーテル>
人間というものは、動機付けさえ適切であれば、
そして事実それらの人たちは
十分動機づけをされているのですが、
能力の開発がまさしく彼らのニーズの一部になっていくのです。

むしろ、私が人々に奉仕を求めるときの最大の問題は、
そういった人たちが、自分には経験がないということ、
何の訓練も受けていないということを
自覚しすぎていることにあるのです。
経験や訓練を提供しさえすれば、彼らは喜んで学ぼうとします。

<ドラッカー>
とすると、
あなたがおっしゃっていることは、
心配しなければならないのは、能力の欠如よりも、
自信の欠如であるということですね。
あなたは、彼らを励まし、元気づけ、褒め、
助け、支援するためにいてあげる。
後は、彼ら自身がやるということですね。

<バーテル>
もう一つ、ピーター、
彼らに高い基準を要求するのです。
彼らに、高い期待をかけるのです。
人は、他の人の期待に応えようとするものだと
私は堅く信じています。

ですから、私は、周りの人々に対し、
できる限り高い期待をかけるようにしています。
しかも多くの場合、
人はこれを自分に対する敬意ととるのです。

うまくやることを期待すれば、人は名誉に思います。
そして、改善の方法を探し、
さらに能力を高めていく機会を求めるのです。

<ドラッカー>
あなたが直接管理している病院や学校では、
それらのことをどのようにやっていますか。
一緒になって基準、つまり水準のようなものを示すのですか。

<バーテル>
いろいろと普通のマネジメントの手法を使います。
そして、私たち全員が共有できる
ビジョンを作り上げて明らかにし、
優先順位を明らかにするために、
集まって時間をかけた議論をします。

私たちは、困難も勝利も共に分かち合えるよう、
各人の機会については、とても気を使っています。
彼らがやっていることがいかに大事なことであるかという実感を、
それぞれが、そして互いに深め合えるよう、
機会を与えています。

(引用、ここまで)

バーテル神父によれば、
「人間というものは、動機付けさえ適切であれば、
 能力の開発がまさしく彼らのニーズの一部になっていく」のです。

バーテル神父の言葉が真理だとすると、
行政改革のために、
受ける気の無い職員に強制的に研修を受けさせたり、
意識改革を行うために、四苦八苦する必要はありません。
公務員に仕事に対する動機付けを適切に行えばよいのです。

また、神父は次のようにも言っています。
「できる限り高い期待をかけると、多くの場合、
 人はこれを自分に対する敬意ととるのです。
 うまくやることを期待すれば、人は名誉に思います。
 そして、改善の方法を探し、
 さらに能力を高めていく機会を求めるのです」

この言葉が真理ならば、
論理学で使う「AならばB」の対偶、
「BでないならAでない」も真です。

現在の行政の現場が、
神父の教会のような状況でないとすれば、
「公務員は期待されていないので誇りも持たず、
 仕事を改善し自らを高めようとはしない」
と言えるのかも知れません。
「お役所仕事」という言葉は、褒め言葉では使いません。

結局、意識改革は
人に言われてできるものではありません。
行政のリーダーは、職員に期待をかけ、
彼らを励まし、元気づけ、褒め、助け、支援して
公務員に自身と誇りを持たせることが必要なのでしょう。

そのことを通じて、一人一人の公務員が
自ら改善の方法を探し、能力を高めていくようにと、
変われるように援助することが、
遠回りなようでも手順なのでしょう。


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