踊る小児科医のblog

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日常生活での最大のリスクは受動喫煙

2010年03月05日 | 禁煙・防煙
 受動喫煙についての諸外国におけるいくつかの研究で、日常的に受動喫煙を被っている人は、そうでない人と比べて10~20%も死亡率が高いということがわかりました。ある物質に曝露された十万人あたり1人でも死亡してはいけないというのが環境汚染の許容基準ですが、受動喫煙はその基準の1万~2万倍の高さに相当することになるのです。

 実際に、全世界で受動喫煙により年間約60万人、対策の遅れた日本では約2万人もの人が亡くなっていると推定されています。

 個々の病気についても、肺がんの一種である肺腺がんのリスクは夫が喫煙者だと約2倍も高くなり、毎年およそ4000人の女性が受動喫煙による肺線がんで死亡していることが、厚生労働省研究班の長年にわたる調査で判明しています。同じ研究で、閉経前女性の乳がんは受動喫煙で2.6倍、本人の喫煙で3.9倍も高くなることがわかってきました。



 子どもの健康に与える影響も深刻です。乳幼児突然死症候群(SIDS)で年間400人前後の赤ちゃんが亡くなっていましたが、リスク要因のうつぶせ寝がなくなって200人以下に減少しました。残る最大のリスク要因は妊娠中・出生後の親の喫煙で、SIDSの約4割がタバコによるものと推定されています。

 新型インフルエンザでは過剰とも言える騒ぎを巻き起こしましたが、国内の死者数は数百人のレベルで季節性以下に収まりそうです。

 一方で、受動喫煙の危険性については、政府もマスコミもその扱いはあまりに小さい状況にありますが、日常的に家庭や職場における曝露でこれだけの死者が出ていることを知れば、国際条約で定めた「屋内全面禁煙」に疑問を差しはさむ人はいなくなるはずです。

 被害の規模と日常的に多くの人が曝露されているという点において、アスベストとは比較にならないほどの被害が続いているのです。