伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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保育専門研究会

2011-07-16 21:34:36 | 政治・政策・経済
午後2時から開催された、保育専門研究会に参加しました。
伊勢崎市立保育園の先生方の研修です。
私も勉強のために出席させて頂きました。

講師は玉川大学客員教授の河津英彦さん。
講義の内容は次のとおりでした。

1 戦後の保育所整備
(1)公立優勢意主義からの出発
(2)1970年代からの公私格差是正の歩みと終焉
(3)機関委任事務整理法の施行に伴う公立優先主義の廃止
(4)国による公的責任の解釈の変化
(5)規制緩和による企業、NPOなどの参入、指定管理者制度の導入
(6)経済・財政の悪化と人口動態の急速な変化

2 公立保育所民営化の動き
(1)公私比較論の問題
(2)社会福祉法人と企業,NPOの違い
(3)公立保育所の対応策と努力
(4)公立保育所の廃止・民営化裁判の行方
(5)待機児童問題の浮上

3 保育を量・メニューだけでなく質やワークライフバランス
 から捉えなおす議論が浮上
(1)国際的な動き
(2)質を規定する条件
(3)幼児教育のみでなく、アタッチメント(愛着形成)の
  重要性は社会の共通認識であるべき
(4)保育所の責務から労働・雇用対策や地域福祉全体の課題へ

4 地域社会に必要とされる保育所に
(1)保育指針
(2)地域子育て支援拠点事業
(3)地域社会や親と子の変化
(4)様々な実践

5 公立保育所の使命


講演の中で特に印象的だったのは、
幼児教育の重要性の指摘です。

ヨーロッパでは、幼児教育に国として
日本よりもはるかに力を注いでいるそうです。
日本のことわざにもあるように、「三つ子の魂百まで」とか、
「鉄は熱いうちに打て」といった、
タイミングを逃さない取り組みが重要で効果的です。

河津講師によれば、日本の政策である高校の無料化よりも、
人間形成の基礎となる重要な幼児期の教育にこそ、
もっと力を入れるべきであり、効果的だそうです。

アメリカの国立小児保健・人間発達研究所の長期追跡研究によれば、
貧困家庭の子供のうち、幼児期に教育を受けた場合と、
受けなかった場合では、その後の高校の中退率や、
生涯賃金などで大きな違いがありました。
そのことからも、高校生の授業料を免除することよりも、
全ての子供たちの幼児期の教育に力を入れたほうが効果的なのです。

日本の中学生には、不登校生徒がたいへん増えています。
そのような状態になってから相談室を設けたり、
カウンセラーを雇ったりすることも必要ですが、
起きてしまってからの対症療法です。

子供たちは生まれてから10年以上の時間をかけて、
親子関係や、学校生活を経て、そのような状態になります。
もっと早い段階から、基礎的な愛着形成や
対人コミュニケーションなどの対応できていれば、
不登校や引きこもりになる前に、改善できる可能性が高いと思います。
少なくとも、そうなってから対応するよりも良いはずです。

これほど幼児教育・保育が重要であるのに、
実は日本の実情はさびしい限りです。
OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、
5歳児一人当たりの幼児教育・保育に対する公的支出額は、
日本は2003年では下から2番目でした。

日本の保育にかかる経費の9割は人件費だそうです。
そのため特に民間の保育所では、若い保育士を安い賃金で雇い、
5年程度で退職させて、また若い保育士を雇用する経営が多いそうです。
保育士の経験が蓄積されず、質の高い保育につながりません。
幼児期における教育・保育の重要性を考えると、残念な状況です。

「世界の幼児教育・保育改革と学力」という本によれば、
EU男女平等委員会の下に、保育ネットワークを立ち上げ、
1996年に「保育サービスの質目標」を提案しました。

その中で、幼児教育・保育にかかわる保育者の賃金は、
学校教師の賃金よりも30%も低いが、
同等であるべきと指摘しています。
それが実現すれば、保育士の安定的な雇用につながり、
保育の質が向上し、子供たちの人生の向上につながると思います。
とても良い指摘だと思いましたので、
今後よく調べたいと思います。

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