前号(院内報)の続きです、八戸市の4中学校におけるアンケート調査を解析してみてわかったことについてお伝えします。この結果については、11月に札幌で開催される東北北海道小児科医会と、20日に開催される八戸医学会で概要を発表しました。
1)家族の喫煙、特に母親の喫煙の影響
前号で、中学生の1割弱に喫煙経験があったこと、家族の喫煙者は65.4%で、その内訳は、父51.4%、母22.4%であり、父の喫煙よりも母の喫煙の方が子どもがタバコを吸い始める率が高いことなどをお伝えしましたが、父母の喫煙と子どもの喫煙について、更に検討を加えてみました。
(表1)
喫煙家族あり 父が喫煙 母が喫煙
喫煙経験のある男子 76.6 53.2 32.5
喫煙経験のある女子 90.2 54.9 62.7
喫煙経験なし(男女) 63.8 51.2 20.3
(数字はいずれも%)
(表2)
喫煙経験率 男子 女子
父のみ喫煙 10.2 3.9
母のみ喫煙 22.2 21.4
両親とも喫煙 12.5 15.9
両親喫煙なし 7.9 2.7
女子の喫煙経験者の9割は家族内に喫煙者がいて、母の喫煙が6割にも達していて父よりも高くなっています(表1)。更に興味深いことに、両親共に喫煙者であるよりも、父が吸わないで母が吸う場合の方が子どもの喫煙率は最も高くなり、しかも男女差がほとんどみられないほど女子の喫煙率が上がるということです(表2)。同じような傾向は下北地区(むつ保健所)の調査でも明らかになっています。
母親の喫煙は、妊娠中の「胎児の喫煙」、授乳による母乳への移行、子育てにおける受動喫煙のいずれにおいても父親の喫煙よりも影響が深刻であるだけでなく、子どもが吸い始める「喫煙の世代間連鎖」においても父親より格段に影響力が大きく、特に娘の喫煙につながり、更に悪循環が続くのです。(父親は吸ってもいいという意味ではありませんよ、念のため)
2)喫煙開始の低年齢化と家族にすすめられて喫煙を開始している実態
はじめてタバコを吸った年齢は、小6までに7割、小4までに4割で、さらに驚くべきことに、小1~小2で9%、小学校入学前が11%、あわせて2割の子が小2までという小さい時期にタバコを吸っていることです。
そして、タバコを吸ったきっかけをたずねてみると、「好奇心」と「なんとなく」がそれぞれ3割前後(複数回答可)なのですが、その中で、親からすすめられた子が13.3%、兄姉からが3.9%もいたということです。
3)友人の喫煙の影響
喫煙する友人がいる生徒は約7%でしたが、喫煙経験率を比較すると、
喫煙経験率
喫煙友人あり 37.0
喫煙友人なし 6.4
と約6倍も高くなっていたのです。これをみると、多くの親御さんは「うちの子は中学に入って悪い友達とつきあい始めたから…」と言いたくなるようですが、おそらくその友達の親も同じことを言っているのではないでしょうか。要するに、どちらが悪いということではなく、特定の仲間集団で吸い始めているということが示されているのです。
4)朝ごはんと子どもの喫煙
中学生の13%は週に1日以上朝食を抜いていて、2%の子は全然食べていません。そして、週1日以上朝食抜きの子と毎日食べる子を比較してみると、
喫煙経験率
週1日以上朝食抜き 17.7
毎日食べる 7.2
と、ここでも2倍以上の明らかな差がみられました。さらに、両群で母親の喫煙率を調べてみると、38.2%対20.1%と、これも倍近い差があることがわかりました。要するに、「朝ごはんと母親の喫煙と子どもの喫煙」の三者は、お互いに相関関係があることが示唆されました。これに対して、父親の喫煙率は52.2%対51.5%でほとんど差がみられませんでした。
まとめ
・八戸市の中学生の喫煙経験率は1割弱と全国平均よりも低かった。
・家庭内の喫煙率は65%と深刻で、家族の喫煙、特に母親の喫煙が子ども(特に娘)の喫煙開始に大きな影響を与えていた。
・喫煙経験者の2割は小2までに喫煙していた。
・喫煙する友人がいると、いない子の6倍も喫煙を経験していた。
・朝食抜きと子どもの喫煙経験率、母親の喫煙に関連がみられた。
・子どもの喫煙は子どもが悪いのではなく、家庭や大人社会の責任!
