一つ前の市民公開講座のところに書いた「混合診療」ですが、なかなか理解していただくのが難しい問題で、国民が知らないうちに、気がつかないうちに話を進めてしまおうという魂胆のように思われます。院内報に2カ月続けて書いて患者さんに配布しているもので(HPにも掲載していますが)、こちらにも引用させていただきます。市民公開講座の石原先生の抄録も、それほど長いものではありませんので、是非お読み下さい。
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● なぜ混合診療はダメなのか? (院内報2004年11月号より)
皆さまにご協力いただき、多数の署名をいただきました。これは全国の医療機関から日本医師会に集められ、おそらく一千万人レベルの署名になるはずですが、これだけではまだ力不足で、混合診療導入の本当の目的を国民すべてが熟知し、反対の世論をもっと盛り上げなければいけません。
「混合診療」といっても、かなりわかりにくい話です。誰が儲かって、誰の負担が増えて、誰の負担が減るのかを、箇条書きにしてみます。
1)医療費全体のパイは増える(医療費抑制策にはならない)
2)医療費は保険診療と保険自費外診療にわかれる(=混合診療)
3)保険診療の枠は増えないだけでなく、縮小する(政府と企業の負担減)
4)国民の社会保険料は減らない(減らないだけでなく、必ず増える)
5)結果的に、保険で受けられる医療は限定されるのに、負担は増える
5)国民は自費診療分をまかなうために、民間保険に入る(さらに負担増)
6)民間保険は、加入者ではなく保険会社が必ず儲かる仕組みになっている(保険会社が新たに参入して、医療費のかなりの部分を会社の利益とする)
7)民間保険に入れるのは、家計に余裕のある人だけ(命の沙汰も金次第)
8)病気で治療中だったり先天的な疾患がある人は、民間保険に入れなかったり、保険料が高くなる(弱肉強食)
9)保険外診療は、安全性や有効性の面で問題が大きくなる
これが「規制緩和」という名のもとに行われようとしてる「コイズミ医療改革」の本当の姿です。しかも、その審議をしている委員会の委員長であるオリックスの宮内氏は、新たに参入しようとしている保険会社の会長であり(我田引水)、こういう重大事(実質大幅増税+皆保険制度の崩壊)が選挙で選ばれた国会議員などと全く関係なく決められようとしているのです。
医療に株式会社が参入すれば、国民のニーズに合った医療が提供されるようになるなどとおっしゃってますが、最近のプロ野球球団合併・再編成の動きの中で、民意とはかけ離れた前時代的な不透明な動きをしていたオーナー達の張本人が、この委員長本人であったことは記憶に新しいところです。
☆八戸市医師会では下記のような市民公開講座を開催いたします。
日時:11月21日 16:00~18:00 場所:八戸市総合健診センター3階
表題:日本の医療を守りましょう
内容:1)ビデオ鑑賞 2)講演会 3)討論会 (下記URL参照)
http://www.orth.or.jp/Isikai/hachinohe/h16/igakukai/index.html
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● もし混合診療が導入されたらどんなことになるのか?(院内報2004年11月号より)
以前から何度もこの院内報で現政権が進めている「医療改革」なるものの実態についてお知らせして警笛を鳴らしてきましたが、いよいよ最終局面に追いつめられてきました。本来であれば昨年来の衆参の国政選挙で審判を受けるべきところが、医療問題は年金の陰に隠されて争点にならず、選挙結果も「負けたはずのカラスがより一層強くなった」という摩訶不思議な結果に終わっています。
また、医師会や歯科医師会は政治献金問題で「国民の敵・悪玉」となり、本来医療を守るために連携すべき国民と医療者が解離してしまい、支持を得られにくい最悪の状況になっています。私たちは、医師会の政治資金のあり方などを改めるべきと内部から声をあげてきて、透明性も高くなり国民の理解を得られるような態勢になってきましたが、マスコミでは頭から「利権団体」と決めつけられて国民に声が届かない状況にあります。
そして、選挙後すぐに小泉首相は医療への「混合診療の導入」を強く指示しました。混合診療の推進論者は、格安のパックツアーにオプショナルツアーを追加するようなもので、現在のやり方(全て割高の料金=保険外診療)よりも混合(パック+オプション=保険+自費診療)の方が良いじゃないか、と言います。
しかし、医療にはこんなたとえがあてはまらないことは、誰にでもわかることです。料理であれば高級レストランではなく大衆食堂でも美味しくてお腹いっぱいになることはできますが、もし皆さんの家族が命に関わるような病気にかかったときに、ここから先は「松・竹・梅」の治療コースがあり金額の順に助かる可能性が高くなります、と言われてお金がないから梅を選ぶということはあり得ません。これが大げさではないことは、実際に世界で唯一医療に市場経済がとりいれられているアメリカにおいて証明されています。TVドラマの“ER”やBSなどでも放映された“ジョンQ”という映画をご覧になった方は、ご存じだと思います。
政府は、医療の質を高めて医療費を抑制するためだと言いますが、この「人体実験」が失敗して医療の質は低下したが医療費は高騰したというのでは目も当てられません。実際に、アメリカの医療費は世界一高く、4000万人もの人が保険に加入できず「具合が悪くても我慢している」のです。
日本医師会は国民皆保険制度を守るために国民各界各層の団体に幅広く呼びかけ、国民医療推進協議会を結成しました。以前にも署名をお願いしたことがありましたが、今回は世界に誇るべき日本の医療保険を骨抜きにされるかどうかの正念場であり、何としても国民の皆さんの力が必要です。
「人の命は平等です。生命と個人の尊厳を守るべき医療の世界に、経済的な弱肉強食(市場原理)の論理を持ち込むことは極めて危険であります。裕福な一部の人のみが優遇され、弱者を切り捨てる政策は容認できません。誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険制度を守るために、いまこそ国民が結束する必要があります」(日医会長植松治雄)
