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新型コロナ「経済と感染制御」ドイツは実効再生産数(Rt)=0.75を目指し、東京は数値目標を撤廃して感染拡大を放置した

2020年07月16日 | 新型コロナ
It is no use crying over spilt milk 覆水盆に返らず
高校に入ったときに最初に習った英語の格言の一つですが、もしかしたら本当の最初は Cool as a Cucumber だったか。。
いま思うと、どちらも単に英語を教えるだけでなく、何か心の片隅に残って、活かされていくことを期待していたのかもしれない。。(キュウリを食べると思い出します)

6月末にNHKで放映された2本の特集番組で、いずれもドイツの経済学者と感染症学者の共同研究が紹介されていました。
BS1スペシャル「新型コロナウイルス 世界は科学で闘った」2020年6月29日放送
NHKスペシャル「新型コロナウイルス 危機は繰り返されるのか」2020年7月2日放送


GDPの損失は、Rt=0.1(厳しいロックダウン)でもRt=1.0(感染持続)でもなく、Rt=0.75のときに最も少なく抑えられる。
これは、研究で用いられたシミュレーションを詳しく知らなくても、直感的に大体そのくらいだろうと予想できる結果です。

ところが、経済学者は、

「経済にとっては、再開が早いほど良いと考えていたので、Rtを1以上にして経済を回すべきだと考えていました」とおっしゃっている。
日本だけでなく、ドイツでも経済学者というものは、感染が再度拡大しながら経済再開を急ぐべきと考えていたことに、驚くというか呆れますが。。


感染症学者「感染制御と経済活動のどちらかだけを優先する必要はなく」

Rt=1(あるいはそれ以上)では、

経済学者「結果的に経済への打撃はさらに大きくなるのです」
という当然の結論に辿り着いています。
(ただし、実際にはドイツでもRt>1となって苦戦しているようですが)

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ではなく、感染制御と経済活動は両立し得る。ただし、それはRt=0.75(感染は制御して緩やかな減少傾向にあること)が条件となります。

一方で、東京都では5月末から一貫して感染拡大が続いていたのに、東京アラートの50人を越えた途端に、自ら制定したルールそのものを変更して、目標数値を撤廃してしまいました。
試合の途中で負けそうになったからルールを変更するなどという、小さな子でもわかる愚策をとったわけであり、この過程には専門家も関与していたので、厳しく検証されるべきでしょう。

「news23」小川彩佳キャスター、東京都が新たな指標で数値目標撤廃に「ますます罹患するにしても、経済的損失も、自己責任に…」7/1(水) 7:10配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d79fdb2a3088a35d6813ebcce5ecb40f5db51e3

なお、実効再生産数(Rt)の速報値は、東洋経済ONLINEの「新型コロナウイルス国内感染の状況」に掲載されています。7/14現在、全国で1.42、東京で1.41ですが、7/15、7/16の新規陽性者数により、更に上昇しているはずです。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

一方、小池都知事は「夜の街、若者、軽症」を繰り返し強調し続けましたが、別の番組で専門家は、

「東京なんですけど、夜の街に目がくらんでしまっていますが」


「実は夜の街から市中へのスピルオーバー(漏れ出すこと)を心配してた」
と懸念しています。
(この spill over で冒頭の格言を思い出したわけです)

これも当然のことで、専門家でなくても、多くの医療関係者は懸念を共有していました。
そして、それが今起きている「中高年」「一般の職場・学校」「地方都市」への拡散であり、この段階まで来ると抑え込みは不可能だと考えられます。
昨日(7/15)になって「感染拡大警報」などとパフォーマンスしてみても、遅すぎます。
It' Too Late
https://denihilo.com/carole-king/its-too-late


「新型コロナウイルスに世界は科学で戦った ドイツが見出した最適バランス、日本が選ぶべき指標は?」
「活用には、政策決定者のリテラシーが大切」
「世界は科学で戦った」の最後に、政策決定者のリテラシーが大切と強調されましたが、まさにそれが現実となっているのです。
すでに流行状況の把握が難しくなっています。
自衛しかありません。

6/19の移動全解除から2週後である7/3に124人、2日連続100人突破という時点で、都民の良識的多数派が再び行動自粛に戻り、自然にピークアウトしてくれることを期待したいのですが、すでに5月末から8週目に入っており、明日からの2日のデータで明暗は分かれると考えています。

なお、今後の流行状況については、「都内の最新感染動向」の中でPCR検査数と陽性率を見ていくことが一番の指標になります。また、再増加が明らかになっている入院患者数だけでなく、重症者数も底を打って反転傾向にあり、注意が必要です。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

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