禁煙治療のススメ
別紙コピー(新聞記事)にもあるように、いま日本人のうち3000万人は喫煙者ですが、そのうちの7割以上(2000万人以上)はニコチン依存症という病気だと、やっと国でも認めました。(実はタバコ病裁判で国はこのことを否定し続けているのです)
要するに、禁煙したくてもやめられないのは意志が弱いからではなく、麻薬中毒と同じ「治療が必要な病気」だからなのです。
また、喫煙者だけでなく非喫煙者にもしつこくはびこっている「迷信(ウソ)」の最大のものは、喫煙は「ストレスを解消する」というものですが、これはニコチン切れの禁断症状が一時的に緩和されたことをそう信じ込んでいるだけです。麻薬中毒患者が麻薬を注射して気持ちよくなるのを称して「ストレス解消」だとは言いませんね。それと全く同じことです。タバコはストレスを解消するのではなく、実は「ストレスを増加させている」のだということを知れば、タバコに対する幻想は一気に消滅します。
いま、ニコチンパッチという薬を貼るだけで、ほとんどの人は簡単に禁煙を開始することができるようになっています。親の喫煙は、子どものかぜ、中耳炎、喘息、アレルギーなど数多くの病気の原因になったり悪化要因になっています。屋外で喫煙していても、影響は大きいのです。
「私はやめられない」などと思いこまずに、子どもと家族の健康、そしてご自身の健康と美容のためにも、禁煙への道を踏み出してみましょう。
1)家族の喫煙、特に母親の喫煙の影響
前号で、中学生の1割弱に喫煙経験があったこと、家族の喫煙者は65.4%で、その内訳は、父51.4%、母22.4%であり、父の喫煙よりも母の喫煙の方が子どもがタバコを吸い始める率が高いことなどをお伝えしましたが、父母の喫煙と子どもの喫煙について、更に検討を加えてみました。
(表1)
喫煙家族あり 父が喫煙 母が喫煙
喫煙経験のある男子 76.6 53.2 32.5
喫煙経験のある女子 90.2 54.9 62.7
喫煙経験なし(男女) 63.8 51.2 20.3
(数字はいずれも%)
(表2)
喫煙経験率 男子 女子
父のみ喫煙 10.2 3.9
母のみ喫煙 22.2 21.4
両親とも喫煙 12.5 15.9
両親喫煙なし 7.9 2.7
女子の喫煙経験者の9割は家族内に喫煙者がいて、母の喫煙が6割にも達していて父よりも高くなっています(表1)。更に興味深いことに、両親共に喫煙者であるよりも、父が吸わないで母が吸う場合の方が子どもの喫煙率は最も高くなり、しかも男女差がほとんどみられないほど女子の喫煙率が上がるということです(表2)。同じような傾向は下北地区(むつ保健所)の調査でも明らかになっています。
母親の喫煙は、妊娠中の「胎児の喫煙」、授乳による母乳への移行、子育てにおける受動喫煙のいずれにおいても父親の喫煙よりも影響が深刻であるだけでなく、子どもが吸い始める「喫煙の世代間連鎖」においても父親より格段に影響力が大きく、特に娘の喫煙につながり、更に悪循環が続くのです。(父親は吸ってもいいという意味ではありませんよ、念のため)
2)喫煙開始の低年齢化と家族にすすめられて喫煙を開始している実態
はじめてタバコを吸った年齢は、小6までに7割、小4までに4割で、さらに驚くべきことに、小1~小2で9%、小学校入学前が11%、あわせて2割の子が小2までという小さい時期にタバコを吸っていることです。
そして、タバコを吸ったきっかけをたずねてみると、「好奇心」と「なんとなく」がそれぞれ3割前後(複数回答可)なのですが、その中で、親からすすめられた子が13.3%、兄姉からが3.9%もいたということです。
3)友人の喫煙の影響
喫煙する友人がいる生徒は約7%でしたが、喫煙経験率を比較すると、
喫煙経験率
喫煙友人あり 37.0
喫煙友人なし 6.4
と約6倍も高くなっていたのです。これをみると、多くの親御さんは「うちの子は中学に入って悪い友達とつきあい始めたから…」と言いたくなるようですが、おそらくその友達の親も同じことを言っているのではないでしょうか。要するに、どちらが悪いということではなく、特定の仲間集団で吸い始めているということが示されているのです。
4)朝ごはんと子どもの喫煙
中学生の13%は週に1日以上朝食を抜いていて、2%の子は全然食べていません。そして、週1日以上朝食抜きの子と毎日食べる子を比較してみると、
喫煙経験率
週1日以上朝食抜き 17.7
毎日食べる 7.2
と、ここでも2倍以上の明らかな差がみられました。さらに、両群で母親の喫煙率を調べてみると、38.2%対20.1%と、これも倍近い差があることがわかりました。要するに、「朝ごはんと母親の喫煙と子どもの喫煙」の三者は、お互いに相関関係があることが示唆されました。これに対して、父親の喫煙率は52.2%対51.5%でほとんど差がみられませんでした。
まとめ
・八戸市の中学生の喫煙経験率は1割弱と全国平均よりも低かった。
・家庭内の喫煙率は65%と深刻で、家族の喫煙、特に母親の喫煙が子ども(特に娘)の喫煙開始に大きな影響を与えていた。
・喫煙経験者の2割は小2までに喫煙していた。
・喫煙する友人がいると、いない子の6倍も喫煙を経験していた。
・朝食抜きと子どもの喫煙経験率、母親の喫煙に関連がみられた。
・子どもの喫煙は子どもが悪いのではなく、家庭や大人社会の責任!
禁煙治療のススメ
別紙コピー(新聞記事)にもあるように、いま日本人のうち3000万人は喫煙者ですが、そのうちの7割以上(2000万人以上)はニコチン依存症という病気だと、やっと国でも認めました。(実はタバコ病裁判で国はこのことを否定し続けているのです)
要するに、禁煙したくてもやめられないのは意志が弱いからではなく、麻薬中毒と同じ「治療が必要な病気」だからなのです。
また、喫煙者だけでなく非喫煙者にもしつこくはびこっている「迷信(ウソ)」の最大のものは、喫煙は「ストレスを解消する」というものですが、これはニコチン切れの禁断症状が一時的に緩和されたことをそう信じ込んでいるだけです。麻薬中毒患者が麻薬を注射して気持ちよくなるのを称して「ストレス解消」だとは言いませんね。それと全く同じことです。タバコはストレスを解消するのではなく、実は「ストレスを増加させている」のだということを知れば、タバコに対する幻想は一気に消滅します。
いま、ニコチンパッチという薬を貼るだけで、ほとんどの人は簡単に禁煙を開始することができるようになっています。親の喫煙は、子どものかぜ、中耳炎、喘息、アレルギーなど数多くの病気の原因になったり悪化要因になっています。屋外で喫煙していても、影響は大きいのです。
「私はやめられない」などと思いこまずに、子どもと家族の健康、そしてご自身の健康と美容のためにも、禁煙への道を踏み出してみましょう。