大変お手数ですが、署名にご協力の程、よろしくお願いいたします。
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● なぜ混合診療はダメなのか? (院内報2004年11月号より)
皆さまにご協力いただき、多数の署名をいただきました。これは全国の医療機関から日本医師会に集められ、おそらく一千万人レベルの署名になるはずですが、これだけではまだ力不足で、混合診療導入の本当の目的を国民すべてが熟知し、反対の世論をもっと盛り上げなければいけません。
「混合診療」といっても、かなりわかりにくい話です。誰が儲かって、誰の負担が増えて、誰の負担が減るのかを、箇条書きにしてみます。
1)医療費全体のパイは増える(医療費抑制策にはならない)
2)医療費は保険診療と保険自費外診療にわかれる(=混合診療)
3)保険診療の枠は増えないだけでなく、縮小する(政府と企業の負担減)
4)国民の社会保険料は減らない(減らないだけでなく、必ず増える)
5)結果的に、保険で受けられる医療は限定されるのに、負担は増える
5)国民は自費診療分をまかなうために、民間保険に入る(さらに負担増)
6)民間保険は、加入者ではなく保険会社が必ず儲かる仕組みになっている(保険会社が新たに参入して、医療費のかなりの部分を会社の利益とする)
7)民間保険に入れるのは、家計に余裕のある人だけ(命の沙汰も金次第)
8)病気で治療中だったり先天的な疾患がある人は、民間保険に入れなかったり、保険料が高くなる(弱肉強食)
9)保険外診療は、安全性や有効性の面で問題が大きくなる
これが「規制緩和」という名のもとに行われようとしてる「コイズミ医療改革」の本当の姿です。しかも、その審議をしている委員会の委員長であるオリックスの宮内氏は、新たに参入しようとしている保険会社の会長であり(我田引水)、こういう重大事(実質大幅増税+皆保険制度の崩壊)が選挙で選ばれた国会議員などと全く関係なく決められようとしているのです。
医療に株式会社が参入すれば、国民のニーズに合った医療が提供されるようになるなどとおっしゃってますが、最近のプロ野球球団合併・再編成の動きの中で、民意とはかけ離れた前時代的な不透明な動きをしていたオーナー達の張本人が、この委員長本人であったことは記憶に新しいところです。
☆八戸市医師会では下記のような市民公開講座を開催いたします。
日時:11月21日 16:00~18:00 場所:八戸市総合健診センター3階
表題:日本の医療を守りましょう
内容:1)ビデオ鑑賞 2)講演会 3)討論会 (下記URL参照)
http://www.orth.or.jp/Isikai/hachinohe/h16/igakukai/index.html
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● もし混合診療が導入されたらどんなことになるのか?(院内報2004年11月号より)
以前から何度もこの院内報で現政権が進めている「医療改革」なるものの実態についてお知らせして警笛を鳴らしてきましたが、いよいよ最終局面に追いつめられてきました。本来であれば昨年来の衆参の国政選挙で審判を受けるべきところが、医療問題は年金の陰に隠されて争点にならず、選挙結果も「負けたはずのカラスがより一層強くなった」という摩訶不思議な結果に終わっています。
また、医師会や歯科医師会は政治献金問題で「国民の敵・悪玉」となり、本来医療を守るために連携すべき国民と医療者が解離してしまい、支持を得られにくい最悪の状況になっています。私たちは、医師会の政治資金のあり方などを改めるべきと内部から声をあげてきて、透明性も高くなり国民の理解を得られるような態勢になってきましたが、マスコミでは頭から「利権団体」と決めつけられて国民に声が届かない状況にあります。
そして、選挙後すぐに小泉首相は医療への「混合診療の導入」を強く指示しました。混合診療の推進論者は、格安のパックツアーにオプショナルツアーを追加するようなもので、現在のやり方(全て割高の料金=保険外診療)よりも混合(パック+オプション=保険+自費診療)の方が良いじゃないか、と言います。
しかし、医療にはこんなたとえがあてはまらないことは、誰にでもわかることです。料理であれば高級レストランではなく大衆食堂でも美味しくてお腹いっぱいになることはできますが、もし皆さんの家族が命に関わるような病気にかかったときに、ここから先は「松・竹・梅」の治療コースがあり金額の順に助かる可能性が高くなります、と言われてお金がないから梅を選ぶということはあり得ません。これが大げさではないことは、実際に世界で唯一医療に市場経済がとりいれられているアメリカにおいて証明されています。TVドラマの“ER”やBSなどでも放映された“ジョンQ”という映画をご覧になった方は、ご存じだと思います。
政府は、医療の質を高めて医療費を抑制するためだと言いますが、この「人体実験」が失敗して医療の質は低下したが医療費は高騰したというのでは目も当てられません。実際に、アメリカの医療費は世界一高く、4000万人もの人が保険に加入できず「具合が悪くても我慢している」のです。
日本医師会は国民皆保険制度を守るために国民各界各層の団体に幅広く呼びかけ、国民医療推進協議会を結成しました。以前にも署名をお願いしたことがありましたが、今回は世界に誇るべき日本の医療保険を骨抜きにされるかどうかの正念場であり、何としても国民の皆さんの力が必要です。
「人の命は平等です。生命と個人の尊厳を守るべき医療の世界に、経済的な弱肉強食(市場原理)の論理を持ち込むことは極めて危険であります。裕福な一部の人のみが優遇され、弱者を切り捨てる政策は容認できません。誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険制度を守るために、いまこそ国民が結束する必要があります」(日医会長植松治雄)
大変お手数ですが、署名にご協力の程、よろしくお願いいたします。